赤ちゃんの新生児黄疸の症状
新生児黄疸の原因は?具体的な症状や光線治療の方法
新生児黄疸とは、赤ちゃんが生まれてしばらくすると皮膚や白目が黄色っぽい状態になることです。初めての出産を迎えたママは赤ちゃんの様子に慌ててしまうかもしれませんね。新生児黄疸の種類や症状、原因や光線治療の具体的な方法などを紹介します。初めての新生児黄疸でも慌てないための知識です。
新生児黄疸は赤ちゃんの約90%に見られる
出産を終えた安堵感とこれから育児がスタートする楽しみや責任感、様々な気持ちが入り混じっている産後のママはとてもナイーブな状態だと思います。
「赤ちゃん」と言われる様に、生まれて来た時は赤らんでいた皮膚が、次第に黄色っぽく変化する様子に心配する方も多いのではないでしょうか?
これは生後2日~4日に現れる新生児黄疸といわれるものです。90%の赤ちゃんに起こるとされ、新生児を過ぎるあたりから黄疸は引いていくとされます。
しかし黄疸の中には注意すべき病的な黄疸もあります。そんな新生児黄疸の原因と種類や症状、そして治療方法について詳しく見ていきましょう。
新生児黄疸とは赤ちゃんの肌や粘膜が黄色く見える状態のこと
まず新生児と黄疸についてどのようなものかを見てみましょう。
黄疸とは、血液中の赤血球が壊れてできた黄色を帯びた「ビリルビン」が肝臓でうまく処理されずに肌や粘膜に沈着し、肌や粘膜が黄色く見える状態の事を言います。
新生児とは、生まれてから28日までの赤ちゃんの事をさします。この時期は、赤ちゃんがママのお腹にいた時の環境から外の世界に適応しようとする移行期間になります。
この移行時期に起きる赤ちゃんの黄疸を「新生児黄疸」といいます。生まれてから2~3日頃から4~5日頃をピークに、多くの赤ちゃんは皮膚や白目が黄色っぽくなります。
しかし生まれたばかりの赤ちゃんは、ビリルビンを分解する肝臓の働きが未熟なので、一時的にビリルビンが血液の中にたまります。1~2週間ほどで自然に消えていきます。
黄疸の中には母乳の影響を受けて長引く場合もあり、時には病気が関わっているものもあります。
新生児黄疸の原因はビリルビンの未処理
上記にもビリルビンという言葉がたくさん出てきました。ビリルビンは新生児黄疸にどのように関わっているのでしょうか。詳しく見てみましょう。
赤ちゃんはママのお腹にいる間、胎盤を通してママから酸素をもらっていました。しかし生まれて外の世界に出ると赤ちゃんは、自分で肺呼吸をするので酸素を運ぶ働きをする赤血球は少なくて済みます。
また子宮の中と外では赤血球の種類が違うため、赤ちゃんのほとんどの赤血球は壊されて「ビリルビン」となります。ビリルビンは肝臓で水に溶ける性質になり、肝臓で作られる胆汁という消化液と一緒に体の外へでます。
しかし、生まれたばかりの赤ちゃんの肝臓の働きは未熟です。その為、赤血球が壊れてビリルビンができるスピードに赤ちゃんの肝臓の働きが追い付かず、皮膚や粘膜に沈着して、皮膚や白目が黄色になり黄疸として表れるのです。
出生時の体重が2,500g未満の赤ちゃんは要注意
約90%の新生児に起こるとされる新生児黄疸ですが、特に注意深く見守らなければいけないのは、出生体重が2,500g未満で生まれてきた赤ちゃん(低出生体重児)です。肝臓を含めた臓器の働きが未熟な為に黄疸が起きやすい状態にあります。
また、生まれつき血液が壊れやすい病気などで起こる場合や胆道閉鎖症の赤ちゃんにも起きやすいとされます。
危険な新生児黄疸の種類と症状
新生児の約90%に起こる「生理的黄疸」と母乳の成分が影響しているとされる「母乳性黄疸」があります。これらの黄疸は、自然と消えてゆく心配のないものです。
しかしその一方で、病気が関係して起きるものがあります。現在では起きる事は少なくなった「核黄疸」、ママと赤ちゃんの血液型の不適合で起こる「新生児溶血清疾患」、胆道の詰まりや狭くなっていることで起こる病気「胆道閉鎖症」があります。
一体、どのような黄疸なのでしょうか。その症状や治療について詳しく見ていきましょう。
新生児の殆どが生理的黄疸
新生児期のうち、一番多いのが「生理的黄疸」と呼ばれるものです。
これは赤ちゃんの肝臓の働きが未熟な為、赤血球が壊れてできるビリルビンの処理が追い付かずにおきます。生まれてから2~3日頃から4~5日頃をピークに、多くの赤ちゃんは皮膚の色が黄色っぽくなります。
1~2週間ほどで自然に消えていきますが、時には1ヶ月近く続くこともあり治療が必要となる場合もあります。
母乳育児の赤ちゃんは母乳性黄疸
母乳を飲んでいる赤ちゃんの場合、女性ホルモンや母乳成分の影響で黄疸が2週間以上~2か月近くまで続くことがあります。
母乳には肝臓のビリルビン処理の働きを邪魔するホルモンがはいっている為、黄疸が促進されるとされています。
一度、胆汁とともに排出された黄色い色素が、腸から体内に再吸収されやすい為、黄疸が長引く事があります。しかし、黄疸以外に異常がなければ母乳をやめる必要はありません。
ママと赤ちゃんの血液型が違う場合に起こる新生児溶血性黄疸(血液型不適合黄疸)
ママと赤ちゃんの血液型が違うために起こる黄疸で、生まれてから24時間以内に強い黄疸と貧血が起こるのが特徴です。血液型の不適合は、赤ちゃんがお腹の中にいるときからすでに始まっていて、血液型の組み合わせで黄疸の強さが変わるとされます。
その代表的な組み合わせにはABO式血液型不適合とRh式血液型不適合がありますのでご紹介します。
ABO式血液型不適合とは、ママの血液が0型でお腹の赤ちゃんの血液がA型またはB型の場合におこります。
赤ちゃんの血液がママの血液に入ると、ママの血液に抗体ができます。ママの体にないものを見分けて守ろうとしているのですね。
そして抗体をもったママの血液が胎盤を通して赤ちゃんに入ると、赤ちゃんの血液がこわされます。それにより、ビリルビンが増えていきます。
出生直後からほかの新生児黄疸よりも強くでるので、光線療法などによって治療をおこないます。
またRh式血液型不適合は、ママの血液がRh+でお腹の赤ちゃんの血液がRh-の場合におきます。ABO式血液型不適合と同じように、赤ちゃんの血液がママの血液に入り、ママの血液に抗体ができます。
そして抗体をもったママの血液が胎盤を通して赤ちゃんに入ります。すると赤ちゃんの血液がこわされてビリルビンが増えていきます。赤ちゃんの出生直後から強い黄疸が出て、核黄疸を引き起こしやすいとされています。
いずれも、強い黄疸がでるため光線療法を行ってビリルビンの値をさげます。しかし、その値が上昇する場合、すぐにビリルビンの値をさげる必要がある時は交換輸血を行う治療をします。
危険な核黄疸
黄疸が強くなって重症になり、ビリルビンが脳の神経細胞にたまる病気です。元気がなく、ぐったりしてミルクの飲みも悪くなります。
またチアノーゼ(血液中の酸素が不足して、唇やつめが紫色になること)やけいれん等も起こします。
核黄疸に進行する前に、ビリルビンの値を毎日検査し、その値で光線療法、もしくは交換輸血を行う処置をします。
核黄疸が進むと脳性まひなどの障害がおこり後遺症として残ることもあります。
胆道閉鎖症による黄疸について
胆道閉鎖症という病気によりビリルビンの値が上昇し、皮膚や白目が黄色くなる黄疸になります。
胆道とは、肝細胞から分泌される肝汁を十二指腸まで運ぶ管です。
その管がふさがる、また狭くなっている事が原因で起きる病気です。そのため胆汁が肝臓にたまってしまいます。黄疸が続き、便が白っぽくなる特徴があります。
治療としては、胆道のつまっている部分を手術で取り除き、胆汁が分泌されるように手術をします。生後60日以内に手術をすると術後の経過が良いとされるため、早期発見・早期治療が大変重要となります。
手術をしても胆汁が分泌されない場合は、肝硬変(肝臓の組織が硬くなり本来の働きを行う事ができない病気)などを引き起こすとされるため生体肝移植を行うこともあります。
白っぽい便は、消化液である胆汁の分泌トラブルによってうんちの色(黄色)の成分であるビリルビン(黄色の色素)がなくなったり、脂肪分が分解されなかったりする為におこります。
うんちは体の状態を知るバロメータ―です。個人差はありますが、赤ちゃんの健康的な便も黄褐色をしていますが、いつもとちがう便の場合、また顔色がおかしいなどの様子に変化がある時は注意が必要です。
新生児黄疸の治療
赤ちゃんの新生児黄疸の治療には光線療法が用いられます。原因であるビリルビンの値を下げるために最も効果的な治療になります。
また、ビリルビンの値が高くその黄疸が命に危険を及ぼす重篤な場合は、赤ちゃんの血液入れ替える交換輸血を用います。
日齢からビリルビンの値を判断して治療する
生まれてから2~3日頃から4~5日頃をピークに、多くの赤ちゃんは皮膚や白目が黄色っぽくなり、ビリルビン値も上昇します。
黄疸計や血液検査で血液中のビリルビンの値を計ります。生まれてすぐにビリルビン値が高い場合や急に値が上昇した場合、なかなか下がらない場合等に治療が必要となります。赤ちゃんの日齢によって血液中のビリルビンの値が高いかどうかの判断を行い治療します。
黄疸の光線治療について
光線治療は、赤ちゃんを保育器またはコット(新生児用ベット)の中にいれ、青色の光や緑色の光を当てます。
光を当てることによって血液中のビリルビンを分解し、水に溶けやすい性質に変化させる事で、おしっこに溶けて排泄しやすい状態にするという治療方法です。
光線治療をするときは、赤ちゃんの目を守るためにアイマスクやガーゼをして、基本的にはおむつだけをつけて治療をします。
光線治療によって赤ちゃんの皮膚がブロンズ色になったり、一時的におしっこの色が褐色になったりする副作用がありますが、痛みはないと言われています。ほとんどの場合、数日でビリルビンの値はさがります。
日光浴の効果
もともと、日光のあたる場所に赤ちゃんを寝かせていると黄疸が緩和されることから、これが光線療法のきっかけとなりました。
日光浴は光線治療と同じ役目を持っているので、ビリルビンは分解され黄疸の症状が軽減されるとされています。しかし、成長と共に肝臓の働きがしっかりしてきて黄疸が消えるものと、そうでない病的なものがあります。病的なものであれば光線療法などの適切な治療が必要となります。
日光浴は、日常生活において買い物や散歩などの外出時に行う程度で様子をみましょう。最近では、日光の紫外線の影響が考えられていますので、日光にあてる必要はないとの見方もあります。
黄疸が表れた時は病気が関係している可能性を見逃す恐れがありますので、必ず病院に相談するようにしましょう。
交換輸血による黄疸の治療について
特に核黄疸への重症を防ぐ為、胆道閉鎖症、新生児溶血性黄疸(血液型不適合黄疸)で黄疸の強弱を表すビリルビンの値が高い場合や急激なビリルビン値の上昇で危険を及ぼす時に、あかちゃんの全身の血液を交換する治療方法です。
血液を交換することで、アレルギー反応やウイルス感染等のリスクもあります。
黄疸が長引く時の病院受診の目安について
生理的黄疸や母乳性黄疸で少し長引いている診断を受けていれば心配はいりません。しかし、母乳の飲み具合が悪く様子がおかしい時は母乳の影響以外で黄疸が出ている可能性もあります。
皮膚や白目が黄色い状態が2週間以上続く時、黄疸の治療をしたけれどリバウンドで黄疸を繰り返した時、産後自宅に戻ってから黄疸が表れた時など、病的なものが関係している可能性がありますので必ず病院を受診しましょう。
黄疸以外にも赤ちゃんの機嫌は悪くないか、便の様子が普段と違わないか等、赤ちゃんの様子もしっかりと観察しましょう。
新生児黄疸の知識を知り赤ちゃんと一緒に成長しよう
黄疸にも種類があり、生理的なものと病気が関係するもの、そしてその症状や原因を少しでも知っておけば、ママの気持ちも少し落ち着かせて対処できるのではないでしょうか。
黄疸だけに限らず、受診のタイミングがわからず迷う時は産婦人科や小児科にきいてみましょう。生まれて来た一つ一つの命に向き合わないといけませんし、赤ちゃんと一緒に成長するつもりで不安なことは尋ねてみてください。また小児科も休みが重ならないように2つは準備しておくと困りませんよ。