育児・お世話

クーイングってどんなもの?

クーイング・赤ちゃんがはじめて出す声と言葉の発達

クーイングという言葉を見聞きしたけれどそれが何なのかを知りたい、またクーイングが遅くて悩んでいるママやパパに向けに、クーイングの言葉の由来から喃語との違い、またクーイングが遅い理由やクーイングを促す方法などを紹介します。

赤ちゃんのクーイングと言葉の発達

最近話題になってきている「クーイング」について、言葉の由来やどういったものなのか、また喃語との違いなどについて一緒にみていきましょう。

クーイングの言葉の由来は英語の【cooing】

クーイングとはあまり耳慣れない言葉ですが、これは英語のcooingが語源となっています。ハトが柔らかく低い声でクー(coo)と鳴く声から、恋人同士やお母さんが赤ちゃんに対して優しい声で語りかけることを意味するようになり、近年になって赤ちゃんが泣く以外にはじめて発する声「くっ、くっ」とそれらを重ねて「クーイング(cooing)」と呼ぶようになりました。

赤ちゃんの機嫌が良い時に「くっ、くっ」や「あっ、あっ」「うっ、うっ」など息をはくと同時に出るような声がクーイングと呼ばれるもので、赤ちゃんの言葉の始まりとされています。

クーイングと喃語の違い

日本人も昔から赤ちゃんが最初に発話する声を「喃語(なんご)」といって親しんできました。ですがこの喃語とクーイングは厳密には異なるものと定義されています。それぞれの違いと特徴をみていきましょう。

クーイングの例

クーイングは喃語に移行する手前の最も初期のもので「くっくっ」や「あっあっ」「うっうっ」などひとつの音節でできている単音節語(たんおんせつご)を指します。今まで泣くだけだった赤ちゃんが、自分にも声があることを発見しそれを自分でも楽しんでいるのだそうです。

喃語の例

赤ちゃんが次の段階に進むと喃語になります。喃語とは口やのどの発達に加えて、声帯や横隔膜などの機能も発達してきたことで母音を重ねた「あうあう」やクーイングよりはっきりした「あー」といった喃語が話せるようになります。その後も舌を使えるようになるとより高度な「ばぶばぶ」「うんまうんま」などとても赤ちゃんらしい言葉へと成長していきます。

赤ちゃんの喃語は言葉としての意味は持たなくても言葉だけでなく心の発達に重要な意味を持ちます!月齢ごとの喃語発達の様子の動画を交えご説明。奇声のような喃語の理由やおしゃべりの少ない赤ちゃんへの心配も解説。

クーイングは生後1ヶ月後半~3ヶ月から始まることが多い

一般にクーイングが始まる時期は生後2ヶ月ごろからが多いと言われています。ただ赤ちゃんの成長は個人差がとても大きく、早い赤ちゃんでは生後4週目くらいから、じっくり経験を積んでから声を出すようなゆっくりタイプの赤ちゃんだと生後3~4ヶ月ごろにクーイングや喃語のようなものが出るのが一般的です。

クーイングをしない・遅い理由

赤ちゃんの個人差が大きい

クーイングをしない、クーイングが遅いとつい心配になってしまうのが病気や障害です。初期のクーイングは赤ちゃんの機嫌が良いときや気分がのっているときに、「くっくっ」や「うっうっ」、またのどを「ぐー」と鳴らすような息とも区別しにくいのが特徴です。

それゆえ、いつも忙しくしているママが気づいていないことも多いです。また赤ちゃんの性格や成長速度によってもタイミングは異なるのでママの呼びかけや大きな物音に反応するようなら、しばらくは様子を見て次の健診などで医師に相談してみるのも良いでしょう。

クーイングを促すためのアドバイス

東大の名誉教授で小児科医の小林登先生によれば、生まれてしばらくすると赤ちゃんが授乳時に吸うのを休むときがあり、それはママから話しかけられたリ優しくゆらゆらされるのを待っているのだと話されています。生まれてすぐから声は出せなくても、ママとのコミュニケーションをしている赤ちゃん!とても愛おしいですね。

クーイングを促すための特別な手法はいりません。生まれてすぐは視野が30cmほどなので顔を近づけたら目を見て「パイパイ、ウマウマね~」など赤ちゃんが理解しやすい育児語(いくじご)で話したり、赤ちゃんと同じクーイングや喃語でオウム返しをしてあげることなどが最も有効です。

それはもちろんママだけの役割ではなく、パパやおばあちゃんなど赤ちゃんのそばにいる人すべてが実践することで赤ちゃんに良い刺激を与えます。そのときは声のトーンを高めに、抑揚をつけた母親語(マザーリーズ)と呼ばれる話し方にすることで赤ちゃん安心できますよ。

クーイングから言葉の発達を導くためにできること

クーイングは言葉の発達のはじめの一歩です。人はクーイングから声を出すことを覚え、言葉を覚えていきます。赤ちゃんが言葉を覚えていく過程とそれをうながすために親子で楽しめる遊びをご紹介します。

クーイングから言葉の発達過程

京都大学で日本の霊長類学・発達心理学を研究されている正高信男(まさたかのぶお )先生の著書でも、クーイングをはじめてしばらくした赤ちゃんはもうすでに自分が発したクーイングに対するママからの反応や様子を期待して待っていると解説しています。

クーイングの始まりは言葉の始まりでだけでなく、コミュニケーションのはじまりでもあるのです。このクーイングから赤ちゃんたちはどのように言葉を獲得していくのかその特徴を一緒にみていきましょう。なお月齢はあくまで目安なので、赤ちゃんの成長具合に合わせて多少前後させながら参考にしてください。

赤ちゃんの初めての言葉は、1歳前後の「まんま」が多いようですが、遅れも珍しくありません。いつ、どのように言葉を理解ししゃべるのか、言語習得の過程を解説し、赤ちゃんの言葉を引き出すコツをご紹介します。

生後1ヶ月~3ヶ月

「あっあっ」「くっくっ」「うっうっ」など単音節のクーイングが特徴です。

生後4ヶ月~5ヶ月

「あうあう」「うぐうぐ」などの母音中心ですが多音節の喃語がはじまります。ママやパパからの声掛けや反応が楽しくなる頃で、声を出して笑う赤ちゃんもいます。

生後6ヶ月~7ヶ月

喃語がさらに進化します。「まんまんまん」など子音の発話もうまくなり、2節くらいだった喃語が3節~4節と増えていきます。ママも離乳食を与えるときには「まんま」、自分のことは「マーマ」と語りかけながら言葉と意味のつながりを教えると、それをじーっと聞いて徐々に理解するようになります。

生後8ヶ月~9ヶ月

ママが語り掛けた育児語や喃語を、赤ちゃんが自分の意志で真似して言えるようになってきます。また言葉にはならなくても、パパをみて「あっ」と指さしてみたり、嫌な時には「いー」といって泣いてみたり言葉と意味がつながりはじめます。早い子ではごはんやママなど身近で大切なものを「まんま」などと言えるようになる赤ちゃんもいます。

生後10ヶ月~11ヶ月

喃語が減り始める時期です。それは本格的に意味を持つ言葉へと移行する時期に入ったからです。最も多いのは「まんま」(ママとごはんのまんまが混ざったようなもの)や「ぱっぱっ」(パパ)、「パイパイ」などですが、この後どんどん言葉が増えていきます。

生後1歳~1歳半

発話自体はまだうまくなくても伝える気はまんまんなので、ママに分かってもらえないとぎゃん泣きしてしまう赤ちゃんも多いです。お風呂が「おひー」だったりはっきりとは言えてなくても、赤ちゃんが今いる状況や指さす方向などにも心を向けると言葉になっていることが多いです。

生後1歳半~2歳代

この頃になると記憶もしっかりしてくるので、数日前に会ったメガネのおばさんを覚えていて、テレビに映る別のめがねのおばさんに反応して「あー!めんめ!」とそれを伝えようとするとことも出てきます。100%対応してあげることはなかなか難しいですが、何かを訴えているときは、手と心を止めて赤ちゃんと同じ目線になって言葉を聞いてあげると分かることも多いです。

言葉の発達に役立つ赤ちゃんが喜ぶ遊び

語りかけてあげることの大切さが分かったからこそ、具体的にはどうやって赤ちゃんに話しかけたり、あやしてあげたら喜ぶのか不安のあるママやパパも多いはずです。月齢にあった赤ちゃんが言葉の発達をうながす遊び方をご紹介します。なお月齢は目安ですから赤ちゃんによって遊びと適齢期は前後します。うまく見極めて遊んであげてください。

語りかけ育児で、赤ちゃんとの密な時間をとりませんか?忙しくてもきちんと子どもと向き合い自己肯定感を高め、赤ちゃんの頃から自主性を育みましょう。1日30分、静かな環境、1対1などやり方やポイントを解説。

生後0ヶ月~1ヶ月

新生児の赤ちゃんには、原始反応(げんしはんのう)と呼ばれる生まれつき備わった体が起こす反応がみられます。教えていないのにおっぱいを吸えるのもこの能力のおかげです。その中の1つに手のひらに触れたものを握るという把握反射(はあくはんしゃ)があります。それを利用して赤ちゃんが起きて機嫌の良いときに、ママの人差し指を赤ちゃんに握らせたまま軽く左右にゆらして「かわいいね~」「いいこだね」「ママだよ~」などと優しくハミングするように歌ってあげると赤ちゃんも反応し、ママの顔をじーっとみつめてくれます。

生後2ヶ月~3ヶ月

この頃になると目や首の部分が発達してくるので、赤ちゃんが起きて機嫌のいいときに音の出るおもちゃやガラガラを大人が持ってゆっくり左右に移動させ、赤ちゃんにそれを目で追わせて遊びます。そのときも「どっちだ~?」「こっちだよ~!」など声や音のする方に顔を向けさせます。大人が手で顔を隠して「いないないばー」で喜ぶのもこの頃です。機嫌が良ければクーイングが出てきます。

生後4ヶ月~5ヶ月

原始反応が消えて、大人と同じように自分の意志でものを持ったりできる頃です。ガラガラを自分で持たせてあげてガラガラふれたら「ガラガラじょうずね」など物の名前と意味のつながりを教え始める良い時期です。またママの口に空気をいっぱいためて吐き出しながら「ぶーぶぶうー」と音を出してみる遊びは、赤ちゃんが真似しようとすることで喃語の発達につながります。足をもって「ワンツーワンツー」と左右をまげのばしする遊びも、おむつ替えをぐずるときの気分転換になる良い遊びで、発話に大事なリズムを覚えます。

生後6ヶ月~7ヶ月

お座りが上手になる時期です。ママのひざの上に向き合うように座らせて赤ちゃんの顔の部位を触って遊びます。「〇〇ちゃんのかわいいいお鼻!」などといいながら赤ちゃんの鼻をポンと触ったりします。赤ちゃんがママの顔を触りたがったら自由に触らせてあげて「ママのおめめ」など言葉の意味を教えます。松谷みよ子さんの「いないいないばあ」、前川かずおさんの「おひさまあはは」といったこの頃の赤ちゃんにぴったりの絵本を読み聞かせることもお勧めです。

生後8ヶ月~9ヶ月

ママの後追いも始まり、なんでもママのまねをしたがります。赤ちゃんと向かい合って「ばいばいー」など言葉とジェスチャーとを合わせたあいさつごっこがお勧めです。首や体もたくましくなってくるので、体を動かしながら「たかい、たかい」の遊びなども楽しめるようになってきます。

生後10ヶ月~11ヶ月

ママのまねだけでなく周囲の環境にも興味を持ち始めるころなので、ママのスマホをいじりたがる赤ちゃんも出てきます。そんなときは使わなくなった古い携帯電話やおもちゃのスマホを用意して、ママと「もしもし」電話ごっこをすると話す意欲を引き出します。季節が良ければ外へ出て葉っぱをさわりながら名前をおしえてあげるなど家の中とは違う新しい刺激を赤ちゃんは喜びます。

生後1歳~1歳半

この頃には多くの赤ちゃんが「ママ」「だっこ」など意味を持った言葉をつかえるようになります。うまくは話せなくても、赤ちゃんなりに感じたり思ったことを話そうとしているので赤ちゃんだからどうせまだ分かっていないと思わないで、ひとりの人間として会話をしてあげることで赤ちゃんの自信を引き出し話すことが大好きになります。

よちよち歩きも始まり行動範囲が広がります。カーテンの後ろに赤ちゃんや大人が隠れて、「ママはどこかな~?」と話しながら「いないないばー」をすることで質問と答えという「会話」を覚えていきます。

生後1歳半~2歳代

男の子より女の子の方がおしゃべりの発達に関しては早いし上手であることは良く知られていますが。たいていの赤ちゃんも2歳代には、自分の意思を伝え大人が言っていることを理解できるようになります。その上で自我の目覚めとともに「いや~」と大泣きしてママを困らせてしまったりもします。

でもただ訳も分からず泣いているのではありません。赤ちゃんは大人の想像以上にママやパパのこと周囲の環境を理解しているので頭ごなしに叱ったりせずまずは訳を聞いてあげると、うまく説明できなくてもママが自分の話を聞いてくれる姿勢をみてコミュニケーションで物事を解決するすべをだんだんと学んでいきます。
この頃になれば、どんな遊びだってママやパパと一緒なら楽しくてしかたないはず。今までのお気に入りの遊びをバージョンアップさせたりして、うまくコミュニケーションをとりながら遊んであげましょう。

無理強いは禁物。赤ちゃんのペースを見守りながらサポートしてあげて

どんな月齢どんな遊びの中でも、赤ちゃんのためだからと無理強いしたり赤ちゃんが喜ぶからとやり過ぎては、赤ちゃんは嫌になってしまったり疲れてしまいます。隣の赤ちゃんがクーイングしたと聞くと焦るのも親心ですがそこはぐーっとおさえて、自分の赤ちゃんの成長に目を向け、昨日より1ヶ月前よりできるようになったことに注目していくと自分の赤ちゃんのペースが分かり、ママのイライラや焦りも薄らぎます。

0ヶ月の赤ちゃんも2歳の赤ちゃんもスキンシップは共大切なコミュニケーションの1つ。迷ったり疲れたり困った時は、赤ちゃんをぎゅーっと抱きしめ「大好きよ!」と言ってあげるとママや赤ちゃんの心も和らぎますよ!