赤ちゃんのおしゃぶりは出っ歯の原因?育児に上手に取り入れる
赤ちゃんのおしゃぶりは、赤ちゃんが泣いてどうしようもないときのお助けアイテムでもありますが、一方で「おしゃぶりが出っ歯の原因になる」「おしゃぶりが癖になるとやめられなくなる」という話もよく耳にします。
もしかしたら赤ちゃんにおしゃぶりを使う前にデメリットが心配で手が出せない方もいるかもしれませんね。しかし、おしゃぶりとはデメリットを避けるため赤ちゃんにとって使わないほうがよいものなのか・・・?と聞かれるとそんなことはありません。赤ちゃんのおしゃぶり効果、おしゃぶりパワーを発揮し依存や歯並びへの悪影響を回避する適切な使い方を探っていきましょう。
赤ちゃんの寝かしつけの必需品!?おしゃぶりは育児の強力助っ人
実はおしゃぶりには、寝かしつけを楽にするなどママが思っている以上に赤ちゃんにとって力強いメリットがあります。
赤ちゃんが安心してくれる!精神安定効果
赤ちゃんは慣れない外の世界に、まだまだ不安がいっぱいです。そんな赤ちゃんが心から安心できるのが、ママの腕に抱かれているときと母乳をもらっているときです。
赤ちゃんは、胎児ときから生後半年ころまで「吸啜反射」と呼ばれる原始反射を示します。吸啜反射は口に当たったものを吸うような仕草のこと。誰に教わることもなく生まれて間もなく哺乳できるように備え付けられた本能行動ですので、産前のエコー検査ではお腹の中でも指しゃぶりをしている姿が見られます。
赤ちゃんにとって「吸う」ことは生きていく上で必須の行動であるとともに、安心を満たしてくれる行為なのです。
- 吸啜反射とは?赤ちゃんの原始反射「吸てつ反射」時期と意味
吸啜反射とは赤ちゃんが生きていくために必要な原始反射の1つです。この吸啜反射はいつから始まりいつまでに消失するのか具体的な時期を解説します。またおしゃぶりのメリットとデメリットも解説します。
「新生児の頃には泣いたらとにかく母乳を飲ませて!」と助産師さんからアドバイスされるのは、新生児の頃は哺乳力がまだまだ弱く一回の授乳では必要量の母乳を飲めていないから。
しかし、赤ちゃんも成長とともに徐々に筋肉がついてくると授乳間隔があいていきます。同時に体力もつくので起きている時間も長くなりますが、感情も徐々に豊かになるため特に理由が見あたらないのにもかかわらず機嫌が悪い・・・ということも珍しくなくなります。
そんなとき、精神安定の道具としておしゃぶりが非常に役立つのです。生後2ヶ月から4ヶ月頃のねんね期には特に役立つでしょう。
赤ちゃんの入眠を補助する
抱っこで寝かしつけを行っている場合、なかなか寝付いてくれず、また寝たと思って布団に置こうとしたら赤ちゃんの目がパチリと空いてしまうことは珍しくありません。赤ちゃんが上手く入眠にできない期間、背中スイッチがとりわけ敏感な時期は、おしゃぶりを吸わせて気持ちを落ち着かせてあげてみてください。
おしゃぶりを上手に取り入れるなら、寝かしつけの問題にうまく対応していくことができ、育児の負担も軽減できるはずです。
寝かしつけがスムーズに!ママの育児の負担を緩和
赤ちゃんが必要以上に泣かずに済み、そして眠りにつきやすくなる・・・これらのメリットを享受できると、ママの身体的負担はぐんと軽くなります。他にも子供がいてなかなか休めなかったりするママにはおしゃぶりは非常に有効なアイテムだと言えるでしょう。
慢性的な寝不足で体力や判断力が落ちることがなければ、ママの身体と心にも少しの余裕ができ、赤ちゃんへの対応も変わってくるというもの。育児はママや赤ちゃんがなるべく笑顔でいれることが一番!そのために必要ならば、使えるものは使うべきかも知れませんね。
実はよくわかっていない!巷でささやかれるおしゃぶり効果2つ
これまで、おしゃぶりで口を使うことによって自然と鼻呼吸を促すメリットが言及されてきました。
鼻呼吸が助長される、SIDSの予防に効果があるなどといった意見もありますが、実はどちらも科学的根拠は未だ解明されていません。
●SIDSの予防に効果がある?
SIDSに関しては、おしゃぶり使用中のSIDS発生率が少ないと言ったデータは提示されてはいますが、原因が特定されていないうえに「発生リスクはいくらか下がる」というだけで予防効果を持つ方法とはなりません。(注1)
- 乳幼児突然死症候群(SIDS)リスクから赤ちゃんを守るには
乳幼児突然死症候群(SIDS)とは赤ちゃんが睡眠時に突然呼吸停止してしまうことを指します。なぜSIDSが起こるのか、発症率を上げる要因と下げる要因から予防や対策を考え赤ちゃんをSIDSから守りましょう。
●赤ちゃんの鼻呼吸を促す?
赤ちゃんのおしゃぶりのパッケージには「鼻呼吸を促す」「舌や顎の発達を助ける」といった記載がされていることがありますが、実はおしゃぶりと鼻呼吸(加えて舌や顎の発達を助ける)の関連性は研究されていません。
おしゃぶりをしている間は口呼吸よりも鼻呼吸が便利であろうとは考えられますが、もともとは鼻呼吸であることや鼻呼吸の定着は肺や咽頭が発達する1歳前後であることを考えると、おしゃぶり自体が鼻呼吸に良いかどうかについては疑問が残ります。(注2)
ですが、口呼吸より鼻呼吸の定着が望まれる理由はあります。唾液には虫歯や口臭を防ぐといった効果もありますが、口呼吸により唾液量が減少すると口腔内を良い環境に保つことはできません。
口呼吸が癖になってしまう原因
- 鼻づまりなどで鼻呼吸ができないため
- 出っ歯で唇を閉じるときにある程度の力を要するため
おしゃぶりはいつまで?気になる歯並びへの影響を回避する使い方
おしゃぶりには大きなメリットがあるものの、同時に少し心配なデメリットも懸念されます。赤ちゃんがおしゃぶりを手放せなくなってしまったり、それにより歯並びが悪くなってしまうようなことは避けたいものです。おしゃぶりのデメリットやそれを踏まえた使用上の注意点を整理してみました。
おしゃぶりは出っ歯の原因になる?
乳歯の歯並びにとっておしゃぶりは本当に悪影響となるのか・・・専門家の意見をチェックしてみましょう。日本小児歯科学会の最近の見解では期間や程度を限れば歯並びに大きな影響はないとのこと。何が問題で、どうすれば適切に使えるのかをあらかじめ知っておくことが大切です。
おしゃぶりはしない方がいいの?おしゃぶりがよくないと言われる理由
これまで見てきたように、使用期間や限度さえ守れば、おしゃぶりの使用が歯並びに影響することはあまりないと考えられています。
この他のデメリットとしては、本来の親子のスキンシップがおしゃぶりによって減るのではないかということが指摘されます。もちろんこれも限度と言うものを踏まえていないときの話で通常の使用でそれが起きるとは考えにくく、極端すぎるおしゃぶりの常用や習慣化によって懸念される問題だと言えるでしょう。
- 赤ちゃんの歯並び|将来のきれいな歯並びのための乳歯ケア
赤ちゃんの歯並びで悩んでいる人に歯並びについての知っておきたい知識を解説し、歯並びの決定時期や、おしゃぶりや指しゃぶりなどの歯並びに悪影響を及ぼすと思われる要因、そして乳歯ケアの方法や小児歯科の選び方、矯正が必要なケースなどについて紹介します。
長期間おしゃぶりに頼るのはよくない?使う時期と頻度
おしゃぶりを使うこと自体には問題がないのですが、これが習慣化すると赤ちゃんのほうもおしゃぶりに依存的になってしまいます。
おしゃぶりがやめられなくなるケースに要注意!
歯並びなどのデメリットが叫ばれるのは依存性による常用化が原因です。特に入眠の度におしゃぶりを使っている方は要注意。
吸啜反射で精神的安定を得られる間は、入眠のタイミングでもおしゃぶりの使用は理にかなっていますが、「これが無ければ安心できない、寝られない」というようにしてしまうと後々おしゃぶりを卒業するのに苦労します。
一日ではどれくらい付けるべき?
依存的にならないように、おしゃぶりに頼るシーンやタイミングをあらかじめママの中で決めておくと良いでしょう。 一日中頼りっぱなしはもちろん良くありません。
ぐずりがひどくてどうしようもないときや寝てくれなくてママが疲労困憊のときなどに限って使ってみてください。
最初は難しいかもしれませんが、赤ちゃん側も徐々にコミュニケーションによって情緒を安定させることもできるようになっていきます。徐々におしゃぶりの使用時間を減らしていってあげましょう。赤ちゃんをいないいないばあなどでスキンシップやコミュニケーションで笑顔になる瞬間が増えれば、おしゃぶりの使用頻度は少しずつ減っていきます。
また、生後半年もたてば吸啜反射自体は消失しますし、かえっておしゃぶりは外したほうがぐっすり眠れるようです。寝落ちのタイミングでおしゃぶりを外してあげたりし、おしゃぶりをしている時間を少なくしていってあげましょう。
ものわかりしだす1歳までにやめられると◯
生後6ヶ月頃にもなると赤ちゃんも様々な動きができるようになり、周囲のおもちゃや物事にも積極的に関わる姿が見られます。発達段階上では、なんでも口に入れて確かめる時期に入りますので、この頃からおしゃぶりへの執着をなくしていくと上手に卒業することができます。自我がはっきりしだす1歳頃までにやめられるとベスト。
おしゃぶりの限度は2歳半まで!
おしゃぶりは赤ちゃん期に使うぶんにはほぼ問題がないと指摘されていますが、乳歯が生え揃ってくる頃になると状況は変わってきます。
日本小児歯科学会の見解によると「噛み合わせの異常は2歳頃までにおしゃぶりの使用を中止
すれば発育とともに改善される」とのこと。おしゃぶりや指しゃぶりの弊害は3歳以上になると残りやすくなります。つまりごく早い段階なら多少の異常があってもおしゃぶりをやめさえすれば自然に改善される可能性はあります。
乳歯の奥の歯が生えそろう2歳半までにはおしゃぶりをやめるようにしましょう。(注3)
おしゃぶりを嫌がる子や卒業した子が気をつけたいこと
便利なアイテムだからといっても、すべての赤ちゃんがおしゃぶり好きとは限りません。おしゃぶりが苦手な赤ちゃんもいます。そう言った子には、無理して与える必要はありません。
また、おしゃぶりを卒業した子は、代わりの手段として指しゃぶりが出現することもあります。
指しゃぶり
指しゃぶりは、赤ちゃんの仕草としては当然のものであると同時に、おしゃぶり同様いつかは卒業しなければならない行為です。一般的には、母子分離ができ始める3歳から6歳の間に消失することが多く、その程度ならばあまり問題点は見受けられません。
しかし、学童期にまで及ぶ指しゃぶりは、歯並びや発音に影響を及ぼす傾向にあり積極的な改善が必要です。ですが、子供にとってもしストレスになるのであれば、癖は長い目で見てゆっくり消失させていくことが大切です。
- 赤ちゃんが指しゃぶりする理由・たこや傷など困り事の対処法
赤ちゃんはどうして指しゃぶりをするの?指しゃぶりは放っておいても大丈夫?など、ママの疑問に思うことや、指しゃぶりをする赤ちゃんのために気を付けてあげたいことなどを紹介します。
おしゃぶりも衛生を保つべし!赤ちゃんのおしゃぶりの衛生面
赤ちゃんが低月齢ならおしゃぶりにも消毒が必要です。
赤ちゃんの口に入るものですから、哺乳瓶と同じように消毒をしてあげましょう。生後半年くらいまでが目安です。消毒方法は、各おしゃぶりの説明書きに従います。
おしゃぶりの管理方法
消毒を終えたおしゃぶりは、清潔な場所で保管します。キャップが付いているものが便利ですね。
薬液消毒では、次の点に注意しましょう。
- 薬液の上部に浮いてくるため、上からカバー(なければお皿など)で、全体が浸かるようにする
- おしゃぶりの内部に薬液が残ってしまわないように、消毒後に水洗いをすると安心
また、おしゃぶりは口から外れてよく床に落ちてしまいます。その度に洗浄・消毒をするのは大変ですので、おしゃぶりホルダーをつけて落下防止対策をしておきましょう。
赤ちゃんのおしゃぶりをチョイスしよう!
では、おしゃぶりにはどんなものがあるのでしょうか?おしゃぶりの種類や、気になる歯並びへの影響が少ないおしゃぶりの選び方を紹介します。
おしゃぶりの素材は2種類
現在一般的に発売されているおしゃぶりは、素材で分けると大きく2つ。天然ゴム製とシリコン製の特徴を整理しました。
天然ゴム製
哺乳瓶の乳首に近い形のおしゃぶりが多く出回っています。吸うときに形が変わり、柔らかく、伸縮性があります。天然素材なので、赤ちゃんに自然のものを使わせたいと考えるママに支持されています。若干のゴム臭さが気になるかも?
シリコン製
最近のスタンダードはシリコン製です。現在日本で売られているおしゃぶりのほとんどは、このシリコン製です。シリコン製のおしゃぶりは形が固定されており、歯に影響がなるべく出ないように平らな形状をしています。透明で見た目にも受け入れられやすく、耐久性にも優れています。
歯並びへの影響が少ないタイプを使いたい!チョイスのポイントは?
日本国内だけではなく、海外も含め様々なメーカーから歯並びを考慮したおしゃぶりが開発・販売されています。おしゃぶりによる歯並びへの影響が気になるなら、歯並びが考慮された種類の中から選びたいですね!歯への影響を考慮されたおしゃぶりは、次のような点で工夫されています。
- 赤ちゃんの口にフィットするような大きさ・形
- 吸ったときになるべく歯に圧がかからないような造り
サイズは赤ちゃんの月齢に合わせて
もう一つ大切なのは、赤ちゃんの月齢に合わせた大きさのおしゃぶりを用意してあげることです。成長の早い赤ちゃんには「大は小を兼ねる」ことも多いのですが、口の中に関してはそうはいきません。口の大きさや歯の生え具合などを十分に考慮して作られていますので、基本的には月齢表記をもとにおしゃぶりを与えるようにしましょう。
同じ月齢でも大きめ赤ちゃんには、大きめサイズを試してみても良いかもしれません。
その子の口にフィットしているかどうかも確認
初めて使用する前には、赤ちゃんの口にきちんとフィットしているかを確認します。口にフィットしないおしゃぶりは、口への負担が大きく赤ちゃん側にもストレスとなって嫌がったりすることも。明らかに合っていないなと感じたりするときには別なタイプを試してみて。
おしゃぶりは依存に注意すれば、ママにも赤ちゃんにも利点が大きいアイテム
おしゃぶりは一概に「ダメだ!」と決めつけるものではなく、使用さえ気をつければ、赤ちゃんの精神安定にもママの負担減にも一役を買ってくれる育児アイテムです。生後2ヶ月から4ヶ月頃は特におしゃぶりの効果が得られやすく、メリットを実感しやすい時期だと言えるでしょう。
注意すべき点としては、次のような点を挙げることができます。
- 依存に気をつけ、常用や習慣化を避ける
- 親子のコミュニケーションは大切にした上で使う(泣いたらすぐおしゃぶりはNG)
- 生後6ヶ月頃から卒業を意識する
- 歯並びへの影響を考慮し2歳半までにはやめさせる
これらに気をつければ、大した問題なく使用できるでしょう。ポイントをしっかり押さえて育児に積極的に取り入れたいですね。
参考文献
- 注1:厚生労働省乳幼児突然死症候群(SIDS)に関するガイドラインの公表について乳幼児突然死症候群(SIDS)に関するガイドライン
- 注2:日本小児歯科学会 小児科と小児歯科の保健検討委員会 おしゃぶりについての考え方
- 注3:日本歯科医師会口腔習癖(指しゃぶりなど)おしゃぶり
- 注3:日本小児歯科学会小児科と小児歯科の保健検討委員会指しゃぶりについての考え方