母乳が出過ぎて困る
出産後、ママの体では、ホルモンの働きにより母乳が作られます。出産直後は量が少ないものの、赤ちゃんが乳首を吸う刺激により、徐々に分泌量も増えていきます。
新生児は哺乳量が少ないことから、乳房に母乳が溜まりがちですが、赤ちゃんがたくさん母乳を飲めるようになる生後2~3ヶ月頃には、自然と改善されていきます。
しかし、赤ちゃんの授乳間隔が落ち着いているにも関わらず、母乳の出過ぎが良すぎるというママも存在します。
贅沢な悩みと思うかもしれませんが、おっぱいが張って乳腺炎になったり、授乳中に赤ちゃんがむせてしまったりと、母乳の出過ぎは、ママだけでなく赤ちゃんにも影響を及ぼします。
母乳が出過ぎるってどういう状態?
「母乳分泌過多症」とは、赤ちゃんが飲み切れないほど母乳が出過ぎてしまう症状。赤ちゃんがたくさん飲めるようになったにも関わらず、いつまでも乳房に母乳が溜まって改善されない状態です。
目安として、母乳パッドを1時間に1回以上交換するほど母乳が出る人は、分泌過多といえます。
母乳が出過ぎるとどうなる?
母乳が大量に出るのは良いことのように感じますが、ママにも赤ちゃんにも悪影響を及ぼしてしまいます。母乳分泌過多症には、いったいどのような問題があるのでしょうか。
乳腺炎などおっぱいトラブルの増加
母乳分泌過多症は、乳腺炎のリスクを高めます。多く作られた母乳が乳房に残って詰まると、張りや痛みを引き起こすのです。また、溢れ出る母乳に苦しくなる赤ちゃんは、正しい位置で乳首を吸うことができず、乳首が切れやすくなります。
授乳中に赤ちゃんがむせる・吐く
母乳が溜まっている状態のおっぱいに赤ちゃんが吸い付くと、母乳がいきおいよく飛び出して赤ちゃんがむせてしまうことがよくあります。また、そろそろおしまいとおっぱいから口を離そうとした際にも上手くやめられず、授乳後に吐き出ししまうこともあります。
赤ちゃんの体重が増えない
授乳はじめの母乳は脂肪分が少なく、終わりにかけて増えていくことがわかっています。ママが母乳分泌過多症の場合、授乳はじめの母乳でお腹いっぱいになってしまう赤ちゃんは、脂肪分の多い母乳を飲むことができません。
そのため、赤ちゃんがたくさん母乳を飲んでいるにも関わらず、思うように体重が増えないことがあります。たくさん飲んでいるのに体重が増えないなんて…と不思議に感じるかもしれませんが、それはエネルギーが不足しているためで、満たされない赤ちゃんは機嫌が悪くなります。
母乳が出過ぎるのは辛い!ママたちのお悩み体験談
3人目の母乳育児に抱えた悩み
純ママ(30代)
私は3児の母です。やはり3人目だと母乳も出産前からスムーズに出ていて、でも量が多すぎたようで、授乳しながら息子はよくむせていました。ちょっと口から外すと勢い良く出るので、息子は母乳で濡れてしまうことはしょっちゅうでした。
他にも、おっぱいパッドがびしょびしょになることもあって、朝方には服まで濡れて冷たさで目が覚めることも多々ありました。家にいるときならいいんですが、外で漏れ出したときは困りました。
出すぎるのも困りものです
カリンママ(40歳)
病院の入院着はワンピースタイプだったのですが、足の甲に何かがポタポタと落ちていました。何と自分の母乳だったのです。ウエスト部分を通過して足の甲まで滴り落ちていたのです。本当にびっくりしました。
自宅で入浴中、体が温まったせいか、湯船から上がった途端に飛び散ったり、一人で買い物中、母乳パッドの許容量を超えて服の胸の部分が濡れていたりと、困ることが多かったです。
また、母乳は意外と臭います。自分の体から出たものですが、臭いは常に気になって過ごしていました。
乳腺炎は辛いです
みこた(43歳)
生後2ケ月あたりになってから母乳がたくさん出るようになり、壊れた蛇口のようにポタポタと母乳が漏れるようになってしまいました。外出しない時は常に胸にタオルを当てて過ごしていなければならないほどでした。
母乳が漏れるだけでなく、乳腺にしこりができてしまって痛くなるため、1日に何度も母乳を絞って捨てていました。
赤ちゃんがドバっと吐いた!
桜井一花(40代前半)
母乳が出過ぎたのは、第一子が生後1か月の頃です。どんどん出てくるので、たくさん飲ませていました。赤ちゃんもあげると飲むので、どれくらい出ているのかわからずあげていたら、いきなりドバっと吐いたのです。びっくりしてしまいました。よく考えると、うんちの量や回数も多いなと思っていました。
授乳中も赤ちゃんはよくむせていました。パットをしていても、授乳間隔があくと洋服まで濡れてしまうのでとても困りました。
母乳が出過ぎるときは兆候がある
母乳分泌過多症と気づかずに、赤ちゃんがぐずるのを母乳不足と勘違いしたり、乳房の張りを抑える間違った対処をすると、さらに症状を悪化させてしまいます。まずは、母乳分泌過多症の兆候を知り、適切に対処する必要があります。
ママに見られる兆候
- 授乳していないときにも母乳が溢れ、母乳パットが手放せない
- 授乳後も残乳感がある
- 乳房が常に張っている
- 乳頭に痛みを感じ、乳腺炎を繰り返す
赤ちゃんに見られる兆候
- 授乳中にむせて咳き込む
- 落ち着いて母乳を飲まない、授乳中に暴れる
- いつも機嫌が悪く頻繁に泣く
- 体重の増え方にばらつきがある
- 授乳中のげっぷやおならが多く、授乳後に母乳を吐く
- うんちがゆるい
母乳が出過ぎる原因
母乳が出過ぎるのには、いくつかの原因があります。原因を知って対策に役立てましょう。ここでは、母乳が出過ぎる原因を4つご紹介します。
乳腺が発達し過ぎている
母乳が出る・出ないには、母乳を分泌する乳腺の発達具合が関係しています。乳腺の発達には個人差がありますが、乳腺の発達が良すぎると、母乳分泌過多症になりやすいといわれています。
オキシトシン反射が強い
赤ちゃんが乳首を吸う刺激により分泌されるホルモンが「オキシトシン」です。オキシトシンには、乳房で生成された母乳を外へ押し出す働きがあり、この作用をオキシトシン反射といいます。
オキシトシンは授乳に欠かせないホルモンですが、オキシトシン反射が強すぎると、母乳が勢いよく分泌され、赤ちゃんが飲み切れなくなることがあります。
プロラクチンの分泌が多い
「プロラクチン」は、母乳を生成するホルモン。プロラクチンの分泌が多いほど母乳がたくさん作られます。プロラクチンの分泌が多いのも母乳が出過ぎる原因。プロラクチンに限らず、ホルモンはバランスが大切です。
プロラクチンの異常分泌は、甲状腺の病気が原因となっていることもあります。母乳分泌過多症が長引く場合は、一度産婦人科を受診することをおすすめします。
搾乳のし過ぎ
母乳が溜まると、おっぱいが張って辛いもの。赤ちゃんが飲みやすいようにと、授乳前に搾乳することもあるでしょう。しかし、搾乳のし過ぎは、症状を悪化させる原因となります。搾乳による刺激で、さらに母乳が作られてしまうのです。
母乳が出過ぎる時の対処法
母乳分泌過多症は、ママの体質や生活環境なども要因となっていることから、すぐに症状を抑えるのは難しいものの、適切なケアをすれば少しずつ改善していきます。ここでは、母乳が出過ぎる時の対処法を4つご紹介します。
授乳方法を工夫しましょう
赤ちゃんが正しくおっぱいを吸えていないと、乳首に過剰な刺激が加わりオキシトシン反射が強く出ることがあります。赤ちゃんが深く乳房に吸い付けるよう、授乳姿勢を見直してみましょう。
母乳の量が多く赤ちゃんがむせてしまう場合は、横抱きよりも縦抱きで授乳すると飲みやすくなります。また、ママが仰向けでソファーやクッションにもたれかかり、赤ちゃんがその上に覆いかぶさるようにして授乳するスタイルをレイバック法といいますが、これも母乳の勢いが弱まり赤ちゃんがむせにくくなる方法の一つです。
授乳中の赤ちゃんの負担を軽くすることで、しっかりと母乳が吸えるようになり、自然と母乳分泌過多症が改善することもあります。
適度におっぱいを冷やしましょう
おっぱいが張って辛い時には冷やすのが効果的です。ただし、冷やし過ぎは張り返しを起こし逆効果。氷などで直接冷やすのではなく、保冷剤をタオルにくるんで冷やしたり、濡れタオルで乳房全体を冷やすようにしましょう。
また、乳房を温めると血行が良くなり母乳の分泌が促進されます。乳房が張る時には、入浴せずにシャワーで済ますなど、体を温め過ぎないようにすることも大切です。
食事を見直しましょう
授乳中のママは多くのエネルギーを必要としており、通常よりも多くのカロリーを食事から摂取することが推奨されています。しかし、好きなものを食べてエネルギーを摂れば良いというわけではありません。あっさりとした和食を中心としたバランスの良い食事を心がけましょう。
また、必要以上のエネルギー摂取は、母乳の分泌を促します。甘いものや脂っこいものは、乳腺が詰まる原因となりますので、控えるようにしましょう。
搾乳で母乳を搾り切らないようにしましょう
乳房の張りは、搾れば楽になりますが、搾乳のし過ぎは母乳の量を増やす原因となります。おっぱいが張って辛い時には「圧抜き」を試してみましょう。搾乳する場合は、完全に搾り切るのではなく、少し楽になる程度に留めます。
圧抜きの方法
- 乳輪の周りを360度まんべんなく指先で軽く押します。
- 左右の乳房を両手で押し上げ、中央に向かって軽く3回ほど圧迫します。
圧抜きは、母乳を搾ることが目的ではありません。途中で母乳が出ることもありますが、出し過ぎないように注意しましょう。1日1~3回を目安に、母乳を出す量は多くても50ml程度にします。
母乳が出過ぎても心配はいりません
母乳が出過ぎる母乳分泌過多症は、いわばママの身体が作る母乳量と、赤ちゃんが飲む母乳量の釣り合いが撮れていない状態です。しかし、赤ちゃんが成長し、授乳量が増えると、ママの作り出す母乳量との需要と供給の釣り合いがとれてきやすいです。また、体も徐々に適正量を覚えてきて、自然と改善に向かうケースも多く見られます。
しかし、生活習慣や授乳姿勢を見直しても、母乳分泌過多症がなかなか改善しないママは1度、母乳外来を受診してみましょう。「母乳が出過ぎる」というママは意外に多いので、心配はいりません!