育休明けの異動が希望と違う場合
育休明けの部署異動が納得できない!拒否はできる?
育休明けの部署異動は、自分の希望外部署だった場合に拒否できるものでしょうか。職場復帰をして短時間勤務をしながら家庭と仕事の両立を叶えるため、葛藤を抱えるママも多いです。育休明けの復職にあたって部署異動になったとき、どうやって乗り越えたか体験談も紹介します。
育休明けの部署異動に悩んでいる人へ
育休明けに人事異動がある場合は多いです。日本企業だと3ヶ月ごとを短期決算として、4月、7月、10月、1月に発表されることが多いのが人事異動です。外資系の企業だと1年に1度の12月付けで1月の人事異動が発表され、お正月明け勤務から異動になることが多いです。このほか新しい部署ができたりすると人事異動は行われ、年4回とは違うタイミングの時に人事異動があることもあります。
赤ちゃんを産み、保育園が決まり、ママが育児休業から会社に復職して気合いが入っている時に、自分がいた職種は違う人が担当していて自分は部署異動になってしまい、がっかりしてしまうケースをよく聞きます。
育休明けの人事異動は、不利益な扱いでなければ拒否ができないため、「本当はやっていた仕事をまかせてほしかったのに」と感じる女性も少なくありません。
子育てしていると部署移動対象?昇給・昇格できない?マミートラック問題!
育児休業を取得することで、昇給や昇格ができなくなった、部署異動があったと嘆くママもおり、マミートラックが問題視されることがあります。
マミートラックは、陸上競技で使われるトラックが言葉の由来です。仕事の出世コースのファストトラックに対して、子育てがあることから残業・転勤ができない制約のマミートラックの語句がうまれました。
マミートラックってどんな状況?
育休明けのマミートラックは、出産後、仕事に復帰した女性が簡単な仕事しか与えられず、ルーティンワークを行うことになったり、昇進できない状況になることを指します。
仕事と育児を両立したいので短時間勤務制度を利用するため、男性とは違う仕事を割り振りされたりして昇進・昇給から遠くなることを言います。単純労働のみだと、男性に比べるとどうしても企業で出世することが不利になってしまい、子育てと両立ができる配置転換ではあるものの、マミートラックに陥ると、仕事にやりがいを感じられなくなってしまう女性は多いです。
マミートラックは有利だと感じる人もいる
このマミートラックと呼ばれる言葉は、元々は、出産する女性に対して企業が配慮してくれるプラスの意味で使われてきました。しかし、現代ではマイナスの意味合いの方が強い言葉になってきています。
マミートラックができる企業は、少なくとも子育てママやパパの環境を理解しています。理由は、独身者や子供のいない既婚者には多くの仕事を割り振り、子育て中は仕事量を減らす裁量ができるからです。
復職した後、当分の間は短時間勤務制度を取り入れ、子供の病気で突発的なお休みがあっても大丈夫なように無理な仕事をさせないような配慮ができています。
しかし、仕事にやりがいを感じるママにとってみると、短時間勤務で定時に帰宅、突発的なお休みをもらわなくてはいけない、出張ができない、重要な仕事をまかせてもらえない、会議に参加できないなど、重要な仕事ができないことや出世ができない可能性があることから、マミートラックはデメリットが多い単語になっています。
マミートラックが有利と感じる例
- 子育て中は短時間勤務ができる
- 子供の突発的な体調不良に対応してもらえる
- ワークライフバランスが整っている(無理な仕事分配をしない)
マミートラックが不利と感じる例
- 仕事にやりがいを感じられない
- 重要な仕事を割り振ってもらえない
- 会議や出張ができない
- 昇進や昇給が遅くなると感じる
- 仕事をしていく上で早く帰宅することに肩身が狭く感じる
マミートラックを有効活用しようと思うのか、不利になってしまうから早く抜け出したいと感じるのかは人それぞれなので、難しい部分もあります。
育休明けに部署異動になるのは「不利益取り扱いの禁止」にあたる?
育休明けに異動になってしまう場合が問題になることがありますが、そもそも、育休明けで異動になるのは企業側からしても問題なのでしょうか。
厚生労働省の「不利益取り扱いの禁止」(注1)事項では、「事業主は、育児休業、介護休業、子の看護休暇、介護休暇、所定外労働の制限、所定労働時間の短縮措置等、時間外労働の制限及び深夜業の制限について、その申出をしたこと又は取得等を理由として、労働者に対して解雇その他不利益な取り扱いをしてはいけません。」と記載しています。
この中で、育休明けの部署異動は、「不利益な配置の変更を行う」になる可能性があります。
具体的な「不利益取り扱いの禁止」
- 解雇すること
- 期間を定めて雇用される者について、契約の更新をしないこと
- あらかじめ契約の更新回数の上限が明示されている場合に、当該回数を引き下げること
- 退職又は正社員をパートタイム労働者等の非正規社員とするような労働契約内容の変更の強要を行うこと
- 自宅待機を命ずること
- 労働者が希望する期間を超えて、その意に反して所定外労働の制限、時間外労働の制限、深夜業の制限又は所定労働時間の短縮措置等を適用すること
- 降格させること
- 減給をし、又は賞与等において不利益な算定を行うこと
- 昇進・昇格の人事考課において不利益な評価を行うこと
- 不利益な配置の変更を行うこと
- 就業環境を害すること
「不利益な配置の変更を行う」を詳しく調べると…
厚生労働省の「不利益取り扱いの禁止」(注1)では、「不利益な配置の変更を行う」に細かい指定があります。例えば、部署の異動について、“通常の人事異動のルールからは十分に説明できない職務又は就業の場所の変更を行うことにより、その労働者に相当程度経済的又は精神的な不利益を生じさせることは、これに該当します。”とあり、昇給をしないだけでなく精神的な不利益を感じさせた場合も該当することが書かれています。
「所定労働時間の短縮措置の適用について、当該措置の対象となる業務に従事する労働者を、当該措置の適用を受けることの申出をした日から適用終了予定日までの間に、労使協定により当該措置を講じない者としている業務に転換させることは「不利益な配置の変更を行うこと」に該当する可能性が高い」とし、単純労働をさせたりすることもあてはまります。また、誰でもできる雑務をさせたりすることに従事させることは「就業環境を害すること」になります。
育休明けの部署異動の拒否は難しいことが現実!
育休明けの異動に不満があっても、結局のところ、人事の権利は会社に認められています。人事異動、部署異動そのものを禁止はできません。多くの会社では育児休業規定があり、本人の希望や組織の変更によって、部署異動や職務の変更があるなどの復帰規定があります。
育児休業を終えて復職した時に、自分が望む職務や職種の異動ではないと感じた人も、会社がルールや規則にのっとって人事異動を発令していたら、拒否はせずに受け入る必要があります。
仕事内容が変わったとしても、異動先の部署が時短勤務できる仕事内容だったり、自宅近くの部署になったり、会社が子育てしやすい環境であれば拒否することはできません。
育児休業中に新しい人を社員や契約社員、派遣社員として雇っていた場合は、育休中に代替要員が仕事をまかされていることもあり、育休明けにママが現職復帰を希望していても無理なこともあります。自分の希望に沿わないからといって部署異動を拒否することは不可能です。
ただし、下記の場合は「不利益な配置の変更を行う」ことなので、不当だと言うことができます。
こんな場合は「不利益な配置の変更を行う」に該当する
- 正社員だったのに契約社員、派遣社員、パートになった
- 降格させられた
- お給料の基本金額が減給した(短時間勤務で残業代が減るのは除く)
- 人事考課で不当な評価となった
育休明けの部署異動で迷ったのなら相談を!
育休明けの異動で会社の措置に納得ができない場合は、我慢をせずに相談をすることが解決のひとつになります。都道府県には、労働局雇用均等室の電話相談があります。人に話を聞いてもらうだけでもモヤっとした気持ちが晴れることもあります。
労働局雇用均等室に相談できる内容
- セクハラ
- マタハラ
- 妊娠や出産、育児休業などを理由にする不利益扱い
- 性別差別
- 育児・介護休業について
第三者に話を聞いてもらい、不当な配置転換なのかどうかを尋ねてみることで、自分自身の問題も解決しやすくなります。
育休明けに異動になった人の体験談
育休明けに異動になってしまった人の体験談を集めてみました。人それぞれで仕事に対してのモチベーションが違うため、自分に合う人の体験談を参考にしてみましょう。
延長保育や時間外サービスを利用して
はやとママ(36歳)
育休明けに感じたのは、肩身の狭さと短時間勤務で帰らなくてはいけない申し訳なさでした。仲がいい同僚と同じ部署に異動になったので、育休といっても会社は配慮してくれたのだと思います。
ただ、同僚は子育て未経験者です。職種は営業事務なのですが、残業になりそうな時間には、営業の人は仕事を私ではなくて同僚に「お願いします」と渡します。そのあたりは、営業の裁量にまかせられていたのですが、「この人は短時間勤務だから残業して仕事してくれる同僚に」というのが明確にわかってしまい、本当に申し訳なかったです。仕事も「私がやるよ」と言っても、同僚は「自分に言われたから私が仕事をやる」と回してくれなかったのもあって、肩身が狭い思いをしました。
延長保育と義理の父母、時間外サービスのファミリーサポートを利用して、子供を代わりに迎えに行ってもらうようにして、自分自身も残業できるアピールをして、週に1度の残業デーを決めて仕事をするようになりました。子供もある程度大きくなってきたからできることと思うのですが、やっとしっかり働けるようになってきたのかもと感じています。
実際に降格!ショックを隠し切れない…
とりはむ(36歳)
育休明け前に面談がありました。そして、短時間勤務になると保険料の関係でパート扱いになると言われ、ショックでした。
料理関係の講師をしていて、子供を産む前は指名してくれる生徒数も多く、全国の大会に出たこともあります。自分自身でも社内で営業利益をかなりあげていた方だと思うのに、いきなりの降格と減給に驚きを隠せませんでした。企業側からするとお給料のベースも前年度にどれだけ生徒がいたかで判断し、私は育児をしていたので前年度の生徒数はゼロで計算されていました。
労働局雇用均等室の電話相談に問い合わせをして、不当ではないかと伝えたものの、もし不服があるのなら裁判の費用などもかかります。仕事をやめなくてはいけないくらいの気持ちがないと裁判できないため、結局のところは働きつづけなくてはと思う気持ちもあります。
現在は女性の先輩は妊娠や出産をしてからは、自分自身の家で講師活動をする人が多く、私も同じように働こうかと考えています。
上司との面談でやりたいことを伝える!
キラキラママになりたい(40歳)
育休中に会社の合併があり、育休明けはどうしても異動せざるをえないと感じていました。もちろん、少しは現職に復帰できるかと思っていたものの、2社統合のためシステムや仕事の進め方も変わっていました。
上司も変わっていて仕事の割り振りも済んだ後だったので、いわゆるサポート業務になりました。過去に担当していた専門的な職種をやりたいと思っての育休明けだったのですが、それも無理で悲しく感じました。
育休明けは仕事の人間関係を構築することから始める必要がありました。上司との面談では、「自分はこういった仕事をしてきた」「育休明けでも同じ仕事がしたかった」「部署異動もあるなら積極的にしたい」と自己紹介と合わせて話し、気持ちを伝えました。
上司も理解してくれ、子育て中ではあるものの要望は伝えたと満足しています。もちろん、復職してすぐ自分の希望職種にはつけないことも納得していますが、私の過去を知らない相手には気持ちを伝えないといけないと思いました。
フリーランスになった!
共働きママ(45歳)
キャリアを積むためには、出張や会議出席が当たり前でした。学歴もそれなりにあり、大手企業に入って独身の頃は男性と同じ環境でしっかり働き、残業もしてきて昇進もし、いわゆる出世街道も歩んできました。でも、育児休業をもらってからは出世の道から外れてしまいました。
復帰後、出張は子供がいるから無理と言われ、朝が早い会議は早朝の預かり保育がないため対象外になってしまい参加させてもらえません。女性の派遣社員と同じサポート業務になり、自分ができると思った仕事を外されて、マミートラックだと感じてモヤモヤしてしまう気持ちもありました。環境としては悪い環境ではなかったのですが、自分の仕事に対する情熱と会社が求めるものが違っていたのだと思います。
2人目の妊娠を機に退職をして、現在はフリーランスとして働いています。企業で在籍していた頃の人間関係を利用して働いていて、ある意味、子育てと両立することができていると感じます。
マミートラックはいずれなくなる!
教育ママ(45歳)
育休明けの異動は、納得いくものではなかったです。保育士として働いていて女性の多い職場なので、上司も女性、同僚も女性がほとんどです。子供がいるからと配慮してくれ、育休明けの異動では短時間勤務が可能な園で副担任になり、2人でクラスを受け持ちました。
これまで1人でクラスを担当していたのでやりがいがなく、大人2人でお互い協調していかないといけないのも辛くて……。でも、実際に働いてみて自分の子供が熱を出したらお休みをもらわなくてはいけません。働いていくうちに、子育てをしている間はマミートラックも仕方がないものなのだなと感じました。
見ていると、私だけが育休明けに異動になっているわけではなく、育休明けは何があっても大丈夫なように、副担任と2人制になっているクラスが多いです。また、先輩から、「いずれまた1人で担任持てるから」と言われたので、勇気づけられました。着実に子育ても仕事もがんばろうと思っています。
育休明けの異動は自分にとってプラス?マイナス?
育休明けの異動をいいと感じるか、よくないと感じるかは人によっても違います。子育てに配慮してくれてありがたいと感じるのか、または仕事へのやりがいを見出せなくてノイローゼのようになって仕事をやめてしまう女性もいます。
自分自身にとって、いい環境で働けるのが一番です。悩みがあるのなら親身になって相談できる電話相談も活用してみましょう。
参考文献