赤ちゃんの歯並びを美しく…

赤ちゃんの歯並び|将来のきれいな歯並びのための乳歯ケア

赤ちゃんの歯並びで悩んでいる人に歯並びについての知っておきたい知識を解説し、歯並びの決定時期や、おしゃぶりや指しゃぶりなどの歯並びに悪影響を及ぼすと思われる要因、そして乳歯ケアの方法や小児歯科の選び方、矯正が必要なケースなどについて紹介します。

赤ちゃんの歯並び|将来のきれいな歯並びのための乳歯ケア

赤ちゃんの歯並びはいつ決まる?おしゃぶり・指しゃぶりの影響・歯並びを保つために

早ければ生後6ヶ月ぐらいから生えてくるかわいい赤ちゃんの歯。1番奥の乳歯が生えるのが2歳半以降、6歳頃から永久歯へと生え変わり始めます。

この乳歯から永久歯に生え変わる時期が赤ちゃんの歯並びを決定する時期といってもよいでしょう。しかし、乳歯の歯並びは永久歯へも影響するので、長い目で見ながら乳歯のうちに様々なケアをしていく必要があります。
おしゃぶり・ゆびしゃぶりの歯並びへの影響、そしてきれいな歯並びを保つための乳歯ケアなどについて紹介します。

赤ちゃんの歯並びはすきっぱが良い

ママパパに愛される赤ちゃん

赤ちゃんの歯並びは歯と歯の間に隙間がある「すきっぱ」が一般的で、中には全部の歯がすきっぱという赤ちゃんもいます。
この隙間は将来生えてくる永久歯のための大切なスペースで、乳歯がすきっぱだから永久歯もすきっぱになるということはありません。

逆に乳歯のときに歯と歯の間に隙間がない一見きれいな歯並びは乳歯よりも一回り大きな永久歯が生えるには狭すぎるため、永久歯がガタガタに生える原因になります。
しかし、赤ちゃんの時点ですきっぱではない場合も、あごもだんだんと発達してくるため、4~6歳で隙間が現れてくることもあります。気になる場合は、小児歯科医に相談してみましょう。

歯並びを悪くする原因と予防のためにできること

乳歯の歯並びを決定づける要因は様々ですが、特に歯並びを悪くする原因について解説します。併せて歯並びが悪くならないよう、予防方法についても紹介します。

実際にはいくつかの原因が複雑に絡み合って歯並びに影響することもあります。項目をよくチェックして、気になるようなら小児歯科で相談してみましょう。

指しゃぶり・おしゃぶり

赤ちゃんが大好きなおしゃぶり

最近は「おしゃぶりは舌やあごの発達を助けて鼻呼吸を促す」という宣伝や、赤ちゃんを泣き止ませるための手段として、赤ちゃんにおしゃぶりを与えるケースが増えています。
また、赤ちゃんの指しゃぶりはお母さんの胎内でも行われていて、おしゃぶりも指しゃぶりも赤ちゃんの気持ちが落ち着くための自然行為なので、月齢の低い時期では全く問題はありません

しかし、おしゃぶりや指しゃぶりを長く続けていると、前歯が押されていわゆる「出っ歯」になったり、奥歯で咬んでいるときも上下の前歯の間に隙間ができる「開咬」、奥歯の嚙合わせがどこかで交叉してずれる「交叉咬合」など、歯並びを悪くしてしまう原因になります

赤ちゃんが指しゃぶりする理由・たこや傷など困り事の対処法
赤ちゃんが指しゃぶりする理由・たこや傷など困り事の対処法
赤ちゃんはどうして指しゃぶりをするの?指しゃぶりは放っておいても大丈夫?など、ママの疑問に思うことや、指しゃぶりをする赤ちゃんのために気を付けてあげたいことなどを紹介します。

口呼吸

口呼吸とは、文字通り口で呼吸することです。本来人間は鼻で呼吸するようにできているのですが、何らかの理由があり鼻で呼吸できない場合、口で呼吸することになります。
この口呼吸はあごの成長、顔の筋肉や骨格にも影響を及ぼすので、歯並びが悪くなったり受け口になってしまったりする可能性があります。

食べるものの固さ

最近の子供達は、ハンバーグやプリン、ヨーグルトなど、歯で噛まずに舌で押しつぶして食べられるようなものを一般的に好みます。
しかし、柔らかいものばかり食べているとあまり噛まずに飲み込むため、あごの筋肉が発達せずあごが広がらなくなります。
あごが広がらないと、永久歯の生えるスペースが狭くなり結果的に歯並びが悪くなります。

虫歯

ママに歯磨きしてもらう赤ちゃん

乳歯の虫歯を放置していると虫歯で歯に穴が開いて歯が小さくなってしまったり、虫歯のひどい乳歯を抜歯したことで空いたスペースに隣の歯がずれるなど、永久歯の歯並びに影響を及ぼすこともあります。

虫歯菌に感染しないために

赤ちゃんが虫歯になってしまう大きな原因の1つに「虫歯菌」があります。最近の研究では、虫歯は「虫歯菌による感染症」とまでいわれているほどです。
生まれたばかりの赤ちゃんに虫歯菌はいませんので、両親、あるいは祖父母など家庭内での感染が主な感染経路になるのが一般的です。

大人から感染しやすい時期は生後1歳7ヶ月から2歳半です。赤ちゃんの虫歯体質が決まるのは2歳半ぐらいまでで、虫歯菌に感染する時期が遅ければ遅いほど将来虫歯になりにくいといわれています。
口移しで赤ちゃんに食事を与えない、箸やスプーンの共有を避ける、大人も口腔ケアをするなどの対策で赤ちゃんを虫歯菌から守りましょう。

虫歯が生える時期とケア

歯が生えてくると、ミルクや母乳が原因で初期虫歯になってしまうこともあるので、最初の歯が生えたときから歯磨きを始めましょう。

 最も虫歯になりやすいのは食べられるものが増えてくる2~3歳以降です。1歳ではほぼ0の虫歯の割合が、2歳で7.5%、3歳では25%と2歳から3歳の間に虫歯の子供の割合が急激に増えています。2歳半で、奥歯も全て生え揃ってきます。虫歯の90%は奥歯の歯と歯の間から始まるといわれているので、奥歯の歯間をデンタルフロスで磨くとよいでしょう。

遺伝の影響は25%~30%

笑いながら外出するご機嫌の赤ちゃん

歯並びの先天的要因として、「遺伝」が挙げられます。この場合の「遺伝」とは、歯並びがそっくり同じ形になることではなく、顔の骨格や歯の大きさ、舌の位置などが親から子供に遺伝することによって、親と同じような歯並びになりやすいということです。

しかし、この遺伝が赤ちゃんの歯並びに与える影響は2530%程度であるといわれており、歯並びを決める残りの約7割の要素は、生活習慣などの「環境」によります

赤ちゃんの歯並びを保つために

親の歯並びの良し悪しに関係なく、赤ちゃんの歯並びを保つためには先述したとおり生活環境や早い時期からの乳歯ケアなどの「環境」が大切です。
では具体的にどういった点に注意していけばよいかまとめてみました。

母乳育児は歯並びに好影響

ママに抱っこしてもらう少し眠たい赤ちゃん

赤ちゃんは母乳を飲むときに唇と下あごで乳首を上あごにしっかり固定して、乳首を圧迫しながら母乳をしごき出します。その際に舌の筋肉や下あごが発達するので、母乳育児はきれいな歯並びによい影響を与えます。

母乳の出が悪い、乳首に傷があるなどで哺乳瓶を使用する場合は、赤ちゃんが母乳を飲むときの口周りの筋肉や舌の動きに近い形で哺乳のできる乳首を使用するようにしましょう。

おしゃぶり卒業時期の見極め

おしゃぶりが癖になっている赤ちゃん

おしゃぶりをあまり長く使用していると、歯並びが悪化する原因となります。
発話や言葉を覚える1歳すぎになったらおしゃぶりを常時使用しないように心がけて、できれば2歳頃にはおしゃぶりや指しゃぶりを卒業できるようにしましょう。

しかし、急に止めさせると情緒不安定になることもあるので、おしゃぶりや指しゃぶりをしている間も、声掛けや大人が一緒に遊んであげる、外で思いっきり遊ぶなど、子供に寄り添いながら徐々に止めていけるようにしましょう。

4歳をすぎても止められない場合、永久歯の歯並びにも大きな影響が出る可能性があるので、小児歯科医に相談することをお勧めします。

鼻呼吸の獲得とおしゃぶり

実は赤ちゃんは元々鼻呼吸です。口呼吸になってしまう原因は様々ですが、アレルギー等の慢性の鼻づまりや、硬いものを噛まないため口周りの筋肉が衰えているなどの理由が挙げられます。鼻呼吸の獲得のためにおしゃぶりを与えるのではなく、食べ物はよく噛んで食べる、鼻づまりは耳鼻科を受診して治療するなどの環境対策で鼻呼吸を獲得していきましょう。

歯並びと抱っこ

乳歯が生え始めた笑顔の赤ちゃん

赤ちゃんを寝かせっぱなしにしていると、同じ場所が圧迫されてあごや頭の形が変形し、歯並びに影響してくることがあります。
赤ちゃんが起きているときは、頭とおしりをしっかり保護しながらできるだけ抱っこをして、頭部を圧迫する姿勢から解放してあげましょう。スキンシップの面からもたくさん抱っこしてあげたいですね。

寝かせる姿勢

いつも同じ姿勢で寝かせないように気を付けます。向き癖のある子の場合は、バスタオルなどを背中に当てて顔の向きを時々変えてあげましょう。
うつぶせ寝はあごの発育に影響が出ることがあります。SIDS(乳幼児突然死症候群)の予防のためにもできるだけ仰向けに寝かせる習慣をつけることが大事です。

離乳食の時期

テレビに夢中の離乳食中の赤ちゃん

あまり早い時期から離乳食を始める必要はありません。歯並びをよくするための「噛む力」を赤ちゃんが取得するためには、月齢を目安にするよりも、個々の成長の段階に合わせて食べ物の硬さや大きさを考慮する必要があります。赤ちゃんに早くから硬いものを与えるのはよく噛まないで食べる丸飲みの原因となるため、成長に合った硬さの食べ物を与えるよう心がけましょう。

おやつの時間をきめる

食事をすると、口の中が酸性化しますが、唾液の力で中性に戻ります(再石灰化)。ダラダラおやつを食べていると常に口の中が酸性の状態になり、歯の表面のエナメル質が溶け出してしまい虫歯の原因に。
美しい歯並びを保つためにも、虫歯にならないようおやつは時間を決めて与えましょう。

歯磨き

自分で歯磨きできるおりこうさんの赤ちゃん

ミルクや母乳による初期虫歯を予防するために、歯が生えたらすぐに歯磨きを始めましょう。生え始めの頃はガーゼで歯を拭いたり、授乳後に湯冷ましや麦茶を与える程度で構いません。
10ヶ月頃からは、赤ちゃん用の小さくて柔らかい歯ブラシを使用して、優しく磨きます。

歯磨き粉は泡立ちしにくいジェルタイプを使用するのがベターですが、嫌がるようなら使用しなくても大丈夫です。
歯磨きを嫌がる赤ちゃんも多いですが、歌を歌ってあげたり、歯磨きができたらしっかりほめてあげるなど、楽しく歯磨きする習慣を身に付けたいですね。

定期健診

小児科の信頼できるベテラン医師

できれば1歳までに、遅くとも1歳半までには、自治体の1歳半健診で行われている歯科健診をきっかけにして、かかりつけの小児歯科を決めて定期健診を受けましょう。

正しい歯磨きの方法を教えてもらえたり、フッ素塗布などの虫歯予防、また虫歯の早期発見や歯のお悩み相談ができるなど、定期健診は赤ちゃんの歯並びを保つためにはとても大事なことです。
口コミを参考にしたり、いくつか実際に受診してみるなどして、相性のよい小児歯科を探しましょう。

歯医者さん助けて!乳歯の悩み

あまり知られていない歯の知識。歯の異常を発見して一人で悶々と「どうしたらいいんだろう」と考えているよりは、早期に歯医者さんへ行って相談することが、赤ちゃんのきれいな歯並びをつくることにつながります。

なかなか赤ちゃんの歯が生えてこない、歯並びが他の子と違う気がする、こんな歯見たことない!など、歯医者さんに行くべきか、様子を見るべきか悩むことも多々あります。その中でも歯医者さんに相談したほうが良いと思われるケースをご紹介します。

歯が生えてこない

嫌なことがあり辛い表情になる赤ちゃん

通常、赤ちゃんは生後6ヶ月頃から下、上の順番で前歯が生え始めますが(この順番ではない子もいます)、1歳過ぎても歯が生えてこない状態のことを「乳歯萌出遅延」といいます。

あごの中では歯ができあがっており、歯が生えてくるのが遅いだけというケースが多く、その場合はあまり心配はいりませんので生えてくるのを待ちましょう。3歳頃には乳歯が全部生えそろいます。
ごくまれに「外胚葉異形成症」という歯が全く生えない症状があるので、1歳過ぎても歯が生えない場合は小児歯科を受診しましょう。

産まれたときから歯が…先天性歯

1,000人に1~2人ぐらいの割合で、生まれた時から歯が生えていたり、生後1~2ヶ月で歯が生えてくる赤ちゃんがいます。

この歯のことを「先天性歯」または「魔歯」と呼びます。
早く生えているため歯がもろく、グラグラして抜けそうだったり、虫歯になりやすかったりするのでケアは欠かせません。また、授乳の際に歯で乳首を傷つけることもあるので、その場合は歯科医と相談しながら歯を削ってコーティング、または抜歯等の対処をしていきます。

生える順番があまりにもバラバラ

おでかけ中に泣いてしまった赤ちゃん

通常、個人差はありますが赤ちゃんの歯は上下どちらかの前歯から生え始め、奥歯へと順番に生えていきます。あまりにも生える順番がランダムだと、将来の歯並びに影響してくる可能性もでてきます。早めに小児歯科で相談しましょう。

融合歯や二重歯

隣同士の歯がくっついて1本の歯として結合してしまった歯を「癒合歯」といい、乳歯によく見られます。乳歯のときは問題ありませんが、永久歯に生え変わる際に歯根がうまく吸収されずなかなか抜けなかったり、結合した乳歯1本分のスペースに2本永久歯が生えてくるケースでは歯並びに影響してくるため、乳歯の時から継続して小児歯科で経過観察してもらうことが必要です。

癒合歯と同じく乳歯から永久歯に生え変わる際に問題になるのが二重歯です。一般的に、乳歯が抜けていないのに、乳歯の裏側から永久歯が生えてくることを指します。

このような場合は歯科医の判断で乳歯を抜くかどうか決めるので、無理に自分で乳歯を抜かずに歯科を受診してください。内側に生えた永久歯は乳歯が抜けると自然に本来あるべき位置へ動くことが多いのですが、場合によっては矯正が必要な可能性もあるため、こちらも継続して小児歯科で経過観察していく必要があります。

小児歯科を選ぶポイント

かかりつけの小児科の先生に助けを求める赤ちゃん

赤ちゃんの歯の相談ってどこに行けばいいのか迷ってしまうことも。小児歯科選びのポイントを紹介します。

  1. 小児歯科のみの看板を掲げている
  2. 子供に合った治療を行える
  3. 予防歯科にも力を入れている
  4. 両親とのコミュニケーションをしっかりとってくれる
  5. 院内が清潔でスタッフの対応がよい
  6. 口コミで評判がいい

歯科医であれば誰でも「小児歯科」と看板を掲げられますが、大人と子供では治療内容も対応も全く違っています。

看板が「小児歯科」のみで、できるだけ子供の歯についての専門知識があり、矯正についても相談できる小児歯科学会専門医のいる病院を選びましょう。小児歯科専門医の資格を取得している歯医者は小児歯科学会のホームページで調べられるので確認してくださいね。

矯正はいつ?矯正時期と矯正するべき歯並び

歯並びが悪いと、審美的な面はもちろんのこと、虫歯や歯周病にかかる可能性も大きくなります。しかし矯正には多額のお金がかかり、親としては矯正したほうがいいのかどうか悩んでしまいますね。矯正するならいつ頃がいいのか、どういったケースで矯正を検討したほうがいいのかをご紹介します。

受け口(反対咬合)

指しゃぶりが止められない赤ちゃん

下の前歯が上の前歯より前に出ている状態を受け口(反対咬合)といいます。奥歯が虫歯になりやすく、サ行やタ行の発音が不明瞭になる場合があります。審美的にもコンプレックスを持つ子供が多いようです。

噛み合せの深い前歯(過蓋咬合)

前から見たときに、上の前歯が下の前歯を覆ってしまうくらい噛み合わせの深いものを過蓋咬合といいます。
顎関節症や虫歯・歯周病になりやすかったり、下の歯で上の歯茎を噛みこんでしまい、口内炎になったり歯茎に傷がついて腫れたりすることなどがあります。

出っ歯との違い

上の歯が極端に前に出ていて、口を閉じていても上の歯が見えているような場合もある状態がいわゆる「出っ歯」(上顎前突)で、噛み合わせが深すぎる過蓋咬合とは違います。出っ歯と過蓋咬合が併発しているケースもあります。

ガタガタすぎる歯並び

小児科の先生に歯並びチェックをしてもらう赤ちゃん

あまりにも歯並びがガタガタな場合、虫歯になりやすい、歯周病が進行しやすい、顎関節症になりやすいなどのデメリットに加え、審美的な面で感じるコンプレックスが非常に大きいと思われます。また、加齢と共により歯並びが悪くなる可能性もあるので、できれば子供のうちに矯正したほうがよいでしょう。

矯正する時期

大人になってからよりも子供の時の矯正のほうが時間もお金も少なくてすむため、一般的には乳歯から永久歯に生え変わるタイミングの6歳から10歳にかけて行うのがよいとされています。

赤ちゃんの美しい歯並びのために

赤ちゃんの歯並びについて詳しく紹介してきましたが、大人のちょっとした努力や生活習慣の改善で、赤ちゃんに一生の美しい歯並びをプレゼントしてあげられますよ。今日からでもできることがたくさんあるので、できることから少しずつ始めていきましょう。