小児科の選び方のコツを覚えておこう
かかりつけ医を決めておくことは大切です。特に予防接種や発熱等で病院に行く機会が多い乳幼児期には、小児科を1つに決めておく方が便利です。
熱を出す度に小児科探しから始めていたら、至急の手当てを受けられなくなってしまいます。また、小児科に行く度に、住所や今までの病歴、その他の問診に答えて診察券を作ってもらうのも、効率的なこととは言えません。
乳幼児期、学童期には、一度感染したら抗体ができ、滅多に2度目の発症はない病気もあります。カルテなどの病歴は非常に重要です。
では、どのようにかかりつけの小児科を選ぶことができるでしょうか。
小児科選びのポイントを10個紹介します。
1.自宅からの距離は徒歩圏内がいい
どんなに最新の設備を備えている小児科でも、キレイなことで評判の小児科でも、自宅から遠い、行きにくい場所にあるなら気軽に通うことはできません。専門性の高い疾病や症状のときには別の病院・クリニックを利用するとしても、日常的な診察や治療、予防接種には通いやすい小児科がベストです。
できれば、徒歩圏内にある小児科が良いです。具合の悪い乳幼児を抱えて、電車やバスに乗るのは一苦労。いざという時にタクシーを利用するにしても、近いに越したことはありません。
歩いて通える場所に小児科がない場合、近くの小児科が良くない場合は、車などの交通手段を使えば便利に通える小児科でもOKです。
2.医師との相性が親子ともに良い
医師も人間ですから、患者との相性というものが存在します。優しく穏やかな話し方に好感を持つ方もいれば、もっとテキパキと診察して、的確に指示してほしいと考える患者さんもいます。
親は子供のこと、特に体調面に関しては神経質になるものですから、自分との相性が良い先生を選びましょう。
もちろん、子供にも医師との相性があります。慣れない病院で緊張するのは無理もありませんが、医師を前に極端に委縮したり、素直に言うことを聞けないなど、「怖い」「嫌い」という態度を示すことも珍しくありません。
小児科医は、今後の付き合いが10年以上に及ぶことも少なくありませんので、話していてしっくりとくる医師、子供も素直に言うことが聞ける医師を選ぶようにしてください。
3.予防接種の予約がしやすい
子供は小学校へ就学するまでに、多くの予防接種を受けなくてはなりません。肺炎球菌やB型肝炎のように2回、3回と追加接種がある種類もありますので、特に3歳になるまでは予防接種のスケジュールは過密になります。
そのため、できればかかりつけの小児科は、予防接種の予約がしやすいことが望まれます。
例えば平日の日中のみしか予防接種を受け付けていない病院は、育休中は良いですが、職場復帰後に困ります。
その他にも、定期接種なら特に事前予約がいらない病院、数日前までの電話予約が必要な病院など、予防接種の対応は小児科によって様々です。
病院によってはスマートフォンやパソコンなどで予約できるシステム(オンライン予約システム)を採用していることもあります。ホームページなどで確認してみましょう。
4.薬の使い方に納得できる
「薬の使用は最小限に抑えたい」と考えている親御さんもいますし、反対に「薬を使用し、早く症状を抑えたい」と考える人もいるでしょう。もちろん、症状が重篤なときは医師の指示に従わなくてはなりませんが、そこまで重篤だと医師が判断しない場合は、このような「薬に対する方針」の個人差は認められます。
かかりつけの小児科を探すときに、薬への方針が納得できることもチェックしてみましょう。いつも予防接種ばかりの利用で、医師がどのような薬に対する方針を持っているか分からない場合は、ママ友などから評判を聞いてみるのも良い方法です。
5.病院と調剤薬局との距離が近い
小児科と調剤薬局が近いと、やはり通院時の負担が軽減できます。基本的には近くにあるものですが、小児科の場合、わざわざ薬局に行かなくても受付で薬を出してくれる院内処方は大きなメリットです。
薬剤師が信頼できるかも重要
小児科と同様に、薬剤師さんも信頼できる人が揃っているかがポイントです。
診察結果について改めて確認したり、薬を嫌がる子供は多いので「この薬はこんな食品と混ぜると飲みやすい」など飲ませ方をアドバイスしてくれたり、抗生物質を処方された場合は副作用の可能性についてもしっかり説明してくれる薬剤師さんなら、やはり安心感があります。
処方箋があれば基本的に別の調剤薬局でも薬は出してくれますが、別の薬局には在庫がないケースもあります。時には薬剤師さんが医師に電話で確認をとることもありますので、やはり常に小児科と連携をとっている調剤薬局が望ましいでしょう。
6.納得できる説明をしてくれる
子供が体調不良になると、親はとても心配し、神経質になるものです。体調面で気がかりなことがある場合、医師に質問をぶつける機会も多いでしょう。
ですが、「大したことないから」「子供にはよくあることだから」とろくに話を聞いてくれず、詳しい説明をしてくれない医師が担当医なら親は不安になってしまいます。
反対に、詳しく説明してくれるのは良いのだけれど、専門用語ばかりで理解しがたい説明をする医師にも困ってしまいます。親にとって分かりやすく、納得できる説明をしてくれる医師を選ぶようにしましょう。
7.受付や看護師さんたちが親切
子供にとって病院は、ちょっと怖い場所です。アルコールのにおいがしたり、泣き声が聞こえたり、包帯でぐるぐると腕や頭を巻かれた子供が座っていたりと、子供を怖がらせるには充分な条件が揃っています。また、診察室も怖い場所です。棒を口の中に入れられたり、注射器でさされたり、診察台の上で寝させられたりと、一瞬たりともくつろぐことができません。
病院に入った時点でおびえている子供たちが多いにも関わらず、すぐに怒ったり、命令口調や大きな声で話したりする看護師さんに迎えられたら、恐怖心はますます高まります。知恵がついてくると、「痛いって言うと病院に行かなくちゃならないから、黙っていよう」と痛みや辛さを素直に話してくれなくなることもあります。
できれば、子供が安心できるような優しい看護師さんが多い小児科を選ぶようにしましょう。かかりつけの小児科を「また行っても良いな」と思えるような場所にすることが、病気の早期発見・早期治療にも繋がるのです。
8.あまり混みすぎていない
日常的にお世話になる小児科は、あまり混みすぎていない方が望ましいです。
症状が重いときはできるだけ早く治療を受けさせてあげたいですし、具合が悪い状態で待合室で長時間待ち続けるのは子供にとって大きな負担です。疲労から、診察までにぐったりしてしまう子供もいます。
ただし、評判の良い病院だからこそ混んでいるというケースもありますので、予約システムがどうなっているか、症状が重い時には電話で受付をしてくれるかなど、どの程度、診察時間に融通が利くかもポイントです。
携帯やパソコンで自宅から予約がとれ、待ち時間を教えてくれるオンライン予約システムがある小児科なら、診察状況を見て、家を出られます。
病院に滞在する時間を短くすることで、感染症に罹患するリスクも低くできるでしょう。
9.一般外来と検診が分けられている
赤ちゃんや子供は抵抗力が低く、まだ実施していない予防接種もたくさんありますので、感染症に罹患しやすいです。予防接種や乳児健診と、一般外来との受付時間を分けている病院なら安心して通えます。
また、鼻水や風邪などの軽い症状で受診した際のことも考えて、病院内に隔離室が設けられており、水ぼうそうやインフルエンザ等、感染性の高い病気にかかっている疑いがある子供専用の待合室があった方が望ましいでしょう。待合室だけでなく、玄関から別口になっている病院は、さらに感染確率を下げられます。
もちろん、自分の子供がインフルエンザなどに感染した疑いがある場合は、他の子供に感染させないように病院側の指示に従い、隔離室や別玄関を利用しましょう。
10.緊急時に快く対応してくれる
特に緊急病院と距離がある地域にお住まいの場合、かかりつけの小児科が柔軟な対応をしてくれるとやはり助かります。夕方に急に高熱が出た際などに、まだ診察は続いているにも関わらず、「時間内に診察できる人数を超えましたので、受付は終了です」といった対応をされてしまうと、これから病院を探すことになります。
もちろん、医師や病院にも都合があるため、これらは仕方のない側面もあります。しかし、一方で、緊急用の携帯電話の番号を公開している小児科もあり、こうした病院や熱心な医師に出会えれば、子供の病気への不安も軽減されるでしょう。
また、入院や緊急手術が必要な疾患が判明した場合、かかりつけの医師がすぐに大病院や専門病院に連絡を取ってくれるなら、スムーズに緊急治療を受けられます。緊急時にはどの病院と連携するのか等、緊急対応がしっかりと構築されている小児科を選ぶようにしましょう。
小児科はいつまで通う?
小児科はいつまで通うのが一般的なのでしょうか。また、小児科では、子供たちがどのくらいの年齢まで通うことを想定しているのでしょうか。一般的な見解と小児科医の見解を見ていきましょう。
一般的には、小学校高学年までお世話になる家庭が多い
中学生や高校生になると、自分一人で病院に行く子供も増えますので、内科や整形外科、皮膚科等、専門の診療科の病院・クリニックに通うことが増えます。そのため、中学生~高校生の間で、小児科を「卒業」する子供が多いと言えるでしょう。
日本小児科学会が実施したアンケート調査によりますと、思春期の子供を持つ親の52.7%は「小児科に受診するのは15歳未満まで」と考えています。一方え、「18歳以上~年齢に関係なく(経済的に自立するまで)小児科を受診させたい」と考えている親も30.7%おり、家庭によって考え方にはばらつきがあることが分かります(注1)。
日本小児科学会では未成年すべてを対象患者としている
日本小児科学会の同アンケートでは、現役の小児科医に対しても、何歳までの子供が小児科に通うべきか尋ねています。小児科医の約58%は「18歳以上~年齢に関係なく(経済的に自立するまで)」の子供に小児科に来院してほしいと答え、その理由として、身体だけでなく心も大人へと成長する思春期には大人とは異なる心身両面のケアが必要なこと等をあげています(注2)。
とはいえ、約21%の小児科医は「15歳まで」を小児かかりつけ医の上限として考えており、その理由としては小児医療管理料が15歳までしか適応されないという法的側面があります。
日本小児科学会としては、小児科の診察対象を「子供が成人に達するまで」としており、15歳を超える子供もかかりつけの小児科に通うことを推奨しています。長く付き合える小児科医が見つかるなら、ぜひとも親と一緒に子供の成長を見守ってもらいましょう(注3)。
小児科を変更する時の作法
長く付き合っていきたい小児科が見つかったとしても、転勤やその他の事情により遠くへ引っ越さなくてはいけないときは、お別れしなくてはなりません。
今までのカルテのコピーをもらう
引っ越しの際には、今までのカルテのコピーをもらうようにしましょう。
風邪などの軽い感染症にしか罹ったことがないなら不要なケースも多いですが、持病があり頻繁に通院していたり、入院歴があったり、重篤なアレルギーやアトピーなどの症状がある場合は、次の治療をスムーズにするためにもカルテがあると便利です。
大抵の病院では電子カルテが採用されていますので、データとして受け取ることができます。次の土地でかかりつけ医を見つけたら、受け取ったカルテを渡しましょう。
良い医師を紹介してもらう
カルテを頂く際に、良い医師を知っているかどうか尋ねてみるのもオススメとです。医師同士にはネットワークがあり、実はお互いの評判も聞こえているものです。非常に離れた地域に引っ越す場合は紹介が難しくなりますが、近隣都市ならきっと良い情報を教えてくれるでしょう。
小児科の選び方は「信頼」できるかどうかがカギ
引越しなどの事情がない限り、10~20年は付き合っていくかかりつけの小児科。信頼できる医師や看護師に出会えたなら、子育ての大きな味方になってもらえます。
長く付き合って行ける病院なのか、話しやすい雰囲気なのか、小児科を選ぶときはしっかりと見極めて下さい。