赤ちゃんに安全な水を!ミルクや湯冷ましに使う水、気を付けていますか?
生まれた直後から母乳かミルクで育てていく赤ちゃん。
ミルク育児なら調乳に沸かした水道水なりボトルウォーターなり『水』を使うために、水は赤ちゃんになくてはならないものです。
また、10年ほど前までは生まれて2~3ヶ月の赤ちゃんにも、沐浴後などには水分補給として『湯冷まし』や『お茶』を与えることもありましたが、現在では、生まれて数ヶ月間、冬でも夏でも水分補給の基本はミルクか母乳です。
生後数ヶ月すると、ミルク以外の白湯やお茶からの水分補給や離乳食も開始するのですが、それまでの間、夏場の暑いときでも本当にそれだけで十分なのでしょうか?
今回は赤ちゃんの水について赤ちゃんの水分補給のやり方や目安、頻度、ミルク調合や水分補給に使う赤ちゃんの水選びについて解説していきます。
水分補給は水かミルクか母乳か
生まれてから数ヶ月間は赤ちゃんは母乳やミルクのみで育っていきます。
ですが、お部屋の空気が乾燥しがちな冬や暑い日が続く夏場は「喉は渇いていないのかな?」「本当にミルクやおっぱいで水分補給が足りるの?」と疑問に思うこともありますよね。
赤ちゃんに母乳やミルクに加えて水分補給が必要なときがあるのか、どんなときに水を飲ませると良いのか、与えてあげられるお水の種類、まずは赤ちゃんの水分補給について詳しく見ていきましょう。
そもそも赤ちゃんに水を飲ませる必要があるのか
基本的に、離乳食が始まるまでの赤ちゃんには母乳かミルクのみを与えるほうがよく、それ以外の水分補給は必要ありません。目安としては離乳食が始まる生後5ヶ月~6ヶ月頃までは『お水』は与える必要はないといえるでしょう。
ですが、10年ほど前までは「生後間もなくから水分補給として白湯やお茶も与える」といわれていたため、赤ちゃんのおばあちゃん世代からは「お白湯は?」と聞かれた経験がある人もいるかもしれませんね。
育児の常識も時代によって変化し、現在ではむしろ、水に含まれる消毒のための成分、ミネラル分は消化器官や免疫の不十分な月齢の赤ちゃんに良い影響を与えない『避けるべきもの』と考えられています(水道水やミネラルウォーターを不用意に赤ちゃんに与えることもないでしょうが)。また、低月齢の赤ちゃんは母乳かミルクのみで十分水分補給が事足りているため、無理に水分補給としての水を与えなくても良いのです。
- 赤ちゃんに水分補給を!タイミング&白湯や麦茶の飲ませ方
身体の小さな赤ちゃんの水分補給は大切です!小さな体で大人の3倍も汗をかく赤ちゃんは脱水症状になりやすいのですが具体的な水分補給のタイミング、水分補給を嫌がるときの白湯や麦茶の与え方など紹介。
お風呂上がりの水分補給も基本は母乳orミルク
入浴後の水分補給も低月齢のうちはおっぱいやミルクが基本。とはいえ、『赤ちゃんが欲しがったら飲ませてあげてよい』とされる母乳と比べるとお腹の負担となってしまう粉ミルクは、なるべくなら一定の時間をおいて与えたいですよね。
ミルク育児の場合でお風呂上りなど水分補給の必要が発生したら、水のチョイス・管理をしたうえでお水を飲ませてあげましょう。
赤ちゃんの水分補給、いつから、どれくらい飲ませる?
赤ちゃんに水分補給としてお水を与えるときは、いつ頃から、どれくらいの量の水を飲ませたらよいのでしょうか?
時期
生まれたばかりの赤ちゃんは、水に含まれる成分が影響して下痢等を起こしてしまう可能性もあります。ミルクや母乳を飲み始めてある程度の期間が経過してから…なら、胃腸も負担なく水を受け付けられるようになるでしょう。その目安として生後3ヶ月以降が推奨されます。
量
赤ちゃんが1日に飲む水分量の総計は、体重10kgまで1kgあたり100mlといわれています。
これは母乳やミルクも含まれた量なので、10kgの赤ちゃんであれば母乳やミルクと合わせて1ℓ程度の水分が必要だということになります。
暑い日にはこれに発汗分をプラスして考えますので、1回の水分摂取の目安量は20~30ml程度で、1日の目安は200~300mlほどとなります。体重や赤ちゃんの様子を見ながら調整しましょう。
- 新生児のミルク量・母乳量の目安と足りない時の追加量
新生児のミルク量・母乳量の目安を紹介します。完全母乳、完全ミルク、混合授乳をしている場合のミルクを飲まない赤ちゃんの増やし方、飲み過ぎる赤ちゃんの減らし方などママの参考になる記事です。
飲ませ過ぎに注意
また、赤ちゃんに一度に大量の水を飲ませると、血液が薄まってしまう「水中毒」という状態になる危険性があります。身体の小さな赤ちゃんですから、よくお水を飲む子でも与えすぎないように注意しましょう。
赤ちゃんに飲ませる水どんなのがいい?水分補給におすすめの水の条件
ミルクや離乳食など赤ちゃんを育てるためにたくさん使用するお水ですが、赤ちゃんに飲ませても心配ない安全なお水の条件、おすすめのお水の条件とはどのようなものがあるのでしょうか?
軟水であること
大人であれば市販の水を何も気にせず飲んでも問題ないのですが、赤ちゃんの身体には合わない水もあります。それが『硬水』と呼ばれるもの。
よく耳にする『軟水』や『硬水』ですが、これらはお水の硬度を表しているワードです。お水の硬度とは、水に含まれるミネラル分を数値化したもので、その数値が高い、つまりミネラル分が多く含まれているお水を硬水、低いと軟水と呼びます。
お水の硬度が高い硬水は、大人でもお腹がゆるくなる要因となり得ます。低月齢の赤ちゃんの胃腸にももちろん負担となり、下痢などを引き起こしてしまうため、赤ちゃんの水分補給はもちろん、ミルクの風味にも影響するので調乳にも向きません。
日本の水道水はほとんどが軟水なので問題ありませんが、海外のミネラルウォーターは安易に使用しないようにしましょう。
『軟水』は水の硬度が178未満のものをいいますが、日本生まれのナチュラルウォーターのほとんどは軟水です。特に赤ちゃんに飲ませる水は、硬度120未満が理想となります。
ミルク調乳には純水~超軟水
水には、物を溶かすための許容量があり、ミネラル成分が多い水では、許容量が狭まって粉ミルクが完全に溶けない状態になってしまいます。
粉ミルクが溶けやすいのは硬度60以下の超軟水。不純物を含まないピュアウォーターもおすすめです。
超軟水は調味料に頼ることができない赤ちゃんの離乳食作りにもおすすめ。素材の味を引き出したいときには味をまろやかにしてくれる硬度60以下の軟水を選びましょう。
赤ちゃん専用の水
ドラッグストアのベビー用品コーナーや赤ちゃん用品専門店には「赤ちゃん専用の水」が市販されていますが、赤ちゃん専用の水のph値は赤ちゃんの消化器官に優しいごく弱いアルカリ性で、硬度がほぼ0のピュアウォーターであることが多く、安心して赤ちゃんに飲ませられます。
衛生的であること
どんな種類の水でも気を付けたいのは衛生面です。水道水は成分上気になってしまう面があったとしても、残留塩素のおかげで衛生状態は良好といえます。
一方、市販の水などはペットボトルの水は開封した後は雑菌の繁殖に気をつけなければなりません。いくら赤ちゃんに良いお水を選んでも、雑菌を繁殖させてしまってはチョイスの知識も努力も無駄に終わってしまいます。
水道水はしっかり沸騰させてから使用し、1度開封したペットボトルは早めに使い切る、ミルクを作り置きしないなど衛生面に気を付けるようにしましょう。
水の温度も大切
大人であれば冷たい飲み物を飲んでもさほど影響はありませんが、水分補給として赤ちゃんにお水を与えるときは、お水の温度も大切です。
赤ちゃんに冷たい水を与えると、胃腸に刺激となって下痢をしてしまうかも。
また、冷たい飲み物ばかり与えていると小さな身体は早々に冷えてしまいます。体温調節が未熟なことから熱の生産が追い付かず低体温になってしまう可能性もあるため、赤ちゃんに冷たい水は与えないようにしましょう。
水分補給のときのお水の温度
赤ちゃんに飲ませる水は常温がいいと言われています。
常温とは冷蔵庫に入っていないもの、触って冷たいと感じないもので、10~15度程度の温度であれば、体調を崩す心配はないでしょう。
【調乳&水分補給】赤ちゃんに飲ませる水は水道水で良い?
赤ちゃんの水分補給のときのみだけでなく、赤ちゃんのミルクを作る際も、「赤ちゃんが口にする水分は水道水でもいいの?」と考えてしまいますよね。水道水やペットボトルの水、ウォーターサーバー等、現代には様々な種類の水があります。
水分補給にもミルクの調乳時にも言えることですが、当然のことながら赤ちゃんに飲ませる水は管理が必要で、大人と同じ水道水やミネラルウォーターは好ましくありません。
赤ちゃんに与える水に適した水、不適な水を見ていきましょう。
水道水は安全?
まずは水道水が安全かどうかをチェックしてみましょう。
日本の水道水は厳しい安全基準を満たし、かつ飲みやすい軟水のため、赤ちゃんのミルク作りに使用しても問題はなとされてはいますが、大人でも自宅の水道水をそのまま飲むという方は少ないのではないでしょうか?筆者自身も、水道水をそのまま飲料水にすることはありません。
安全といわれているはずの水道水、なぜ飲まない人が多いのでしょう?多くの方が気にしているのはお水の味やにおい、健康に悪影響となる成分が混入していないか、ということではないでしょうか?
日本では、安全な水道水を配給するために水道法により塩素消毒が定められており、次亜塩素酸ナトリウムという薬品を用いて雨水や地下水の消毒を行っているために、水道水には健康に問題のない量の塩素が含まれています。
水道水は塩素消毒による『残留塩素』で飲料用の水に菌が繁殖しないようにしているのですが、反面で残留塩素はお水の味にも影響しますし、何よりアトピー肌にはあまり良くないのではと懸念されます。
また、水道水には残留塩素以外にも、ごく微量のミネラル分、水道管が古い場合は『水道管の汚れ』や、水道水中の有機物と塩素が反応して生成されるトリハロメタンという化学物質もごく微量含まれています。
残留塩素
塩素といえばプールの消毒などに使われている薬品ですが、安全基準を満たした水を配給するためには『消毒』が必要不可欠であり、水道法によって「塩素で消毒してください」と決められています。
実際に使用されているのは、家庭でも使われることの多い『ハイター』と同じ、次亜塩素酸ナトリウム。ですが近年では、浄水技術が向上し、活性炭処理やオゾン滅菌が可能な高度な浄水設備の導入により次亜塩素酸ナトリウムの添加量は少なくなっています。
水道水は塩素消毒による『残留塩素』で飲料用の水に菌が繁殖しないようにしているものの、残留塩素濃度は健康に問題のない量に管理されています。
加えて塩素は汲み置きしているだけでも揮発してしまう成分ですので、煮沸により残留塩素の心配はほぼなくなります。
トリハロメタン
水道水中には、この他にもごく微量のミネラル分をはじめとする『その他の成分』も含まれています。
なかでも、水道水中の有機物と塩素が反応し生成されるトリハロメタンという化学物質が気になる方も少なくありません。
ですが、水道水中に含まれる塩素量の低下に伴い、トリハロメタンの含有量も近年は問題が生じないほどになっています。
水道水の煮沸消毒のやり方を見直しましょう
水道水中に発生する塩素自体は、1度沸騰させることであ程度除去ができるのですが、トリハロメタンについては、ひと煮立ち程度では除去できないため、赤ちゃんの水分補給や調乳に使用するお水の管理、煮沸消毒のやり方については不十分である場合は見直さなければなりません。煮沸消毒のやりかたについては後ほど詳しく解説します。
水道管や貯水槽のごみや不純物
お水が浄水場から家庭に届けられるまでは、配管や貯水槽を通ってきています。
浄水場を出るときは水質が保たれていても、水道管の内部がさびていたり、貯水槽にごみや不純物も一緒にたまっていると、蛇口から出てくるお水が汚染されてしまうこともありえます。
ですが、特にマンションなどの集合住宅の場合、配管や貯水槽は物件のオーナーの管理下。近年では悪質なまでに貯水槽の清掃をしない、ということもなくなっているようですが、赤ちゃんに安心してお水を使うためにはチェックを入れたい部分でもあります。
かびくさい
ダムや貯水湖など水道水源に問題がある場合、浄水処理では『におい』が取り切れないこともあります。においは「おいしいかまずいか」を左右してしまう重大な要素。「水道水はそのまま飲めない」という部分にも影響してきます。
ボトルドウォーターやナチュラルウォーター
次に、市販のミネラルウォーターですが、ボトリングされたナチュラルウォーターがミルクづくりに適しているかは商品によって違います。
ナチュラルウォーターでもいわゆる『軟水』であればまだよいのですが、外国産のミネラルウォーターは水の硬度が高い場合がありますので、しっかりと確認しましょう。
ミネラルウォーターを過信しない
市販されるミネラルウォーターにも水道水と同じように安全基準はありますが、ミネラルウォーターの安全基準のほうが水道水よりも緩く設定されています。2つの安全基準を具体的に比べてみるとその数値の差は歴然、フッ素は約2.5倍、ヒ素、ホウ素、亜鉛に至っては約5倍の違いがあります。
全てのミネラルウォーターがこれだけの量の有害な成分を含んでいるわけではなく、ごく一部なのでしょうが、『ミネラルウォーターだから安心』と安易に赤ちゃんに与えないようにしたいものです。
水を安全に使うには 煮沸消毒のやり方と煮沸消毒が必要な時期
様々な水を紹介してきましたが、普段のお水は水道水を1度沸騰させてから使用するのがやはり手ごろですよね。煮沸消毒のやり方と効果について解説していきます。
水道水はしっかり煮沸消毒を!煮沸消毒のやり方
水道水に含まれる有害な物質を消滅させ、おいしく安全にお水を飲むための煮沸消毒ですが、数分間沸騰しただけでは煮沸消毒の効果が出ない成分もあります。
水道水には残留塩素や有機物と塩素が反応してできるトリハロメタンなどの避けたい成分もごく微量含まれています。水道水中のトリハロメタン含有量は健康に影響を及ぼす量ではないと言われていますが、トリハロメタンは発がん性が疑われている化学物質でもあるため、赤ちゃんに与えるお水なら特に気になってしまいますね。
煮沸消毒のやり方を見直してみましょう。
鍋、やかんを使用する場合
水道水は5分程度加熱すればカルキ臭さはなくなりますが、トリハロメタンは一煮立ち程度では除去できないどころあ5分の煮沸で逆に水中濃度が上がってしまいます。
水道水中のトリハロメタンを除去するには、10分以上の煮沸が推奨されています。
水を沸騰させ、お湯が沸いてからそのまま15分程度沸騰状態を続けましょう。
煮沸消毒した水道水は塩素がなくなり消毒効果も失われているため、できるだけ早く飲み切るようします。
電気ポットを使用する場合
1度電気ポットでお湯を沸かします。お湯が沸いたらポットは沸騰を停止させてしまうので、3回以上ほど沸騰を繰り返しましょう。
不安が残るときは
10分以上の煮沸でトリハロメタンが除去されるといっても、毎回それだけの時間煮沸するのも面倒になってきたら、浄水器や赤ちゃん専用の水、ウォーターサーバーの使用が便利です。
煮沸する必要がないので手間も省けますし、飲料用に冷ます必要もないので時短にも。
筆者も自宅に浄水器を設置していますが、最近では「ミルク用」「灰汁取り用」「弱酸性」「アルカリ性」等用途によって機能もさまざま、赤ちゃんがいる家庭にはとても重宝しますよ。
煮沸消毒はいつまで必要?
煮沸消毒はいつ頃まで必要なのでしょうか?
結論から言うと、日本の水道水は衛生的に特に問題はないので、赤ちゃんが離乳食を開始し少し経ってからなら様子を見ながら水道水に移行していっても良いでしょう。
水道水の煮沸消毒がいつまで必要かについては、特に指導されることもありませんが、だいたい1歳ぐらいになると消化機能も安定してくるので、1歳を目安に煮沸や赤ちゃん用のお水の使用をやめる方が多いようです。
デリケートな赤ちゃんには質の良い水を
まだまだ身体の機能が未熟な赤ちゃんには、大人以上に安全な水を飲ませてあげたいですよね。水道水についても様々な意見があり、自分で判断することが必要です。赤ちゃんの体調をみながらどの水が適切なのか、考えてあげたいですね。最近では消毒の必要がない便利な水もあると紹介しました。忙しいときにはそういったものも活用しながら安全な、質のいい水をのませてあげましょう。