生まれたばかりの赤ちゃんのダウン症は判断できる?
胎児の段階でダウン症の可能性を疑われ、確定診断を受けた方は新生児の段階でダウン症かどうかの判断はできていると思いますが、妊娠中には分からず出産した後にダウン症かもしれないと検査をする場合もあります。
ダウン症かどうかの確定診断は胎児のときと同様、血液検査になるのですが、ダウン症かもしれないという疑いは身体的特徴から判断されることもあります。
ダウン症の特徴とそれを判断するための検査について説明します。
ダウン症症候群には先天性の染色体異常や遺伝が関係
ダウン症という診断名はよく聞きますが、そもそもダウン症とはどのような障害なのでしょうか?ダウン症についての正しい知識を得るために、ここではダウン症児の身体的特徴と染色体異常について説明します。
身体的特徴は顔・手足・首などに現れる
身体的特徴としては顔や手足、そして首の太さなどに表れます。胎児の場合、首の太さによってダウン症かもしれないと疑われる場合がありますが、新生児の場合は、それだけでなく、顔が平らに見えたり、手足が短く見えたりします。
こうした特徴は新生児の段階から見られますが、それがダウン症にもとづく障害であるかは血液検査をする必要がありますので、もしそのような身体的特徴が見られましたら、すぐに医師に相談する必要があります。
21番染色体が1本多い染色体異常
染色体とは23対46本でできているのが普通ですが、染色体の数や構造に異常がある場合が染色体異常であると言われています。
染色体に異常がある場合、ほとんどが妊娠が継続的なくなりますが、染色体が1本多いトリソミー、1本少ないモノソミーの場合は妊娠が継続でき、赤ちゃんとして生まれてくることがあります。
このうち、21番染色体に異常がある21トリソミーがダウン症症候群と言われています。
このようにダウン症は染色体異常が原因です。そもそも染色体異常のある卵子は数個~10個程度に1つはあると言われており、妊娠が継続できないケースは実にその8割が染色体異常であると言われています。
卵子や精子に異常がないかという検査をする方もいますが、卵子や精子に問題がないとしても細胞分裂の段階で染色体異常を引き起こすことがあるとうことは覚えておいた方がよいでしょう。
転座型のダウン症の場合、両親どちらかに染色体異常があるので、この場合は遺伝によるものだと言われています。
医師により新生児からダウン症を判断できるが確定には時間がかかる
新生児の段階でダウン症かどうかの判断をするためにはDNA検査を行い、染色体異常を調べ、ダウン症かどうかの判断をします。
ただし、ダウン症であるという診断が出るまで数週かかる場合もあり、確定診断までは時間を要することと、医師によってはダウン症であるかどうかを親に伝えない、もしくはすぐには伝えないということもあるようです。
これはダウン症が治らない病気であることが関係しています。
ダウン症かどうかの検査
ダウン症かどうかの検査はDNA検査で行います。この検査を受けてダウン症であるか調べるため、染色体異常があるかどうかの判断をします。
多くの医師は見た目でも判断ができるようですが、最終的にダウン症かどうかの判断をするにはDNA検査を受けて確定する必要があります。
ダウン症かどうかの判断基準
ダウン症かどうかの判断基準は染色体に異常があるかどうかなので、これは胎児の段階と変わりはありません。
また生まれたときには分からなくても、1ヶ月健診でダウン症の可能性があると言われることもあります。
新生児を多く見てきている医師であれば、見た目でダウン症であるかどうかだいたい分かるようですが、それを告知するかどうかは医師によって判断が分かれるようです。不安がある場合は医師に聞いてみることをお勧めします。
ダウン症児と判断できる可能性がある身体的・性格的特徴
ダウン症児の特徴は身体的特徴と性格的特徴があります。身体的特徴は新生児の段階でも分かることが多いですが、性格となるともっと成長してから違いがはっきりしてきます。
ダウン症児の身体的特徴と性格的特徴について説明します。
ダウン症児の身体的特徴
ダウン症児の赤ちゃんは身体的な特徴があり、ママでもその見た目で気づくことがあります。新生児のダウン症児にはどのような特徴があるのでしょうか。ここでは顔、手足、首に見える身体的特徴についてご紹介します。
顔の中心部の成長が遅い
ダウン症児の特徴はよく顔に表れると言われています。顔が平らに見えるダウン症の方を見たことがあるかと思います。
なぜそのように見えるかと言うと鼻が低いからです。顔の中心部の成長が遅いにもかかわらず、それ以外の部分は健常者と同じように成長していることが原因です。
他にも目がつり目になっていて、目と目との間が離れていたり、耳が小さい、耳が餃子のようになっている、耳の位置が下にあったりするなどの特徴があります。
特徴的な小指
ダウン症児は手に特徴が表れると言われています。手の特徴としては指が短い、ますかけ線があるなどです。
指が短い特徴が出るのは特に小指で、小指は本来3つ関節があるはずが2つしかない、また、小指が内側に曲がっているなどの特徴があります。
ますかけ線はどのような線かと言うと頭脳線と感情線がひとつになっている線を指します。もちろん、この線があるからといってダウン症であるとは言えませんので、必ず検査をする必要があります。
足に関しては足が短いダウン症児が多いと言われています。ただその子の特徴として足が短いということもありますので、判断には注意が必要です。
首の後ろにむくみがある
ダウン症児の場合、首の後ろに大きなむくみがある場合が多いので、胎児の段階でもエコー検査でダウン症かどうかの可能性を判断することができます。
新生児の段階では胎内にいるよりさらに見やすいので、首のむくみに関して判断しやすいのは間違いないでしょう。
ただ健常児の場合もこのような症状がある場合があり、必ずしもダウン症であるとは言えません。健常児の場合は首のむくみは成長と共に、消えていくのですが、ダウン症児の場合、このむくみが残り続けるのが特徴です。
ダウン症児の性格的特徴
ダウン症児には性格的にも特徴があると言われています。ただし、新生児の場合、これらの性格的特徴がすべて見られるわけではないので、新生児の段階では性格によって判断がつかないかもしれませんが、今後の成長の過程では役に立つかもしれません。
人に好かれる明るい性格
ダウン症児の性格は明るい、陽気、がんこななどと言われています。表情が豊かで人の真似をするなど明るく、そして陽気な性格な子が多いようです。
そのため、周りにかわいがられる子供も多いようです。
一方でがんこな性格の子供もいて、自分の意思を変えない子供もいます。新生児の段階ではまだまだ性格の判断はできないのですが、今後、このような特徴が出てくる可能性があります。
そのため性格に関してはダウン症であるかどうかの判断基準と言うよりも、今後、ダウン症児とどのように接していけばよいかの参考になれば良いと思います。
ダウン症児の身体的な疾患
ダウン症児の身体的特徴は既に触れましたが、身体的特徴、性格的特徴だけではなく、身体的な疾患がある場合もあります。もちろんこのような症状があるからと言ってただちにダウン症だとは言えませんが、ひとつの傾向であることは知っておく必要があるでしょう。
ダウン症児の代表的な身体的疾患
ダウン症児には身体的疾患が伴う場合があります。ひどい場合は新生児の段階で手術が必要になることもありますので、どのような疾患を伴う場合が多いのか知っておく必要があるでしょう。
内臓の疾患
ダウン症児は内蔵、特に心臓に疾患がある場合が多いと言われてます。代表的なものは心室中隔欠損症、心房中隔欠損症、心内膜床欠損症、ファロー四徴症です。手術が必要な場合もありますので、それぞれの疾患について理解しておきましょう。
心室中隔欠損症
左右の心室を隔てる壁に穴が開く病気で、心房中隔欠損症は左右の心房を隔てる壁に穴が開く病気です。いずれも穴が小さい場合は自然に治るのですが、穴が塞がらない場合は手術をする必要があります。
心内膜床欠損症
房中隔の僧帽弁と三尖弁に接する部分と、心室の僧帽弁と三尖弁に接する部分に穴が開く病気で、初期の症状は見られないのですが、生後1ヶ月過ぎたあたりから肺炎を繰り返すことがあるようです。
ファロー四徴症
大きな心室中隔欠損によって心室の出口がせまくなるという病気です。唇が紫になっている新生児もいます。こちらの疾患は手術によって完治させることが可能です。
いずれの病気も症状が重くなる場合には手術が必要になります。医師の判断を仰ぎながら、お子様の様子をよく見て判断するようにしていきましょう。
もちろん、ダウン症児だからといってこれらの疾患を伴うわけではないことも覚えておきましょう。
ダウン症児の50%~70%が難聴
ダウン症児は難聴になるケースが多く、50~70%にあたる人が難聴だと言われています。ダウン症児は、特に乳幼児のほとんどが、滲出性中耳炎が原因で起こる伝音性難聴になる人が多いと言われています。
3~10歳ごろによく発症することが多く、呼んでも返事をしないなどの症状がでることで分かることが多いです。
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手術が必要な消化管の変形
ダウン症児の約20%に消化管の変形が見られると言われています。腸の一部が切れていたり、せまくなっていたりする病気にかかっていることが多いようです。この場合は手術が必要になります。
ダウン症と21トリソミーの関係
ダウン症は21トリソミーと関係があると言われますが、21トリソミーとは何なのでしょうか。そもそもトリソミーとはどのような意味なのでしょうか。21トリソミーについて詳しく説明します。
トリソミーとは染色体の数が1本多い状態
トリソミーとは染色体が通常2本であるところが3本になっている状態のことを言います。トリソミーには21トリソミー以外にもいくつか種類があります。ここでは新生児として生まれてくるトリソミーの種類について説明します。
トリソミーの種類
トリソミーには21トリソミー、13トリソミー、18トリソミーがあります。それぞれ21番目の染色体、13番目の染色体、18番目の染色体が3本である状態を指します。ダウン症児の実に95%が21トリソミーだと言われています。
13トリソミーの赤ちゃんは重度の知的障害と身体的な疾患を持つと言われ、18トリソミーの場合は50~90%が妊娠を継続できず、1年生存率は10%程度だと言われています。
21トリソミーのダウン症児の特徴
ダウン症症候群とも言われる21トリソミー。21番目の染色体に異常があることは先ほど説明しましたが、21トリソミーの特徴はどのようなものでしょうか。
21トリソミー偶然発症する遺伝子疾患
ダウン症児の95%が21トリソミーだと言われていますが、その両親には染色体異常がなく、偶然異常が発生するものであり防ぎようはありません。
染色体の異常があり、染色体が1本増えるので遺伝子の量が1.5倍になり、遺伝子の量が増える遺伝子疾患と言えます。
遺伝子の量が増えるだけなので、遺伝子そのものに異変が生じたわけではないので、治療が難しくたんぱく質の量をコントロールする実験がマウスの段階で行われているようです。今後はこうした治療技術が進んでいくことが期待されます。
21トリソミーの新生児の平均寿命は伸びている
これまでは身体的疾患をともなうことが多かった21トリソミーの子供は、20歳ぐらいまでしか生きられないと言われてきました。
しかし、近年の医療技術の発展で、こうした身体的疾患を治療できるようになり、平均寿命は50歳近くまで伸びています。
21トリソミーの子供の成長は遅いですが、施設や作業所で働いている人も多く、一人で生活できるまでになっている人もいます。これから平均寿命が延びるだけでなく、社会でも生きていけるようになるべきですね。
身体的特徴だけで判断しない
新生児のときの身体的特徴から、「もしかしてダウン症かも」と悩む方もいるかもしれません。新生児について多く診断している医師であれば、見た目でダウン症であるかどうかの判断はできるようですが、それでもDNA検査を行い確定診断が必要になります。
身体的特徴だけでダウン症だとは決めつけずに必ず検査を受けるようにしましょう。
また、ダウン症であると診断が下ったとしても、様々な程度があるので、医師とよく相談して今後どうすればよいか家族で話すことが大切です。