混合育児とはどんなときに適している育児方法なのか
離乳食を開始するまで、赤ちゃんは母乳かミルクだけで日々必要とする栄養を身体に摂り入れます。すべての栄養を母乳から摂り入れることを「完全母乳育児(完母)」、反対にすべての栄養をミルクから摂り入れることを「完全ミルク育児(完ミ)」、母乳とミルクの両方を使って栄養を摂り入れることを「混合育児」と言います。
混合育児は主に次の3つのタイミングで実施します。
母乳不足のとき
母乳が不足するときは、赤ちゃんにミルクを飲ませて混合育児を実施します。母乳はいつでも同じ量が出るわけではありませんし、赤ちゃんもいつも同じだけ母乳を飲むわけでもありません。
そのため、母乳の量が少ないときや赤ちゃんの食欲が旺盛なときは、母乳不足になってしまいます。赤ちゃんに次のような状況が見られたら母乳不足と考えられますので、ミルクを足していきましょう。
母乳不足を見極める5つのポイント
- 赤ちゃんのお腹がすぐに空く
- 赤ちゃんの尿や便の量が少ない
- 赤ちゃんの体重がなかなか増えない
- 赤ちゃんの機嫌が悪いことが多い
- 赤ちゃんがすぐに目覚める
乳頭に傷があるとき
母乳育児をしようとしても、乳頭に傷があるときは赤ちゃんに飲ませることが難しくなります。普段は完全母乳育児をしている方でも、傷が良くなるまでの間は哺乳瓶でミルクを飲ませるなど、混合育児を実施することもあるでしょう。
夜中の授乳が辛いとき
夜中の授乳が肉体的・精神的に辛いときは、一時的に又は長期にわたって混合育児にするという方法もあります。
母乳はお母さんしか与えられませんが、ミルクならお父さんでも、他の家族でも、赤ちゃんに飲ませられます。お母さんと赤ちゃんが別々に時間を過ごす必要がある場合にも、混合育児でミルクの味や哺乳瓶に慣れている赤ちゃんの方が心配は少ないはずです。
混合育児で赤ちゃんを育てるメリット
完全母乳育児や完全ミルク育児にこだわらない混合育児には、以下のようなメリットがあります。
母乳不足のときも赤ちゃんに充分な栄養を与えられる
母乳がどの程度でるのかは、お母さんの体調によっても異なりますし、飲ませる時間帯によっても出やすいとき・出にくいときがあります。また、母乳育児を始めたばかりの頃は、なかなか赤ちゃんが満足するだけの量が分泌されない方も珍しくありません。
混合育児なら、母乳が少し不足するときにはミルクを少量だけつくり、母乳がかなり不足するときにはミルクを多めに作るなど、様子を見ながら量を調整できます。
赤ちゃんに吸ってもらわないと母乳分泌に必要なホルモンが働かないので、授乳の時間は必要ですが、ミルクを足すことは母親の精神的な安定にも繋がります。
お母さんの体調が優れないとき・外出時も他の人に世話を任せられる
乳頭に傷があったり、体調が優れないときも、他の家族が赤ちゃんにミルクを飲ませられるのなら、お母さんは身体を休めることに専念できます。赤ちゃんを置いての外出時も、哺乳瓶やミルクに普段から慣れているのなら心配も少ないでしょう。
また、外出先にいつでも授乳室があるとも限りません。ミルクなら人目を気にせず、赤ちゃんに飲ませることができます。その分、荷物はやや多くなってしまいますが、時と場合によってミルクか母乳か使い分けられるのはやはり便利です。
混合育児をスムーズに進める方法
臨機応変に量を調整できる混合育児。実際にはどのように進めていくことができるのでしょうか。
完全母乳育児を目指すなら足りない量だけミルクを足す
母乳の量が足りないときや外出中、その他の事情があるときはミルクを飲ませる。けれども、できれば完全母乳育児を目指したいという人は、まずは母乳を与えてから、足りない量だけミルクを足していくという方法を取りましょう。
ミルクをあげる量は少しずつが正解
授乳後にミルクを飲ませるときは、少量ずつ10~20ml単位で様子を見ながら、増やしたり、減らしたりしてください。あまりにもミルクの量を多くしてしまうと、赤ちゃんがミルクでお腹がいっぱいになって、次の授乳時間も母乳をあまり飲めなくなってしまいます。
もし、3時間経っても赤ちゃんのお腹が空いていないのなら、授乳後に与えたミルクの量が多かったのかもしれません。次回はもう少しミルクの量を減らして飲ませて下さい。
ミルクを飲む前後の赤ちゃんを観察しよう
混合栄養を実施する場合でも、授乳後は常にミルクを飲ませるのではなく、赤ちゃんが飲み足りないようなそぶりを見せているかを観察してから飲ませるようにしましょう。
また、ミルクを飲んだ後も、かならず赤ちゃんの様子を観察して下さい。赤ちゃんがミルクを吐きもどすのならミルクが多すぎたと考えられますので、次回はもう少し量を減らしてみる方が良いでしょう。
完全ミルク育児を目指すなら足りない量だけ母乳を足す
お母さんの体調や保育園入園などの理由から完全ミルク育児を目指す場合は、先にミルクを飲ませてから足りない量だけ母乳を足すようにします。
母乳の味以外を受け付けてくれない赤ちゃんの場合は、母乳を哺乳瓶に入れて赤ちゃんに飲ませ、哺乳瓶に慣れさせることから始めてみましょう。
赤ちゃんによっては時間がかかることもありますが、哺乳瓶から飲むことに抵抗がなくなると、中に母乳ではなくミルクが入っていても、嫌がらずに飲んでくれるようになります。
適度に搾乳を実施する
まだまだ母乳が出る状態で完全ミルク育児を目指す場合は、お母さんの乳腺炎予防のケアも大切です。赤ちゃんが母乳を与えず、おっぱいが張ったまま放っておくと、強い痛みや時には発熱を伴うこともあります。
おっぱいが張るタイミングに、しこりのある部分を軽く押すように搾乳し、乳腺炎予防に努めて下さい。また、入浴や運動などで身体が温まりすぎると、おっぱいの張りや痛みが強くなる恐れがあります。授乳を止めて数日間は、なるべく入浴や強度の高い運動を避けるようにしてください。
混合育児を成功に導くには「哺乳瓶の乳首」選びが大切
今まで母乳だけを与えていた場合、赤ちゃんがなかなか哺乳瓶に慣れてくれないこともあります。一方で、哺乳瓶に慣れた赤ちゃんは、おっぱいを直接吸うのを嫌がることもあります。
混合育児をスムーズに実施するためには、哺乳瓶の乳首選びがカギになります。
哺乳瓶の乳首選びはなぜ大切?
哺乳瓶の乳首(ニップル)には色々なサイズがありますが、くわえた感触や硬さ、ミルクの出やすさ、一度にミルクが出る量などは、乳首によって異なります。
哺乳瓶の乳首があっていないと、赤ちゃんがイライラする
赤ちゃんにとって飲みづらい哺乳瓶の乳首を使っていると、哺乳瓶で飲むことを嫌がります。また、最初は上手に飲めていても、成長とともに赤ちゃんの飲む力が強くなるので、哺乳瓶の乳首は月齢によって変える必要があります。
哺乳瓶の乳首が飲みやすすぎると、おっぱいを吸うのを嫌がる
反対に、哺乳瓶でミルクや母乳を飲むのが楽過ぎると、お母さんのおっぱいから母乳を飲むのは疲れますので、赤ちゃんはしだいにおっぱいを吸う行為を嫌がるようになります。
このような状態を「乳頭混乱(ニップルコンフュージョン)」と言います。
つまり、赤ちゃんの月齢、母乳育児を続けたいのか考えたうえで、適切な乳首を選ぶことが混合育児の成功を左右しているのです!
哺乳瓶の乳首選びの基準
哺乳瓶の乳首は、おっぱいを飲むときに比べると、軽い力でミルクが出るようになっています。
しかし、おっぱいと哺乳瓶の乳首の飲みやすさに差がありすぎると、徐々におっぱいを嫌がるようになってしまい、混合育児を進めていくことができません。
乳頭の先端はX字型よりもY字型
混合育児を実施するときは、通常よりもミルクが出にくい混合育児に適したタイプを選ぶようにしましょう。
乳首が少し固めで赤ちゃんの吸う力に合わせて出てくるミルクの量が変わる「Y字型(乳首の先端にY字の切れ目が入っている)」もオススメです。「X字型(乳首の先端にX字の切れ目が入っている)」は少ない力で大量のミルクが出てしまいますので、赤ちゃんが乳頭混乱を起こす可能性が高くなります。
ただし、赤ちゃんの吸う力がもともとあまり強くないときやY字型の乳首で15分以上かかるときは、X字型の乳首に替えて、赤ちゃんが飲みやすいように調整してください。
完母を目指すときの乳首選び
いずれは完全母乳育児にしたいと考えているのなら、赤ちゃんがおっぱいを飲むときと同じ口の動きを必要とする乳首を選ぶようにしてください。
大手育児メーカーであるピジョンからは『母乳実感』『母乳相談室』など、混合育児でも乳頭混乱を起こさず、母乳育児に切り替えられるような商品が1000円未満で販売されています。
完ミを目指すときの乳首選び
完全ミルク育児になっても構わないと考えているのなら、赤ちゃんにとってもっとも飲みやすい乳首を選べば問題ありません。
混合育児から完全母乳育児に戻したいときは?
完全母乳育児を目指しているにも関わらず、乳首の傷や薬の服用などが原因で、一時的に混合育児を実施しているお母さんも多いでしょう。
そのような場合は、次の方法で完全母乳育児に戻していくようにしてください。
ミルクを与える回数はそのままでミルクの量だけ減らす
授乳後にかならずミルクを飲ませていたのなら、回数はそのままでミルクの量だけを減らしていきましょう。母乳後のミルクが少ないと、赤ちゃんは普段よりもお腹が空きますので、次回の授乳時にはたくさん母乳を飲むようになり、徐々に母乳を飲む量が増えていきます。
母乳だけでお腹一杯になるまで飲めていると判断できたら、授乳後にミルクを与える習慣も終わりになります。
ミルクの量はそのままで与える回数だけ減らす
1回のミルクの量はそのままで、ミルクを与える回数だけを減らすこともできます。例えば、朝一番と就寝前は授乳後に哺乳瓶を使ってミルクを飲ませ、その他のタイミングは母乳だけにします。
そして、徐々にミルクを飲ませる回数を減らしていき、最終的にはミルクを飲ませる習慣を終わらせます。
赤ちゃんの体重増加をこまめにチェックする
母乳育児と同様に、混合育児を勧めていく際にも赤ちゃんの体重の増加には気を配ってください。
完全母乳育児を目指したい場合、体重増加を確認しながら、ミルクの量や与える回数を減らしていきましょう。
完全母乳育児を進めていく上で、お母さんの母乳の出が良いことは不可欠な条件です。おっぱいを飲んだ後に赤ちゃんが満足そうにしているのかも、かならず観察してください。
赤ちゃんの栄養が足りているのか気になるときは、保健センターや通っていた産婦人科・助産院、最寄りの小児科で相談してみることをおすすめします。
混合育児は臨機応変な育児方法!気楽に考えよう
混合育児は、十分な量の母乳がでないとき、病気やケガなどの理由により母乳を飲ませられなくなったときにとても適している育児方法です。
「母乳で育てたい!」という気持ちは決して否定されるべきものではありませんが、完全母乳育児にこだわりすぎると、お母さん自身の負担が大きくなってしまいます。臨機応変に、混合栄養で対応していくのは必要なことです。
お母さんと赤ちゃんにとってベストの育児方法を見つけていきましょう。