子供を「甘やかす」と「甘えさせる」の違いは何?
「甘やかす」とは、お菓子を何個も買ってあげるなど、ワガママを聞き入れるという印象があります。一方「甘えさせる」は、抱っこしてあげるなど、行動的なワガママを聞いてあげるという印象を受けます。どちらの甘えも必要で大切なので、ワガママ全てがダメな訳ではなく、「ダメな甘やかし」があるということを理解しなければいけません。
日常の生活の中で、「甘やかす」と「甘えさせる」の違いを常に考えて行動するのは、簡単なようで難しいことです。今回は、子供のしつけに必要な「甘やかす」と「甘えさせる」について考えます。
子供の成長に「甘えさせる」は必要かつ重要です!
子供に厳しく色んなことをやらせたいと思う人もいるかも知れませんが、甘えさせることは子供の成長にとても必要で、たっぷり甘えさせてあげることが重要です。どうして子供に「甘え」は必要なのでしょうか。
子供は些細なことで不安になるから
子供は大人より経験が少ないので、大人が気が付かないような些細なことで不安になるなど、寂しく思うことがあります。そんなときに、構ってほしくなったり認めて欲しいといった感情が出て、「〇〇して」と体を寄せてくるのです。そんなときは、「自分でしなさい」と突き放すのではなく、子供の感情を受けとめ甘えさせてあげましょう。
子供は不安や寂しさを感じにくいから
しっかり自分から甘えてくる子供は、今は甘えても良いかなダメかなと考えて、我慢もキチンと出来ています。無理な我慢をさせてはいけませんが、日頃少しの我慢をしている分、甘えるときもしっかり甘えられるので、不安や寂しさは感じにくいです。
人見知りの子供は外では緊張しているから
人見知りの子は外に出たとき、お母さんに隠れてしまいます。しかし、一見甘えているように見えても、実は人一倍気を使って緊張しています。なので、家に帰ると緊張がゆるんでお母さんに甘えたくなってしまうのです。
外で足にしがみつかれたり、暴れるのを止めるのに必死だったお母さんは、家でくらいしっかりしてよ!と思ってしまうかも知れませんが、ここはちょっと我慢して、しっかり甘えさせてあげましょう。家という落ち着ける環境でこそ、甘えさせることが必要です。
子供を甘えさせる場がないとどうなるか
甘えていい時期に沢山甘えて親の愛情を感じて育ってきた子供は、自分に自信がつき自立が早くなります。ですが、甘えられず我慢を強いられている状態で育ってきた子供は、親の愛情を感じられず自分の存在価値も確認できないまま、大人になります。
その為、大人になってから赤ちゃん返りのような状態になってしまったり、鬱などの深刻な状態になる人も多くいます。
抑圧により自己表現力が育たない
子供の頃、自分が意見を言っても親に評価されなかったり、ときには怒られてしまったりしてきた子供は、自主性・主体性が育たず自己表現が苦手になってしまいます。
その為、会社に入っても意見が言えないなど社会人になってからも影響が残ります。このことから、「甘えさせる」はとても重要だと分かるでしょう。
思春期以降に反動が来る
家の中や親の前では、お利口さんでいるように強いられてきた子供は、中学生・高校生くらいになると、その反動が出てきてしまうことがあります。
親の目の届かないところで望ましくない行動をとるなど、我慢してきた分を吐き出すようになります。裏表のある人間に育ちやすいのです。
子供をダメにするのは「甘やかす」だけの子育て
「甘え」は自立していく為に必要ですが、「甘やかし」は子供をダメにしてしまう危険があります。どんな行動が子供をダメにする「甘やかし」なのか、日頃の自分の行動を考えながら見て下さい。
子どもの言うことを何でも聞き入れてしまう
子供のワガママを「甘えさせる」と勘違いし、何でも聞き入れてしまっていると、我慢のオンオフが分からないまま育ってしまいます。そうなると、何か困ったことや問題に直面したときに、自分で考えて解決する能力が育たず、自分でどうにか出来ない子供になってしまいます。「甘えさせる」と「甘やかす」を勘違いしないようにしましょう。
子供に任せてやらせるべきことも親がやってしまう
子供にお手伝いや初めてのことをさせるときなど、理由は様々ですが親が手を出してやってあげてしまうことがありますが、これは良くありません。失敗を恐れて手伝ってしまう人もいますが、失敗は子供にとっては大きな成長であり、「次からどうすれば良いかな?」と考える力も養われるのです。
お母さんは子供が可愛いので、子供が少し困っていると手伝ってあげたくなるのは、よく分かります。しかし、子供にとっては初めてのことばかりですから、上手くできなくて当然です。失敗を繰り返して子供は生きるスキルを磨いていきます。失敗を見守ることも子供への愛なのです。
子供に責任を取らせるべきことも許してしまう
子供に言いたいことをそのまま言ってしまったり、時には叩いてしまったりという経験が、小さい子供がいるご家庭では1度はあるでしょう。そういうときに、いつまでも親だけが謝っていませんか。
子どもがしてはいけない事をした時は、自分のした行動がダメな理由を説明しそれを理解させ、自分の行動に責任を持たなければならないことを覚えさせてください。
「〇〇ちゃんの方が大きいから謝って」などは、ただ我慢をさせてしまっているだけで、責任を覚えさせる行動とは違います。こんなことをしたら「ごめんね」と自分で謝らないといけないんだと、理解させることが大切です。
子供がダメになるのは親が「甘やかす」と「甘えさせる」を区別していないから
「甘やかす」ことは避けたいですが、親がきちんと「甘やかす」と「甘えさせる」の区別をつければ、子供はしっかり伸びます。親の都合で子供が自分で出来ることを取ってしまったり、初めて経験できることなのに、してあげようという親の感情から子供が成長するチャンスを奪ってしまうのはやめましょう。
多少の甘やかしなら親子のコミュニケーションが図れるので子供の為になりますが、ただ「甘やかす」ことをするだけでは子供のためになりません。子供は、親が「甘やかす」と「甘えさせる」を区別していることをちゃんと気づいてくれます。「これって甘やかしかも…」と自分の行動に疑問を感じたら、一度立ち止まって考えてみるといいでしょう。
子供の「甘やかす」と「甘えさせる」こんなときどうする?
日常の中で、「実際こんなことが起きたら、どうすれば良いの?」と思うことがあるかも知れません。ここでは、子供扱いして甘えさせてあげて良いのか、いつも出来ていたことをしてあげると甘やかしになるのかといった疑問を解決していきます。
小学生になっても抱っこを求めてきたら
小学生にもなって抱っこしてだなんて…と言わずに抱っこしてあげてください。小学生でもまだまだ甘えたい時期です。ギュッと抱きしめて子供との会話を楽しみましょう。もしかしたら、体調がすぐれないのかも知れません。学校でイヤなことがあり、悩みを抱えているのかも知れません。
「今日は楽しかった?」と聞いてみて下さい。きっと、抱っこによる親の温もりを感じることで安心して心を開いてくれます。小学生の抱っこは、「甘やかし」ではなく「甘えさせ」です。
子供がいたずらをして親の気を引こうとしたら
してはいけないいたずらなら、してはいけないと教えてください。しかし、いたずらをしながら顔を何度も見てきたり、親のことを気にしながらいたずらをしているときは、親を求めているサインです。やってはいけない事が分かっているのにいたずらをして親の気を引こうとするのは、自分を見てほしいと思っているからです。
親子のコミュニケーションが不足していないか考えてみましょう。もしも子供が寂しがっているようなら、親子の会話を増やして下さい。スキンシップが足りないのなら、子供と一緒に遊んだり、膝の上にのせたりして「甘えさせ」てあげましょう。
「大好きだよ」「いい子だね」を言葉と行動で伝えることで、子供の心は安心で満たされていきます。忙しいからと言って、何か物を渡してごまかしたり、いたずらに対してガミガミ怒るという行動はしないように気を付けましょう。
いつもは出来ていたのに、ママ手伝ってと甘えてきたら
ちょっとくらい甘やかすことになっても、甘えてきた子供を拒否しないであげましょう。「じゃあ一緒にやろう」と言って、子供の様子を観察してみて下さい。単純にワガママで言っているときもありますが、子供なりに不安を感じていたり、構ってほしいと寂しく思っているときかも知れません。
一緒にやりながら「ここからは一人でできるかな?」と、一人でやるように促してみるのもいいでしょう。そして、一人でやっている様子を見守ることが大切です。子供の「甘え」をそのまま受け止めるのではなく、「甘えさせる」ことで「甘え」を減らしていくようにしてください。
子供が約束事を守らない時は
頭ごなしに約束を守りなさいと怒るのはやめましょう。怒るのは「甘やかさない」ことではないからです。子供が約束を守らない時に最初に考えなければならないのは、子供が約束を守れなかった理由です。
ゲームに集中しすぎてゲームは1時間までという約束を忘れてしまったのなら、時計のアラーム機能を活用するといいでしょう。夕食前にお菓子を食べないという約束を守らずこっそりお菓子を食べてしまったのなら、お菓子を保管する場所を変えればいいです。
親が工夫をすることで子供が約束を守らない状況を減らすことができます。子供は、大人のようにまだまだ厳格に約束を守ることができるわけではありません。その時々で親ができる工夫を考えてください。
また、約束事を決める時は、できるだけ自分に決めさせるようにしてください。「お菓子を食べるのは○○ちゃんの言うとおりに3時に決めるね」とすることで、責任感を持たせることができます。「甘やかさない」ようにするには、本人に決めさせることが有効です。
また甘やかして、と思われたくない・・・周りの目が気になるときは
バスや電車、スーパー、ファミレスなどで子供が騒ぐと、「甘やかしてるわ」と周りから言われることがあります。そんな時は、その場で子供を注意してください。公共の場では、大声を出したりはしゃいで走り回ってはいけない事を説明するのです。
周囲の目が気になりますが、必要以上に気にしなくていいでしょう。子供に注意をしている姿を見せることで、ちゃんとしつけをしていることが伝わります。外出先では、それだけでうれしくなって元気にはしゃぐ子供が多いですから、多少の割り切りも大切です。
子供の「甘え」は重要「甘やかし」も時には必要
とことん甘やかす親や、しつけといってまったく甘えさせてあげない親など色んな人がいます。「甘え」はとても重要であり、「甘やかし」もときには必要です。極端にするのではなく、こんなときは怒らず甘えさせてあげよう、これは手伝ったらダメだなと考えながら、区別をつけてあげましょう。
親がしっかり区別をつけることで、子供も学習していき、甘えても大丈夫なときと場所を考えられるようになっていきます。自立させるところは心を鬼にして見守り、きちんと甘えられる環境を作って、バランスよく育ててあげましょう。