育児・お世話

母乳の搾乳のやり方

母乳を搾乳する方法|手や搾乳器で搾るコツとタイミング

母乳の搾乳方法を知っておこう!搾乳のやり方を覚えておくと、赤ちゃんを誰かに預ける際にも便利ですし、保育園に入園しても母乳育児が続けられます。手で搾る際のコツや搾乳器を使う際の注意点、搾乳に適したタイミングを説明します。搾乳した母乳は衛生面に配慮し、冷蔵・冷蔵保存しましょう。

母乳を搾乳するのはどんなとき?搾乳するべき5つの理由

赤ちゃんは、いつでも母乳をお母さんのおっぱいから直接飲めるとは限りません。母乳を搾乳する理由、また、搾乳が必要になる理由として、次の5つが挙げられます。

1.用事で赤ちゃんのそばに居られないとき

完全母乳育児をしているお母さんでも、24時間いつでも赤ちゃんのそばについていられるわけではありません。お母さんが用事で赤ちゃんのそばに居られないときや仕事にでかけるとき、保育園に預けるとき、夜中の授乳が難しいときのために、搾乳して母乳を保存しておけます。

2.赤ちゃんがおっぱいから直接飲みづらそうにしているとき

赤ちゃんによっては、お母さんのおっぱいから母乳を飲むのが難しいこともあります。上手に吸いつけないで、なかなかお腹がいっぱいにならない赤ちゃんも少なくありません。このようなときは、母乳を搾乳して、哺乳瓶経由で赤ちゃんに飲ませられます。

哺乳瓶ならおっぱいよりも少ない力で飲めるため、吸いつく力が弱い赤ちゃんや母乳の飲み方がいまいち掴めない赤ちゃんも、スムーズに母乳を飲むことができるのです。

3.赤ちゃんが入院しているとき

赤ちゃんが入院し、お母さんが赤ちゃんに24時間ついていてあげられないときも、お母さんが母乳を搾乳して病院に持って行き、赤ちゃんに飲ませることは可能です。

赤ちゃんが低出生体重などでお母さんが先に退院した場合も、充分な量の母乳が搾乳できるなら、完全母乳育児を実践できます。

4.赤ちゃんが飲みきれないほど母乳がたくさん出るとき

赤ちゃんが飲みきれないほどの母乳が出るときは、搾乳して処分する必要が出てくるケースもあります。また、赤ちゃんが母乳を飲まない時間に痛いほど胸が張ってしまうときも、母乳を搾乳することで、痛みやしんどさを軽減できます。

5.乳管が詰まっているとき

赤ちゃんが母乳を飲まなくなった後も、お母さんによってはかなり長い間母乳が出て、胸が張って辛い思いをすることがあります。また、赤ちゃんに母乳を飲ませているときも、赤ちゃんが上手に吸いつけないときや授乳間隔が空いたとき、締めつけがきつい服装や下着を装着しているときには乳管が詰まってしまうことがあります。

放置しておくと乳管が詰まってしまい、痛みや熱が出てしまう恐れがありますので、適度に母乳を搾乳し、乳管の詰まりを未然に防ぎましょう。

ただし、搾乳し過ぎると、新たに母乳が作られてしまいますので、乳管の詰まりが再発することもあります。搾乳し過ぎないように注意して下さい。

母乳の搾乳方法

母乳の搾乳方法には、「手を使った方法」と「搾乳器を使った方法」の2つがあります。それぞれの方法の実施タイミングと手順、注意点をまとめました。

「手で絞る」搾乳方法

手を使って搾乳すると、搾乳機を使うよりも乳房が痛くなりにくいというメリットがあります。また、搾乳する量や乳房を押す力加減を自分で調節しやすいという点もメリットと言えます。

搾乳するタイミングは前回の授乳から4時間後が目安

胸が張ってきたときが、搾乳にはベストのタイミングです。また、赤ちゃんが寝ているときや入院中のときなどは、前回の授乳(搾乳)から3~4時間後に搾乳すれば、母乳がしっかりと出てくれます。

衛生面には十分気を付けて準備をしよう

搾乳する前に、乳房をほぐすように軽くマッサージをします。充分にほぐれたと感じたら、手をしっかりと石鹸で洗い、乳房全体をウェットティッシュや適度に冷ました蒸しタオルできれいにぬぐいましょう。

特に乳輪と乳頭部は雑菌が残らないよう、丁寧にウェットティッシュか蒸しタオルで拭いて下さい。入院している赤ちゃんに届けるときには、特に衛生面には気を配ってください。

片手に哺乳瓶もしくは母乳パックを持って搾乳開始

手と乳房、乳輪乳頭部を清潔にしたら、いよいよ搾乳開始です。滅菌した哺乳瓶を片手に持ち、乳頭部を哺乳瓶に差し込んで、もう片方の手で乳輪の周辺部から乳輪の内側にゆっくりと流すように押していきます

このとき、哺乳瓶を持つ手が、哺乳瓶の口付近に触れないように注意して下さい。

一つの場所に集中しないで搾乳しよう

母乳がスムーズに出ている場合でも、乳輪付近の同じ場所ばかり同じ方向で押していくことはおすすめできません。母乳が残った部分がしこりになってしまう可能性がありますので、スムーズに出ているときでも押す場所や押す方向を変え、まんべんなく母乳を搾るようにしてください。

もちろん、片方の乳房だけから搾乳するのではなく、何回か左右を交代しながらまんべんなく搾るように心がけて下さい。

1回の搾乳は20分以内で済ませよう

あまりにも長く搾乳すると、乳房が痛くなり、お母さん自身も疲れます。雑菌が入りやすくなるというデメリットもあります。1回の搾乳は長くても30分以内に済ませるようにしましょう。

「搾乳器で絞る」搾乳方法

搾乳を何度も繰り返すと、腕が疲れてしまって腱鞘炎が起こることもあります。保育園などに毎日母乳を持参する場合は、搾乳器があると便利です。

搾乳器が上手に使えるようになると、手で搾乳するよりも短時間で搾乳を済ませられます。腱鞘炎や腕の痛みに発展しにくいでしょう。

搾乳器を使えば短時間での搾乳も可能

搾乳するタイミングは、手を使って搾乳するときと同じで、胸が張ってきたときや授乳後3~4時間後となります。ただし、搾乳器に慣れると短時間で搾乳できますので、出かける前などのあまり時間が取れないときにも搾乳できるようになります。

搾乳器はしっかり消毒しておこう

搾乳する前に、乳房を軽くマッサージし、乳頭をほぐして母乳が出やすい状態にしておきましょう。その上で、搾乳器を消毒し、消毒した哺乳瓶か母乳パックを取り付けます。そして、お母さんの手を清潔に洗い、乳房、特に乳輪と乳頭部を清潔に消毒します。

片手に搾乳器を持って搾乳開始

搾乳器と手、乳輪乳頭部の消毒ができたら搾乳開始です。搾乳器を乳房に当て、母乳を搾っていきましょう。乳房にしこりができないように、搾乳器を乳房に当てる角度や位置を何度も変えてください。もちろん、片方の乳房から搾乳するのではなく、左右を何度か変えて搾乳するようにしましょう。

搾乳器を使うと、手を使うよりもスムーズに大量の母乳が出ることがあります。しかし、たくさん出るからといって片方の乳房しか搾乳しなかったり、1つの位置にしか搾乳器を取り付けなかったりすると、乳房のしこりや乳腺炎の原因になることもあります。

スムーズに母乳が出ているときも、取り付ける位置と乳房をこまめに変えることを忘れないようにしてください。

上手に搾乳できないときは使用中止

搾乳器には電動のものと手動のものがあります。電動のものは手動のものに比べて楽に母乳が絞れます。しかし、人によっては母乳が出過ぎるようになる可能性もあります。搾乳後にあまり時間をあけずに胸が頻繁に張るようになった場合は、使用を中止する、使う頻度を少なくするなど対策しましょう。

他にも固定しにくかったり、上手に搾乳できなかったりするときは、無理に搾乳器を使った搾乳にこだわるのではなく、中止するようにしてください。

乳房や乳頭部に痛みを感じるときも、そのまま搾乳器を使用するのではなく、一度手で搾るようにして、別の搾乳器をおすすめします。

搾乳が上手にできないのはなぜ?

手を使っても。搾乳器を使っても、上手に搾乳ができないことがあります。搾乳しづらい時は、次の2つの理由が考えられます。

母乳を出すためのホルモンが分泌されないから

通常の授乳では、赤ちゃんが乳首を刺激をすることで、母乳を出す働きのあるオキシトシンというホルモンが分泌します。しかし、手や搾乳器を使って搾乳するときは、赤ちゃんによる刺激がありませんので、母乳の出が悪くなってしまうことがあります。

オキシトシンは、赤ちゃんが乳首を噛むこと以外でも、赤ちゃんのことを思い浮かべることや軽く乳頭を刺激することでも分泌されます。赤ちゃんのことを思い浮かべて乳房と乳頭をマッサージしてから、搾乳を開始するようにしてください。

搾乳が赤ちゃんの飲み方とは異なるから

赤ちゃんは舌やあごを使って乳頭から搾りだすように母乳を飲んでいます。一方、搾乳器や手による搾乳は、乳房や乳輪部への圧力だけで母乳を出そうとする行為です。

母乳の出し方がまったく異なりますので、赤ちゃんの飲み方では母乳が出ても、搾乳器や手では上手に母乳が出ないこともあるのです。

搾乳した母乳を保存するときの注意点

搾乳した母乳は、一旦保存するかそのまま飲ませる、もしくは処分します。搾乳した母乳の扱い方とその注意点を見ていきましょう。

母乳パックを活用する

入院している赤ちゃんや保育園に行く赤ちゃんに届けるときは、衛生面に配慮されて作られている母乳パックを活用して母乳を保存することをおすすめします。一般的なフリーザーパックで代用する方もいますが、減菌状態や密閉状態をより保ちやすいのは母乳パックです。

しっかりと密閉してから、長期保存するときは冷凍庫、短期保存するときは冷蔵庫に入れます。搾乳した日を記入しておくと便利です。

冷蔵庫での保存期間は、24時間以内

冷蔵保存するときは、冷蔵庫の中が4℃程度であることが望ましいです。一般的な家庭用冷蔵庫の冷蔵室の温度は約3度程度ですので保存可能ですが、冷蔵庫は開閉によって温度変化が起こります。

冷蔵保存の場合は、24時間以内に飲ませるようにし、できるだけ開閉による温度変化を受けないように、搾乳した母乳はできるだけ奥側に保存するようにしましょう。

冷凍庫での保存時間は、1ヶ月以内

冷凍での保存は、急速冷凍し、減菌されたものなら3カ月程度保存可能ともいわれます。
しかし、冷凍保存するときは冷凍庫の中がマイナス20℃程度であることが望ましいのですが、通常の家庭用冷凍庫の温度は約18度ほど、開閉によって温度が上がる機会もあります。

家庭での減菌や温度管理には限界がありますから、できるだけ早く飲ませるようにし、遅くても1ヶ月以内に使いきるようにしましょう。

熱湯や電子レンジの解凍はNG

冷凍した母乳は、母乳パックが密閉されていることを確認してから、流水解凍します。急ぎで飲ませるわけではないときは、冷凍した母乳パックを冷蔵庫に移して、ゆっくりと解凍しても構いません。

母乳パックを熱湯に入れたり、電子レンジを使って解凍するのはNGです。高熱にさらされると、母乳の成分が変化してしまい、赤ちゃんに必要な酵素が破壊される恐れがあります。

母乳パックは表面積が広くなるように作られていますので、水やぬるま湯でも短時間で解凍できるようになっています。赤ちゃんに届く栄養のことを考えて、適切な方法で解凍するようにしましょう。

搾乳した母乳は飲ませる前に哺乳瓶に入れてから温める

母乳を搾乳している間にも母乳は冷えてしまいますので、赤ちゃんはおいしく飲むことができなくなってしまいます。

冷凍庫や冷蔵庫に一旦保存した母乳を飲ませる場合はもちろん、搾乳した母乳をすぐに飲ませる場合も、哺乳瓶に入れて40度未満の人肌程度に温めてから赤ちゃんに飲ませるようにしてください。

飲み残した母乳はいさぎよく捨てる

一度、解凍し、哺乳瓶に入れた母乳は再冷凍不可です。母乳パックから一度出した母乳は、空気に触れて、雑菌が繁殖しやすくなっています。

授乳量が少ない場合や赤ちゃんに飲みムラがある場合は、小さめの母乳パックを使うようにすると無駄がでにくいはずです。

搾乳に慣れると母乳育児が楽になる!

母乳を搾乳して保存できるようになると、赤ちゃんが入院している場合や保育園に預けている場合でも完全母乳育児を目指すことができます。

また、混合育児をするお母さんも、搾乳を上手に取り入れていくことをおすすめします。母乳は吸わせないと分泌量が減少してしまいますが、赤ちゃんが上手く吸えないとき、吸ってくれない時も、搾乳によって母乳量を維持することができます。

最初は搾乳が難しいと感じるかもしれませんが、何度か実践していくうちに慣れますので、焦らずゆっくりと搾乳していきましょう。