育児休暇を取得する男性はどれくらい?日本の育休取得率は低すぎる!?
育児休暇は男性も取得する権利がありますが、実際の取得率を見ていくと日本では「育休=女性がとるもの」という認識がまだまだ強いのが現実です。育児休暇の概要と申請方法、男性の育児休暇取得率について、ご説明します。
育児休暇とは?育児・介護休業法に定められた労働者の権利です!
育児休暇は育休などとも言われますが、正式名称は「育児休業」と言い、育児・介護休業法により定められています。
育児休暇の日数~最長で子供が2歳になるまで延長できる!
育児休暇は、子供が1歳になるまでに取得できます。今までは、保育園に入れないなど理由により1歳6ヶ月になるまで延長が可能でしたが、平成29年10月の改正により最長で子供が2歳になるまで延長が可能となりました。
男性の育児休暇の条件は特になし!妻の就業の有無も関係ない
育児休暇は、男性・女性の区別はありません。産前・産後休暇は女性のみですが、育児休暇は性別に関係なく取得できます。
育児休業は、奥さんが専業主婦の場合でも取得することが可能です。また、子供が1歳になるまで(最長で2歳まで)であれば、1年間取得してもよいですし、数日または数ヶ月とご家庭の状況に合わせて取得することができますので、共働きのご夫婦の場合は、お互いに調整して育児休暇を取得できると良いでしょう。
男性の育児休暇取得率は?日本は低すぎ・短すぎ?
日本における男性の育児休暇の取得率や取得日数を厚生労働省のデータをもとにご紹介します。政府は男性の育休取得率向上を掲げていますが、現状は到達目標とはほど遠いものです。
育児休暇をとる男性は日本には3.16%しかいない
厚生労働省の調査によると、平成28年度の男性の育児休業得率は3.16%となっており、女性の81.8%と比較するとかなり少ない数字になっています。
短期間が当たり前?男性の育休は5日未満が5割以上
しかも、男性の育児休暇取得率の他に注目したいのが、男性の育児休暇取得日数になります。女性は、1年前後の取得日数であるのに対して、男性は、約半数が5日未満の取得にとどまっています。これでは1週間程度の連休であり、育児に主体的に関わるのは難しいと言わざるを得ません。
政府は「2020年までには男性の育児休業取得率を13%にする」という目標を掲げていますが、現在の状況を見ると男性の育児休暇はまだまだ浸透しているとは言えません。
育児休暇中の給与は?パパが育休でもらえるお金
男性が育児休暇を取得する際に気になるのが、給与のことではないでしょうか。
確かに給料の満額が支払われる訳ではありませんが、育児休暇を取得した場合は雇用保険から「育児休暇給付金」が支払われます。
育児休業給付金によって給料の50~67%が支給される
育児休業給付金は、育児休業取得中に雇用保険から支払われる給付金になります。会社から支払われる訳ではありません。
育児休業給付金を受け取るためには、育児休業の申請に加えて、給付金受取の申請をする必要がありますので、決まられた期日までに必ず申請を行うようにしましょう。
育児休業給付金の割合
- 休業後180日まで:給与の67%
- 休業後181日以降:給与の50%
なお、育児休業給付金には上限額と下限額があります。育児休業給付金の支給割合が67%の場合は、上限286,023円、下限46,431円となっています。育児休業給付金の支給割合が50%の場合には、上限213,450円、下限34,650円となっています。
育児休業中も一定の金額が貰えるのは、安心です。ただ、育児休業給付金は、毎月支払われるのではんなく、初めの支給は育休に入って3ヶ月後、その後も2ヶ月に1度の振り込みになります。給与のように毎月支給される訳ではありませんので気をつけてください。
育児休業給付金は非課税なので所得税はかからない
育児休業取得中に支払われる育児休業給付金は、収入ではなく非課税となるので、所得税はかかりません。また、翌年度の住民税の算定に含まれることもありません。
ただ、住民税は前年度の収入により算定されるものなので、育児休業中も毎月支払う必要があります。自治体によっては、育児休業中は、住民税の徴収猶予制度を利用できることもありますので、必要な場合は自治体の担当窓口に問い合わせてみましょう。
育児休暇中の保険は?社会保険・雇用保険を支払う必要はあるの?
育児休業中に、会社からの給与が支払われない場合、社会保険料や雇用保険料はどのようになるのでしょうか。育児休業中は、給付金のみの受け取りとなるため、余計な負担はない方が助かります。
社会保険料の支払いは本人も会社も免除される
育児休業中は、本人も会社側も社会保険料の支払いを免除されます。社会保険料の月額は、給料水準により異なりますが、給料明細をみると「結構ひかれてるな」と思っている方も多いはず。金額にかかわらず免除されるのはありがたいです。
雇用保険料の支払いも免除される
育児休業中は、雇用保険料の支払いも免除されます。また、雇用保険は給与月額により毎月金額が変わるため、育休明け後も時短勤務などにより給与が減少する場合には、雇用保険料も給与水準の低下に従い、安くなります。
育児休暇を男性が取得することのメリット
現状、育児休暇を取得する男性は、ごくわずかにとどまっています。
しかし、男性の育児休暇取得は、男性自身にとっても、家族にとっても大きなメリットがあるものです。
妻と子育ての大変さを共有できる
男性が育児休暇を取得することで、妻と子育ての大変さを共有することができます。日本では、妻が一人で子育てをする「ワンオペ育児」が社会問題化しています。
妻だけに子育ての負担を背負わせ過ぎないように、自分から子育てに進んで参加することで、子育てに関する悩みや喜びを夫婦で分かち合うことができるでしょう。
家族と過ごす時間が増え、赤ちゃんの成長を見守れる
男性が育児休暇を取得すると、家族と過ごす時間を増やすことができます。
仕事をしていると、残業続きで赤ちゃんの寝顔しか見ることができないという方も、日中家にいることで、赤ちゃんの成長を一緒に見ることができます。
1週間程度の育児休暇じゃ意味がない?それでも取得しないよりはマシ!
現在の日本では、男性の育児休暇は5日未満が半数以上というのが現状です。そのため、「育休を取得したいけれど、1週間程度が限界。これって意味があるのかな…」と悲観的になっているパパやママもいるのではないでしょうか。
もちろん育休は長い方が良いですが、例え1週間でも子育てに子育てに積極的に関わる時間が作れるのなら作るべきですし、意味がない訳ではありません。
育休取得は子育てや仕事への意識を変化させるきっかけになる
男性の育児休暇取得は、男性の子育てへの意識を変化させる大きなきっかけとなってくれるでしょう。
例え育児休暇取得日数が短くても、子育てする妻の様子を間近でみることで、苦労がよくわかり、「妻と協力して家事や子育てをやっていこう」という気持ちが自然に強くなるはずです。
フランスでは、男性育休の法制度化により、男性の産休が社会的に受け入れられるようになり、男性の意識が変化していったという例もあります。
育児休暇を男性が取得することのデメリット
男性の育児休暇取得がなかなか進まない背景には、男性が育児休暇を取得することに対してデメリットや難しさを感じているという点が挙げられます。
上司・同僚の理解を得ることが難しい
日本の企業では、男性の育児休暇取得に対して、上司や同僚の理解を得ることが難しいという現状があります。多くの男性が、育児休暇を取得しなかった理由として、「職場が育児休暇を取得しづらい雰囲気だった」ということを挙げています。
仕事から離れることに不安がある
男性が育児休暇を取得することに積極的でない理由として、「育児休暇を取得することで、今後の昇給・昇進へ影響が出るのではないか」「同僚との能力に差がついてしまう」という不安があります。
育児・介護休業法では、育児休暇を理由に、不利益な報酬変更や配置変更をするのは違法とされています。しかし、出世という観点からいうと、上司や社風によりますので、判断が難しくなります。
育休取得で、能力に差が開くは間違い!モチベーションや段取り力がアップする!
職種にもよりますが、能力に関しては、数ヶ月の育休で同僚と大きく差が開くと過度に心配する必要はあまりないのではないでしょうか。
育休取得により家族と過ごした時間は人生において大切な思い出となり、仕事へのモチベーションを高めてくれます。また、育児とは、忍耐力や段取り力などが必要ですので、仕事以外の面で自分をスキルアップさせてくれるものと考えましょう。
育児休暇を取得した男性の体験談
育児休暇を1週間~1年取得した男性の体験談です。
仕事から離れることに不安がある、周囲になんといわれるか心配な方は、読んで勇気をもらいましょう!
取って良かった育児休暇
佐藤太郎(25歳)
妻の産後すぐからの1週間取得しました。妻に実家がなく、産後は私と子供と三人で穏やかに過ごしたいと、妻本人から強い希望があったため、取得することにしたのです。
職場はやはり難色を示しましたが、必死に説明して、分かってもらえました。その代わり戻ってからの仕事は、溜まりに溜まっていて辛かったです。
育児休暇を取得し、妻の代わりに家事をしました。家事はほとんどしたことがなかったですが、はっきりいって仕事より大変でした。とくに料理!毎日こんな大変な思いをして料理してくれていたのだなあと妻を尊敬しました。
生まれたばかりの子供と一週間も一緒にいられて、普通なら父親は仕事中で写真でしか見られない我が子を、抱っこできたり、おむつを替えられたり、良い経験になりました。
2番目の出産後に急遽取得
小野田新一(43歳)
2番目の子供が産まれたとき、1カ月の育児休暇を取得しました。上の子は当時2歳で、産まれた子は2240gと低体重で産まれました。しばらく保育器の中で過ごしていたため、嫁も心配して、かなり疲労感があるようでした。
嫁自体は1週間ほどで退院出来ましたが、赤ちゃんは一緒に退院は出来ず、毎日母乳を与えに行ったりと大変そうで、上の子もまだ小さいので一緒に協力しようと決め職場に話しました。幸い、私の職場は県議会議員が理事長を務める社会福祉法人で、子育て支援にも力を入れていたので、突然のことにも関わらず、申請はすんなり通りました。職場もスタッフも快く送り出してくれました。
育児休暇を取れたおかげで、少しは嫁の負担軽減が出来き、笑顔も取り戻せました。ただ、なれない育児なので沐浴だのミルクの作り方など、嫁からのレクチャーが大変でした。
育児休暇を取得してみて思うこと
匿名社員(35歳)
育児休暇を妻の出産後すぐに半年間取得しました。会社が育児休暇の取得を促進しており、妻の負担を軽くしたかったのと、せっかくの機会なので利用してみたかったからです。
職場は育児休暇を快く受け入れてくれました。具体的には、なるべく外勤がない仕事に配置転換してもらい、ある程度仕事量を減らしてくれたので、助かりました。
ただ、どうしても夜に子供を寝かしつけて、仕事をしなければならないこともあり、また子供を寝かしつけても、すぐにまた泣き出したりと、大変なことはありました。が、子育てを体験できたことは、自分にとって大変貴重な経験となりました。
妻の代わりに主夫となる!
イルカ(31才)
私は、妻が重要な仕事についているため、男性では珍しく育児休暇を取得しました。子供が生まれてからの1年間育児休暇を取得しました。会社の人たちにも、いろいろ心配されたのですが、申請をだし通りました。
男一人で育児をするのですから、なかなか大変です。まず、妻の代わりに家の家事を全てやらなければなりませんでした。掃除に洗濯、もっとも大変なのは、食事作りでした。子供は、生まれたばかりの時は基本的に寝てくれているので、そんなに大変ではありませんでしたが、歩くようになると気が気じゃありません。
食事もミルクから離乳食、普通の食事とだんだん変わっていきました。それを理解するのにいろいろな本を読んで勉強する日々でした。
夫が育児休暇を取得した妻の体験談
旦那さんが育児休暇を取得してくれると、妻としては非常に嬉しいものです。育児休暇を取得してもらって助かってことを伺いました。
年子の出産で夫婦揃って育休
まい(31歳)
私たち夫婦はどちらの母親も健在ではないので、自分たちだけで育児をする必要がありました。1人目の時は私が育休を取って何とか乗り切ったのですが、年子を授かり、上の子が1歳半の時に下の子が産まれました。
上の子も離乳食やお風呂のサポートが必要な年齢だったので、さすがに私1人では産褥期を乗り切れないと思って家事代行などを探していたら、「俺が育休取るよ!」と主人が言ってくれました。
私の体調が戻るまでの1ヶ月間、買い出しや離乳食作り、上の子の世話までフル回転で頑張ってくれて、とても感謝しています。
上の子はとても人見知りが強いので、知らない人が家に来て家事をしてもらうよりもストレスをかけずに済んだことも本当に良かったと思います。
充実した8日間
やまちゃん(26歳)
第一子が産まれた際、主人が8日間の育児休暇を取得しました。
主人は職場のスタッフをまとめる立場にいましたが、主人がいない間も大丈夫なように周りの方が色々と配慮してくださり、夫婦2人で我が子を見る8日間が始まりました。
主人は、オムツ替え、ウンチ漏れの肌着を洗ったり、沐浴やミルク……ここぞとばかりにたくさんやってくれました。この8日間で育児に関することを一通りやって覚えたい、とのことでした。
ただでさえ、普段はなかなかお休みが取れないので8日間も子どもを朝から晩まで一緒に世話でき、大変なことも嬉しいことも一緒に経験できてとても幸せでした。
男性の育児休業の開始日はいつがおすすめ?
育児休業は、1人の子供の出産につき原則1回の連続した休暇しか取得することができません。そのため、「どのタイミングで取得するか?」ということをよく考えておく必要があります。
育児休業の取り方の例とメリットを解説していきます。
産後まもなくから育児休暇をとるケース
出産後1ヶ月程度は、奥さんが、できれば家事などをせずゆっくりと過ごすのが望ましいとされています。特に里帰り出産をしない方は、旦那さんが仕事をお休みして、家事をサポートしたり、赤ちゃんのお世話をしたりしてくれると、とても助かるはずです。
低月齢のうちは、赤ちゃんはあまりまとまって寝てくれませんので、お世話も大変です。この時期を夫婦二人で協力して乗り越えていきましょう。
産後に短期の育休をとり、その後2回目の育休をとるケース
育児休業の取得は、原則1回限りとなりますが、奥さんの出産後8週間以内に男性が育児休暇を取得した場合、パパ・ママ育休プラスという制度により2回目の育児休暇を取得できます。
仕事の都合上、長期の育児休暇取得は厳しいという男性でも、2回に分けて取得できるなら、休みやすいという方もいるのではないでしょうか。
出産後8週間程度は、赤ちゃんがとても早いスピードで成長していきます。一生に一度きりの我が子の新生児期を長い時間一緒に過ごすことができるのは、男性にとっても貴重な時間となるでしょう。
パパママ育休プラスとは?
パパママ育休プラスとは、夫婦で育児休業を取得する場合、育休の取得期間が1歳2ヶ月まで延長される制度のことです。パパ・ママそれぞれの育児休業期間は、最大1年までとなります。
パパママ育休プラスでは、夫婦交代で育休を取得することも、同時期に取得することも可能です。それぞれのご家庭の都合やお仕事の都合に合わせて育休の取得時期を調整できるのは、利用者側としてはありがたいです。
妻と交代で取得するケース
共働きのご夫婦の場合、妻の産休・育休が終了してから、男性が育児休業を取得するのも、一つの方法です。
産休・育休明けに仕事に復帰する女性は不安も多いですし、仕事復帰と同時に保育園入園となると戸惑いも大きいはず。
まずは、仕事のペースに慣れるまで、パパが赤ちゃんと二人きりで自宅で過ごしてくれるのなら、ママは復職後の生活にゆっくりと慣れていけるはずです。
育児休暇取得を会社に拒否されたらどうする?
育児休暇の取得は、法律で定められた労働者の権利です。事業主側は、社員から育児休暇取得の申請があった場合、それを拒否することができません。
働いている会社の就業規則に「育児休業」についての取り決めがない場合でも、育児休暇を取得することはできます。会社側の育児休業についてよく理解していない場合は、会社側に法律で定められた権利であることを説明してください。
もし、会社側から理解が得られない・申し入れを拒否されたという場合には、労働局に相談してみましょう。ただ、申請者の就労状況により育児休暇を取得する権利がない場合があります。申請をされる時には、ご自分の就労状況が育児休暇取得の条件を満たしているか確認してください。
育児休業取得対象外となる労働者
- 日々雇用されている労働者
- 期間を定めて雇用されている労働者
※当該事業主に継続して1年以上雇用されている場合、子供が1歳6ヶ月になる日までに労働契約が満了することが明らかでない場合は取得可能
- 雇用されてから1年未満の労働者(労使協定で定めた場合)
- 申し出から1年以内に雇用契約が終了する場合(労使協定で定めた場合)
- 1週間の労働日数が2日以内の労働者(労使協定で定めた場合)
男性社員が育児休暇を取得すると政府から助成金が出ます
男性が育児休業を取得した場合、政府はその企業に対して助成金を支払う「両立支援助成金制度」を開始しました。助成金の導入により、男性の育児休業取得率の上昇することを目標としています。
これまで男性の育児休業の前例がないような企業も、社会の動きやこうした助成金の導入により、育児休暇の推進に舵をとる可能性もあり得ます。
政府の子育てに関わる制度は、今後改正される可能性があります。子育て中の方は、政府の動向を常にウォッチしておきましょう。