離乳食に鉄分はなぜ大切?赤ちゃんの貧血に気を付けて!
離乳食がはじまったら鉄分豊富な食材を意識的に献立に取り入れて、赤ちゃんの貧血を予防する必要があります。赤ちゃんは生後9ヶ月を過ぎると、育児用ミルクではなく、鉄分が配合された「フォローアップミルク」の摂取を促される機会もありますが、実は鉄分は赤ちゃんにとって不足しやすい栄養素の1つ。大人と同じように、赤ちゃんも鉄欠乏貧血になってしまう可能性があり、場合によっては鉄不足が発育に影響を与えてしまうケースもあります。
赤ちゃんが抱える貧血のリスク
赤ちゃんは妊娠後期頃にお母さんから胎盤を通じて鉄を吸収し生まれてきます。お母さんから受け取り体内に貯蔵した鉄は成長に伴って徐々に使われ、生後6か月~9か月頃に枯渇します。
そのため、赤ちゃんが貧血にならないためには、母乳やミルク、そして離乳食などの日々の食事から鉄分を摂取し続ける必要があるのです。
赤ちゃんにとって鉄分摂取が特に大切な時期はまさに離乳食期と重なる!
0歳の赤ちゃんは人生で最も体の発達が著しい時期ですので、鉄分が急速に失われる、消費される時期というものが存在します。
正出生体重の赤ちゃんは生後9ヶ月頃に鉄分が不足しやすい
正出生体重(2500g~4000g未満)で産まれた場合、最も鉄欠乏性貧血のリスクが高まるのは生後9か月頃です。ハイハイや早い子ではつかまり立ちなど、成長が著しくなるに伴い、鉄分の需要がUPするため、貧血のリスクも高まります(注1)。
生後9ヶ月の場合、離乳食が順調なら1日3回食になり、栄養の60%~70%は離乳食から摂取しているはずです。そのため、離乳食の内容がとても重要であり、この時期の貧血を「離乳期貧血」とも呼びます。
厚生労働省が策定している『授乳・離乳の支援ガイド』においても「鉄の不足には十分配慮する」との注意喚起がなされています(注2)。
早産・低出生体重だった赤ちゃんは生後4ヶ月から鉄分不足に注意
早産や低出生体重(2500g未満)だった赤ちゃんの場合、妊娠後期に母体から十分な鉄移行がされておらず、枯渇するタイミングも早くなりがちです。生後4~5か月頃から貧血のリスクが高くなりますので、医師の指導に従い、定期的な健診を受けましょう(注3)。
なお、母乳は育児用ミルクに比べて鉄分の吸収効率が高いと言われており、低出生体重でも搾乳などによる母乳育児は可能です。
赤ちゃんの鉄分の1日の摂取目標
厚生労働省が策定する「日本人の食事摂取基準(2015)に」よると離乳食期の鉄分摂取基準は次のようになります(注4)。
男の子
推定平均必要量 | 推奨量 | |
---|---|---|
生後6~11ヶ月 | 3.5 mg | 5.0 mg |
1歳~2歳 | 3.0 mg | 4.5 mg |
女の子
推定平均必要量 | 推奨量 | |
---|---|---|
生後6~11ヶ月 | 3.5 mg | 4.5 mg |
1歳~2歳 | 3.0 mg | 4.5 mg |
離乳食期の赤ちゃんは食事だけでなく、母乳やミルクを摂取しているので、食事だけで鉄分を補給しているわけではありません。
男児で、1日に5.0mgの鉄分が必要だった場合、離乳食で7割の栄養を摂取すると考えると
5.0mg(推定必要量)×70%(離乳食での摂取割合)=3.5mgとなります。
完全ミルク育児の場合は、9~10か月頃からは鉄分を強化したフォローアップミルクを活用する方法もあります。
乳幼児は鉄分の摂りすぎもNG?
鉄分は摂りすぎてしまうと胃腸への負担となり下痢や胃痛などの急性鉄中毒になる恐れがあります。通常の食事を摂取するだけでは過剰摂取になる危険性は少ないとされていますが、離乳食期は消化器官が未熟なので与えすぎには注意しましょう。
ちなみに、日本人の食事摂取基準によると1~2歳の男児は耐容上限量が25mg、女児は20mgとなっています。
離乳食に使える鉄分を多く含む食材
文部科学省食品成分データベースを参考に、離乳食で使える鉄分が多い食品をご紹介します(注5)。
食品成分データベースは、日頃の食事作りにも役立てることが可能です。
「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」の違い
鉄分は、ヘム鉄と非ヘム鉄という2種類に分けられます。
ヘム鉄と非ヘム鉄の1番の違いは体内への吸収率です。ヘム鉄が15~35%であるのに対し、非ヘム鉄は2~20%で、非ヘム鉄は一緒に食べる栄養素の影響を受けやすいのが特徴です。
一般的には、ヘム鉄は動物性食品に多く含まれ、非ヘム鉄は植物性食品に多く含まれる傾向があります。
「鉄分といえば」の代表食材!7ヶ月からOK「レバー」
鉄分、中でもヘム鉄を多く含む食材の代表です。100gあたりに含まれる鉄分の量は豚レバー13㎎、鶏レバー9.0mg、牛レバー4.0㎎です。
鉄分だけでなくたんぱく質やビタミンA、ビタミンCも含んでいる栄養豊富な食材です。離乳食で使う場合は食べやすい鶏レバーがおすすめです。
ただし、レバーに含まれるビタミンAは体内に溜まりやすいという特徴があり、日本人の食事摂取基準でも1日の耐容上限量が6か月~1歳では600μgRAEとして定められているので注意しましょう。
600μgRAEに相当する量は、鶏レバー4g、豚レバー4.5g、牛レバー5.4gですので、赤ちゃんにとっては一般的な量です。
日常的に摂取して鉄分補給!中期から少しずつ与えたい「卵黄」
卵1個分の卵黄約20gには1.2㎎の鉄分が含まれています。卵黄に含まれる鉄分もヘム鉄が中心です。
赤ちゃんに卵を与える場合、卵黄→卵白→全卵の順に進めていきます。卵黄は離乳食中期から使うことができ、ご家庭に常備しやすい食材でしょう。
脂肪が少なく鉄が多い!後期からOKな「牛もも肉(赤身」)
和牛のもも肉の赤身には100gあたり2.8mgの鉄分が含まれています。また、たんぱく質や血液を作る際に必要なビタミンB12も多く含まれているので、貧血予防にぴったりな食材の一つです。牛もも肉は脂質が多く含まれるので、離乳食後期頃から使いましょう。
非ヘム鉄が多く副菜として摂取しやすい「大豆製品」
非ヘム鉄を多く含み、離乳食に使いやすい食材として大豆製品が挙げられます。特におすすめなのは納豆です。納豆1パック分(50g)には約1.7mgの鉄分が含まれています。
木綿豆腐には0.9㎎、絹ごし豆腐には0.7mgと鉄分含有量は少なく感じられますが、消化しやすい豆腐類は後期では1食に45g程度使用できるので、毎日の供給源としては優れています。
ちなみに、大豆になる前のえだまめにも100gあたり2.7mgの鉄分が含まれており、離乳食中期から薄皮を取り除けば食べられます。
鉄の吸収効率を上げるビタミン類も豊富な「緑の濃い野菜」
小松菜、ほうれん草、ブロッコリーといった緑色の濃い野菜にも非ヘム鉄がたくさん含まれています。
これらの野菜には鉄分だけでなく、ビタミンCや体内に蓄積しにくいビタミンAを含み、栄養価に優れています。
鉄分を多く含む緑色の濃い野菜(数値は100g当たりの含有量)
- 大根の葉 3.1mg
- 小松菜 2.8mg
- 水菜 2.1mg
- ほうれん草 2.0mg
- チンゲンサイ 1.1mg
- ブロッコリー 1.0㎎
日常的にプラスするのが◎!青のりやきなこ
乾燥している食材にも鉄分が多く含まれているものがあります。風味づけなどに積極的に使うことで、鉄分の補給源になります。
ただし、ひじきは鉄分が多い食材というイメージが強いかもしれませんが、最近では鉄釜に代わりステンレス釜で処理されるようになったことに伴い、鉄分の含有量が少なくなっています。
鉄分量は以前に比べて少なくなりましたが、カルシウム等を含み栄養価が高い食材なので、離乳食後期頃から使って味や食感に慣れさせてあげましょう。
鉄分を多く含む動物性食材(数値は100g当たりの含有量)
・かたくちいわし(煮干し) 18.0mg
・かつおぶし 5.5mg
鉄分を多く含む植物性食材(数値は100g当たりの含有量)
・あおのり(乾燥) 77mg
・きなこ 6.2mg
・ひじき(ステンレス釜・乾燥)6.2mg
鉄分摂取は食材の組み合わせが鍵!
鉄分は一緒に食べる食材によって、吸収効果が上下します。赤ちゃんの貧血を予防するためには、食べ合わせも重要なポイントとなります。
鉄分の吸収効率を上げてくれる食材・栄養素
植物性食品に含まれる非ヘム鉄は離乳食でも食べやすい食材が多いのですが、体内への吸収率が一緒に摂取する栄養素によって大きく変わってきます。鉄の吸収率を上げるには、次のような栄養素を含む食材と一緒に摂取するのがおすすめです。
ビタミンC
野菜や果物に多く含まれているビタミンCには非ヘム鉄を体内に吸収しやすくする働きがあります。
ヘム鉄は二価鉄、非ヘム鉄は三価鉄という形状をしていますが、鉄分が主に吸収される腸管は弱アルカリ性で、アルカリ性で溶けやすいのはヘム鉄の形である二価鉄なのです。
ビタミンCは非ヘム鉄の三価鉄を二価鉄にする作用があるため、体内への吸収率をUPさせることができるのです。
動物性のたんぱく質
非ヘム鉄だけでなくヘム鉄も肉類に含まれるたんぱく質と結合することにより、腸管からの吸収率がUPします。また、たんぱく質は赤血球をつくる材料でもあります。
小松菜など鉄分が多く、緑の濃い野菜は、もともとビタミンCも豊富に含んでいます。卵や肉と一緒に食べると青臭さもなくなり、赤ちゃんでも食べやすくなるので、おすすめです。
鉄分の吸収効率を下げてしまう食材・栄養素
ヘム鉄、非ヘム鉄を問わず次にあげる食材や栄養素は鉄分の吸収効果を下げてしまう恐れがあります。赤ちゃんだけでなくママも貧血予防のために気を付けましょう。
牛乳
カルシウムには鉄の吸収率を下げる働きがあるとされています。カルシウムを多く含む食材の中でも注意しなければならないのが牛乳です。
牛乳には鉄分があまり含まれていないため、牛乳を飲みすぎると鉄分の吸収率を下げてしまい貧血を引き起こしてしまう恐れがあります。
牛乳はそのまま飲むのであれば1歳以降が推奨され、量は400mlを超えないようにしましょう。
タンニン
お茶やコーヒー、柿に含まれる渋みの成分がタンニンです。赤ちゃんの飲み物は麦茶やお水がおすすめです。
鉄分をしっかり補給するための離乳食レシピ
赤ちゃんが食べやすく、鉄分を効率的に摂取できるレシピをご紹介します。貧血予防のためには、ベビーフードなども賢く利用しましょう。
中期からOKな鉄分補給レシピ
卵黄や大豆製品を使った調理がおすすめです。
小松菜やほうれん草、ブロッコリーといった緑の濃い野菜は鉄分が多いだけでなくビタミンCも多く含む野菜なので積極的に取り入れていきましょう。
小松菜入り卵黄茶碗蒸し
材料
- 小松菜(葉先)10g
- 卵黄 1個分(20g)
- だし汁 大さじ2
-
小松菜はラップに包んで電子レンジ600Wで20秒加熱しすりつぶします。
-
耐熱容器に卵黄、だし汁、小松菜を入れて混ぜ合わせます。
-
耐熱容器が入るサイズの小鍋もしくはフライパンに水を1cm入れ火にかけ、沸騰したら2をいれて蓋をし、中火~弱火で10分蒸します。
後期からOKな鉄分補給レシピ
後期に入ると赤ちゃんの貧血のリスクが高くなるので、吸収率の高いヘム鉄を多く含む赤身肉を使った手づかみ食べに対応できる調理方法がおすすめです。鉄分の吸収率を上げるために動物性たんぱく質や色の濃い野菜を積極的に取り入れましょう。
牛もも肉のコロッケ風おやき
材料
- 牛もも肉(赤身)15g
- じゃがいも 30g
- ピーマン 5g
- 玉ねぎ 10g
- 片栗粉 小さじ1程度
- サラダ油 少々
-
ピーマンとたまねぎはみじん切りにし、一緒にラップに包んで電子レンジ600wで30秒加熱します。
-
じゃがいもは皮をむいて一口大に切り、水にさらした後水気を切ってラップに包み電子レンジ600Wで1分加熱しラップに包んだままつぶします。
-
牛肉は細かく刻みます。
-
ボウルに牛肉、じゃがいも、玉ねぎ、ピーマンを入れて混ぜ合わせ、赤ちゃんの一口大に成型して片栗粉をまぶします。
-
フライパンにサラダ油を敷いて熱し、4を両面焦げ付かないように焼きます。
ベビーフードで効率的に鉄分補給
ヘム鉄が豊富なレバー類は臭みが強いため食べにくく、また鮮度が重要なので下ごしらえが面倒で、扱いにくい食材だと感じているママもいるのではないでしょうか?
貧血予防のためにレバーを少量だけ使いたいというときには、ベビーフードが便利です。
熱湯で溶いて使う粉末状のベビーフードは、レバーだけでなく野菜類と組み合わせて作られているので臭みも気になりません。
ビタミンCが豊富で赤ちゃんが食べやすい食材であるさつまいもと組み合わせたレシピをご紹介します。
さつまいものレバーペースト和え
材料
- さつまいも 30g
- レバー粉末 1スティック
- 熱湯 小さじ2
-
レバー粉末を熱湯で溶き、レバーペーストを作ります。
-
さつまいもは皮をむいて水にさらしてあくを抜き、水気を切ってラップに包み、電子レンジ600Wで1分加熱してフォークでつぶします。
-
1と2を和えます。
離乳食に鉄分を取り入れる献立ポイント
鉄分は、日常的に摂取することが大切です。
献立作りの際には、以下の3点を意識すると、日常的に鉄分を補給しやすくなります。
- ビタミンCの豊富な果物をデザートに取り入れましょう。
- たんぱく質食材を1食に必ず1品取り入れましょう
- あおのりやきなこといった鉄分の豊富な乾燥している食材を風味づけに使いましょう
離乳食後期の1日分メニュー
最後に鉄分を多く含む食材を使った1日の簡単な献立例をご紹介します。もちろん3食バランス食べられれば望ましいですが、難しいときは1日トータルで栄誉面のバランスをとりましょう。
朝食
- ひきわり納豆粥
- 味噌汁(豆腐・ほうれん草・かぼちゃ)
- みかん
納豆粥にはあおのりをかけ、味噌汁のだしにかつお節やいりこを使うと鉄分を強化できます。ビタミンCの多い果物はみかん、キウイ、いちごなどがあります。
昼食
- 小松菜の卵とじうどん
- きなこヨーグルト
だしとしてかつおぶしを細かく刻んで使っています。ヨーグルトにきなこをかけて鉄分を強化します。
夕食
- お粥
- 牛もも肉のコロッケ風おやき
- 蒸しブロッコリー
- にんじんのすまし汁
ビタミンCが豊富なブロッコリーは手づかみ食べにもおすすめです。赤身のお肉は叩いて使うと赤ちゃんでも食べやすくなります。
参考文献