原始反射の理由・種類・消失時期

原始反射の種類は?赤ちゃんに原始反射がある理由や消失時期

原始反射は刺激に対して赤ちゃんが無意識に体を動かす動作です。モロー反射やおっぱいを吸うための反射など、外の世界に対応するためにお腹の中にいる頃から自然にインプットされています。原始反射は赤ちゃんの発達に異常がないか確認をする指標にもなります。

原始反射の種類は?赤ちゃんに原始反射がある理由や消失時期

原始反射とは何か、原始反射はどうして起こるのか

出産前に胎児の様子を見られなかった時代には、赤ちゃんがママのお腹の中にいる期間は何も考えず、何も感じない昏睡状態にあると考えられていました。
しかしエコー技術の進歩などによって胎児の様子を詳しく知ることができるようになった結果、胎児は羊水の中で活発に動き、様々な刺激に対して反応していることが解明されてきました。胎児が見せる動きのうち生まれてからも続く反射的な動作は「原始反射」と呼ばれています。

原始反射は何も知らない赤ちゃんが外の世界で生き抜くことができるよう、本能的に備わっている体の動き。生まれたばかりの赤ちゃんは自分の体を意識的に動かすことができないため、生きるために原始反射を行っていますが、成長につれて体を意識的に動かせるようになると自然になくなっていきます。

『反射』が起こるしくみ

原始反射をする赤ちゃん

通常、人は脳からの指示を受けて体を動かしますが、反射は脳が指示する前に無意識に体が動く反応です。

例えばひざを叩いたり、熱いものに触れたりすると意識する前に手や足を動かしてしまいますよね。これは体が外から受けた刺激に対して、脳に届く前に「脊髄」や「延髄」が命令することで刺激が折り返され、頭で考えることなく無意識的に運動が行われていることによる動作なのです。

どんな原始反射がある?原始反射の種類と消失時期

0歳児に見られる原始反射の種類と消失時期を一覧にまとめました。モロー反射や吸啜反射、把握反射などはわかりやすいですが、中には素人にはなかなか把握・認識しづらい原始反射もあります。

手や足の反射

  • モロー反射:生後4ヶ月頃に消失
  • 把握(はあく)反射:生後4ヶ月頃に消失
  • 原始歩行:生後4~5ヶ月頃に消失
  • 非対称性緊張性頸反射(ATNR):生後4~6ヶ月頃に消失
  • バビンスキー反射:2歳頃に消失

口の反射

  • 追吸反射:生後4~6ヶ月頃に消失
  • 吸啜(きゅうてつ)反射:生後6ヶ月頃に消失

首の反射

  • 引き起こし反射:生後1ヶ月頃に消失

おしりの反射

  • ガラント反射:生後3~9ヶ月頃に消失

出生後に始まる反射

  • 対称性緊張性頸反射(STNR):生後6ヶ月頃から発達し、9~11ヶ月頃に消失
  • パラシュート反射:生後8ヶ月頃から発達し、一生消失しない

それぞれの原始反射に備わる有用性

原始反射は手、足、口など反射する部位は様々。それぞれの反射には赤ちゃんの成長に大きく作用する大切な有用性が備わっています。

びくっとして両手を広げる「モロー反射」

モロー反射でビクっとする赤ちゃん

新生児の時期は、自分の状況が危険かどうかまだまだ判断できません。そのため危険の可能性を感じたときに対応できるよう、無意識的に体を動かすのがモロー反射です。
モロー反射は大きな刺激を受けることによって引き起こされます。大きな音、明るい刺激、突然強く触れる、赤ちゃんの体が突然傾いてバランスを崩すなどです。

例えば突然大きな音が聞こえると、赤ちゃんはびくっとして何かにしがみつくように両手を広げますが、これは私たちの祖先が木の上で生活していた頃、母親につかまって落ちないようにしがみついていた名残だと考えられています。モロー反射が消失すると首すわりなど首の動きが発達すると考えられています。

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点頭てんかんとの違いは?

モロー反射は主に寝ているときにビクッとなることが多いですが、点頭てんかんは眠くなったときや目覚めたときなど、意識があるときに起こります。
首をカクンカクンと前に倒すなどの動作を獣数秒から数十秒間隔で何度も繰り返し、長ければ5分から10分続くときもあります。無表情になることも点頭てんかんの特徴です。

点頭てんかんとは

生後4ヶ月から1歳の間に起きるてんかんの種類で、うなずくような仕草が特徴です。通常のてんかんのように手足の硬直やけいれんなど、激しい発作がないため、パパやママが気づいてあげられないことが多く注意が必要だと言われています。

自分のモロー反射で起きてしまうときの対策

お布団の上に寝かしているときにモロー反射をすると、自分の体の動きにびっくりして泣き始めてしまう赤ちゃんもいます。せっかく寝てくれた…とホッとしたときにモロー反射で起きてしまうとがっかりしてしまいますよね。そんなときにできるモロー反射の対策は赤ちゃんをおくるみに包んで寝かせてあげることです。

おくるみでしっかりと体を固定しておくと、モロー反射が起きても赤ちゃんは体を動かすことができないので目が覚める心配もありません。

手や足をぎゅっとつかむ「把握反射」

把握反射でママパパの手を握る赤ちゃん

パーマー反射、手掌把握反射、足底把握反射とも呼ばれます。手のひらや足の裏に指などで触れると、指を丸めてギュッとつかもうと握り返してきます。この反射は将来的に「ものを握る」動作につながります

赤ちゃんは無意識的に行っている動作ですが、赤ちゃんの小さな手がパパやママの指を握り返してくれるのは愛おしさを感じる瞬間でもありますね。

把握反射はいつまで見られる?消失しない場合は異常?
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足を交互に出す「原始歩行」

原始歩行は自動歩行反射とも呼ばれます。両手で脇の下を持って体を抱き、足を床につけるようにして立たせると、まるで歩いているかのように足を交互に出します。これは意識的に歩いているわけではなく、足の裏に衝撃を受けて反射的な行動をとっているのです。

もともと人間としての基本的な歩く動作が脳にインプットされていることによって起きると言われています。
原始歩行をさせるコツは、赤ちゃんの動きのリズムと呼吸を合わせることです。赤ちゃんのご機嫌がよければ、何歩も足を踏み出してくれるでしょう。

手と目の協調性を育てる「非対称性緊張性頸反射(ATNR)」

仰向けの状態で赤ちゃんの頭を左右の一方向に向けると、同じ側の腕と足をまっすぐ伸ばし、反対側の腕と足は内側に曲がるように動く反射です。左を向いたときには、左手と左足が伸び、右手右足は曲がります。
この反射は腕と頭が関連して動き、腕は触覚、頭は視覚と関連した動きを行うことによって、赤ちゃんは距離感覚を確立し、手と目の協調性を育てます
生まれたときから見せる反射で、赤ちゃんが自分自身で動いて産道を通ることを手助けします。

足指の動き「バビンスキー反射」

バビンスキー反射があるか赤ちゃんの足を確かめる看護師

バビンスキー徴候などと言われることもあります。綿棒や指先などで、足の裏をかかとから小指のつめ先に向けてゆっくりこすると、足の親指がゆっくりと足の甲の方向へ曲がり、他の指は扇状に外側に開く反射です。

バビンスキー反射はサルの時代に木上生活をしていた頃のなごりだとも言われ、他の動物などから攻撃を受けたときに木をつかんで逃げるために人間が生まれながらにもっている本能的反射だとも言われています。

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中枢神経系の異常確認に重要な反射

バビンスキー反射は新生児の足の異常や、中枢神経系の異常の有無を確認する上で重要な反射です。1ヶ月健診などで確認されることもあり、新生時期にこの反射が出なかったり非対称に出るときは異常の可能性があると考えられています。

おっぱいを飲むための反射「追吸反射」「吸啜反射」

赤ちゃんがミルクを飲むための吸啜反射

赤ちゃんはおっぱいを飲まないと生きていくことができません。そのためママのお腹に中にいる頃からおっぱいをのむための準備を始めています。
それがおっぱいの方向へ顔を向ける「追吸反射」と口の近くにあるものに吸い付く「吸啜反射」です。

おっぱいの方向に顔を向ける「追吸反射」

追吸反射はルーティング反射や捕捉反射とも呼ばれています。口の周りに乳首や指が触れると、それを追いかけるように顔を向けて口に含もうとする反射です。

出産直後にカンガルーケアをしたことのあるママは、追吸反射を見せてくれた赤ちゃんもいるでしょう。誰にも教わっていないのに生まれたばかりの赤ちゃんが必死におっぱいの方向へ顔を向ける姿に愛おしさを感じたかもしれません。赤ちゃんは生きるための力を備えて外の世界に出てくるのですね。

口に触れたものに吸い付く「吸啜反射」

追吸反射と同様でおっぱいを吸うための反射として、吸啜反射があります。おっぱいを上手に吸えるように、口に触れたものを乳房だと思って唇と舌で吸い付く反射です。赤ちゃんの口元をくすぐると、指を吸ってくるので試してみましょう。

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頭を持ち上げようとする「引き起こし反射」

引き起こし反射で頭を持ち上げる赤ちゃん

引き起こし反射はわずかな期間だけ見られる反射です。仰向けの状態で両手首を優しく握り、ゆっくりと状態を起こしていくとそれに合わせて、まだ首が座っていないのに自分から肘を曲げて頭を持ち上げようとする反射です。赤ちゃんが頭を守る本能的な働きだと言われています。

おしりをプリプリくねらせる「ガラント反射」

ガラント反射はギャラン反射、ギャラント反射とも呼ばれます。背中の脊椎の外側あたりをなぞると、なぞった方に下半身を曲げて体をくねらせます。スーッと右側の背中をなぞると、プリッとお尻を右側に振ってくれます。
同じように左をなぞるとお尻を左に振ってくれるので、左右交互になぞるとお尻を左右にプリプリと振ってくれて、ついつい微笑んでしまうユーモラスな動作を見せてくれます!ガラント反射を繰り返すことで筋肉の緊張を高められ、体のバランス感覚を作るために重要な体の組織の発達を促すと言われています。

この反射は赤ちゃんが胎内で運動するときにすでに行っている反射で、赤ちゃんが産道を通るときにおしりが動くことで出産を手助けするために存在しています。

かわいいお尻プリプリ動画も話題です

ガラント反射の正しいやり方を知れば、意図的に反射を促して可愛い動画の撮影もできます。最近はお尻を左右に振る赤ちゃんのかわいい「ガラント反射」の動画も人気です。
赤ちゃんの体に負担をかけてしまうのでやりすぎは禁物ですが、医師など専門家付き添いのもと、ガラント反射を記録に残しておくのもいいでしょう!

はいはいの準備段階「対称性緊張性頸反射(STNR)」

コンセントが気になるハイハイ中の赤ちゃん

赤ちゃんが四つん這いになっているときに、頭が後ろに反ると腕が伸びて足が曲がり、前に向けられると腕が曲がって足が伸びる反射です。この動きは成長に伴ってはいはいの下準備になる大事な反射です。

転倒から身を守る「パラシュート反射」

大脳皮質中脳の発達が進むと見られるようになります。赤ちゃんをうつ伏せの状態で抱き上げ、頭を下にした向きで降ろすと、手を広げて体を支えようとする反射です。お座りの状態から後方や横に傾けると、両手を広げて自分の体を支えようとします。

赤ちゃんの頭は大きくて重たいので転びやすいですが転んだときに手を出して自分を守る行動がインプットされているのですね。

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原始反射は正常に発達している指標

生まれた頃から備わっている原始反射は赤ちゃんが正常に発達しているか知るための指標になり、原始反射が起きるような刺激を与えてみて赤ちゃんが反応したら、順調に発達している証拠です。

1ヶ月健診と3~4ヶ月健診では原始反射のチェックを行い、中枢神経の発達が順調かどうか確認します。
見られるべき反射が行われない、消失時期になっても消失しない、反射の表現に明らかな左右差が認められるなどから、中枢神経系の発達や成熟度など、脳障害や骨折などの診断の助けになることがあります。

原始反射はいつまで続く?

可愛い耳付き帽子をかぶった赤ちゃん

赤ちゃんの成長につれて、原始反射は必要なくなります。原始反射の優先順位が一つ下がり、より上位の脳がコントロールを行うようになるので、生後2~3ヶ月になると少しずつ見られなくなります。

原始反射が消失するメカニズム

原始反射は脳幹や脊髄に反射中枢があります。胎児の頃に出現して生後徐々に消失していきますが、脳の発達によって原始反射が消失すると考えられています。次第に中脳や大脳新皮質などの反応が優位となり、運動発達が飛躍的に伸びます。例えば、手の把握反射が消失する時期に意識的に手を動かすことが可能となり、足の把握反射が消失するときに歩行が可能になります。

健診時期のチェック内容、チェック理由

子供3人で撮影した記念写真

原始反射は出生後から2歳頃までの間、発達に合わせて様々な種類の反射が「出現」、「発達」、「統合」していきます。原始反射が統合せずに、発達が止まって原始反射を持ち続けると、大人になってからも生活に原始反射の影響を受けてしまいます。

そのため、定期健診で新生児特有の原始反射が備わっているかチェックすることで、中枢神経の発達が順調かどうかを確かめます。

1ヶ月健診

1ヶ月健診では「モロー反射」「把握反射」「原始歩行」「ガラント反射」をチェックします。4つの原始反射が正常に行われているか確認することで、中枢神経系の発達、成熟度の評価や異常の診断が行われます。

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3~4ヶ月健診

「立ち直り反射」をチェックします。体を傾けると元の位置に戻ろうとする動作があるか、神経や筋肉の協調や発達の具合を調べます。

原始反射を確認しすぎないように気をつけて!

赤ちゃんが正常に発達しているか不安になり、必要以上に原始反応のチェックをしてしまうかもしれません。しかし原始反射をやりすぎて赤ちゃんに無理な体勢や刺激を与えることはおすすめできません。赤ちゃんの骨や筋肉は大人に比べてまだまだ未発達。思わぬ怪我やストレスに繋がってしまうことがあります

原始反射が通常と違い心配になってしまっても、原始反射には個人差があるので発達に異常がないか心配しすぎないようにしましょう。不安なことがあるときは、定期健診のときにお医者さんに相談してみましょう。健診時にしっかりとチェックしてくれるでしょう。