緊張性迷路反射とは?うつ伏せ抱っこ、仰向け抱っこで確かめよう
生後まもない赤ちゃんの頃から人間が持っている原始反射のうちのひとつに「緊張性迷路反射」と呼ばれるものがあります。「緊張性迷路」とは、赤ちゃんをうつ伏せ向きに抱くと身体を前に丸めようとし、仰向けに抱く際には身体を後ろにのけ反る動きのことです。
大人も大きく伸びをする時に身体が後ろに反りますね。この動きと同じような動作が赤ちゃんにも見られます。
この緊張性迷路反射にはどのような役割があるのでしょうか?もし緊張性迷路反射に異常があるとどのような弊害があるのでしょうか?詳しく解説していきます。
緊張性迷路反射の種類・異常反応・消失時期
緊張性迷路反射とは、姿勢反射の一種です。
姿勢反射とは、姿勢や平衡感覚を調整・維持するための反射の総称として呼ばれます。緊張性迷路反射以外の姿勢反射としては「対称性緊張性頸反射」があります。
これらの姿勢反射が赤ちゃんに見られない場合、脳障害や脊髄の障害が疑われます。
緊張性迷路反射の種類「前方TLR」「後方TLR」とは?
緊張性迷路反射には大きく2種類があります。ひとつは、「前方TLR」と言って頭が前へ傾く時に全身の手足を前に曲げる動きを指します。赤ちゃんをうつ伏せに抱っこした時に見せる、身体を前に丸めようとする動きですね。
もうひとつが、「後方TLR」と言い頭を後方に反らされた時に全身の手足が伸びる動きを指します。これは、赤ちゃんを仰向けに抱っこした時に見せる、身体を後ろに反り返るといった動きです。
この2つの反射が赤ちゃんの屈筋の発育やバランス感覚を養う際に必要な動きであり、生後間もない赤ちゃんに対して、外界の重力環境に適応することを助けてくれます。
緊張性迷路反射の異常反応
緊張性迷路反射における正常反応と異常反応を挙げていきます。
正常反応
前方TLR…赤ちゃんをうつぶせに抱いて、前方に傾けた場合、前に向けて身体を丸める。
後方TLR…赤ちゃんを仰向けに抱いて、上方に傾けた場合、後ろに向けて身体を伸ばし反らす。
異常反応
前方TLR…赤ちゃんをうつぶせに抱いて、前方に傾けた場合、逆に後ろに向けて身体を反らす。
後方TLR…赤ちゃんを仰向けに抱いて、上方に傾けた場合、逆に前に向けて身体を丸める。
何度やってみても、反射の正常な動きが見られない場合は中枢神経の発達に何らかの異常が認められる可能性があります。
赤ちゃんの発育には非常に重要な反射運動ですので、乳児3ヶ月健診にもチェック項目が設けられていますから気になる症状がある場合、ママは保健師或いは小児科医師に相談することをおすすめします。
緊張性迷路反射の消失時期
この緊張性迷路反射の2つは消失時期が異なります。「前方TLR」は生後間もなくから見られて生後4ヶ月頃には消失し「後方TLR」は生後6週目頃から見られ、3歳頃には消失します。
緊張性迷路反射を含む原始反射は、「脳幹」と呼ばれる臓器によって成立します。この下位の脳である「脳幹」がしっかりと発達することがより上位である「大脳」の発達に繋がります。大脳が発達し、複雑な処理も可能になってくると、原始反射は自然に消失します。原始反射が消失していくことを「原始反射の統合」と言います。
- 新生児の反射まとめ|反射の種類・消失時期・異常反応
新生児の反射運動には様々な種類があり、初めて子育てをされるお母さんは「これ正常なの?」など戸惑うことも多いはずです。そんなお母さんに向けて赤ちゃんの反射の種類や消失時期、異常反応について解説します。
姿勢反射の重要性|反射が消失(統合)しない時に起こる弊害
赤ちゃんのバランス感覚や屈筋の発達のために必要な緊張性迷路反射。もし緊張性迷路反射が消失しない場合はどのような弊害が考えられるでしょうか?緊張性反射以外の姿勢反射「対称性緊張性迷路反射」の存在も交えて解説します。
対称性緊張性迷路反射とは?
対称性緊張性頸反射とは、赤ちゃんをうつ伏せに寝赤ちゃんを仰向けに寝かせて頭を持ち上げる時、左に向けた時は左手足、右に向けた時は右手足が顔と同じ方向へ向かって伸びる反射運動を緊張性頸反射といいます。生後8~11ヶ月頃の赤ちゃんに見られる姿勢反射の一種です。
腕と頭が関連して動くことで、腕と触覚、頭と視覚といったように赤ちゃんは距離感覚を養い、自分の手と目の協調性を育みます。
緊張性迷路反射や対称性緊張性頸反射が消失しない場合に起こる弊害
緊張性迷路反射や対称性緊張性頸反射などの姿勢反射の出現と消失・統合は非常に重要です。消失するべきときに消失せず、反射を保持したままだと、まっすぐ立つことや安全に歩くといった大切な機能を習得していないということになります。物との距離感や空間把握、高さや狭さ、深さやスピード感などを掴むことが困難になってしまい、集団生活や社会生活においても、学習障害や運動障害などの影響から「いきづらさ」や「困り感」を本人が感じながら生活をせざるを得ません。
反射の統合が十分に出来ずに保時されたままだと次のような兆候が見られます。
- バランス感覚が悪い
- フラフラしている
- 動きが自然ではない
- でんぐり返しが上手に出来ない
- 姿勢良く座っていられない
- 方向や空間の距離や感覚が掴めない
- ボールを受け取ったり、跳び箱が出来ない
- 黒板の文字を写したり、眺めたりなどが出来ない
- 文字が飛び出して見えたりするなど視覚に異常が見られる
- スピード感覚がつかみにくい
- 全身運動能力が低い
- 机での学習が異常に疲れる
- じっと座っていられない
- 正しい姿勢を維持することに苦痛を感じる
- 本来保時している身体能力を存分に発揮出来ない
もしも反射の未統合が認められた場合は、感覚機能や反射能力に働きかけるエクササイズなどで反射の統合を促すことが可能です。赤ちゃんの姿勢反射に異常を感じた時は、早めに専門医に相談しましょう。
わかりづらいけど大切な緊張性迷路反射
「緊張性迷路反射」や「対称性緊張性頸反射」といった姿勢反射は、モロー反射などと違ってわかりづらく、ママたちが普段のお世話であまり意識することもありません。しかし、赤ちゃんの屈筋の発育やバランス感覚を養うためには必要不可欠な反射運動であることを覚えておきましょう。
特に緊張性迷路反射は、お腹の外の重力に適応するために大切な反射運動です。反射に異常がある場合は、中枢神経に問題がある可能性もあり、消失(統合)しないと大きくなってからも生活に支障をきたしてしまいます。
多くは乳児3ヶ月健診で反射の有無を確かめていますので、3ヶ月健診は忘れずに受けるようにしましょう。気になる症状がある場合は、専門医に相談してください。