育児・お世話

母乳が張らないときの対処法

母乳が「張らない」と「出ない」は違う!正しい対処法は?

母乳育児中におっぱいが張らないと、「母乳が足りないのでは?」「出なくなってのでは?」と心配になりますが、乳房の張りと母乳量はイコールではありません!ただし、片方のみ張らない、赤ちゃんの体重が増えないときは母乳不足の疑いが高いので、対策が必要です。

母乳が「張らない」と「出ない」は違う

母乳育児を目指しているのに、「母乳が張らない」と悩む方は少なくありません。しかし、「母乳が張らない」というのは、必ずしも「母乳が出ない」「母乳の量が少ない」ことを意味しているわけではありません。

「張る」「張らない」は感覚の差に過ぎない!

おっぱいが張らない「差し乳」

一般的に、授乳の間隔がひらくと、お母さんの乳房は張るような感覚を覚えることが知られています。しかし、体質によっては、授乳前も乳房が張る感覚がない方もいて、通称「差し乳」と呼ばれています。

「差し乳」タイプの女性は、自分で搾乳しようと思っても、あまりおっぱいがでないため、母乳不足を心配してしまいます。しかし、赤ちゃんが吸うと母乳が作られるため、母乳量が少ない、不足しているとは限りません。

「張らない」のは母乳量が安定した証かも?

「差し乳」とは反対に、常に母乳が張っている感覚があって母乳パッドが手放せない体質を「溜まり乳」と呼びます。「差し乳」「溜まり乳」は、もともとの体質もあれば、授乳期間を通して変化することも珍しくありません。

赤ちゃんが産まれたばかりの頃は、母乳を飲む量も多くありません。それに対し、産後まもなくから母乳がよく出るお母さんなら、赤ちゃんが飲む量に対して、生成量が多く、常に張りを感じています。

しかし、生後2~3カ月を経て、赤ちゃんがおっぱいを吸うのが上手になってくると、需要と供給のバランスがとれてきます。その結果、乳房が張らなくなるのです。

赤ちゃんが満足していればOK

赤ちゃんが満足できる量の母乳が出ていれば、おっぱいが張らなくても何の問題もありません。

ただし、赤ちゃんは「お腹がいっばい」と言葉で伝えられませんので、機嫌や体重増加から必要な量のおっぱいを飲めているか観察する必要があります。

母子手帳に記されている身長体重表と照らし合わせて、赤ちゃんが順調に成長しているか確認しておきましょう。

母乳が張らないときの対処法

「乳房が張る・張らない」と母乳量は、必ずしも関係するわけではありませんが、もし張らないだけでなく、赤ちゃんに母乳不足のサインが見られる、やはり母乳の出が悪いときには、次の5つのことを試してみてください。

1.水分をしっかりと摂る

お母さんが摂取する水分が減ってしまうと、母乳も出にくくなってしまいます。血液の循環を良くしたり、便秘を予防したりするためにも、普段からしっかりと水を飲むことは大切です。授乳期間は、意識的に水分を摂取するようにしましょう。

2.授乳回数を増やす

赤ちゃんが乳首を吸うことが刺激となって、オキシトシンと呼ばれるホルモンが分泌され、母乳の生産が活発になります。母乳量が足りないときはミルクを足す必要がありますが、授乳は引き続き続けましょう。赤ちゃんに乳首を吸わせる回数を増やすならば、母乳が出やすくなります。

特に「張らない」方の母乳から飲ませる

片方の乳房が張りにくいときは、まずは張らない・出にくい方から赤ちゃんには与えください。お腹が空いているほど一生懸命吸ってくれますので、母乳の通り道である乳管のつまりをスムーズにする効果も期待できます。

ただし、赤ちゃんの機嫌が悪くなるような場合は、まずは出ている方を吸わせて、そっとさりげなく出にくい方に変更しましょう。出ている方を吸っていた勢いのまま吸ってくれるので、母乳分泌が促されます。

3.ストレッチなどの軽い運動をする

母乳は血液からできています。乳房まわりや肩周りの筋肉が凝っているということは、血流が悪いということですから、母乳の出に影響を及ぼしている可能性もあります。

身体の凝りをほぐすことは、リフレッシュだけでなく、母乳が出やすくなる効果が期待できます。ストレッチなどの軽い運動をして、血行を良くしましょう。

乳房周りの筋肉をほぐすマッサージ・ストレッチ

乳房周りの筋肉をほぐすストレッチを、1日に何度か実践してみましょう。授乳中は乳房自体が大きくなりますので、胸元の筋肉は凝りやすくなっています

乳房周りのマッサージ

  1. 片手を上から引っ張られているような感覚で、思い切り高く上げます。
  2. 挙げている方と反対の手で、手を挙げている側の肩甲骨をしっかりとつかみます。
  3. 肩甲骨の下から乳房の外側までの筋肉を、強めの力で流すようにマッサージします。
  4. 反対側も同様のマッサージをします。

鎖骨周りの凝りをほぐすマッサージ

  1. 鎖骨の中心部分から肩の方に向かって、鎖骨から指1本下の部分をなでるように少し強めの力で流していきます。
  2. ゆっくりと2回流したら、鎖骨の中心部分から反対側の肩の方に向かって、ゆっくりと2回流します。

肩こりをほぐすストレッチ

肩こりがひどくなると、乳房周りの筋肉も硬くなり、おっぱいが張りにくくなってしまうことがあります。「たかが肩こり」と甘く見るのではなく、肩こりをしっかりと解消しておっぱいが張りやすい状態を作っていきましょう。

肩こり改善ストレッチ

  1. 両方のひじを曲げ、左手の指を左肩の上に、右手の指を右肩の上に軽く乗せます。
  2. 肩甲骨を大きく動かすことを意識して、ひじで大きく円を描くようにゆっくりと2回まわします。
  3. 反対方向に大きく円を描くようにゆっくりと2回まわします。
  4. 両手のひらを背中の後ろでしっかりと握ります。
  5. 握った手のひらがなるべく遠くになるように、思い切り遠くへ引っ張ります。
  6. 握った手のひらを斜め上に突き出し、思い切り遠くへ引っ張ります。

4.栄養バランスに注意する

お母さんが健康なときは、おっぱいも張りやすくなります。普段の食事内容を見直し、栄養バランスのとれた食事を心がけるようにしましょう。

5.母乳外来を受診する

母乳育児に悩みを抱えているのなら、助産院や産婦人科などにある母乳外来を受診するのもおすすめです。母乳の詰まりをとったり、分泌を促すマッサージをしてくれ、セルフケアの方法も教えてくれます。

ただし、母乳外来によって乳房マッサージの方法が異なりますし、助産師さんによって方針も違います。1~2回通ってみて乳房の状態が改善されなかったり、相性が悪いときは、無理せず別の助産院などに替えるようにしましょう。

自分でできるマッサージ方法

まだ赤ちゃんが生まれて日が浅いときは、乳管が詰まり気味で、母乳がスムーズに出ない可能性もあります。授乳する前に簡単なマッサージを実践して、母乳が張りやすいようにしておきましょう。

乳頭部分のマッサージ

  1. 乳首をつまんでほぐします。乳首全体が柔らかくなるように、さまざまな角度からつまんでほぐしていきます。
  2. 乳頭部分を軽くねじります。
  3. 乳頭部分を引っ張って、よく伸びるようにしておきます。
  4. 乳輪部分をほぐします。乳輪全体が柔らかくなるように、指の腹をつかって全体的にほぐしていきます。

乳房部分のマッサージ

  1. 手のひらを、反対側の乳房の下に当てます。そのまま手のひらを上の方に向かって滑らせます。
  2. 手のひらを、反対側の脇の下(手首の関節が乳房の外側に触れるように)に当てます。そのまま手を乳房の方に向かって滑らせます。
  3. 反対側の手と乳房も、同じように周辺筋肉をほぐすように滑らせます。

ストレスによって母乳が張らない可能性もあり

おっぱいが張らない原因として、「ストレス」を挙げることができます。人間の身体はデリケートですから、強いストレスを受けることでおっぱいが出にくくなってしまうこともあるのです。

完全母乳育児にこだわらない

「母乳で赤ちゃんを育てたい」と考えるお母さんはたくさんいますが、完全母乳育児を目指す気持ちが強すぎると、大きなストレスとなります。

粉ミルクにも赤ちゃんが必要とする栄養はバランスよく含まれていますし、母乳とミルクの混合育児を実施するという選択肢もあります。

「おっぱいが足りない時は、ミルクを飲ませれば良い」と思うようにして、自分を追い詰めないようにしましょう。

自分のための時間を作る

夫の会社が休みの日に、数時間でもお母さん一人で過ごせる時間を作れないか相談してみましょう。赤ちゃんとの生活は楽しいものですが、24時間いつでも赤ちゃんのお世話をすることは、誰にとっても大きなストレスです。

赤ちゃんのお世話を忘れる時間を作ることで、ストレスが軽減され、乳房の張りやおっぱいの出が改善されることもあるのです。

身体を動かしてストレス解消!

短時間でもウォーキングなどの運動をすることで、身体と頭がすっきりとして、ストレスが軽減されることもあります。外に出かけられない場合は、トレッチや軽いエクササイズをするだけでも、身体の凝りがほぐれて、リフレッシュになります。

母乳が張らなくても大丈夫!

母乳が張らない、母乳の出が悪いときは、粉ミルクや混合育児に切り替えましょう。産後は心も体も疲れていますから、完全母乳育児にこだわりすぎず、ストレスの少ない生活を送ることを優先してください。

ストレスが解消されるとおっぱいが張りやすくなることもありますし、お母さん自身が楽しく赤ちゃんと生活していくことにも繋がります。