育児・お世話

クレーン現象と発達の関係

クレーン現象をする子供の観察ポイント!発達との関係は?

クレーン現象とは、乳幼児が大人の手を持って、欲しいものをとってもらうなどの欲求を叶える行動です。発達に影響があるサインとされることもありますが、健常児でも言葉で意思表示できない0歳、1歳、2歳頃の子供には見られる行動です。子供にクレーン現象が見られた時の観察ポイントを紹介します。

クレーン現象って何?

クレーン現象とは、乳幼児が自分の手を使わずに、身近な大人の手を使って、欲しいものをとってもらうなどの欲求を叶えようとする行動を指します。

例えば、子供自身は机の上にあるおもちゃを取りたいと思っています。そんなときに、お母さんやお父さん、保育園の先生などの手や腕をつかみ、おもちゃの前まで連れていき、自分の代わりに取らせようと行動を促します。

まるで、自分以外の人の手をクレーンのように用いた意思表示のため、「クレーン現象」という名前がつきました。

クレーン現象が見られる年齢

クレーン現象は、言葉で欲求を訴えたり、指差しなどを行えない0歳~2歳ごろの子供に多く見られます。

3歳、4歳になってもクレーン現象が続くこともありますが、多くの場合、自分が意思を言葉で表現できるようになると、自然にクレーン現象は見られなくなっていきます。

クレーン現象と発達の関係

クレーン現象が見られると、子供の発達に影響が出ている可能性が疑われることもあります。もちろん、クレーン現象が見られることと発達に影響があることは同義ではなく、クレーン現象が見られても健常児であるパターンも少なくありません。

しかしながら、発達に影響がある子供の多くにクレーン現象が見られることから、頻繁にクレーン現象が見られる、2歳を過ぎてもクレーン現象が終わらないなどの場合、念のためその他の言動を注意深く見守った方が良いでしょう。

発達に問題がある場合

発達に問題がある場合、先天性の脳機能障害によって引き起こされる場合があります。症状が軽い場合も含めると人口の約1%の出現率と言われています。

発達に問題がある場合は先天性の疾患ですので、後天的に、つまり生まれてからの家庭環境などで発症することはありません。また、どのような特徴が見られるかは個人差が大きく、一概に語ることは困難です。

一般的には「対人関係における障害」「コミュニケーションにおける障害」「行動や興味分野が特定のものにパターン化していること」の3つの特徴があり、それらを観察することで発達に影響が出ていると診断されます。。

対人関係における問題

発達に影響が出ている子供は、対人関係において次のような特徴を示すことがあります。

コミュニケーションにおける障害

人とコミュニケーションを取る際において、次のような特徴を示すことがあります。

行動や興味分野のパターン化

発達に影響が出ている子供は、行動や興味分野にパターン化が見られることも少なくありません。
具体的には次のような特徴が見られます。

発達に影響のある子供に見られる行動やしぐさ

コミュニケーションや対人関係、興味分野以外にも、発達に影響のある乳幼児には特定の行動やしぐさが見られるケースもあります。

人の手を持って拍手をする

発達に問題のある赤ちゃんは、拍手やバイバイなどのしぐさを真似しないことがよくあります。また、稀に、クレーン現象と同じく、お母さんやお父さんの手を持ってパチパチと拍手をさせることもあります。

逆さバイバイ

バイバイと手を振るときは、手のひらを相手側に見せて手を振るのが一般的ですが、発達に問題のある子供は、手のひらを自分の方に向けて手を振る「逆さバイバイ」という行動をするケースがあります。

また、同様に「こちらにおいで」と手で招くしぐさも、手を自分の方に動かすのではなく相手の方に動かしてしまうことがあります。

どちらも、相手がした行動を自分が見たままに表現するために、本来とは逆の動きになってしまうことが原因で起こると考えられています。

食事の方法

食事のとき、本来は右の方が使いやすいのに、自分の前に座っている人の様子を見たままに表現しようとして左でスプーンやフォークを持つことがあります。お茶碗やコップも同様に、自分の利き手以外で取ろうとすることがあります。使いづらそうにしているときは、隣に座って食事の方法を教えるようにしてください。

もちろん、拍手や一般的なバイバイをしないことやする時期が遅くなることだけで、発達に問題があると診断されるわけではありません。

視力が弱く周りの様子があまり見えていない可能性もありますし、そもそも周囲の大人が拍手やバイバイをあまりしていないだけの可能性もあります。

発達に影響のある子供の診断タイミング

「クレーン現象」や「逆さバイバイ」などが0歳、1歳、2歳の頃に見られたとしても、すぐに発達に問題があると診断されるわけではありません。発達に問題があると診断されるためには、その子供の周囲の人々との関わり方やコミュニケーションの取り方などを総合的に判断する必要があります。

子供の発育は個人差が大きく、言葉の発達や行動などは、日に日に変化していくのが普通です。

3歳~3歳半健診時に「発達や行動に問題がある」と診断を保留にし、その後、小学校の就学時期までに必要な療育なども受けながら、経過観察を続けていくことが一般的です。

クレーン現象が見られたときの観察ポイント

乳幼児の発育は個人差が非常に大きいものですので、特徴的な行動が見られたとしても、すぐに問題があると診断することはできません。

同様に、発育の途中で一時的にクレーン現象が見られたとしても、時間経過とともに消滅することは珍しくないのです。

0歳~2歳のときのクレーン現象はよくあること

0歳~2歳の赤ちゃん・子供がクレーン現象をするのは、特に珍しいことではありません。健常児もお母さんやお父さんの腕を持って、自分が興味を持つものや欲しいものを取らせようとします。

大人を頼りにしている証拠

とりたい対象物が高い場所に置いてあるため、「自分では取れない」と子供が判断し、お母さんやお父さんなら届くかもという考えから、クレーン現象が見られることはよくあります。

パソコンで動画を見せていたら、マウスに大人の手を持って行く赤ちゃんもいます。「もう一度見せて」と欲求を言葉では表現できない年齢(月齢)でも、「これを動かすと見られるんだよね?」と理解している証拠でもあるのです。

慎重な性格の表れ

初めて見るおもちゃなど「もしかしたら危険なものなのかも」と少し不安を抱くときには、大人に対象物を掴ませることで、安全を確認する意味が含まれていることもあります。

面白い遊びの1つ

単純に親を動かせてものを取らせるのが面白くて、クレーン現象を繰り返す赤ちゃんや子供ももいます。意思表示ができないというよりは、意思表示の必要性を感じていない、単純に面白い遊びとして認識しているケースです。

クレーン現象が見られたときの観察ポイント

子供にクレーン現象が見られたときは、子供の様子を注意深く観察してみて下さい。
次のような様子が見られるなら、あくまで発達上の一過程に過ぎない可能性も高いです。

心配な点は3歳児健診で相談しよう

自治体によって実施時期に差はありますが、3歳~3歳半のタイミングで乳幼児健診が実施されます。この健診では、身体的な発育だけでなく、社会性の発達や問題行動の有無、言葉の発達などもチェックされます。
クレーン現象などの子供の様子に気になる点がある場合は、健診時に積極的に相談しましょう。

症状の程度によっては、療育センターの利用や幼稚園・保育園での対応についての説明を受けます。
ただし、まだまだ発育の個人差が大きい時期ですので、3歳児では発達に問題があると断定されることはほとんどありません。

療育センターの利用を勧められたときは

療育とは発達に遅れや問題がある子供が社会的に自立できるように行う治療と教育のことです。

「療育をする=障がい児と認定される」訳ではなく、発達の遅れが見受けられたために通ったものの、その後は特に目立った症状が見られないために療育不要となる子供もいます。また、幼稚園や保育園との両立も可能です。

自治体の療育センターに行くようにと勧められたときは、まずは療育センターに電話をかけて予約をしてから見学にいくようにしましょう。療育の内容はセンターによっても異なりますので、子供に合っている療育を実施させることが大切です。お母さんやお父さんの目で療育内容を確認し、納得できる場合は定期的に通うことができます。

療育は、早く始めるほど子供の成長を促せ、親の心理的負担を軽減できます。自治体の子育て相談窓口に電話をかけて尋ねてみましょう。

成長過程では色々なしぐさがあって普通

クレーン現象はかならずしも発達に問題のある子供だけに見られるものではありません。一時的にクレーン現象が見られることは珍しいことではありませんから、子供がクレーン現象をしたからと言って、叱ったり、やめさせたりしないようにしてください。