赤ちゃんに湯冷ましを与えるのはいつから?必要なの?
湯冷ましとは、鍋ややかんで沸騰させたお湯を冷ましたものです。
粉ミルクを作る時にはお湯を使いますが、湯冷ましはそれと変わらないので、飲ませたからといって赤ちゃんの身体に直接、害を与えることはありません。
しかし、新生児や低月齢の赤ちゃんにとって、栄養と水分補給の主体となるべきは母乳やミルクです。湯冷ましを与えることで、母乳やミルクの飲みが悪くなってしまうという恐れはあります。
そのため、特に産院から指示がなかったのなら、あえて湯冷ましを与える必要はありません。特に生後3カ月までは体重の増加が心配なので、湯冷ましは控えておいた方が良いでしょう。
昔、赤ちゃんに湯冷ましが必要だった理由
「赤ちゃんに湯冷ましを与えた方が良い」と言うのは、恐らくは年配の方が多いでしょう。
なぜなら、粉ミルクが普及し始めた当時は、産院で赤ちゃんには湯冷ましを与えた方が良いと指導されていました。
それは当時の粉ミルクが現在とは違い、赤ちゃんにとっては多過ぎるたんぱく質やミネラルが含まれていたので、湯冷ましで少しでも薄めることができるようにという目的でした。
しかし、時代の流れと共に粉ミルクも進化して、今は母乳に近い成分から作られていて消化も良いのでわざわざ湯冷ましで薄める必要性はありません。
そもそも母乳や粉ミルクには、栄養補給と水分補給の両方の役割があります。赤ちゃんの水分量が足りているなら、あえて湯冷ましを与える必要はないのです。
赤ちゃんに湯冷ましを与えても良い状況
原則的には必要のない湯冷ましですが、赤ちゃんが母乳やミルクを良く飲んでいて体重増加に心配がない場合は、赤ちゃんに湯冷ましを与えても問題はありません。
特に消化の負担を考慮して、授乳の間隔を3時間以上開けなくてはいけない完全ミルク育児の際には、湯冷ましを飲ませた方が良いケースも存在します。
お風呂上りなどの水分補給
母乳やミルクから水分を摂取している赤ちゃんですが、お風呂上りや暑い季節などは大量の汗をかき、大人と同じように水分を必要とします。
ミルク育児の場合は、お風呂上りのタイミングで、ミルクを飲ませるように時間を調整している方も多いでしょう。しかし、激しく泣いたあとや発熱時には、赤ちゃんはやはり喉が渇きます。
こうした場合、熱いお湯や冷たい水を飲ませても胃に負担がかかるので、湯冷ましがちょうど良い飲み物となります。
離乳食の準備
母乳とミルクしか口にしてこなかった赤ちゃんは、離乳食など他の物を食べること抵抗を示す場合もあります。突然知らない味が口の中に入ってきてビックリしないように、毎日少しずつ湯冷ましをあげて慣れさせるのもひとつの方法です。
離乳食が始まると同じくらいの時期に歯が生え始めます。母乳やミルクを飲んだ後に口をすすぐ目的で湯冷ましを与える人もいるようです。
便秘解消のための手段
母乳やミルクだけ飲んでいる間はともかく、離乳食が始まるとどうしても水分摂取量が減り、腸内環境が変わるので、便秘になりやすい傾向があります。特に離乳食を始めたばかりの時期はなりやすいので、様子を見ながら、湯冷ましを飲ませてあげても構いません。
便秘がひどい場合は、湯冷ましに砂糖やオリゴ糖を混ぜて飲ませる方法もあります。糖分には腸内の便を軟らかくする働きがあります。赤ちゃんに与える場合、濃度は5%ほどが目安です。
赤ちゃんに飲ませる湯冷ましの作り方
湯冷ましとは、要するに「沸騰して冷ましたお湯」なので、難しく考える必要はありません。ただし、現在では水道水以外に、ウォーターサーバーのあるお家や浄水器をお使いの家も珍しくありませんので、それぞれの方法での作り方をお伝えします。
湯冷ましは基本は水道水でOK!
湯冷ましを作るときは、基本的に水道水を使って構いません。
水道水の塩素を除去するためには、10分程沸騰させる必要があります。5分でも良いと言われていますが、時間が短いと塩素が「トリハロメタン」という有害物質に変化する恐れがあるので、完全に抜くためには10分沸騰させれば安心です。
- ヤカンに水道水を入れて10分間沸騰させる
- 人肌になるまで冷ます。
以上で完成です。
そのままにしておくと雑菌が繁殖するので、保存する場合は魔法瓶を使用するのがおすすめです。1日で使い切るようにして、余ったら処分して、次の日は新しく作り直してください。
浄水器で湯冷ましを作る場合は沸騰させなくても大丈夫
ご家庭で浄水器を使用している場合は、沸騰させる必要はありません。水道水は浄水器を通過する際に塩素やトリハロメタンが除去されています。
ただし、浄水器の種類によっては完全に塩素を除去できない場合もあるので、お使いの浄水器の説明書で確認してみてください。またカートリッジの交換時期を超えている場合は、せっかく吸着させた塩素などが流れ出る可能性もあります。交換時期は必ず確認しましょう。
やはり気になるという方は、念のため、沸騰させることをおすすめします。蛇口から出てきた水は冷たいので、そのまま赤ちゃんに与えることはできず、どのみち温める必要はあります。
ウォーターサーバーで湯冷ましを作る場合はメーカーの指示に従う
最近は自宅にウォーターサーバーを置いている方も増えてきました。塩素が含まれていないお水もお湯も使えるので便利です。メーカーが「赤ちゃんに与えるときも、沸騰の必要はない」と謳っているのなら、そのまま使用して大丈夫です。
ウォーターサーバーのお湯の温度は、80度ほどです。温水と冷水を合わせて、人肌程度の温度になるように上手く調整してください。
ただし、浄水器と同じくメンテナンスや水の交換作業を正しく行っていないと雑菌が繁殖する可能性もあります。
ミネラルウォーターで湯冷ましを作るのは控えたほうがいい
実はミネラルウォーターで湯冷ましを作ることは、あまりおすすめできません。
ミネラルウォーターには、基本的にカルシウムやマグネシウムなどのミネラルが豊富に含まれています。赤ちゃんに与えるミルクや母乳は、十分に栄養バランスがとれており、ミネラルも赤ちゃんにとって必要量が含まれています。湯冷ましは母乳やミルクの補助的な飲み物なので、余計な栄養素が含まれていない方が望ましいのです。
ミネラルウォーターしかない場合は、軟水であることが条件
ミネラルウォーターには、硬水と軟水がありますが、湯冷ましを作る時はカルシウムとマグネシウムの含有量が少ない軟水の方が向いています。海外製のミネラルウォーターは硬水が多いので、注意してください。
ピュアウォーター(純粋)がおすすめ
赤ちゃんのためにペットボトルの水を用意したいときは、加熱殺菌済みで、不純物やミネラルを取り除いた「ピュアウォーター(純水)」を購入することをおすすめします。
赤ちゃんへの湯冷ましの飲ませ方
始めは湯冷ましを小さなスプーンですくって舌の上に乗せてあげるか、哺乳瓶に入れて飲ませてあげましょう。マグカップやコップが使えるようになれば自分で飲むようになります。
湯冷ましの適量は、月齢×10ml
水分不足を解消するためにあげる湯冷ましですが、水分の摂り過ぎも赤ちゃんにとって良くありません。母乳やミルクを飲まなくなってしまうと困りますし、胃液が薄まり消化作用を妨げたり、腎臓に負担をかけてしまう原因にもなります。
湯冷ましを与える時の適量は、1回につき月齢×10mlを目安とします。一気にあげるのではなく、まずは小さなスプーンで少しずつ飲ませてあげましょう。
赤ちゃんへの湯冷ましは「いつまででも」飲ませてよい
湯冷ましはいつまで飲ませていいのかと聞かれたら、基本的には「いつまででも」という答えが正解となります。
赤ちゃんも成長するに従い、お茶やジュースの味を覚えて、湯冷ましには興味がなくなります。しかし、湯冷ましには余計な物が含まれていないので、ずっと飲み続けることができれば健康的にも良いです。また無味無臭で食べ物の味に影響しないので、食事の際の飲み物として習慣付けるのもおすすめです。
湯冷ましの代わりになる「麦茶」
赤ちゃんに与える飲み物としては、湯冷ましの代わりに麦茶でも代用可能です。ただし、湯冷まし同様、離乳食開始前は、母乳やミルク以外の飲み物を与える必要はありません。「あくまで水分不足が心配な時に、少量飲ませても構わない」というだけの話です。
最近はベビー用の麦茶が市販されており、生後1か月から飲ませられる商品もあります。普通の麦茶を飲ませる場合は、しっかり水を沸騰させたうえで麦茶を煮だし、湯冷ましで3倍以上薄めて飲ませてあげてください。
赤ちゃんが湯冷ましを飲まない時は無理に飲ませなくてもよい
赤ちゃんが湯冷ましを飲みたがらない時は無理にあげなくても大丈夫です。母乳やミルクだけで問題ありません。
ただし、完全ミルク育児で脱水症状が心配だというなら、まずは舌にほんの少量の湯冷ましをチョンと付ける程度から始めて慣れさせると、抵抗なく飲んでくれやすいでしょう。
赤ちゃんに湯冷ましをあげる際の注意点
湯冷ましを赤ちゃんに与える際には、タイミングや量などに注意しなければいけません。
与えすぎない
大人がカラカラに喉が乾いているからと言って、赤ちゃんも同じように喉が渇いているとは限りません。いくらお風呂上りや暑い日でも、与えすぎには注意が必要です。
湯冷ましでお腹一杯になってしまうと、栄養豊富な母乳やミルクを飲まなくなってしまい、栄養不足になってしまいます。
湯冷ましを与えるタイミングは、授乳時間との兼ね合いを考えましょう。もうすぐ授乳時間だという時には、湯冷ましを与えるのは避けた方が良いでしょう。
湯冷ましとミルクを混ぜない
水分不足が心配だけど、湯冷ましを嫌がるからと、ミルクを既定量よりも多いお湯で割るのはおすすめできません。
ミルクの味が薄いと、赤ちゃんはミルクが嫌いになってしまう可能性があります。あくまでもミルクと湯冷ましは別の飲み物として、認識させるような与え方をしてください。
赤ちゃんの喉を潤す湯冷ましは上手く活用しよう
現在では、湯冷ましは基本的に「赤ちゃんに与える必要のないもの」と見なされており、母子手帳にも記載がありません。
しかし、教科書通りにいかないのが育児というものです。特にいつでも授乳して良い母乳と違い、完全ミルク育児の場合には、次の授乳までの間に赤ちゃんの喉の渇きが気になる方もいるでしょう。
湯冷ましは、要するに「ただのお湯」ですので、赤ちゃんの体重増加に心配がないなら、与える・与えないを過度に悩む必要はありません。臨機応変に対応していきましょう。