認定こども園のメリットとは?
認定こども園とは?子供や保護者が感じるメリットと課題
認定こども園とはどんな場所?子供や保護者にとってのメリットは?「認定こども園」という言葉はよく聞くけれど、保育園や幼稚園との違いがよくわからない方に向けて、認定保育園の特徴を紹介。対象年齢や保育時間、気になる保育料について知っておきましょう!
認定こども園ってどんな場所?子供や保護者のメリットは?
保育と教育、両方の役割を併せ持った新しい形の子供と保護者のための施設、認定こども園。平成18年に創設されて以来全国で数を増やしていますが、詳しい特徴については分からないという方も多いのではないでしょうか?
保育園や幼稚園との違い、認定こども園の特徴、認定こども園に通う子供や保護者、そして職員の姿について解説します。
認定こども園とは?保育園や幼稚園との違い
認定こども園とは、元々は保育園で行ってきた保育と幼稚園で行ってきた教育の両方を、就学前の子供に一体的に行う施設です。保育園の良さと幼稚園の良さを両方併せ持つ役割を期待され、誕生した施設であると考えて良いでしょう。
認定こども園の認定基準は、内閣総理大臣、文部科学大臣、厚生労働大臣が定める基準に従い、各都道府県知事が条例により定めます。
保育園との違いは、両親の就労等を問わないこと
保育園との大きな違いは、認可保育園の入園基準である「保育に欠ける」子供でなくても利用が可能であるという点です。具体的には、両親ともに働いていなくても利用が可能です。
幼稚園との違いは、利用できる年齢と時間
幼稚園との大きな違いは、利用できる年齢と利用時間です。保育園の機能も併せ持った認定こども園では、保育園と同等の役割も果たしています。そのため、保育園と同様に保育に欠ける状態の子供たちを受け入れられるため、待機児童解消の役割も期待されています。
認定こども園の種類
認定こども園は、以下の種類に分けられます。旧来の保育園や幼稚園の制度が変わることもあれば、新しい施設を作ることもあります。
幼保連携型
幼稚園としての役割と保育園としての役割の両方をバランスよく備えた「新しい施設」として誕生した認定こども園。
幼稚園型
認可幼稚園が、保育が必要な子供のための役割も果たす認定こども園として生まれ変わった施設です。保育時間を延ばす、0歳児からの受け入れを可能とする為に保育士を配置するなど、保育所としての機能も併せ持つようになります。
保育所型
認可保育所が、保育が必要ではない3歳以上の子供も受け入れ、認定こども園として生まれ変わった施設です。幼稚園的な役割も併せ持ち、保育だけではなく教育面も充実させます。
地方裁量型
認可幼稚園、認可保育園がない地域において、認可外保育施設や教育施設が認定こども園として機能するようになった施設です。都道府県が条例で定める基準に従って認定されます。
幼稚園が認定こども園の認定を受けた「幼稚園型の認定こども園」は幼稚園としての機能を、保育園が認定こども園の認定を受けた「保育園型の認定こども園」は保育園としての機能を失わないとされています。
利用できる保育時間と年齢
利用時間については、家庭状況や子供の年齢より区分された認定区分によって決まります。
教育・保育を利用する子供の認定区分
- 1号認定:3歳以上で保育が必要でない(共働き等でない)
- 2号認定:3歳以上で保育が必要(共働き等)
- 3号認定:3歳未満で保育が必要(共働き等)
1号認定とは?
1号認定とは、簡単にいうと今までなら幼稚園に通っていた3歳以上の子供です。
それが幼稚園と、認定こども園、2つの施設への入所が可能となりました。教育標準時間である4時間を基準として、各施設が定める時間の利用が可能です。中には、延長保育の利用ができる施設もあります。
2号・3号認定とは?
2,3号認定とは、多くの場合、これまで保育園に通っていた子供です。
保護者の勤務時間によって、保育標準時間である11時間の利用か、保育短時間である8時間の利用かに分けられます。
2号認定、3号認定を受けるには「保育に欠ける状態である(養育者の就労や病気)」という証明が必要です。3号認定(3歳未満で保育が必要)で入園した子供が、3歳になり2号認定(3歳以上で保育が必要)となる時には、手続きは必要ありません。
0歳児が生後何か月から入園可能であるかということについては保育園と同じように各施設によって違い、産休明けの2カ月から預かりが可能な園もあれば、生後8カ月からという園もあります。
認定こども園の保育料の設定方法
認定こども園の1ヶ月に掛かる保育料は、世帯の所得によって国が定めた水準を基準として市区町村が定めます。また、認定区分ごとにも料金は変わり、2号・3号認定の家庭の中でも保育標準時間と保育短時間の家庭とでは設定額が変わります(注1)。
1号認定(保育に欠けない3歳以上)の家庭
- 教育標準時間で0円から25,700円。
2号認定(3歳以上で保育が必要)な家庭
- 保育標準時間(11時間)は、0円から101,000円。
- 保育短時間(8時間)は0円から99,400円。
3号認定(3歳未満で保育が必要)な家庭
- 保育標準時間(11時間)は、0円か104,000円。
- 保育短時間(8時間)は、0円から102,400円。
その他、通園バス代、給食費、行事費も!
国で定められた保育料の水準は、従来までの幼稚園、保育園の料金と大きく差が出ない様に設定されています。しかし、あくまでも上限額ですので、地域によってはこの保育料よりも低く設定されている場合もあります。
また、通園送迎日や給食費、行事費、文房具費など、教育や保育のために必要と園側が定めた費用については、事前説明や同意の必要性はあるものの、徴収が認められています。
認定こども園の職員や施設の特徴
認定こども園で働いている職員は、認定こども園の種類によって変わります。
今までは、幼稚園にいるのは、幼稚園教諭の免許保持者。保育園にいるのは、保育士資格保持者でした。
もちろん、幼稚園教諭として働きながら保育士資格を持っていたり、保育士として働きながら幼稚園教諭の免許を保持していた人もいます。認定こども園では、幼稚園免許と保育士資格はどのように扱われているのか解説します。
認定こども園で働いている先生とは?
幼保連携型では、保育士資格と幼稚園教諭免許の両方が必要
幼保連携型の認定こども園では、「保育教諭」が配置されています。保育教諭とは、幼稚園教諭の免許状と、保育士資格の両方を保有していることを原則とする職員のことです。
しかし、平成27年の改定認定こども園法の施行から5年間は、幼稚園教諭の免許と保育士資格のどちらかの一方のみの保有であっても勤務できるという経過措置が定められています。
幼稚園や保育園から幼保連携型の認定こども園に移行した場合には、どちらか一方の資格のみを保有しているという職員が多いのが現状です。
この経過措置の5年間の間に保育士としての勤務経験を評価し、幼稚園教諭免許取得に必要な単位数を軽減する。幼稚園教諭としての勤務経験を評価し、保育士資格取得に必要な単位数を軽減するという措置もとられています。
幼稚園型認定こども園は、両免許・資格が望ましい
幼稚園型の認定こども園でも、保育士資格と幼稚園教諭免許の両の保有が望ましいです。しかし、3歳以上の担当に限っては、いずれか片方のみの保持でも保育・教育は可能です。ただし、3歳未満の保育に関しては、保育士資格が必須です。
保育所型認定こども園は、ほぼ保育士有資格者と考えて良い
保育所型認定こども園も、幼稚園型と同様、幼稚園教諭免許と保育士資格の両方を保有していることが望ましいですが、やはり3歳以上に限ってはいずれか片方のみでも可能です。
ただし、教育相当時間(1号認定の子供が利用する時間)以外に保育に従事する場合は、3歳以上でも保育士資格が必要となります。また、3歳未満の保育に関しては、やはり保育士資格が必須です。
実態からいって、保育所型の認定こども園の場合、保育士資格はほぼ必須と考えて良いでしょう。
地方裁量型認定こども園も、両資格・免許が望ましい
地域裁量型の認定こども園も幼稚園型・保育園型とほぼ同様ですが、満3歳以上なら片方の資格のみでも可、3歳未満は保育士資格が必須です。
園舎などの施設の基準は?
認定こども園の施設は、3歳未満児は保育所の設置基準を元に、3歳以上児は幼稚園の設置基準を元に定められています。
3歳未満の設備基準は、保育所と同様
保育所では全ての設置基準において、園児1人ひとりに必要な広さが定められています。集団としての広さよりも、子供1人に対して必要な広さを定めているのが特徴です。3歳未満の保育・教育をする認定こども園も、同様の基準で定められています。
その他、0・1歳児はほふく室や授乳室といった乳幼児が生活する場所を設け、2歳児は保育室または遊戯室といった子供が生活し、遊びの活動をする場所を設けなくてはなりません。
3歳以上児の設置基準は、幼稚園と同様
3歳児以上は、幼稚園の設置基準と同じように、1学級ごとに必要な広さが定められています。
幼稚園としての役割も併せ持つ認定こども園では、幼稚園生活と同じようにクラス毎に行う教育活動も増えますので、幼稚園の基準に則ることでクラス活動を円滑に行う狙いがあります。
運動場は?
認定こども園は、3歳以上はやはり幼稚園と同様の運動場基準を設けおり、1学級ごとに必要な広さが定められており、敷地内や隣接する敷地に設置する必要があります。
教育面にも力を入れる認定こども園では、運動場でのクラス活動も増えますので、クラス活動を円滑に行うことができます。
一方で、0,1,2歳児については、保育所の設置基準を元に定められており、2歳児のみ子供1人に必要な運動場の広さが定められています。ただし、近隣に園児が使用可能な公園がある場合は代用が可能です。0,1歳児は基準が設けられていません。
ただし、施設面積と運動場については特例があり、既存する施設の移行に限って保育園、幼稚園のどちらかの基準を満たしていれば認可となります。
既存施設から認定こども園へのスムーズな移行を目的とした措置です。
子供、保護者の立場で見えてくる認定こども園の課題
幼稚園と保育園の良い所を併せ持つ施設として誕生した認定こども園。しかし、今までとは違う形態の施設で生活をするということは、子供や保護者にとって負担となる部分があるのも事実です。幼稚園や保育園と違い、どの様な部分が課題となっているのかを見ていきましょう。
子供が感じる認定こども園の課題
認定こども園に関する制度が次々生まれるなか、実際に園に登園するのは小さなこどもたち自身です。精神的・肉体的負担には常に配慮しなくてはなりません。
新施設移行に伴う精神的な負担
認定こども園が設立される際には、既存の幼稚園や保育園がそのまま認定こども園として新たにスタートし、在籍している子供もほとんど変わらないというケースが多いです。ですが、既存の施設が閉鎖され、新たに認定こども園が設立されるという場合もあるのです。
子供は順応性がありますが、新たに先生や友達との信頼関係を築くことを負担に感じる子供がいることは事実です。
1号認定と、2号・3号認定の子の生活リズムの違い
1号認定(3歳以上で保育が必要でない)子供と、2,3号認定(保育が必要である)子供が一緒に過ごすことで、お互いの生活リズムに悪影響を与える可能性もあります。
1号認定の子供の降園時間は、比較的早いため、2,3号認定の子供のお昼寝の時間と重なるので、落ち着いて昼寝ができないという声もあります。その時間帯には、職員の数を増やし、子供のへの保育を手厚くするといった配慮が必要となります。
保護者が感じる認定こども園の課題
保育園や幼稚園に在園中の保護者やこれからの入園を考えている層は、認定こども園の情報に敏感になる必要があります。
新施設移行による通勤の負担増
既存施設の閉鎖する場合は、やはり既に通園している保護者にとっては大きな問題です。また、妊娠中に候補にしていた保育園が閉鎖され、認定保育園として違う場所に新設された場合、予期せず通園に時間がかかることになる方もいるでしょう。
認定区分による保護者の壁
同じ認定こども園にに通っているにも関わらず、1号認定(3歳以上で保育が必要でない子供)の保護者と、2号、3号認定(保育が必要な子供)の保護者の間に壁が出来てしまうという現実もあります。
1号認定の保護者と2,3号認定の保護者は登園・降園時間が違うのでほとんど顔を合わせる機会がなく、1日のスケジュールが違うため、お互いになんとなく距離を感じてしまうようです。
職員が感じる認定こども園の課題
幼保連携型認定こども園の保育教諭は、原則として幼稚園教諭免許と保育士免許の両方の保有が必要となります。5年間の経過措置や保育士や幼稚園教諭としての勤務を評価して、取得単位を免除するという措置はあるものの、幼稚園教諭か保育士のどちらか一方しか保有していない職員は、新たな単位を取得する必要があるのです。
新たな形の認定こども園としてスタートした施設の中では、職員も慣れるまでには時間が掛かります。子供と保護者との関係作りの他に、資格取得のための勉強をするということは職員の大きな課題となります。
保護者、子供にとっての認定こども園のメリット
認定こども園の課題について説明をしましたが、もちろんメリットも多くあります。良い面には積極的に目を向けていきましょう。
教育の選択肢が増える
保育園に通う子供達は、認定こども園に通うことによって、より教育面でも活発な指導を受けられます。幼稚園に通わせることが不可能ではない家庭の場合、保育園と幼稚園のどちらに入園させるべきか悩む方は多いですが、親御さんにとっても選択肢が広がるはずです。
再就職の可能性が広がる
幼稚園に子供を預けていた保護者は、働き始めたいと思った時に1号認定(3歳以上で保育が必要ない)から2号認定(3歳以上で保育が必要)の変更申請を行うことで、利用する施設を変わることなく新たな仕事に就くことができます。
異年齢での関わりを学べる
特にこれまで幼稚園に通っていた子供達は、認定こども園に通うことによって、自分よりも小さな子供と接する機会を持ち、異年齢の関わりを学ぶことができます。
待機児童問題の解決
認可保育園に入ることができずに待機児童となる子供が多い昨今、認定こども園が設立することによって、より多くの子供たちを受け入れられるようになります。待機児童問題の解決につながる大きな一歩です。
子供にとってより良い施設を目指すための「認定こども園」
認定こども園は、厚生労働省の管轄である保育園、文部科学省が管轄する幼稚園が歩み寄ってできた新しい施設です。設立されて10年ほどですので課題も多くありますし、保育園と幼稚園の基準を取り入れながら、試行錯誤をしているという印象は否めません。
しかし、子供と保護者のための施設としての認知度は年々上がり、満足して利用している子供と保護者もたくさんいます。子供の教育と保育の両方を受ける権利のために、そして待機児童対策のためにも、より良い施設となっていくことに期待しましょう。
参考文献