小頭症の症状と原因
小頭症とはどんな病気?原因やジカ熱との関係、具体的な症状
小頭症という病気を知っていますか?赤ちゃんの頭が通常よりも小さい状態で生まれてしまう症状が代表的で、もともとは非常にまれ病気でした。しかし中南米でジカ熱が流行した結果、発症率が飛躍的に上昇し、問題となっています。小頭症の原因、ジカ熱の関係、リオ五輪後の日本への影響を解説します。
小頭症とは?ブラジルで急増した小頭症はジカ熱が原因なのか?
リオオリンピックをきっかけにブラジルなどの中南米で脅威を振るっているジカ熱に関する問題が注目さえっるようになりました。
なぜジカ熱がそれほど問題になっているかというと、ジカ熱そのものの症状はそれほど重症化することはないのですが、ジカ熱が流行した地域で小頭症(しょうとうしょう)の新生児が増加しているからなのです。
こうした事態を受け、世界保健機構(WHO)もブラジルにおける小頭症やその他神経障害の急増が「国際的に懸念される公衆衛生の緊急事態」として、「流行国・地域への渡航・滞在に当たっては十分に注意をしてください。特に妊娠中又は妊娠を予定している方は、流行国・地域への渡航・滞在を可能な限りお控え下さい」と発表しています。
妊婦の方や妊娠を予定している方はジカ熱の流行している地域への渡航や滞在を控えるなど注意が必要です。
小頭症とはどんな病気?症状や原因は?
小頭症とは、本来は数千人に1人の割合で産まれるとてもまれな疾患です。
小頭症には、胎児の時点で異常が生じている先天性のものと、産まれてから頭蓋骨の成長に異常が出るために起こる後天性のものがあります。
先天性の小頭症は、同じ年齢や性別の赤ちゃんと比べて、頭の大きさがかなり小さいことと定義される新生児の奇形です。脳の成長障害と合併すると、小頭症の赤ちゃんは発達障害を起こします。小頭症には根本的な治療法がなく、発達障害などに対する治療や対策がとられます。
小頭症で産まれた赤ちゃんは脳が未発達になるため、体が適正に機能せず、病気かかりやすく深刻な場合は合併症を引き起こすなど寿命が短く大人になれないケースも多いようです。
後天性の小頭症は、厳密には狭頭症(きょうとうしょう)と呼ばれ区別される場合もあります。狭頭症は、通常赤ちゃんの頭蓋骨はくっついていない部分があり、成長に伴ってその部分が伸びて、頭が大きくなっていきますが、何らかの原因でその部分が早い段階でくっついてしまい頭が大きくならない病気のことです。
外見上は小頭症と同じように見えますが、狭頭症の場合は脳の機能は正常に保たれている場合が多く、脳が成長をするにしたがって圧迫されることで頭蓋変形や眼球突出、嘔吐などの症状が出てきます。赤ちゃんのうちに早期発見され、合併症などを起こしてなければ、手術によって頭の骨を切り離し、治療をすることができます。
小頭症の症状
小頭症の主な症状としては、下記のようなものがあります。
- 頭が異常に小さい
- 頭の形がいびつ
- 知能発達の遅れ
- 低身長
- 食欲不振
- けいれん発作
- 甲高い泣き声
小頭症の原因
小頭症は、下記のようなことが原因と考えられています。
子宮内感染
妊娠中に母親が感染症にかかることで、胎児にも感染してしまうことです。
トキソプラズマ、風疹、サイトメガロウイルス、などが原因と考えられています。
また、最近では、ブラジルなど中南米地域でジカ熱が流行し、小頭症で産まれる新生児が急増したことが問題となっています。米疾病管理予防センター(CDC)は、2016年4月13日にジカウイルス感染が小頭症及びその他の重要な胎児の脳障害を引き起こす原因であると結論づけたとする発表を行いました。
2016年6月17日現在、日本では海外で感染して、帰国して発症したケースが10例(南米の流行以降は7例)報告されています。国内での感染は、今のところ発生していません。
有毒な化学物質への曝露
ヒ素や水銀などの重金属、アルコール、放射線、喫煙の母体への曝露も原因と考えられています。
ダウン症のような遺伝的異常
遺伝による染色体の異常は、先天性の疾患の原因となっている場合が多く、小頭症に関しても原因の一つではないかと考えられています。小頭症の場合、遺伝子の一部が欠如しているのではないかという説もありますが、まだはっきりとは結論づけられていないのであくまで仮説です。
- 染色体異常の種類は染色体の数と構造の違いにより細分化されます。ダウン症や18トリソミーをはじめとする染色体異常の種類とそれぞれの症状や胎児の異常の有無を調べる出生前診断について分かりやすく解説。
胎児期における重度の栄養失調
妊娠中の母親の早発型妊娠中毒症、高度栄養失調、喫煙、飲酒などが原因となって、胎児に十分な栄養が行かない場合。胎盤の異常によって胎児への栄養供給に障害が起こることで、極度に胎児への栄養が不足し十分に発育出来なかった場合も小頭症の危険があると考えられています。
小頭症とジカ熱との関係|妊婦が感染したら発症率は3割!?
ブラジルなどの中南米では、ジカ熱に感染した妊婦からは小頭症の赤ちゃんが産まれる確率が高くなると大きな問題になっています。WHOは、ブラジルにおける小頭症やその他の神経障害の急増が「国際的に懸念される公衆衛生の緊急事態」と宣言し、妊婦や妊娠を予定している女性、そのパートナーは渡航を控えるように勧告を出しています。
2016年8月にはブラジルのリオデジャネイロでオリンピックも開催されることから、感染拡大のリスクがあるのではと心配されています。
小頭症の原因となるジカ熱とはどんな病気?
米疾病管理予防センター(CDC)は、2016年4月13日にジカウイルス感染が小頭症及びその他の重要な胎児の脳障害を引き起こす原因であると結論づけたとする発表を行いました。
ジカ熱は、ジカウイルスによる感染症で、ジカウイルスは蚊によって媒介されます。ジカ熱に感染しても約8割の人は症状がなく、感染したことにも気が付かないようです。発症した場合の症状は、軽度の発熱や筋肉痛、関節痛、頭痛、発疹、結膜炎、まれに嘔吐や下痢、腹痛などの症状が出ることもあるようです。症状はそれほどひどくなく、4日~1週間程度で症状がおさまります。
問題となっているのは、ジカ熱そのものの症状より妊婦が感染した場合の胎児へ与える影響です。妊婦がジカ熱に感染すると、感染した妊婦から産まれる赤ちゃんの3割が小頭症を発症するとも言われています。
2016年5月5日のAFP通信社の記事によると、ブラジル当局は、ジカウイルスへの感染が原因とされる小頭症の新生児が2015年の10月以降、計1271人と増加したと発表しています。
日本での感染の報告はありませんが、日本のほとんどの地域の藪、庭、公園などに生息しているヒトスジシマカという蚊がジカウイルスを媒介することがわかっています。中南米でジカ熱に感染した人が帰国後に蚊に刺された場合、その蚊が別の誰かかを刺せばジカ熱に感染する恐れがあります。
妊婦の方は蚊が多い場所に際、肌の露出を控え、虫よけスプレーなどの対策をし、なるべく蚊に刺されないように注意をしておいた方が良いでしょう。
殺虫剤が原因という説は本当か?
アルゼンチンの「環境と健康に関する大学連盟(REDUAS)」によると蚊の幼虫駆除剤として使われているピリプロキシフェンとブラジルで急増した小頭症の関連づけた報告が出されました。
同団体に所属するアルゼンチン・コルドバ大学の小児科で新生児の発達に詳しいメダルド・アビラ・バスケス氏はREDUASが主張を裏付けるための実験および疫学調査を一切行っていないと認めたものの「われわれはピリプロキシフェンが問題である可能性が高いと考えている」と述べています。
しかしこの発表に対して、ブラジルと米国の保健当局はピリプロキシフェンの使用と小頭症との関連を示す科学的根拠は一切ないと主張しています。
また、ピリプロキシフェンを製造する住友化学も小頭症とピリプロキシフェン使用との関連を一切否定しています。
ピリプロキシフェンはフランス、デンマーク、スペイン、トルコ、ドミニカ共和国、コロンビアなどほかの国でも使用されており、広範な試験の結果、発がん性はなく、神経ダメージや生殖能力にも影響がないことが示されていると主張しています。
小頭症の検査方法と診断方法
小頭症は、胎児の段階で発見できることもあれば、出生後に診断される場合もあります。しかし、出生前は、できる検査は限られており出生後にはっきりと診断されることが多いようです。
エコー検査と産後検査
小頭症は、胎児を超音波検査することで診断出来る場合もあります。妊娠28週くらいで診断できる可能性が最も高くなりますが、診断ができないケースも少なくありません。
出生後は、24時間以内に頭囲を測定し、WHOの成長基準と比較されます。赤ちゃんの妊娠期間、身長、体重を比較し結果が出ます。小頭症の疑いがある場合は、小児科医によって脳の画像診断が行われ、乳児期早期は、毎月頭囲を測定し成長基準と比較されます。また、血液検査や尿検査なども行われます。
小頭症に対する治療法
小頭症に対する特別な治療法はありません。
小頭症に伴う知能の発達の遅れやけいれん発作、難聴、視覚障害などに対する治療や対策がとられます。学術チームが赤ちゃんを評価し、医療支援がされることが大切で、早期に刺激や遊びのプログラムを取り入れることで、発達に良い影響を与えられる可能性があると考えられています。
小頭症を予防するためには
リオオリンピック観戦を考えている妊婦の方、もしくは妊娠予定の方やパートナーはできるなら渡航を考え直した方がよいのではないでしょうか。リオオリンピックが開催される8月は、リオデジャネイロは冬場にあたるので蚊がほとんど生息していないため、影響はほとんどないという見解もありますが、可能性がゼロになるわけではありません。
ジカ熱だけでなくデング熱、日本脳炎などの蚊を媒介して感染するような感染症は他にもあります。日本はこれから蚊が発生する季節なので、なるべく蚊に刺されないように対策をしておきましょう。蚊が多くいそうな場所に出かける時は、長袖、長ズボンなどを着用し、肌の露出を避けた方が良いでしょう。室内では電機蚊取器や蚊帳、蚊取線香や網戸につかう虫よけスプレーなど使い対策すると良いでしょう。
また、蚊の繁殖を防ぐのも蚊に刺されない予防になります。蚊は庭の鉢植えの受け皿や空き缶、ペットボトル、古タイヤ、バケツ、ペットの餌皿、おもちゃなどにたまる水によく発生します。このような屋外に水がたまるものを放置せずに、片づけてしまうことも蚊の発生を防ぐのに効果的です。
妊娠中の方は、おなかの中の赤ちゃんが健康に育ってくれるように普段よりも体を大事にし、慎重に行動して下さいね。