ラッチオンとは?正しいやり方をマスターすれば授乳が楽に!
ラッチオンという言葉を知っていますか?赤ちゃんへの授乳は、意外に難しいお世話の一つです。赤ちゃんが上手に乳首に吸い付けない、1回の授乳時間が長い、乳首が痛くなった、肩が凝るなど、新米ママにとって授乳の悩みは数多くあります。
そんなお悩みを解決する方法が「ラッチオン」と呼ばれる、正しい授乳姿勢で、赤ちゃんがママの乳首に吸い付いたまま離れなくする方法です。「ラッチオン(latch on)」という言葉は直訳すると「しっかり掴む」「くっついて離れない」という意味です。
授乳は、ママと赤ちゃんが息を合わせることが大切です。赤ちゃんが吸おうとしているタイミングで、ママがうまく乳首を吸わせてあげることで、母子の両方にとって理想的な授乳を行うのがラッチオンの目的です。
要注意!ラッチオンではない授乳の特徴
授乳の仕方によっては、ママにも赤ちゃんにも負担がかかる場合があります。授乳の度にストレスを感じるようなら、間違ったやり方をしていないかチェックしてみてください。
授乳時に乳首が痛い
母乳を飲むとき、赤ちゃんは乳首だけをくわえて吸っているのではなく、母乳が溜まっている乳輪を口全体で押し出しながら母乳を出しています。正しい授乳ができていれば乳首や胸に痛みを感じることはありません。
乳首が痛いのは、赤ちゃんのくわえ方が浅いためと考えられ、ラッチオンとは遠い状態である可能性が高いです。
吸うときに音がする
授乳時に赤ちゃんの口から吸う音が聞こえるとたくさん母乳を飲んでいるイメージがありますが、実は正反対で、母乳の吸い方が悪いからこその音と言えます。きちんと乳首をくわえている時はおっぱいと口の間に隙間がないので、音は聞こえません。
ママが前かがみの姿勢になる
毎日の授乳で、肩こりや背中痛がひどくなったりはしていないでしょうか?不自然な姿勢を繰り返すと、リンパの流れや血流が悪くなります。母乳は血液からできているので、出が悪くなるという症状を引き起こす可能性もあります。
「赤ちゃんがおっぱいを吸いやすいように」と思うと、無意識に前かがみになってしまう方は多いのですが、この姿勢はママにとっても赤ちゃんにとっても正しい授乳方法とは言えません。
赤ちゃんからも、ママが前かがみの姿勢になると口がおっぱいにうまく吸い付けません。1回の授乳でお腹いっぱいにならないと授乳回数が多くなります。母乳を吸い残してしまう機会も増え、乳腺炎のリスクも高くなります。
長時間の授乳
理想的な授乳時間は、左右のおっぱいあわせて10~20分以内です。母乳が出ていて、ラッチオンで赤ちゃんが乳首に吸い付けていれば、十分可能な時間です。
授乳方法が定まらない場合、赤ちゃんが満足するまで飲んでもらおうと、ついつい授乳時間を長くしてしまいがちです。しかし、生まれたばかりの赤ちゃんにとっておっぱいを吸うのは重労働です。疲れて泣き出してしまう場合もあるでしょう。
ラッチオンの正しいやり方
ラッチオンで正しい授乳方法を行えば、赤ちゃんは満足してぐっずり眠ることができます。ママ自身と赤ちゃんのためにラッチオンのやり方を覚えましょう。
1.赤ちゃんと密着する
おっぱいだけではなく身体が密着することで正しい授乳姿勢になります。
横抱きの場合
OKな授乳姿勢
- ママと赤ちゃんのおへそが向かい合うような形で抱っこする
- ママと赤ちゃんの体がしっかりと密着している
前かがみになって授乳をするのが癖になってしまっている人もいるので、一度授乳している姿をパパに見てもらうなどして確認してください。
授乳クッションが便利!
壁や固めのソファーの背もたれに背中を付けたり、赤ちゃんの下に授乳クッションなどを置いて高さを調整すると、楽に正しい姿勢をとりやすくなります。
NGな授乳姿勢
- 赤ちゃんの首だけをおっぱいに近付ける
首が曲がっている状態ではおっぱいが吸いにくいのでラッチオンもうまくできません。赤ちゃんの首と身体は向きと同じ方を向くようにしましょう。
縦抱きの場合
OKな授乳姿勢
- 赤ちゃんをママの太ももに座らせる
- 口がちょうど乳首に届くように、高さを調整する
- 赤ちゃんの首と腰をしっかり支える
首すわりの新生児や腰座り前の低月齢の赤ちゃんでも縦抱き授乳は可能です。首や腰は手を大きく広げて、ぐらつかないようにしっかり支えてあげましょう。
2.赤ちゃんの口を開かせ舌の上に乳首を乗せる
赤ちゃんの口を指や乳首でトントンと刺激して開いたら、舌の上に乳首を乗せ、乳輪がすっぽりと口の中に入るようにくわえさせます。
赤ちゃんは舌の動きによって飲みながら母乳を押し出しています。よく「おっぱいに吸い付く」と表現されますが、実は授乳において最も大切なのは吸う行為ではなく、舌の位置とその動きなのです。
縦抱きの場合は、赤ちゃんの後頭部から首にかけてをしっかり支え、空いている手で授乳するおっぱいの下を支えて、吸い付きやすいように形を調整してください。しっかりと舌の上に乳首が乗ったら、手は腰に回しましょう。
3.乳輪までくわえさせた状態をそのまま保つ
母乳は乳腺で作られて一時的に乳輪の辺りで溜まっていますが、赤ちゃんがしっかりくわえて動かすことができれば、母乳を押し出すことができます。赤ちゃんの頭をおっぱいに押し付けすぎないように注意しながら様子を観察しましょう。
ラッチオンがうまくいった時のサイン
ラッチオンがうまくいった場合は、認識できるサインがあります。今までの授乳時とは明らかに違い、凸凹がピッタリとハマるような心地良さを感じられるでしょう。
痛みを感じない
ラッチオンがうまくいけば授乳中に乳首や胸に痛みを感じることはありません。
また、赤ちゃんもお腹いっぱい母乳を飲むことができるので、吸い残しもなく、授乳後はママのおっぱいも軽くなって爽快感があります。
おっぱいを飲む音が聞こえる
ラッチオンがうまくいくとたくさん母乳を飲めるので「ゴクンゴクン」と赤ちゃんの喉を母乳が通っていく音が聞こえます。ラッチオンを行うようになってから初めてこの音を聞いて感動したというママの声もあります。
赤ちゃんがアヒル口になっている
赤ちゃんが乳輪まで深くおっぱいをくわえこめているときは、赤ちゃんの唇が外側に歪曲する、いわゆる「アヒル口」の状態になります。
もし内側に巻き込まれていたら、ママが指で静かに引っ張り出してあげると外側にめくれます。
赤ちゃんがしっかりとおっぱいをくわえていると、口の中では舌が乳首を包み込むように筒状になって密着しています。なかなか目で確認するのは難しいですが、乳首の感覚で覚えておくと良いでしょう。
赤ちゃんと目が合う
横抱きでうまくラッチオンが出来た場合は、母乳を飲んでいる赤ちゃんと目が合います。赤ちゃんの顎がママのおっぱいにくっついて鼻が離れていれば、自然と赤ちゃんの顔は上向きになり、大好きなママの顔が見える状態なので当然見つめてきます。
大人もそうですが、顔が下を向いた状態など、喉が圧迫されるので食事がとりにくいです。赤ちゃんにとっても、やや上向きがもっとも母乳を飲み込みやすい姿勢です。
ラッチオンできていない場合のサイン
ママが「うまくラッチオンできた!」と思っていても、実は赤ちゃんがしっかりおっぱいに吸いつけていないケースがあります。あと一歩、惜しい状態の授乳姿勢をお伝えします。
赤ちゃんの頬にえくぼができる
もともとある赤ちゃんは別として、頬にえくぼができるのはラッチオンがうまくいっていないサインです。他におちょぼ口になっている場合も、もう一度体勢を整えてくわえる時点からやり直した方が良いでしょう。
ラッチオンできている赤ちゃんの口はアヒル口です。舌を使って母乳を押し出すのに、えくぼができたりおちょぼ口になるのは、舌で押し出すのではなく、「吸う」動作を頑張っている可能性を示しています。
授乳後に乳首がつぶれている
授乳後に乳首がいびつな形になっていたり、つぶれていたりする場合は、赤ちゃんが乳輪まできちんとくわえこめていないサインです。赤ちゃんは乳首だけを吸っているわけではないので、授乳後の乳首にはさほど変化が見られないのが通常です。
この場合、吸われている時に痛みを覚えることも多いです。痛みを感じた時点で赤ちゃんをおっぱいから離して、もう一度ラッチオンをやり直しましょう。
ラッチオンがうまくできない原因
ラッチオンがうまくいかないのは、なにが原因だったのでしょうか。抱き方やくわえさせ方が間違っている以外の理由も覚えておきましょう。
乳首の形
乳房が小さい、陥没乳首、扁平乳頭(乳輪と乳首がほぼ平面)、乳首が短い、伸びにくいなど、ママのおっぱいの形や状態によっては、ラッチオンがなかなかうまくいかないケースもあります。
ですが、授乳をあきらめる必要はありません。乳頭マッサージなどで改善されることもありますし、授乳姿勢によっては上手く吸い付けることもあります。また、乳頭保護器(ニップル)などを使って、飲みやすくすることも可能です。
赤ちゃんがおっぱいを飲むのが下手
赤ちゃんにも個性があって、生まれつきおっぱいを飲むのが下手な赤ちゃんも存在します。
口周りの筋肉が硬い赤ちゃんは大きく口を開けることが苦手です。ラッチオンのためには大きい口を開けるに越したことはないので、口周りを優しくマッサージをしてあげましょう。月齢が進むにつれて、筋肉が発達し、力強く上手に飲めるようになるので少しの辛抱です。
ラッチオンにおすすめのポジショニング
ラッチオンのやり方で挙げたのは「横抱き」「縦抱き」という王道のポジショニングでした。しかし、ラッチオンに適したポジショニングは乳首の形や赤ちゃんの個性によっても違います。
横抱きや縦抱きで上手くいかなかった、上手くいった別姿勢も試してみたいという方に向けて、別のポジショニングもご紹介します。
真横抱き
体勢は横抱きと同じですが、ママの腕の位置が異なります。母乳を飲ませるおっぱいとは反対側の腕で赤ちゃんの背中を支えて手で頭を支えます。反対の手は乳房を下から支えて飲みやすいようにします。
このポジショニングは前かがみになりがちなので、しっかりと赤ちゃんをママの方に引き寄せて密着させるのがポイントです。授乳時間が長くなると赤ちゃんを支えている腕が疲れるので、下にクッションなどを置いても良いでしょう。
脇抱き(フットボール抱き)
別名「フットボール抱き」とも言われるように、片手でフットボールを抱えるように赤ちゃんを抱いて授乳するポジショニングです。母乳をあげるおっぱい側の脇に赤ちゃんを抱えて、腕で身体全体を支えます。ママは座っている状態ですが、赤ちゃんの下にクッションなどを置いて高さを調節します。
片方の授乳が終わったらクッションごと赤ちゃんを移動すれば良いので楽です。帝王切開や乳房が大きい人にも適した方法です。しっかりとラッチオンすれば乳房全体の母乳をまんべんなく飲むことができます。
添い乳
ママと赤ちゃんが向かい合って寝た状態で、下側のおっぱいを赤ちゃんが飲む体勢です。うまく乳首をくわえることができない場合はママ側が調節してあげましょう。赤ちゃんの背中を支えているのが辛い場合はタオルを丸めたりして背中に添えてあげると安定します。
このポジショニングはママに人気が高く、自分も横になって授乳できることから寝かしつけの時に行うママが多いです。しかし赤ちゃんと一緒に寝てしまうとゲップをさせることを忘れたり、赤ちゃんの体にママが覆いかぶさる危険があるので、要注意です。
ラッチオンは授乳を楽しむために欠かせない!
授乳トラブルでお悩みの皆さんは、是非ラッチオンをマスターしてください!
授乳は赤ちゃんと過ごす大切な時間です。成長し、おっぱいを欲しがらなくなってしまうと、ママはやはり寂しい思いもするものです。今だけの授乳生活をできるだけ楽しく過ごせるように、赤ちゃんの様子をよく観察してあげてください。