待機児童問題と戦うママの知恵
待機児童問題の現状と対策|子供を保育園に入園させる方法
待機児童問題はこれから働こうとするママや子供を産むことに不安を感じる家族にとって大きな問題です。問題の原因を知り国や地域として対策を取られているのか、現状は解決に向かっているのかを検証します。政策や厚生労働省の動きを知り、自分でできる対策を考えましょう。
待機児童問題とは?子供を保育園に入れるには
待機児童問題は、「子育て中だけどこれから働きたい」「今働いているけど子供が欲しい」と考えている女性にとってかなり不安な問題です。日本各地で問題視されており、今や保活に関する本が発売されるほどになります。厚生労働省も国として解決に向け「待機児童解消加速化プラン」という対策を掲げ、保育所の整備などによる受入児童数の拡大、保育士の確保、を図っている状況です。
2016年2月中旬に匿名ブログに投稿された「保育園落ちた日本死ね!!!」がネットを中心に話題となり国会でも取り上げられる騒動となり、「保育園落ちたの私だ」というデモ活動にまで発展しました。自分の子供を待機児童にしないためには現状を把握し、どんな保活をするべきなのかを紹介します。
待機児童問題とは何が問題視されているのか
待機児童とは、子育て中の親や保護者が保育所や学童保育などの施設に入所希望を出しても、保育関連施設が満員で入所できず、入所待ちの児童が発生している問題を示します。とくに0歳児から3歳児の児童や、4月ではなく、途中入所を希望する場合が入所困難とされています。
女性の社会進出が進む中、子供が待機児童となって、育休を延長せざるをえないママや、新たに働きたくても働くことができないママが増加している、と社会問題となっています。
保育関連施設の種類
保育園と幼稚園では設立の目的が異なり、受け入れる対象年齢、預かる時間、教育に対する対応、休暇の有無など大きな違いが多数あります。保育園とは親が働いている、病気などの理由により家庭内で十分に子どもを保育できない家庭に変わって乳児、幼児の保育を行う厚生労働省が管轄する「児童福祉施設」です。
保育園には大きく2種類があります。「認可保育園」と「無認可(認可外)保育園」です。
認可保育園
国が定めた認可基準(施設の広さや設備保育者の資格所持や人数など)を満たした保育施設で、保育料は自治体により異なり、世帯の所得に応じた軽減があります。自治体が運営する公立と企業やNPOが運営する私立があります。
無認可(認可外)保育園
認可保育所以外の保育施設です。無認可保育園は設備やルールに問題はないのかと不安を抱える人が多いですが、施設の広さや庭園がないなど一部が満たされていないだけの施設も多くあります。認可保育園に比べても値段が高い反面、教育に力を入れていたり、延長保育や夜間、24時間預かりなどの融通が利いたりと利点もあります。無認可保育に入園する場合、自治体によっては助成金が出ることもあります。東京都では認証保育所と呼びます。
他にも「認定こども園」という保育園と幼稚園を合わせた施設や自治体や国が助成して経営する有資格者や研修を受けた個人が保育する「家庭的保育事業 保育ママ」などがあり、幼稚園でも夕方まで預かり保育をしてくれる施設もあります。
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待機児童問題の背景 待機児童が多い原因は…
少子化なのに、待機児童が多いのはなぜでしょうか。いくつかの理由が挙げられます。まず、女性の社会進出の増加、雇用形態の変化による共働きの家庭が増えたことにあります。現在、25歳から44歳の結婚している女性の就業率は60%を超えています。全世帯数から見ても20%以上が共働き世帯となり、不景気により出産を機に退職するよりも働く選択をする女性が増えているのです。
また、核家族化が進み、親世代に子供を預けることができない点も原因の1つとなります。2015年段階で、児童のいる世帯のうち79%が核家族世帯となっています。このうち1人親世帯は7%と年々増加の傾向にあります。これらの状況が重なり、子供を預けなくては働けない家庭が増えています。しかし、その需要人数に対し保育関連施設や保育士が不足しているため受け入れることができず待機児童として入園待ちをしているのです。
待機児童数はどのくらい?
2015年9月の厚生労働省の発表によると、全国に待機児童は2010年から4年連続で減少し、2014年には21,371人まで減少していました。2015年には23,167人に増加していると発表されています。
増加している背景として、現状の国の対策により新制度の導入、サービスメニューの多様化が活発になったことで需要は増え、保育利用の申請者が大幅に増加したこと原因とされています。しかし、保育サービスを受けたいが申請をしていない児童が潜在的にはもっと多くいるともいわれています。
待機児童の数は都市部に集中
待機児童の多い原因からも分かるように就業率が高く、核家族化進む都市部に待機児童数は多い状況です。
- 1位:東京都 世田谷区 1,182人
- 2位:千葉県 船橋市 625人
- 3位:沖縄県 那覇市 539人
- 4位:大分県 大分市 484人
- 5位:宮城県 仙台市 419人
2015年9月に厚生労働省から発表された内容では上記のような順位となっています。やはり、都市部に集中していることが分かりますね。生活に便利で仕事も都市部に集中しているため、必然的に子育て世帯も都市部に集中する流れとなっています。人が集まっても新たに保育施設を造るにはスペースが足りない、子どもの声などの騒音に対する苦情が発生するなどの理由で造ることができないという悪循環のループが起こっています。
3位の沖縄県の待機児童の多さには、都市部とはまた違う理由があります。県民所得の低さから女性の就業率が他県と比べて多く、長期にわたり米軍占領の下に置かれた歴史から認可保育園の整備が遅れたことが要因とされ、人口比率で比べてみると沖縄は全国1位となっています。
都内の状況
東京都内の待機児童の状況はどうなっているのでしょう。2015年4月時点での東京23区のうち100人未満の地区は墨田区(76人)、文京区(69人)、荒川区(48人)、杉並区(42人)、港区(30人)、千代田区(0人)の6地区となっています。それ以外の地区では100人以上の子供が待機児童として登録されています。
待機児童の最も多い世田谷区では、保育施設を造ったけれど、保育士が足りないため、子供の受け入れ人数を増やすことができなかったという状況にあります。
保育士の労働状況
保育士はなぜこれほどまでに不足しているのでしょうか。実は、保育士資格は所持していても保育士として働いていない「潜在保育士」が60万人以上いると言われています。その理由として労働条件の悪さ、小さな子供を預かる責任の重さ、自分自身の子育てにより違う職に就くのだと言います。
国家資格であるにもかかわらず全産業の平均賃金よりも10万円も低い状況です。勤務先により異なるでしょうが、フルタイムで働いても手取りの月収が28歳の勤務6年目にもかかわらず月収14万円だと会見を開いて訴える現役保育士がニュースとなりました。
昇給も望めず、早朝保育や延長保育のサービスを充実させるために保育士は長時間労働やサービス残業、遅番などのシフト制と勤務形態も変化しました。
そのため、自分自身の子育てとの両立が難しくなり妊娠・出産を機に退職を選択するため、10年以内で辞めていく保育士が多く、人手が足りなくなりより一層の激務となります。
また、体調が突然悪くなる乳児や突然走り出す子供たちを預かり何人も同時に1人で見る重責に耐えられない、保護者からの過度な要求やクレーム対応という心への負担も大きい状況です。
国の対策は?
現在、2017年のピークまでに待機児童問題の解消を目指し、40万人の保育の受け皿を確保する「待機児童解消加速化プラン」を打ち出しています。計画としては2段階に分かれ、2013年から2015年までを緊急集中取組期間として、緊急プロジェクトを行っていました。
これは、意欲のある地方自治体に対し強力な支援を行い、保育の量拡大と待機児童解消を図る目的となっています。2015年には子ども・子育て支援新制度をスタートさせ、2017年までの2年間で更に整備を進める取組加速期間となります。
緊急プロジェクトの支援内容は5つに分けられます。
- 賃貸方式や国有地も活用した保育所整備(ハコ)
- 保育を支える保育士の確保(ヒト)
- 小規模保育事業など新制度の先取り
- 認可を目指す認可外保育施設への支援
- 事業所内保育施設への支援
場所の確保が難しい都市部では国有地を活用するなどの援助や費用補助をすることで保育所の整備をし、潜在保育士の復帰を促すための処遇改善と認可外で働く無資格者の資格取得の支援によって場所と人材を確保する内容となっています。
また、幼稚園でも預かり保育などの保育園の性質を持つ施設にすることで即効性のある受け皿確保を図り、認可外保育園から認可保育園に移行する場合の支援により、保育施設の数と質を上げるものとしています。
効果はでているのか?
保育拡大量は2013年、2014年で21.9万人となり、整備目標の20万人を上回る結果となっています。新サービスの導入にあたり、保育サービスを受けやすくなったことで、保育所等への申込者が急激に増加しました。
そのため、2014年の21,371人から2015年は23,167人に待機児童数も増加はしていますが、受入人数は確実に増加させています。横浜市や神奈川県、川崎市など待機児童ゼロの実現ができた都市や東京都大田区では613人いた待機児童が154人に減少するといった大幅な減少を見せる都市もあります。
待機児童にならないためにできる対策
待機児童にならないためにはどんな保活をするべきでしょうか。まず注意する点は早めにスタートすることです。保活中やらなければならないことはたくさんあります。子育ての合間に復職後の生活スタイルをどのようにするかを検討し、その希望にあった保育園を探さなければなりません。
役所に相談に行き、見学予約をとって保育園の見学に行き、希望通りか確認し、希望と異なるようであれば再度保育園を探さなければいけません。時間がかかる場合もあります。
無認可保育園などの場合、入園申請の提出した順番で入園が決定する場合もありますのでなるべく早く始めましょう。そして、地域の保育園の倍率を確認し、条件に合うようでしたら低倍率の保育園を希望するようにしましょう。この時、妥協できる点は妥協することも必要です。
他にも、居住地域にこだわらず、就業地域も視野に入れ保育園を探すことも対策としては有効でしょう。広く探すことでより多くの保育園に出会うことができます。また、審査基準が応募用紙だけでは伝わらないため、窓口の人に相談しながら本気度を伝えることも心情に訴えられます。
認可保育園入所までの流れ
地域の保育園の情報集め、役所への相談からスタートし、保育園を見学、選択をします。この選択の際には希望の保育園をいくつか選び、優先順位を決めます。入園申込、嘆願書の提出により市町村が入園の内定の可否を決定します。内定が決まると保育園と面接をし、入園説明会に参加して入園となります。
認可外保育園や幼稚園、認定こども園の場合は直接施設に入園申込をし、入園の決定も施設独自の基準により施設側が行います。
待機児童になりやすいパターンを知る
認可保育園の入園は「点数」によって決まります。基準の点数は自治体によって異なりますがおおよそは同じです。保育園は保育できない家庭の子どもを預かる福祉施設になるため、片親だけが働いている家庭、保護者がいる家庭は入園できません。両親が働いていても労働時間が短いと減点となります。
「片親である」「子ども人数が多い」などの保育の必要性が高い要素があると加点され、一緒に暮らしていなくても近くに祖父母が暮らしていると減点されます。その点数が高い順から合否が決定されます。
つまり、専業主婦が「働きたいから預けたい」と思っても、申請段階では働いていないので入園できないということになります。認可外保育園でも休職中に受入不可になる場合もあります。また4月に入園希望ではなく、途中入園の場合はさらに厳しい状況におかれます。入園する年齢によっても保活の難易度は異なります。
保活激戦区
人口の多い都市部は保活激戦区になりやすい地区になります。保育園に入れるボーダーラインは満点という場合も少なくありません。激戦区では「就労中」の保護者を優先的に入れるため「求職中」だと入園はほぼ無理だという状況があります。仕事が決まっても先着順で定員になり次第入園できず、せっかく決まった仕事を諦めなければいけないこともあります。
勤務形態はパートでもフルタイムを
認可保育園に入園するためには両親の就業状況が大きく影響します。夫婦の労働時間が2人とも8時間以上の場合は満点となりますが、1人でも8時間未満の場合、点数が減点となってしまいます。選考方法が条件による点数制になるので、1点でも多く点数を上げるためにはパート勤務だとしてもフルタイムで働いている方が有利になります。
1歳児入園が激戦
育児休業を利用して、1歳になったら働きだそうとするママも多いのではないでしょうか。しかし、1歳児の入園は難しい状況です。なぜなら、保育園側は0歳児で受け入れた児童の進級を優先するためです。そのため、1歳児クラスでは新規の応募がかなりの少人数になる傾向にあります。その少人数の枠に1年~1年半の育児休業を終えるママからの応募が集中するため、需要と供給のバランスは大きくずれます。
夕方まで預かってくれるところを探す
保育園の方が早朝や夜の延長保育の充実度は高いですが、幼稚園でも別途費用を払うことで預かり保育を行っている施設もあります。公立ではまだまだ少ないようですが、私立では増加しています。しかし、預かりの時間が解決しても保育料が認可保育園と比べて高かったり、入園年齢が3歳以上であったり、お弁当が必要であったりと条件に合わないため断念する家庭も多いのも現実です。
「子ども・子育て支援事業」の政策により「認定こども園」が増加しています。そちらでは年齢制限や条件などを設けず受け皿を広くしています。そちらを活用してみてはいいのではないでしょうか。
- 保育園の費用は世帯年収によっても違うケースがあります。人気のある認可保育園や最近増えている認定こども園、そして無認可保育園、気になる保育料を解説していきます。
勤務先にも理解してもらう必要がある
出産前に会社側と「1歳になったら復職します」と取り決め育児休業に入るママも多いでしょう。迫りくるタイムリミットに焦るママも少なくありません。最悪こどもが待機児童になった場合について育児休業の延長への理解を得られなければ、復職もできなくなります。
また、いくら業務に支障がないように努めていても、子供がいる以上365日いつも子供を持たない人と同じ条件で仕事が出来る訳ではないので、早退などの対応のできない職場では、長期にわたっての継続勤務は難しいのではないでしょうか。
産前産後休業・育児休業と待機児童問題
2015年4月から「子ども子育て支援新制度」が始まり、自治体により保護者である親が育児休業を取ることに対して様々な見解がされました。ある市では、2歳児クラスまでの子どもの親が育児休業を取った場合、基本的に出産の半年後に退園となります。
その後育児休業を終えても確実に入園できる保証もありません。他にも出産2ヶ月後に退園とし、退園児童が再入園する際はかなりの加点をする対応の市もあります。
これらの対応は待機児童対策として行われています。これにより退園児童の代わりに待機児童が入ることができますが、喜ぶ家庭がいる反面、退園させられる児童の家庭は不安が残ることに…。1年間の育児休業を終え、職場に戻るため保育園の入園申請を出しても入れなかった場合は育児休業の延長をしなくてはなりません。延長は1歳6ヶ月ですが、それまでに入園できる保証もないのです。
募集の多い4月に申請ができるよう育児休業を早めに切り上げるママもいます。育児休業は本来、子育てを集中して行うために取得するものではありますが、タイムリミットを迎える土壇場に困り果てるよりは良いかもしれません。
待機児童になったときのための準備
では、認可保育園に入園申請を行ったが「不承諾」となり待機児童となってしまったらどうなるのでしょう。待機児童になってしまった際の準備はどうすれば良いかを紹介します。
無認可保育園、託児所等のピックアップ
まず、認可保育園以外の選択肢を考えておきます。無認可保育園や認証保育園の選考は自治区ではなく、事業者自身が行うものなので先着順などの独自の選考基準で入園が決まります。
保育園に入所できるまでの数ヶ月間子供を預かっておける施設として活用可能か経済状況や生活スタイルに沿っているか検討します。
可能な場合無認可保育園や認証保育園に入園させ復職している保護者が優先的に認可保育園に入園できます。
そこで、待機児童になった時には無認可保育園に入園することが認可保育園に入園する可能性を上げてくれます。待機児童になってから慌てて探すのではなく、同時にピックアップしておくといいでしょう。
待機児童数0を達成した川崎市&横浜市
通勤に便利な地区として大規模マンションの建設ラッシュが続き、利用申請者が毎年1000人以上増え続けているのにもかかわらず、川崎市では2015年に待機児童数0を達成しました。待機児童対策として川崎市が行ったことはどんなことだったのでしょう。
保育園の新設&リニューアル、横浜市との連携
まず、まだまだ増え続けるマンションの建設状況も確認しながら「保育園の新設&リニューアル」です。人口増加に伴い認可保育園の受入人数を増加させ、認可保育園の定員は過去最大の2万2869人まで拡大することすることができました。
そして、「川崎認定保育園の保育料の補助」です。補助金の金額を一律5,000円だったところ、2014年に所得に応じて最大2万円まで広げました。認定保育園よりも高いと敬遠された川崎認定保育園への入所を促すことに成功しました。また、隣接する横浜市と連携協定を締結し、「横浜保育室」と「川崎認定保育園」の相互利用を可能にしました。
横浜市は2013年に待機児童0を達成しています。川崎認定保育園と横浜保育室とを相互利用する場合、保育料の軽減補助を受けられるようになりました。そして通常秋の入所申し込みの時期に開催する保育園に関する説明会を7月に開催し、区の担当職員を増加させ相談体制を強化することで、保護者の保育ニーズに沿った保育園とのマッチングを促進しました。
残る問題は「保留児童」
ただ、待機児童が0になりましたが、すべての保護者が満足をしているわけではありません。川崎市に転居をしたからと言って認定保育園に入れるわけでもありません。認定保育園に入れなかった子供は2,231人います。
これらの子どもは「保留児童」と呼ばれ一時保育や川崎認定保育園を利用しています。また入所ができず、育休を延長している場合も待機児童の定義から外れるためカウントされません。まだまだ問題の解決とはいかないようですね。
しかしながら、2013年には県内ワーストの438人の待機児童から2年で0人にすることができた事実は注目するべきでしょう。
社会全体で子育てをする環境づくりを
働くためには預けなくてはいけないけれど、自分の大切な子供を預ける保育園選び。子供のためにも良い環境の保育園を選びたいと思う反面、「入園できただけマシ」と選んでいられません。
働くために預けるのか、預けるために働くのか分からない状況が現実です。待機児童や保留児童問題を早期に解決し、社会全体で子育てをする環境づくりが求められます。子供と家族の生活に沿った場所や施設に満足して通いたいですね。