1歳半健診の健診内容と流れ・チェック項目ごとの発達の様子の見方
1歳半健診では、体の成長や精神的・知能的な成長などを事細かにチェックします。1歳6ヶ月に行う健診のこれらのチェック項目で、発達に問題がある可能性が見つかることもあります。
健診は一般的には1時間半~2時間で終わりますが、どのような流れで実施されるのか、それらの健診項目では子どもの発達をどのように観察できるのか、また、どのようなことが分かるのかについて説明します。
1歳半健診で聞かれること・問診内容
1歳半健診では、問診内容や生活や行動に関する質問が多くなります。生活習慣や情緒面の発達、知能や運動面の発達を伺う質問が行われ、これらのチェック項目は計測と同様、子どもの心身の健康管理の面で重要な指針となります。
また、健診でのテストでは、普段はできていることでも「たまたま赤ちゃんのタイミングが悪くうまくできない…」ということもよくあります。
しかし、医師、保健師側も発達の個人差やそのときどきの赤ちゃんの調子があることも重々承知、たった一回のテストで何かを「判断」「断定」されることはありませんので、焦ったり不安にならなくても大丈夫です。赤ちゃんがリラックスして健診に挑めるように、パパママもできるだけ普段通り赤ちゃんと接してあげてください。
1歳半健診で聞かれる生活習慣に対する質問
生活習慣について、問診形式でいくつか尋ねられます。最後に必ず担当の保健師さんに質問する時間を設けられますので、気になることや分からないことなど、何でも積極的に質問するようにしましょう。
コップで飲むか
コップで水やミルクなどの飲料を飲むためには、目と手が連動して動かせるかがカギとなります。1歳になるまでに約88%の子どもがコップで飲めるようになりますので、1歳半頃にコップ飲みができないケースでは発達の問題が疑われます。
スプーンやフォークを使うか
コップで飲むのと同じく、スプーンやフォークを使って食べるには、目と手を連動して動かせるかどうかがポイントです。スプーンやフォークを1人で使って食べられない場合は、発達の問題が疑われます。
哺乳瓶を使っているか
1歳半を過ぎても哺乳瓶を使用し続けることは、虫歯発生を防ぐ意味からも好ましくないと考えられています。問診票において「はい」もしくは「時々」と答えた場合には、どのような状況で哺乳瓶を使用しているのかが尋ねられ、哺乳瓶を使用しないように指導されます。
食事のあとの歯磨き
食事の後の歯磨きは、1歳半の段階では大人がしっかりと実施してあげましょう。「いいえ」もしくは「時々」と答えた場合には、赤ちゃんが虫歯にならないために、毎日3回きちんと磨くように指導されます。
1日のリズム
赤ちゃんが健康的に暮らしていくためには、パパママが1日のリズムを規則的に保ってあげているかも重要です。特に起床時間と食事の時間、就寝時間は決まっていることが大切です。
- 赤ちゃんの生活リズム表を作ろう!タイムスケジュール例
赤ちゃんが生活リズムを獲得するにはパパママのサポートが必要不可欠!一日のタイムスケジュール例や月齢別の発達具合を参考にしましょう。生活リズム表通りにいかないとき、バラバラになったときの取り戻し方も解説。
睡眠時間
1歳半の赤ちゃんは、1日のうち12~14時間寝るのが理想的とされています。お昼寝は1回、1時間半~2時間程度、夜は10時間~12時間程度まとめて眠ります。睡眠時間が少ないと成長にも影響が出るために、保健師さんから指導があります。
1歳半健診で聞かれる行動についての質問
問診以外にも、赤ちゃんの行動について様々なことが尋ねられます。
上着を脱ごうとするか
赤ちゃんが室内と外を区別しているか、「暑いときは服を脱ぐ」ということが分かっているかなどが尋ねられます。自分で上手にできなくても、上着を脱ごうとする動作を行うことが大切です。
転ばずに一人歩き
バランス感覚や筋肉がしっかりと発達しているかが確認されます。子どもによっては筋肉がしっかりと発達していないで、すぐに転んでしまうこともあります。転ぶ頻度があまりにも高い場合は、股関節などのチェックをしてもらいます。
一般的に生後1歳半になるとほとんど転ばずに2~3mは歩けるようになります。2、3歩しか歩けない場合や立ったまま歩かない場合は歩行の発育が遅れ気味とは言えるものの、ひとりでしっかり立っているならいずれは歩き出すとも考えられており、深刻に捉える必要はありません。
手をつないで階段をあがれるか
1歳半なら、手をつないで階段をあがれても良い時期です。2歳になると1人で階段を上がり(左右の足を交互に同じ段に乗せる)、3歳になると1段ずつ交互に足を運ぶようになります。
1歳半健診で聞かれる情緒的成長に関する質問
情緒的成長や視力などについても尋ねられます。
目つきに違和感は?目線が合うか、お母さんを見るか
目つきに違和感がある場合、生後6ヶ月までに発症する「先天性内斜視」や生後1歳までに発症する「乳児内斜視」、「弱視」、「白内障」、「白色瞳孔」などの問題を抱えている可能性があります。
また、目線が合わない場合はこれらの疾病のため…と考えられますが目線が合わない原因には発達に問題があるケースもあります。他の項目などと合わせて診断していきますので、この項目に当てはまるからと言って即発達に問題ありと診断されることはありません。
人見知りはあったか
早い赤ちゃんでは生後5ヶ月頃から、遅い赤ちゃんでは生後1歳半頃から人見知りになります。人見知りの期間や反応の仕方は個人差がありますが、長い場合でも2歳までには落ち着くようになります。
人見知りはお母さんやお父さんなどの身近な人とそれ以外の人の区別が付くようになった証拠でもありますので、正しい成長の過程です。
後ろから呼ぶと振り向くか
主に聴力を問う質問ですので、後ろから呼んで振り向かない場合は「難聴」の可能性が疑われます。家族に難聴のものがいるか、先天性のものか周産期に髄膜炎にかかったためなのか、中耳炎や耳垢詰まり、麻疹などの後天的なものなのかなどなど、病歴を尋ねられます。
難聴でないときには、発達に問題があることを視野に入れます。
- 赤ちゃんの聴力の発達と新生児聴覚スクリーニング検査
赤ちゃんの月齢別の聴力の発達と入院中に行われる新生児聴力スクリーニング検査について、目的や検査の方法、費用や再検査を中心に解説します。また難聴と診断された場合の療育についても解説します。
1歳半健診で聞かれる知能的成長に関する質問
知能的な成長についても尋ねられます。
鉛筆をもって殴り書きができるか
「鉛筆でものを書く」ということを理解しているか?という知能面の発育だけでなく、鉛筆のような細いものや細かいものを指で上手に使って持てるかという運動機能の発達も見ています。
運動機能のテストでは鉛筆ではなくおはじきや小さなお菓子などで試されることもあります。持ち方やつまみ方に異常が見られる場合は、専門医に紹介されることがあります。
積み木を3個以上積むか
積み木のような片手で持てるサイズのものを親指と人差し指を使って適切に持てているか、指示通りの行動ができるか?を見ています。
そのときどきの赤ちゃんの調子で結果がばらつきそうなテストでもありますが、月齢16ヶ月~17ヶ月になった子の92%は、大人の言語による指示に従った行動ができると見られています。
くすぐり遊びや高い高い、ボール遊びで相手をすると喜ぶか
お母さんやお父さんへの愛着の感情は、生後6ヶ月~1歳の間の相互作用の結果育まれます。愛着のある人に遊んでもらうことで、特別な嬉しい感情を持つことが出来ているなら、母子関係・父子関係は正常に育まれていると判断できます。
くすぐり遊びなどの体を使った遊びに夢中になるのも情緒的な成長の証ですが、愛着行動が見られることも情緒的な健全な成長の証として捉えます。
人のまねをするか
模倣の対象が目の前にある場合、行動や発言を模倣する「即時模倣」ができているかをチェックします。成長の度合いが進むと、その場で模倣する「即時模倣」だけでなく少し遅れた時間に行動の模倣をする「延滞模倣」(お母さんの朝のお化粧のまねを、昼間の遊びの中でする等)も見られるようになります。
発達に問題がある子供の場合は、この「即時模倣」や「延滞模倣」ができるようになるのが、一般的な幼児よりも遅れます。
絵本を見て指さし
尋ねられていることは何かを理解していること、他者(質問している人)と物(尋ねられていること、絵本の中のネコの絵等)、自分(答える人)の関係を理解していることが前提となりますので、発達に問題があるかどうかをチェックする際にも重視される質問です。
3つほど尋ねたうち1~2の質問には答えてほしいところ。ですが、人見知りや機嫌が悪いために、家でちゃんと答えられているのに健診時は答えられないケースも十分あり得ます。
そのときには「家ではちゃんと指差ししますか?」と確認されることも。普段から「ネコちゃんはどこかな?」「ブーブーはどれか教えて」などと語りかけながら絵本を読むようにしましょう。
意味のある言葉を3つ以上
1歳半の時点では、意味のある言葉を2語以上習得しているかも聞かれます。意味のある言葉とは、次の3つの条件を全て満たす言葉を指します。
1歳半健診でチェックされる「意味のある言葉」
- 言葉と対象がしっかりとマッチングしていること。
【ママ】の場合幼児のお母さん1人のみを指し、似たような女性全てを指しているなら言葉と対象がマッチングしているとは判断しません。ただし、幼児語かどうかは問わない。 - 1音だけの言葉(ママを「マ」と呼ぶ)や喃語(アーアーなどの聞きようによってはママと聞こえなくもない言葉)は、意味のある言葉としては扱いません。
- 普段頻繁に使っていること。例えば、1日に1回ほどしか「ママ」と言わないなら、意味のある言葉として「ママ」を習得したことにはならないと判断されます。
- 赤ちゃんと喃語でコミュニケーション!言葉の成長を促すには
赤ちゃんの喃語は言葉としての意味は持たなくても言葉だけでなく心の発達に重要な意味を持ちます!月齢ごとの喃語発達の様子の動画を交えご説明。奇声のような喃語の理由やおしゃべりの少ない赤ちゃんへの心配も解説。
1歳半健診で実施される計測と診察
1歳半健診では言葉による質問だけでなく、身体的な成長を計測したり、聴診・触診でも発育や健康状態を確認していきます。
計測
まずは、一般的な身体測定です。身長や体重、頭囲、胸囲を測定し、発育曲線に従っているかをチェックします。正常よりも明らかに成長が遅い場合は栄養相談が実施されることがあります。
聴診・触診
額の上部の骨と骨の継ぎ目、「大泉門」は、一般的に1歳~2歳の間に閉じます。1歳6ヶ月の健診時に大泉門がきちんと閉じているかチェックされますが、1歳半でまだ完璧に閉じていなくても直接問題にはつながらないため、閉じていない場合は「2歳になったら再度チェックしましょう」と言われることもあります。また、心臓に雑音が入らないか、皮膚や性器は正常かなども1歳半健診のチェック項目となります。
歯科健診・歯磨き相談
歯垢を残さずにきちんと磨けているか(仕上げ磨き)、虫歯はないか、甘いものを極端に好む嗜好がないか等をチェックします。歯磨き指導も実施している自治体もあります。
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栄養相談
1歳半健診では食事や間食についての栄養相談も実施されます。平均よりも身長体重が小さめであるなど成長の遅さが気になるときは、子どもの食事量や嫌がって食べないときの対策を、逆に平均よりも太めが心配なら食事やおやつの量・与え方の見直しなど栄養面でのアドバイスをもらえます。
成長に問題がない場合でも、食事に関する疑問があるお母さん・お父さんは、積極的に栄養士さんや保健師さんに尋ねるようにしましょう。
発達に問題があるか気になるとき
1歳半健診で尋ねられた質問やチェックされた行動で、次のことに当てはまる場合は、発達に問題があることが疑われます。ただし、このうちのひとつに当てはまるからと言って即、異常だと判断されるのではありません。複合的に見て判断されますので過度な心配は控えましょう。
発達の問題が疑われる1歳半前後の子どもの特徴や行動
- お母さんやお父さんともコミュニケーションを積極的にとらない。
- 表情が豊かでない。
- 自分が欲しいものや興味を持ったものを指差ししない。
- お母さんやお父さんと遊びたがらない。一人遊びばかりする。
- 名前を呼んでも反応しない。
- 視線をなかなか合わせない。
- 偏食が激しい。
- 欲しいものがあるときに指差しをするのではなく、お母さんやお父さんの腕を掴んで、欲しいものをとらせようとする。
- 赤ちゃんが言葉を話しだすのはいつ?発達を促す語りかけのコツ
赤ちゃんの初めての言葉は、1歳前後の「まんま」が多いようですが、遅れも珍しくありません。いつ、どのように言葉を理解ししゃべるのか、言語習得の過程を解説し、赤ちゃんの言葉を引き出すコツをご紹介します。
子供健やかな発達のために健診は必ず受けましょう
身体的にも情緒的にも早く成長する子もいれば、ゆっくりと成長していく子もいます。個人差はあってもその多くはひとりひとりの個性であることも多いので、「うちの子はどこか変なのかも」とか「うちの子は成長が遅れている」と過剰に心配しないようにしましょう。
積み木を積んだり、絵本の中の物や動物、人を指でさしたりすることは、いつも出来ていても健診の会場では出来なくなってしまうことも多々あります。
普段から積み木や絵本になれていなければ、なおのことうまくできません。子供の健全な成長のためにも、普段から「くまさんはどこ?」などの指さしや「赤いつみきをちょうだい」など指示行動を意識して、積み木遊びや絵本遊びに取り入れておくと良いでしょう。
また、発達に問題がある可能性があったとしても、適切な療育で社会的な適応度を高めていけます。「問題を指摘されたくない」「他の子どもより劣っていると判断されるようで嫌」「他の子どもの中で浮いてしまいそうでイヤだ」などといった親の感情で、子どもの当然の権利(早めに適切な治療や療育を受けること)を奪ってしまうようなことがないようにしましょう。
我が子の苦手なことや得意なことを見極め円満にその子の成長ペースを掴むためにも、障害の有無やその可能性は早めに知っておくべきと認識しましょう。
1歳半健診は様々なことを確認する場でもありますが、「普通の範疇」を知り、今、自分の子どもがどの程度まで成長しているかを理解することも大切です。また、普段育児をしていて疑問や不安に思うことなどを質問できる場でもあります。「こんなことを聞いたら変かな?」と思うこともあるかも知れませんが、気負わずに気になることをどんどん専門家に尋ねてみても良いのです。