K2シロップの目的と効果

K2シロップとは?赤ちゃんに飲ませる目的と効果

K2シロップとはなにか、どのような目的で赤ちゃんに飲ませるのか、いつまで飲ませるのか投与の回数やタイミングを解説。ビタミンKは体内で非常に重要な働きをしますが、新生児はビタミンK欠乏症に陥りやすいので要注意です。ビタミンK2シロップの必要性を理解しましょう!

K2シロップとは?赤ちゃんに飲ませる目的と効果

K2シロップとは?どんな目的と効果があるシロップなのか

赤ちゃんが生まれてしばらくすると、病院や助産院などで赤ちゃんにK2シロップ(ケイツーシロップ、ビタミンK2シロップと呼ばれることもあります)が経口投与されます。

実はこのK2シロップには、赤ちゃんの健康を守る上でとても大きな意味があるのです。
なぜ赤ちゃんにK2シロップを飲ませる必要があるのか、投与のタイミングや飲ませ方を解説します。

K2シロップとは

K2シロップのパッケージ

病院や助産院で赤ちゃんに一般的に投与されるK2シロップは、薬効分類名は「ビタミンK2シロップ剤」、薬品ラベルには「ケイツーシロップ0.2%」と記されています。主成分はビタミンK不足を補う「メナテトレノン」で、K2シロップ1ml当たりに2mg含まれています。

なお、その他の成分としては、安息香酸ナトリウム、クエン酸水和物、ゴマ油、水酸化ナトリウム、ソルビタン脂肪酸エステル、D-ソルビトール液、パラオキシ安息香酸エチル、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、香料で、安全性に配慮されて作られていますので、心配はいりません。

K2シロップの投与目的と効果

K2シロップを飲ませると、主成分メナテトレノンによってビタミンK不足を補うことができます。

ビタミンKの働き

ビタミンKは、血液を凝固させて止血する役割がありますので、不足すると体内で出血が起こりやすくなってしまい、重篤な場合は頭蓋内出血(頭蓋骨の中で起こる出血の総称)の恐れがあります。

また、骨の代謝にも効果を発揮しますので、丈夫な骨を形成する上でも欠かせない栄養素です。

新生児や乳児はビタミンKを欠乏しやすく、「新生児・乳児ビタミンK欠乏性出血症」を発症するリスクを抱えているのですが、K2シロップを飲ませることで新生児・乳児ビタミンK欠乏性出血症を予防することができます。

また、すでに「新生児出血症」や「新生児低プロトロンビン血症」に罹患してしまった場合にも、K2シロップは有効です。K2シロップを飲ませることで治療効果が期待できますので、症状に応じて服用量や飲ませる回数を調整して赤ちゃんに投与します。

新生児がビタミンKを欠乏しやすい理由

新生児を見つめる母親

生まれたばかりの赤ちゃんはビタミンKが不足しやすい状況にあります。それには、以下のような理由があります。

1.ビタミンKは胎盤を通りぬけにくい成分だから

止血効果と骨の代謝促進に欠かせないビタミンKですが、胎盤を通り抜けることが難しいという特性があり、胎児の時期に赤ちゃんの体内に豊富に取り入れることは期待できません。

2.赤ちゃんの腸内にはビタミンKを合成できる細菌が少ないから

出生直後も、新生児の腸内にはビタミンKを合成する腸内細菌があまり存在していないため、効率よくビタミンKを合成できません。

3.母乳に含まれるビタミンKが少ないから

母乳には、赤ちゃんの免疫を高める効果がある反面、ビタミンKはあまり含まれていません。そのため、母乳栄養の赤ちゃんは、ビタミンK不足に陥りやすい状態にあります。

4.赤ちゃんの肝臓機能が未発達だから

その他のビタミンK不足の要因としては、赤ちゃんの肝臓機能の未発達を挙げることができます。

赤ちゃんの肝臓はビタミンKを活用する能力が低いため、適切な量のビタミンKが体内にあったとしても、血液凝固反応に効率的にビタミンKを活かせません。

積極的にビタミンKを補充しておかないと、生体の維持に必要な程度に血液を凝固させることができなくなってしまうのです。

K2シロップの投与タイミング・いつまで飲ませるかの目安

赤ちゃんに哺乳瓶でミルクを飲ませる母親

K2シロップは「新生児・乳児ビタミンK欠乏性出血症」の予防を目的として投与されます。その場合は、出生直後から生後1ヶ月まで、3回経口投与されるのが一般的です。

一方で、新生児出血症や新生児低プロトロンビン血症の治療目的でK2シロップを投与するときは、1日1回、K2シロップ1ml(メナテトレノンに換算すると2mg)を投与します。症状によってはK2シロップの量を3ml(メナテトレノンに換算すると6mg)まで増やすこともあります。

【1回目】出生後、授乳が始まったとき

出生後、赤ちゃんに何回か授乳やミルクによる哺乳を行い、赤ちゃんの哺乳が確立されたのを確認してからK2シロップを投与します。1回に1ml(メナテトレノンに換算すると2mg)を投与します。

【2回目】生後1週間(母子の退院時)

生後1週間、もしくは母子の退院時のいずれか早い方のタイミングでK2シロップの2回目の投与を実施します。投与量は1回目と同様、1ml(メナテトレノンに換算すると2mg)です。

【3回目】生後1ヶ月(1ヶ月健診)

生後1ヶ月の頃、大抵の場合は1ヶ月健診時に3回目のK2シロップ投与を実施します。投与量は1回目、2回目と同様、1ml(メナテトレノンに換算すると2mg)です。通常はK2シロップ投与の回数は3回で、特に問題がなければ以後の投与は実施しません。

しかしながら、1ヶ月健診において今後ビタミンK欠乏の恐れがあると診断された場合は、定期的にK2シロップの継続投与が実施されるケースもあります。通常、治療のためにK2シロップを飲ませるときは、症状の経過にもよりますが、毎週1回、生後3ヶ月ごろまで飲ませるのが一般的です。

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K2シロップは助産院などでも必ず投与される?

病院や産科クリニック以外にも、助産院や自宅で出産するお母さんがいます。どこで出産する場合も、赤ちゃんにK2シロップは投与されるのでしょうか。

出生施設に関わらずK2シロップ投与は必須

病室の空のベッド

例え助産院などで出産したとしても、赤ちゃんへのK2シロップの投与は必ず実施されるべきですし、ほとんどの助産院が投与を行っているはずです。ただし、実態調査が行われているわけではないので、もし投与をしていない助産院で出産したとしたら、念のため病院に相談した方が良いでしょう。

K2シロップの投与を行っていない施設の傾向としては、特に自己治癒能力の活用をモットーとするホメオパシーを推奨している助産院が挙げられます。以前、ホメオパシーにおいて身体を丈夫にすると言われるレメディー(砂糖玉)を赤ちゃんに与えて、K2シロップを投与していないケースが判明し、結果として赤ちゃんに重篤な症状が起こったとして訴訟となりました。

その後、厚生労働省も、一部の助産院でK2シロップが赤ちゃんに投与されていないという事実を受け、「新生児に適切なタイミングでK2シロップを投与しないことは、新生児の頭蓋内出血リスクを高めるため推奨されない」と注意喚起を行っています。

自宅出産の場合は?

自宅で出産する場合も、生後まもなく(授乳を始めたタイミング)、生後1週間後、そして1ヶ月健診のタイミングで3回K2シロップを投与します。

自宅出産の場合、胎児と妊婦さんの健康を管理する目的で定期的に妊婦健診に行きますが、その際に、出生後のK2シロップの投与について医師に確認してみましょう。

K2シロップは保険適用?

「新生児・乳児ビタミンK欠乏性出血症」などの治療のためにK2シロップが投与されるときは、健康保険の適用対象内となります。

しかしながら、一般的には出生後のK2シロップの投与は、予防のために行われるケースが大半です。この場合は、保険対象外となりますので、生まれてすぐのとき、1週間後、1ヶ月後に投与されるときも実費が請求されます。

ただし、自治体によっては1ヶ月健診時のK2シロップ代が無料になることもあります。気になる場合は、お住まいの地域の保健所で尋ねてみましょう。

K2シロップの飲ませ方 

赤ちゃんを抱える女医

病院や産科クリニックで出産する場合は、最初のK2シロップの投与と退院時のK2シロップの投与は医療機関の看護師さんが実施してくれます。1ヶ月健診時のK2シロップ投与も担当の医師や看護師さんが実施してくれますので、お母さんやお父さんが赤ちゃんにK2シロップを飲ませるケースはあまりありません。

しかしながら、入院中のK2シロップの投与をお母さんに任せる医療機関もありますし、1ヶ月健診時の診断によっては自宅でK2シロップを飲ませる必要がある場合もあります。
お母さん・お父さん自身でK2シロップを飲ませるときの飲ませ方について見ていきましょう。

K2シロップの量の調整

通常は、1回にK2シロップ1mlを飲ませますが、低体重児や合併症を持っている赤ちゃんには量を調整して飲ませます。また、初回のみ、K2シロップをそのまま飲ませるのではなく、滅菌水で10倍程度に希釈して飲ませることがあります。

量を調整して飲ませるときや希釈するときは、かならず医師が指導をしますので、自己判断で量の調整や希釈を行わないようにしてください。

自宅でK2シロップを飲ませるときの飲ませ方

退院後に自宅でK2シロップを飲ませるときは、医師の指示に従って、適切なタイミングで適切な量を赤ちゃんに飲ませなくてはいけません。一般的な飲ませ方としては次の3つがあります。

スプーンで飲ませる

K2シロップをスプーンで飲ませる

赤ちゃんの口に入れやすい小型のスプーンを使って、K2シロップを投与します。スプーンにK2シロップを適量入れ、赤ちゃんの喉の手前に落とします。

あまりにも喉の奥に入れると吐き戻してしまいますし、手前に入れすぎると吐き出してしまいますから、歯ぐきの奥あたりを目安に入れるようにしてください。

哺乳瓶の乳首を使う

普段、哺乳瓶を使用してミルクを飲ませている場合は、赤ちゃんが慣れている哺乳瓶の乳首部分にK2シロップを入れて、そのままくわえさせて飲ませる方法もあります。

ミルクに混ぜて飲ませる

ミルクや湯ざましにK2シロップを混ぜて、哺乳瓶を使って飲ませることもできます。ただし、ミルクや湯ざましの量が多すぎると、赤ちゃんが飲み残してしまい、適切な量のK2シロップを摂取できません。

赤ちゃんが絶対に飲める分だけのミルクや湯ざましにK2シロップを混ぜるようにしてください。赤ちゃんがK2シロップが入ったミルクや湯ざましをすべて飲みきったら、哺乳瓶をしっかりと洗って乾燥させておきましょう。

自宅でK2シロップを飲ませるときの注意点

自宅でK2シロップを飲ませるときは、次の2点に注意をしてください。

K2シロップが赤ちゃんの口以外に入らないように注意

K2シロップが飛び跳ねて赤ちゃんの目や鼻に入らないように注意してください。特にミルクや湯ざましに混ぜて飲ませるときは、哺乳瓶のふたをしっかりと閉めてから振るようにしてください。

他の薬とは混ぜないように注意

赤ちゃんに他の薬が処方されている場合でも、薬にK2シロップを混ぜてしまうのではなく、別々に飲ませるようにしてください。

赤ちゃんの健康を守るK2シロップ!

赤ちゃんの健康を守るためには、適切なタイミングかつ適切な回数K2シロップを飲ませる必要があります。頭蓋内出血などの重篤な症状を予防するだけでなく、万が一、出血が伴う疾患にかかった場合も、適切な方法でK2シロップを投与しておくことで治療がスムーズに進みます。

自宅でK2シロップを飲ませるように医師から指示された場合は、用量や回数をかならず守り、赤ちゃんの健康を守っていきましょう。