ダウン症・18トリソミー…「染色体異常」の種類
染色体とは、両親からの遺伝子情報がたくさん詰まったもので、細胞の核ひとつひとつにあり、また1人1人それぞれ違います。その遺伝子情報が詰まった染色体は通常23対46本あります。
通常は23対46本ある染色体に、何らかの異常がある場合は染色体異常と言います。
染色体異常には、良く知られたダウン症と呼ばれる21トリソミー(21番染色体が3本ある)が有名ですが、染色体異常は染色体の数だけあり、トリソミー(重複、3本組)、モノソミー(欠失)などの種類があり、これらは妊娠超初期段階で着床が安定せずに起こる化学流産の原因ともされています。ダウン症は生存率の高い染色体異常ですが、染色体異常の多くは妊娠が継続できずに流れてしまいます。染色体異常とは何か、染色体異常の種類にはどのようなものがあるのか見ていきましょう。
染色体異常自体は病気ではありません!
染色体異常は細胞ひとつひとつに存在する染色体の構造異常であり、それ自体は病気ではありません。
しかし染色体異常を持って出生すると、それが原因で長く生きられなかったり、生存しても障害や疾患を引き起こしたり…等の問題を伴うことも。障害や疾患に対しては対処療法がなさることもありますが、染色体異常そのものは治療することは残念ながら出来ないのです。
妊娠が継続できなかった原因は胎児の染色体異常かも
妊娠初期に流産をすると妊婦さんに何か原因や病気があったのでは?と思われがちですが、全妊娠の15~40%が出産に至らず流産となるというデータもありますが、染色体異常を含め、子宮外妊娠など防ぎきれないあらゆる異常妊娠をみても、医療が発達した現代においても無事妊娠出産に至る経緯は奇跡的なもの。
ママが妊娠に気付かぬうちに流れてしまう化学流産も、妊娠初期の流産についても、実はそのほとんどがママ側に何らかの原因や病気があるわけではない「染色体異常」が原因、つまり胎児側に問題があるためとされています。
どういう原因で染色体異常が起こるのか…まだはっきりとした原因は解明されていまないのですが、一部は予防も可能とされています。
構造異常と数的異常は染色体の数分ある
染色体異常は染色体の構造異常と数的異常に分けられ、異常のある染色体の種類でもさらに分類されます。それぞれについてもう少し詳しくて見ていきましょう。
通常の染色体
常染色体は1~22番目の染色体、性染色体は23番目のX染色体とY染色体をさし、通常染色体の数は44個22対の常染色体にXY染色体(女性はXX)が2個1対、全部で46個23対あります。23番目の染色体は女の子だとXX、男の子だとXYの組合せになります。
数的異常(異数体)
染色体の一部または全部が欠陥している欠失、染色体の一部または全部が重なる重複があり、異数体とも言います。
通常23対46本で染色体は成り立っている常染色体 XY染色体のうち、1つの染色は1対2本でできていますが、染色体異常では1本だけになるモノソミーや3本になるトリソミーという症状が起きます。
トリソミー(重複)
染色体が重複している状態をいいます。2本1対となっているのが通常の染色体ですが、これが3本あるものをトリソミーと言います。染色体が部分的に重複する場合を部分トリソミーと言います。
3本組はトリソミーですが、4本になるものをテトラソミー、5本になるものをペンタソミーと言います。
モノソミー(欠失)
通常2本1対の染色体が1本しかない場合をモノソミーと言います。
部分モノソミーは、通常の染色体の長さよりも短い、染色体の一部が欠失した状態をいいます。欠失部分でまた種類が細分化されます。
構造異常
構造異常には染色体の上下が逆さになる逆位、ほかの染色体についてしまう転座などがあります。
転座
染色体の端が切れ、違う所にくっついてしまった状態です。
■相互転座
染色体の一部分が入れ替わってしまうことを言います。相互転座は、染色体のどこでも相互転座の原因となる切断は起こる可能性があります。位置は入れ替わりますが数に増減はないため、本人に症状は現れません。しかし妊娠した場合自然流産してしまうことがあります。
■ロバートソン型転座
ロバートソン型転座は13・14・15・21・22番目の染色体のみで発生します。短腕部分が切り離され、長腕部分同士が統合することによって生じます。
逆位
ある箇所で切断された染色体の断片が180°回転して再結合した状態をいいます。
対になった染色体の同じ腕内で生じる場合を「腕内逆位」と言い、動原体を挟んで生じる場合を「腕間逆位」と言います。どちらも遺伝子の数に増減はないので普段何らかの異常は起こりませんが、腕間逆位の場合は子どもに不均衡が生ずる場合があります。
その他の染色体異常
その他の染色体異常として倍数体が挙げられます。非常に稀な例ですが、参考までにご紹介します。
倍数体
通常精子と卵子では細胞分裂が正常に働けば23本ずつ染色体を持っていますが、受精で2セットとなり染色体が46本となります。これが3セット以上となるものを倍数性と言います。3セットだと染色体が69本、4セットだと染色体が92本となります。
主な染色体異常は13・18・21番トリソミー
染色体異常は1~22番目の常染色体に23番目のX染色体Y染色体のどの染色体にどのような構造異常があるかでも種類が区別されます。
染色体の数だけ染色体異常はありますが、一般的に知られているところでは、13・18・21番目の染色体でトリソミー(細胞分裂の過程で通常2本ところ3本の状態)。
そもそも染色体異常はその多くが妊娠継続できないもの、生存率の低いもので、そのほかの染色体には生命にかかわる遺伝子情報がより多く含まれているため、異常が起ると妊娠初期で自然流産するとも考えられています。
13・18のトリソミーも自然流産してしまうことが多く、出産に至らない、または生存率が低い染色体異常の種類ではあるのですが、それでも染色体異常全体の中ではまだ生存率の高い方であると言えるのかも知れません。
ダウン症としてよく知られる21番目の染色体異常は生存率が高い種類で、社会適応訓練などを受けている方も少なくありません。
染色体異常が原因の先天性の遺伝子疾患
染色体異常は新生児の200人に1に起こると言われています。そして染色体の数だけ染色体異常を原因とする疾患はあると言われていますが、生存率の極めて低いものも多いため実態の把握も左右されます。
ダウン症候群(21トリソミー)
ダウン症候群(21トリソミー)とは、21番目の染色体が2本1対のであるのが通常なものに対し、3本1対のとなっている染色体異常です。出生時に判明する染色体異常の中では、ダウン症候群(21トリソミー)が1番多いとされ、ダウン症候群の生存確率も伸びてきていると言われています。
イギリスの眼科医ジョン・ラングドン・ハイドン・ダウン氏が最初に論文で発表したことにより「ダウン症」正式には「ダウン症候群」と名前が付きました。
ダウン症を含め、染色体異常の原因については遺伝等の因果関係も指摘されますが、ほとんどのケースでは両親は正常な染色体をもち、「偶然に起こるもの」とされています。つまり現在のところは原因不明。ダウン症のリスクを上げる要因には高齢出産も指摘されていますが、実際の所は、母親の出産年齢に関わらずダウン症を含める染色体異常は誰にでも起こりうることなのです。
ダウン症候群には染色体の構造の違いにより、標準型、転座型、モザイク型が存在します。
■標準型(完全型)
ダウン症の9割は、子供の21番目の染色体が通常2本のところ3本になってしまう標準のトリソミー型。遺伝性の関連は薄く偶然起り両親の染色体は正常であることがほとんどだそうです。
■転座型
ダウン症の5%に起こる転座型は、21番目の染色体の一部分がほかの染色体(13番、14番、15番、21番、22番)に転座します。残りの半数は、両親のどちらかが転座染色体を持つとされますが、半数は標準型と同じく散発性の転座(偶然起こる)で、両親の染色体は正常であるとされます。
■モザイク型
ダウン症全体の1%と最も稀なタイプがモザイク型です。
正常な核(21番目の染色体が2本)を持つ細胞と染色体異常の21トリソミーの核を持つ細胞が混在しているケースで、標準型と比較すると症状が軽度です。やはり散発性の染色体異常とされ、通常は両親の染色体は正常です。
ダウン症の出生頻度・生存確率
ダウン症候群(21トリソミー)の子どもが生まれてくる確率は一般的に1,000人に1人の割合と言われ
ています。
ダウン症は生存率の高い染色体異常のひとつですが、それでも8割に達する赤ちゃんが産まれてこられないことから、ダウン症を持って生まれてきた赤ちゃんは他の条件がとても好条件だったのでは…と考えられています。
高齢出産との因果関係
母親が出産する年齢が上がるとともにダウン症候群の発生リスクもあがり、その確率は30歳で1/952、35歳で1/400、40歳で1/106、45歳で1/30とのデータも。
これにより高齢との因果関係が指摘されますが、そもそも偶発的に起こるダウン症を含める多くの染色体異常が起こる原因はわかっていません。また高齢出産はダウン症候群のみならず、妊娠出産にまつわる様々なトラブル率が上がるともされますので、ママや両親が自分を責める必要はありません。あくまでも確率が上がりますよ、という話でしかないのです。
散発性に起こるダウン症候群は基本的には両親の染色体は正常であり原因不明。
残念ながら出産に至らず染色体異常が原因で流産してしまう場合もありますが、ダウン症候群(21トリソミー)は染色体異常による疾患の中では生存率も高くなってきているようです。昔は平均寿命が20歳くらいと言われていましたが、現在はウン症候群の合併症に多い心臓疾患などへの、対応や治療ができるようになってきたため50代を超え生活を続けられるケースも増えています。
赤ちゃん~乳幼児の頃に見られるダウン症の特徴
■身体的特徴
- 目の外側が斜めに上がっている
- 生まれた時から瞼が厚いくっきり二重
- 鼻が低い
- 耳位置が低い場所にあり、丸まっている
- 首が太く短い後頭部が平ら
- 皮膚が柔らかい
- 舌が大きい
ダウン症を持つと小児の頃から上のような特徴がみられることが多いですが、中にはあまり顔に特徴が出ない場合もあるようです。またダウン症候群は感染症への抵抗力が弱いことから風邪、中耳炎、気管支炎などを発症しやすいとも言われています。
■発達の遅れ
確かに、知能や運動の発達に遅れも出ますが「ダウン症=知的障害、発達障害を持つ」とは少し違うようです。ダウン症候群の子たちはゆっくりマイペースではありますが、知能、運動ともに成長しています。
ダウン症候群の合併症として知的障害や、発達障害が出てくる場合もあり、もちろんない場合もあります。基本的には首が座る、お座りをする、ハイハイをする、立てるようになる、歩けるようになる、といった運動機能は遅れながらも出来るようにはなります。
知能の面に関しても覚えて理解することが少し苦手なところがあり、言葉の遅れもあるようですが、これもゆっくりなりに成長は見えるはず。
ダウン症児用の成長曲線を参考に
一般的な成長曲線などで比較してしまうと、成長がゆっくりであるのも確かですが、焦る必要はありません。どうしても気になるようでしたら、ダウン症候群の子用の成長曲線というのもあるようなので、かかりつけ医に聞いてみるといいかもしれません。
■社会適応力
ダウン症候群は上にも書いたように知能や運動の発達がとてもゆっくりです。しかし現在は医療や教育、療育といった面が進歩していて、学校の取り組みによりダウン症候群を持っていても普通学級へ通っている子もいます。
普通の子と同じことができるようになるにはとても時間がかかるかもしれませんが、1度覚えてしまうとそれが得意分野に変わったりもします。例えばダウン症候群の子たちは音楽が好きな子も多くいます。リズムにのることが好き、歌うのが好き…そんな特徴を活かしてダンスや歌を磨いているというケースも。
興味があるものに対しては天才的な能力を発揮するとも言われているので、子供のペースで興味と向き合ってみるのが良いでしょう。
18トリソミー(エドワーズ症候群)
18トリソミー(エドワーズ症候群)とは18番目の染色体が2本1対なのが通常なものに対し、3本1対となっている染色体異常です。イギリスのジョン・エドワーズ氏に報告されたことにより、エドワーズ症候群とも言われています。出生時の異常の中では、ダウン症候群の次に発症の確率が高いと言われています。
発症頻度は6000に1人、男女比は女性3男性1の割合で出生すると言われています。女の子の方が多い理由は女の子の方がこの染色体異常に強く、成長が可能であるのに対し、男の子はこの染色体異常に弱く自然流産してしまうことも多いからだそう。18トリソミーと気づかず流産になっている場合もあると言われています。他の染色体異常と同じく18トリソミーが起る原因も未だはっきりとしたことがわかっていません。両親の染色体はほとんどの場合が正常です。
出生頻度・生存確率や特徴
18トリソミーの出生頻度は6000人に1人。妊婦健診時の超音波検査などでわかることもあります。自然流産となる可能性も高くあり、妊娠初期の場合は気づかないこともあるようですが、症状として胎動が弱い、羊水が多い、子宮が小さい、赤ちゃんの発育が遅いなどということから診断されることもあります。
産まれてきたとしても生後1年まで生きられる確率が10%未満ともされ、出生時の体重は低体重で、全体的な発育不全をきたします。先天性の心疾患を持って生まれてくることがほとんどで、それが生命に重要な影響を及ぼすことも。
13トリソミー(パトウ症候群)
13トリソミー(パトウ症候群)は13番目の染色体が3本1対にとなっている染色体異常です。これも偶発的に起こり、ほとんどの場合が両親の染色体に異常はありません。
超音波検査などで、発育の遅れなどがあると13トリソミーや18トリソミーを疑われることもあります。脳や心臓の合併症が起りやすく、そのため痙攣、知的障害、精神発達の遅れなどが起こる可能性もあります。
出生頻度・生存確率や特徴
13トリソミーの出生頻度は20000人に1人。自然流産になる可能性が極めて高く、産まれてきたとしても、生後1年まで生きられる確率は10%以下、重度の知的障害、身体的な先天性疾患を併発する可能性がほとんどと言われています。
5pモノソミー(猫鳴き症候群)
5pモノソミーは5番目の染色体の一部が欠損、転位することで起こり、発症頻度は50000人に1人。幼児期の猫のような泣き声が特徴で、猫鳴き症候群とも呼ばれます。この泣き声は成長するにあたって見られなくなりますが、重度の知的障害を持ちます。
頭が小さい、目の間隔が離れている、目の形がアーモンド状といった顔の特徴がみられます。心疾患、低体重、指先の奇形や知的障害、多動、攻撃的といった特徴もあります。重度の合併症などがない場合は平均寿命まで生きることができます。
5pトリソミー
5番目の染色体の短腕の本数が多い、または重複することで起こる染色体異常です。発症頻度は25000人に1人です。
4p-症候群
4番目の染色体の一部が欠損していることで起きる染色体異常です。50000人に1人の確率で出生し、女児に多いと言われています。脳波の異常により転換や痙攣が見られ精神的発達障害や知的障害も見られます。
8トリソミー モザイク症候群
8番目の染色体の短腕の本数が多い、または重複することで起こる染色体異常です。発症頻度は25000~50000人に1人。本来13、18、21番以外のトリソミーは致命的とされますが、モザイク型は正常な部分と染色体異常の部分と両方を持ち合わせているため、出生に至ることもあります。
22q11.2欠失症候群
22番目の染色体の11.2という部分に欠失がある場合に起こる染色体異常です。
両院のどちらかが22q11.2欠失症候群の場合、子どもは50%の可能性で欠失が出ると言われています。様々な合併症がありますが、診断されないまま成人になっている方も多いようです。
クラインフェルター症候群(X・Y染色体異常)
クラインフェルター症候群とは男性の性染色体異常。
通常性染色体はXYが男性、XXが女性であるものに対し、クラインフェルター症候群はXXYといったようにX染色体が2つ以上重複したものです。
幼少期に診断される場合もありますが、子供を望むようになり、不妊治療をしたときなどに診断されることも多いようです。
出生頻度・生存確率や特徴
発症頻度は1000人~2000人に1人で、高身長、痩せ型、手足が長い、第二次性徴に発達がないため、ひげやすね毛といった体毛が全体的に薄いという特徴があります。糖尿病や甲状腺の低下などもあり、男性には珍しい乳がんになりやすいとも言われています。子どものころから病気がちになりやすく合併症お起こしやすい可能性もありますが、平均寿命まで生きることができます。
ターナー症候群(X・Y染色体異常)
ターナー症候群は女性特有の性染色体異常。上にも書いたように性染色体はXYが男性、XXが女性であるものに対し、2本あるX染色体の1本が完全に欠損または、部分的にない場合に起こります。
出生頻度・生存確率や特徴
発症頻度は2000人に1人と言われています。よく見られる特徴が低身長です。性的発達が見られず、卵巣の発達が不十分、胸が発達しない、月経が起らないといった特徴も見られます。また知能は正常です。ターナー症候群で自然妊娠が可能な確率は10%未満ととても低いです。
スーパー女性(XXX症候群)
スーパー女性(XXX症候群)とは女性特有の染色体異常です。性染色体はXXが女性であるのに対し、XXXと1本多いことが原因です。原因は未だ解明されていませんが、受精児の細胞分裂の際に何らかの原因でXが1つ多くなることで起こると言われています。
出生頻度・生存確率や特徴
発症頻度は女児1000人に1人と言われています。ほとんどは身体的にも精神、知能的にも正常通り発達します。第二次性徴もあり、妊娠、出産も可能です。多少知能の遅れが出る場合があると言われていますが、スーパー女性症候群はほとんど治療の必要がありません。
スーパー男性(XYY症候群)
スーパー男性(XYY症候群)は男性特有の性染色体異常です。性染色体はXYが男性であるのが正常なものに対し、XYYとYが1本多いことで起こります。スーパー女性と同様で、原因は細胞分裂の際に何らかの原因でYが1つ多くなることで起こります。
出生頻度・生存確率や特徴
発症頻度は男児の1000人と言われています。身長が高いという特徴があり、多少の知能の遅れなどがありますが、スーパー男性症候群のほとんどは日常生活に支障もなく治療の必要もありません。子ども普通に作ることが可能で、障害もほとんどないので、大人になっても全く気付かないということもあります。
赤ちゃんの異常の有無を調べる「出生前診断」
出生前診断とは妊娠9週~18週頃までに行われる検査で、先天性異常や出産へのリスクは年齢とともに上がってくると言われる胎児の染色体異常などの先天性の異常を調べます。
エコー検査で兆候が見られるときに詳しい検査を受ける場合、35歳を過ぎての出産を控えている場合があるようです。受ける予定はないが出生前健診という名前を聞く方も多くなってきているかもしれません。出生前診断はどのようなものなのか見ていってみましょう。
非確定的検査
非確定的検査とは、染色体や先天性の疾患に異常があるかないかの確率を調べる検査で、あくまでも異常がある、ないと確定するものではありません。
■超音波計測/時期
妊娠11週目~13週目に受けることができます。NTがある場合染色体異常の可能性があると言われ、NT超音波検査の方法として活用されています。NTとは胎児後頸部浮腫と呼ばれ、首の後ろのむくみのことです。
通常の妊婦健診でも超音波検査はします。最近では胎児を3Dや4D画像で見ることができるように超音波も発展してきて、赤ちゃんの心拍や妊娠週数と赤ちゃんの成長具合は合っているかなどを判断できます。しかし通常の検査では見落としがちになるものもあるため、必要に応じさらに詳しく赤ちゃんを見るNT超音波検査で異常を持つ可能性を調べていきます。
■新型出生前診断(NIPT)/時期
妊娠10週目~22週目に受けられます。妊婦さんの血液を20cc採取し、DNAの断片を分離して検査をします。21トリソミー(ダウン症候群)、18トリソミー、13トリソミーを見つけられ、結果によっては再度羊水検査を受ける場合もあります。
母体の血液を採取するだけと、母子ともに負担が少なく流産のリスクもありません。しかし、保険適用がないので、費用は20万前後かかります。クアトロマーカーより格段に制度が高いのは事実ではありますが、それでも「確率」ですので場合によっては再度確定検査を受けることもあります。
■クアトロマーカーテスト(母体血清マーカーテスト)/時期
妊娠15週目~18週目に受けられます。妊婦さんの血液を少量採取し、血液中の4つの成分を測定し、胎児に染色体異常がある確率を出します。この検査で、21トリソミー(ダウン症候群)、18トリソミー、開放性神経管奇形の確率を知ることができます。しかしあくまでも確率なので100%胎児に異常があるかどうかは、その後確定検査を受けなければわかりません。
確定検査
確定検査とは非確定検査により、染色体や先天性の異常がないかの確率よって再度もっと詳しい検査方法で、確実に近い確率の結果を見る検査です。
■絨毛検査(CVS)
妊娠11週目~15週目に受けられます。胎盤の元となる絨毛組織を採取し検査します。羊水検査よりも結果が出るまでの週数が短いですが、流産率が高いデメリットもあります。また保険適用外なので費用も10万~20万程度かかります。
■羊水検査
妊娠15週目~18週目に受けられます。羊水中には赤ちゃんの細胞が含まれているので、羊水を採取して染色体や先天性の異常がないかを検査します。20秒ほど妊婦さんのお腹に針を刺して羊水を採取します。とても低い確率で流産のリスクもあります。
■FISH法
FISH法では21番18番13番の染色体異常と性染色体の異常を検出します。短時間で検出しますが100%ではないので、必須の検査ではありません。
■G-band法
1番から22番の染色体と性染色体の構造の異常を判定します。FISH法~およそ2週間後の検査となり、少し時間はかかりますが、FISH法より正確で、ダウン症候群の感度は99.9%で検出できます。
非確定検査と確定検査…検査の順番は?
非確定検査の超音波検査、クワトロテスト、新型出生前診断で先天性異常の確率が高いとされた場合、確定検査である羊水検査を勧められます。しかし羊水検査は低い確率で流産や破水といったリスクがあるのも確か。
また、非確定検査で陽性と出た場合も、羊水検査では異常がなかったという場合の方も多く、異常があった場合でも生むことを決めている方は無理にリスクがある羊水検査を受けなくてもいいかもしれません。病院では出生前診断を薦めることはできないため、そのあたりは、よく夫婦で話し合いをしてどうするかを決めましょう。
染色体異常とわかったら
赤ちゃんの染色体異常について調べている…ということは少なからずそのリスクを心配しているということかもしれません。染色体異常には様々な種類があり、それぞれで生存率や障害の程度も違ってきますが、やはり健常とは違う難しい問題は残ります。
授かった命に染色体異常がないかどうか、出生前健診を受けることも選択肢のひとつではありますが、受けるか受けないという点でも賛否両論はあるでしょう。また検査の種類も様々で内容によってメリットデメリットもあります。出生前健診を受ける前には医師や家族と納得する結果が出るよう、しっかり話し合いをしましょう。