授乳すると肩こりがひどくなるのはなぜ?
授乳中のお母さんが抱える悩みの1つに「肩こり」があります。なぜ、授乳中は肩こりがひどくなるのでしょうか。
授乳中に肩こりがひどくなるのは授乳中の姿勢に問題があるから
授乳をするときにお母さんは、赤ちゃんを抱っこしたままじっとしていなくてはなりません。母乳がたくさん出て赤ちゃんもよく飲んでくれるなら5~10分で授乳を終えられますが、母乳の出が悪いときや赤ちゃんが遊びながら飲むときは、授乳に30分近くかかることもあります。
もちろん、授乳は一日に何度も繰り返す行為です。1日に数十分~数時間も同じ姿勢でいるために、お母さんの肩や首、背中は凝ってしまうのです。
授乳中の前傾姿勢は肩こりの原因になりやすい
授乳するときは、赤ちゃんが乳首をくわえやすいように、少し前かがみの姿勢を取ることが多いです。特に新生児期のときは知らず知らずに前傾姿勢になってしまいます。
前かがみの姿勢を長時間キープすると、腰と首に不自然な力がかかってしまい、腰痛や肩こりになりやすくなります。授乳するときも腰をできるだけ伸ばすようにしましょう。
育児や家事による疲労がたまっているから
赤ちゃんを育てるお母さんは、赤ちゃんのお風呂やおむつ替え、泣いているときには抱っこなど、1日中、何らかのお世話をします。
また、赤ちゃんのお世話以外にも、洗濯や掃除、料理、買い物などの家事もしている方が多いでしょう。疲労を貯め込み、休息が不十分だと、肩こりや首こりなどの症状が出てしまうのです。
運動不足だから
運動には、全身の血流を良くする、筋肉を鍛えるなど、肩こりに解消に効果が期待できます。しかし、産後の女性は、常に疲れた状態にあり、自分から「運動しよう」と思える人は稀です。そのため、運動不足という状況からなかなか脱却できません。
授乳中の肩こりを放置するのはやめよう
肩こりがひどくなると、肩以外の場所も痛みが生じることがあります。肩こりから頭痛や腰痛が派生し、身体全体がだるくなってしまうこともあるのです。
腰、首、脚、腕などが痛みだすこともある
同じ姿勢を長時間キープすることは、肩だけに負担をかけているのではありません。今は肩こりのみを意識していても、腰や首、脚、腕など全身に負担がかかっています。頭痛や腰痛などの痛みとなって表出してしまうこともあります。
肩こりがひどくなると母乳が出にくくなる
あまりにも肩こりがひどくなってしまうと、肩や肩甲骨周辺の血流が滞ってしまい、母乳の出が悪くなってしまう恐れがあります。十分な量の母乳を出すためにも、肩こりは早めに解消しておきましょう。
授乳中の肩こりを予防する対策は3つ
産後の肩こりは、まずは授乳姿勢や習慣の見直しが大切です。母乳育児をこれからも続けるためにも、以下の点を意識しましょう。
1.授乳クッションなどのグッズを活用する
授乳するときに前かがみの姿勢をとってしまうと、肩こりになりやすくなります。予防に役立つのがクッションです。お母さんの腰にはめて、赤ちゃんの高さを調整し、自然な授乳姿勢を保つためには、「授乳クッション」がやはり重宝します。
2.背中をまっすぐにしたまま授乳する
おっぱいを飲ませている間ずっと、前かがみの姿勢をキープして赤ちゃんの様子を観察する必要はありません。赤ちゃんの様子を確認するときだけ前かがみになり、それ以外の時間は背中をまっすぐにするよう意識して下さい。
背中をまっすぐにするときは、肩を意識して下げ、肩甲骨同士ができるだけ内側に近づくようにしてください。この姿勢をキープすることで、肩に余分な力が入らず、肩こりや腰痛を和らげることができます。
3.添い乳に頼りすぎない
お母さんが横になった姿勢で授乳する「添い乳」。夜間の授乳には便利な姿勢ですが、横向きで長時間過ごすことで、やはり肩がこってしまうこともあります。また、授乳しながら不自然な姿勢のまま寝てしまうと、起きたときに肩や首、腰などが痛む可能性もあるでしょう。
夜間に添い乳をするときは、そのまま寝ないように注意をしましょう。
授乳中の肩こりを解消する方法
授乳中に肩こりになってしまったときは、次の方法を試してみてください。
隙間時間にストレッチ
授乳中は、本格的に運動するのが難しいので、隙間時間を活用しましょう。
次の5つの部分を伸ばしておくと、肩こりや首こり、腰痛などの症状が出にくくなります。
脇の下
赤ちゃんを抱っこしたり重いものを持ったりすることで、腕や肩周りの筋肉が凝りやすくなります。脇の下をしっかりと伸ばして、肩こりを予防しましょう。
- 片手を思いっきり高く上げます。
- 上げた方のひじを曲げ、反対側の肩の後ろ側(できれば肩甲骨)に触れます。
- 上げていない方の手で、上げている方の腕のひじを頭側に引っ張ります。
- 引っ張ったまま10秒ほどキープしてから、両腕を下ろします。
- 反対側の腕を思いっきり高く上げ、同じ方法でストレッチを行います。
体側
身体の側面が凝ることで、肩周りが凝ってしまいます。30秒あれば両体側を伸ばすことができますので、1日に何回か思いついたときに体側のストレッチをしてください。
- 片方の腕を上げ、ひじをまげて、身体の後ろでもう片方の手と繋ぎます。
- 腕を下げている方に身体をしならせ、腕を上げている方の体側をしっかりと伸ばします。
- 10秒ほど体側をしっかりと伸ばしてから、つないだ手をほどきます。
- 反対側の腕を上げ、ひじをまげて、身体の後ろでもう片方の手とつなぎ、反対側の体側をしっかりと伸ばします。
首
首が凝ってしまうと、肩周りが凝ってしまい、母乳の出にも影響が出てしまいます。首筋のストレッチも30秒ほどあればできる簡単な動きですので、ちょっとした空き時間に首をほぐしてみてください。
- 頭を高く上げ、両方の肩を思いっきり下げます。
- 肩を動かさずに頭を左側に倒します。心地よく伸びるところで10秒ほどキープします。
- 肩を動かさないように意識しながら、頭を時計回りに90度回します。首の後ろ側を10秒ほど伸ばします。
- 頭を時計回りにさらに90度回して、首の左側をしっかりと伸ばします。同じ姿勢で10秒ほどキープします。
腰からお尻の下
お尻の周りの筋肉が凝ると、自然と前かがみの姿勢をとるようになってしまい、肩こり症状が出てしまうことがあります。腰からお尻の下の筋肉をほぐして、普段から前かがみにならないように意識していきましょう。
- 背筋をまっすぐにのばし、肩を思いっきり下げた姿勢で立ちます。
- 片方の脚を後ろに高く上げます。
- お尻の上の筋肉を意識しながら、脚をゆっくりと下ろす・上げるの動作を繰り返します。
- 反対側の脚を後ろに高く上げ、お尻の上の筋肉を意識しながら何度か上げ下げします。
肩甲骨
肩甲骨が離れてしまうと、肩が内側に入ってしまい、前傾姿勢になってしまいます。肩を大きく開いた美しい姿勢をとるためにも、肩甲骨周りの筋肉をほぐして、肩甲骨同士を近づけることが大切です。
- 頭を高く上げ、肩を思いっきり下げ、鎖骨を左右に大きく開きます。
- 両腕を曲げて、左手の指先を左肩の先に添え、右手の指先を右肩の先に添えます。
- それぞれの指先を肩に添えたまま、両ひじを前側に突き出します。
- 左ひじを反時計回りに、右ひじを時計回りに、ゆっくりと大きく回します。
- 左ひじを時計回りに、右ひじを反時計回りに、ゆっくりと大きく回します。
全身のストレッチも一緒に行うと効果アップ!
肩の筋肉は、首や背中・乳房・脇の下などの筋肉とも繋がっています。つまり、肩周辺の筋肉だけをほぐしても、肩周りの筋肉が凝っているなら肩こりが再発してしまう恐れがあります。
肩だけではなく、首や背中、脇の下など全身のストレッチをして、全身の凝りを解消しましょう。
ツボ押し
肩こりに効くツボを押して、症状を改善しましょう。
風池
首筋の生え際のくぼみ(首筋の外側)を「風池(ふうち)」と言います。このツボを押すことで、首の凝りを和らげることができます。両手の親指の腹で、風池を5~10秒ほど押して下さい。
天柱
風池から親指1本分首筋よりに進み、さらに親指1本分下に下がった場所にあるツボを「天柱(てんちゅう)」と言います。このツボも首の凝りに効くツボです。両手の親指の腹で5~10秒ほど押しながら、頭を軽く前に倒したり後ろに倒したりしてください。
合谷
手の親指の骨と人差し指の骨の付け根から、やや人差し指の先端に向かって移動したところに「合谷(ごうこく)」というツボがあります。痛気持ち良く感じる程度に押すと、首こりや肩こりの解消に効果が期待できます。
また、合谷は腸運動にも影響を与えると言われていますので、しっかりと押すことで便秘解消も期待できます。反対側の親指と人差し指で、合谷を挟みこむように20~30回押してください。
肩井
首から肩先につながる大きな筋肉の中央部分を「肩井(けんせい)」と言います。首筋を肩先まで指で押していくと痛く感じる部分がありますが、そこが肩井ですので、誰でも簡単に見つけることができます。
肩井を押すことで肩こりや首こりの解消が期待できますが、肩井だけを押すよりも肩井の周り全体を押す方がさらに効果的ですので、親指以外の4本の指をすべて使って肩井周りの筋肉をゆっくりと押して下さい。
中府
前側の鎖骨の中央部分から指1本分下に進んだところを「中府(ちゅうふ)」と言います。中府をほぐすことで肩こり解消が期待できますので、ゆっくりとほぐしていきましょう。
また、中府だけでなくその周りも一緒にほぐすことで、より大きな効果が期待できます。親指以外の4本の指をすべて使って、中府周りの筋肉をほぐしてください。
こっている部分と周辺を温める
凝っている部分を温めることでも、凝りを和らげられます。お風呂でゆっくりと肩と肩周りを温めるのが理想ですが、時間がないときはシャワーで肩と肩周りを温めたりするだけでも違うはずです。温湿布などで、肩周辺や肩甲骨を温めるのもおすすめです。
授乳中の肩こりは正しい姿勢で授乳するのが1番の予防
十分な休息のとりにくい授乳中の肩こりはとても辛いもの。予防や改善のためには、やはり授乳姿勢がとても重要です。
背中をまっすぐにした正しい姿勢を心がけ、肩こりを予防しましょう。それでも肩が凝ってしまったときは、ストレッチやツボ押し、温めなどで早めに解消するようにしてください。