赤ちゃんへのテレビの見せ方

赤ちゃんにテレビはNG?言葉の発達を促すテレビの見せ方

赤ちゃんにテレビは見せてもいい?ダメ?どうしても手が離せないとき、ぐずる赤ちゃんについ見せてしまうテレビですが、何気ないテレビ視聴は赤ちゃんの集中力の発達を妨げます。気になる言葉の発達への影響が実際はどうなのか、赤ちゃんに悪い影響を与えない見せ方はどのような方法か詳しく解説。

赤ちゃんにテレビはNG?言葉の発達を促すテレビの見せ方

赤ちゃんの発育にテレビはNG?赤ちゃんへの影響と見せ方

赤ちゃんにテレビは1日どのぐらいの時間視聴させていますか?「悪影響があるから見せない!」としている人もいれば、罪悪感を抱きつつ「忙しい夕方は長い時間見せてしまう」という方もいるでしょう。

赤ちゃんはおとなしく一人遊びをしていたと思ったら、「構って遊んで抱っこして~!」とグズグズし始めることも珍しくなく、ママは忙しい時間帯は赤ちゃんの遊びにいつまでも付き合えないことも珍しくありません。

「赤ちゃんにテレビは良くない」という話もよく聞かれ、いつも子守りにテレビを使うのも気が引けますが、テレビが赤ちゃんに与える影響とはどのようなことが考えられるでしょうか?

赤ちゃんへのテレビの見せ方

赤ちゃん(0ヶ月~12ヶ月の乳幼児)の発育にテレビが悪影響と言われる理由

何となく、「赤ちゃんにテレビは良くない」という印象を持っている人もいますが、そのイメージとはどこから生じるのでしょうか?赤ちゃんのテレビ鑑賞は、具体的にどのような影響があるのでしょうか?

言葉の発達、コミュニケーション能力への影響が懸念される

おもちゃで遊びながらテレビを見る赤ちゃん

日本小児科学会では、赤ちゃんに長時間テレビ視聴をさせることで、言葉や社会性の発達に遅れが出る可能性を指摘しています。こうした提言には以下のようなデータが拠り所となっています。

  • 長時間テレビを見ている赤ちゃんで、意味のある言葉が出るのが遅い子が多かった
  • 言葉や社会性の発達の遅れが、「テレビをやめることで改善した」例が多かった
  • テレビ視聴4時間以上の子は、4時間未満の子に比べて、1.3倍の割合で言葉の遅れが見られた
  • 赤ちゃんの近くで8時間以上テレビがついている家は、そうでない家に比べて2倍の割合で言葉の遅れが見られた

ただし、現時点では言葉の発達をテレビとだけ結びつけることは困難で(例えば「テレビを1日数時間も見せている家庭=親の語りかけが少ない」のでテレビが悪影響なのではなく語りかけの少なさが原因かもしれない)、まだ「実証的なデータがある」とは言える状態にはありません。

言葉や社会性の発達の遅れがなぜテレビのせいと言われるのか、その理由は大きく以下のようなものがあります。

「つけっぱなし」により人の話を聞く集中力が育たなくなる

ジャングルジムよりテレビに夢中の赤ちゃん

赤ちゃんはそんなにテレビに興味を持っていないから、つけているだけなら大丈夫!そう思っている人も多いのではないでしょうか?
赤ちゃんがテレビを見ていない状態で、つけっぱなしにしているだけでは実質的な「視聴」とはなりませんが、つけているだけでも良くない場合もあります。

「集中力」が育たないから、大切な言葉を聞き取れなくなる

「カクテルパーティー効果」という言葉を聞いたことがありますか?

人込みなどで、ざわざわしているところは他人の会話の内容はしっかりと聞き取れないものですが、自分の名前がどこかで呼ばれたような気がすると自分の名前だけ聞こえたり、または、ぼーっと電車に乗っていても、降りるべき駅の名前が案内されると「はっ」と気が付くこともあります。

このように、会話が聞き取れない雑音の中で自分が注意しなければいけない言葉へ反応することを「カクテルパーティー効果」と言うのですが、これは集中力を養うとともに身についてくるもの。

カクテルパーティー効果は、集中力のない子どもにはまだ身についていません。
テレビなどの雑音がある中では、ママが発している言葉だけを拾って聞くことができず、ママの声も雑音に紛れてしまうのです。

「ブルーライト」により寝なくなる・眠りが浅くなる

テレビ大好きっこの3兄妹

「寝る子は育つ」ということわざもある通り、赤ちゃんの成長には睡眠がとっても大切。でもなかなか寝なくて困っている、というご家庭もあるのではないでしょうか?

赤ちゃんがなかなか寝ない、眠りが浅いのは、テレビが発するブルーライトが原因の一つかもしれません。

大人でも、寝る前についスマホを見てしまってなかなか眠れなくなることがありますよね。これは、スマホの画面から発生しているブルーライトが原因。ブルーライトには、人を眠りに誘うホルモン「メラトニン」の分泌を抑制する作用があると言われています。

このブルーライト、スマホだけでなくテレビからも発生しているのです。夕方~夜にかけて赤ちゃんにテレビを見せると、ブルーライトを目に入れることで寝つきが悪くなってしまうかもしれません。

テレビは赤ちゃんに悪いだけでメリットはないのか?

赤ちゃんのテレビ視聴は、危険性ばかり取り上げられがち。もちろんただ漠然とテレビをつけっぱなしにしているとメリットはありませんが、使い方を工夫すると悪いことばかりではありません。

テレビそのものが悪いわけではなく、見せすぎ・ほったらかしがNG

とりあえずテレビの電源を入れる男の子

赤ちゃんにテレビを見せておいた結果に、言葉や社会性の発達が遅れてしまうのは、ひたすらテレビを見せっぱなしにして、赤ちゃんに語り掛けることもなくホッタラカシにしてしまったとき。

つまりテレビ自体に原因があるのではなく、赤ちゃんとの接し方を間違っているといえます。

日本小児科学会の研究では、テレビを見せっぱなしにされた赤ちゃんは、ママとコミュニケーションを取りながらテレビを見ていた赤ちゃんに比べて言葉の遅れが出る割合が2.7倍も高かったとのことです。

好奇心を育てるツールと使えば、発育に良い影響をもたらすことも可能

チラっとママの顔を見る赤ちゃん

テレビなら、日ごろの日常生活ではなかなか見せてあげられないものも、赤ちゃんに教えられます。例えば、ライオンなどの動物や、色々な種類の車、少し年上のお兄ちゃんお姉ちゃんが歌う姿など、テレビだからいつでも見せられるものも。

赤ちゃんがこうしたものに興味を持ち、指差しが盛んになるという場合もあります。そんな時は、赤ちゃんが興味を示しているサインを見逃さず、しっかり赤ちゃんの相手をしてあげましょう。

赤ちゃんが指差し、興味を持ったものの名前を教えたり、テレビに合わせて一緒に歌を歌ったりしてあげれば赤ちゃんの発育に充分役に立ちます。

赤ちゃんがテレビの内容を理解できるのはいつから?

テレビに映る映像に大興奮の赤ちゃん

赤ちゃんは、8~9ヶ月頃から、聞きなれた声や音に反応します。いつも同じ番組をかけているご家庭では、赤ちゃんが番組の声に反応するのを聞いて「この子、わかっているのかも?」と思うこともあるかもしれません。

8~9か月頃にテレビの内容までわかっているわけではありませんが、赤ちゃんは「いつも見ているもの」くらいには理解ができています。

赤ちゃんは、「自分が知っているもの」に喜びます。絵本も、知っているお話を何度も読んで欲しがりますよね。だから、いつも見ているテレビを見ると喜んでいるように見えるのです。

こんなテレビの見せ方なら言葉の発達を促せる!

イスにすわりテレビを凝視する赤ちゃん

「テレビやDVDから言葉を獲得することはできない」という説を耳にすることはよくありますよね。でも、見せ方を工夫すれば、言葉を獲得することも不可能ではありません。

実際、我が家の赤ちゃんは1歳頃から、普段見ているDVDで単語を覚えて、日常生活で発するようになりました。

赤ちゃんが言葉を覚える見せ方のポイントは次の3つです。

1.音声と映像が一致しているものを選ぶ
2.ゆっくりと聞き取りやすい音声で話しているものを選ぶ
3.同じものを繰り返し見せる

音声と映像の一致が重要な理由

テレビの中に興味の対象を見つけた赤ちゃん

例えば、天気予報を見ている時に「明日は晴れです」という音声とともに、テレビ画面に太陽が映ることはありませんよね。だから大人向けのテレビを見ているだけでは、「晴れている時にお空にあるもの=太陽」と赤ちゃんにインプットはされないのです。

赤ちゃんに言葉を覚えさせるためには、「晴れです」と言う言葉が聞こえると同時に、太陽が昇っている空の様子が映されなければいけません。

このように、音声と映像が一致するように工夫されたものを見せることが必要です。テレビ番組では難しいので、幼児向けDVDでこうした工夫がされたものを探してみましょう。

同じものを繰り返し見せる必要性

同じテレビの映像を面白がる赤ちゃん

大人は、同じものを何度も見ているとすぐ飽きてしまいます。だから赤ちゃんにも、つい色々なものを見せたくなりますが、赤ちゃんは必ずしも新しいものが楽しいわけではありません。

赤ちゃんはなぜ「いないいないばあ」を楽しく思うのでしょうか?それは、赤ちゃんが「向こう側にママが隠れていて、ばあ!というと出てくるぞ!」と「予想が出来ていて、予想通りの展開になる」ことが楽しいのです。赤ちゃんが予想できるようにするには、「繰り返し」が必要です。

赤ちゃんは、「楽しい!」という気持ちの中でものを習得していきます。だから、常に違うものが流れているテレビよりも、お気に入りのDVDのほうが言葉は習得しやすいのです。ただしDVDも、長時間視聴には気を付けてくださいね。

赤ちゃんにテレビを見せるときに守りたいルール

テレビが赤ちゃんに悪影響を与えないために、ルールを決めてテレビを見せるようにしましょう。

ママが相手していても、長時間視聴はNG!

面白いテレビに大満足の赤ちゃん

「ちゃんと話しかけながら見ているから大丈夫!」と、何時間もテレビをつけてしまうのはやっぱりNG。月齢が低いうちは、起きている時間はとぎれとぎれで全体的にもそう長くはありません。ですので、テレビをつけている時間が長くはないとはいっても、赤ちゃんが起きている貴重な時間のテレビ視聴が癖になっては、赤ちゃんとのコミュニケーションはどうしても少なくなります。

ここから、テレビがない環境よりも、テレビがついているとママから赤ちゃんへの語り掛けの頻度がなくなる、と言われるのです。

赤ちゃんの言葉を育てる教科書として有名な、「語りかけ育児」という書籍において、著者でイギリス言語治療士のサリー・ウォード先生は、テレビの視聴時間について次のように述べています。

  • 1歳まで:見せてはいけない(見せなくてもよい)
  • 1歳~3歳:1日30分まで
  • 4歳:1日1時間まで

自分の家でテレビをつけている時間がどれぐらいか、記録をつけてみるのもおすすめです。

番組選びは慎重に!赤ちゃんの興味や関心の対象を見つけよう

驚いた表情を見せる赤ちゃん

暴力的な番組や下品な番組を避けることは当然としても、何を見せてもいいというわけではありません。ニュース番組も、「殺す」「死ぬ」など、あまり赤ちゃんの耳に入れたくない単語が出てくるので見せないほうがベター。

赤ちゃんのことを一番良く知っているママが、赤ちゃんは今どんなことに興味があるのか、どんなことを新しく知ると喜ぶのか考えて、絵本を選ぶのと同じように見せる番組を丁寧に選んであげましょう。

必ずしも、子供向け番組だけが赤ちゃんにとっての刺激になるとは限りません。

赤ちゃんとテレビの関係に詳しい、発達心理学者の菅原ますみ先生のお子さんは、小さいころから子供向け番組には興味がなく、海の世界を映すドキュメント番組ばかり見ていたそうです。
その結果、高校生になっても生物学や海洋学といった分野に興味を示しているそうです。このように、赤ちゃんの世界を広げてあげられるような番組を選べるといいですね。

赤ちゃんに見せる番組の選び方・例

・乗り物が好きな赤ちゃん:乗り物が多く出てくる旅番組
・離乳食を食べない赤ちゃん:皆が美味しそうにご飯を食べる料理番組
・リズム感や音感を育てたいとき:ママも一緒に歌える音楽番組
・動物が好きな赤ちゃん:動物をテーマにしたバラエティ番組

テレビからの距離を測ってみよう!何メートル離れて見るべき?

ブラウン管のテレビを見つめる赤ちゃん

小さい頃よく、「テレビは3m離れて見なさいよ!」などと言われたことはありませんか。とはいっても、テレビから3m離れるのは、狭い部屋ではなかなか難しいですよね。

実際はどの程度離れて見るのが良いのでしょうか?
目安としては、テレビ画面の縦の長さの3倍離れて見るのが、映像を楽しみやすい距離だと言われています。赤ちゃんは1歳でも視力は0.3程度しかないので、あまり遠くからテレビ画面を見させると目を細めて見ようとするなど、無理をさせてしまうかも。

離れれば離れるほど目に優しいのかといえば実はそうではなく、見えづらいものを無理に見ようとすると逆に目に負担がかかって疲れてしまうこともあるのです。

どうしてもテレビに近寄ってしまう時は、ベビーサークルが役立つ

そうはいっても、テレビ台にかじりつくほど近くに寄ってテレビを見ている姿はやはり心配。近すぎても、発光する画面を見るだけでも目の疲れの原因になってしまいます。

赤ちゃんがテレビを見る距離をコントロールしたいときは、テレビを見る時だけベビーサークルに入れたり、赤ちゃんが自分で動かしたり脱出したりできない椅子に座らせておくようにしましょう。

赤ちゃんと一緒にテレビを楽しむときは、音量を小さくする

お気に入りのDVDを見る子供

テレビには色々なものが出てくるので、上手に見ればコミュニケーションの幅が広がる効果もあります。赤ちゃんに語り掛けながら、ごく短い時間テレビを楽しんでみましょう。

一緒に見る時のポイントは、テレビの音量はママの声よりも小さく設定することです。大切なのはあくまでママの語り掛け。ママの声を邪魔するほどの音量にしないようにしましょう。

テレビに現れたものには、指差ししながら名前を教えたり、音楽番組であれば手拍子したり、一緒に歌を歌ったりして楽しみましょう。

赤ちゃんがいる家庭のテレビ環境づくり

赤ちゃんが安全にテレビを楽しめるようにするには、お部屋の環境づくりも大切です。

大型テレビの転倒・落下に注意!

大型テレビに喜ぶ男の子と女の子

昔の小さなブラウン管のテレビと違って、今の薄型・大型のテレビは地震で転倒する可能性もあります。国民生活センターには、テレビの転倒に関する相談が数多く寄せられています。中には、「42型のテレビが地震で倒れ、液晶が粉々に割れた」というものも。

赤ちゃんが下敷きになってしまっては大変です。安全対策としては、以下のいずれかの方法が考えられます。

・テレビ周りに柵をつける
・転倒防止の粘着マットを敷く
・テレビ台にテレビを固定する
・壁にテレビを固定する(ひもなどを使用)

テレビをつけっぱなしにしないよう家族が注意を!

夜も寝ずにテレビを見る赤ちゃん

赤ちゃんが生まれるまでは、帰宅したらとりあえずテレビ、食事中は何となくテレビ。というご家庭も少なくないのではないでしょうか。特に何か見たいものがないのにテレビをつけてしまうことって多かったですよね。
赤ちゃんが生まれたら、その習慣は意識的に変えていきましょう。見たいテレビは録画して、赤ちゃんが寝たらパパとゆっくり見るなど、メリハリあるテレビ習慣を作りましょう。

パパも協力し、時にはテレビ視聴を我慢することも必要

帰宅後、何よりも先にテレビをつけてしまうパパは多いと思いますが、テレビの影響についてしっかり伝えて協力してもらいましょう。

食事中はテレビを消し、語りかけながら楽しむ時間に

離乳食をあげるときもテレビは必ず消しましょう。これは○○だよ、美味しいね。と語り掛けながら食事を楽しむことが大切です。

赤ちゃんの発育のため、テレビとは上手に付き合って!

赤ちゃんは、色々なものに興味津々。テレビ以外にも、見せてあげたいもの、感じさせてあげたいものはたくさんあります。

そうしたものに触れさせてあげる時間を減らさないためにも、テレビの時間は極力短くして、赤ちゃんと向き合ってあげることが大切です。

そうはいっても、ママも四六時中赤ちゃんにつきっきりになるのは難しいですよね。テレビを見せる際のポイントをしっかり押さえて、赤ちゃんに悪影響のないよう上手に付き合っていきましょう。