育児・お世話

疳の虫の正体&夜泣き癇癪の対処

疳の虫の原因と手に負えない夜泣き癇癪の対処法

疳の虫は赤ちゃんが激しい夜泣きをしたり、かんしゃくを起こしたりすること。西洋医学では小児神経症と呼ばれています。疳の虫の原因や予防策、ちょっと面白い『虫』という名の由来と昔ながらの虫封じの方法、時発達障害やチック症との関連性までご紹介します。赤ちゃんの激しい夜泣き対応の参考に!

疳(かん)の虫が夜泣きの原因?疳の虫の正体と『虫封じ』

疳の虫(かんのむし)というのは実際に存在する昆虫ではありませんが、日本では古来より赤ちゃんの夜泣きや癇癪を「疳の虫が騒ぐ」という言葉で表すことがあります。

昔、ヒトの体にも寄生していた寄生虫が原因で病気になることが多かったこともあってか、夜泣き、かんしゃく、不機嫌などの症状もそういった「虫」のせい、という発想で生まれた言葉だと言われています。機嫌の悪いことを「虫の居所が悪い」と言うように、感情の乱れさえも『虫』の位置が左右し、『虫』を退治すれば赤ちゃんは落ちつく…と考えて、ご祈祷などをして虫封じを行う風習もありました。

と、まぁこのように赤ちゃんの癇癪や夜泣きが、その昔から大の大人も困らせてきたゆるぎない実績が見えてきたところで、癇癪や夜泣きの原因とされる『虫』の正体と対処法を探っていきましょう。

疳の虫の正体&ねんねを守るには

激しい夜泣きでパパやママを困らせてしまう疳の虫。その正体は一体何なのでしょうか?最近の医学理論をもとに、疳の虫の原因を解説します。

赤ちゃんの健やかなねんねを守ってパパやママの負担を軽くするために、日常の中でできる夜泣きの予防策もご紹介します。

疳の虫の原因は小児神経症?

夜泣きやかんしゃくの症状が出る疳の虫の原因は、赤ちゃんの精神症状と消化器症状にあると考えられおり、疳の虫は西洋医学的に言うと「小児神経症」であると言われています。

「小児神経症」は心の不安や恐怖心など、心の問題が深く関わっています。赤ちゃんは急激に脳が発達している過程でたくさんの刺激を受けるので心身のバランスを崩しやすく、バランスの崩れた心身をなんとか整えたくて泣くと言われています。

疳の虫の正体だと考えられる「小児神経症」の原因はまだまだわからないことが多いですが、精神的なストレスによるものが大きいと言われています。赤ちゃんは精神も発達段階なので、ささいなこともストレスとして受け取ってしまいがちですが、その中でもパパやママとの関係は赤ちゃんの精神状態に影響を及ぼす大きな要因の一つとなります。

ですが、決してダメなパパママだから赤ちゃんが疳の虫にかかるというわけではありません。真面目で責任感の強い親であるほど赤ちゃんに疳の虫が起こりやすい傾向があるとされ、このような場合はパパやママがストレスを溜めていることが影響している可能性は高いと考えられます。

他にも『疳の虫』が起こりやすい条件として、親子の体質遺伝による原因や、2人目以降の赤ちゃんにも疳の虫が起こりやすいと言われています。

疳の虫(小児神経症)の症状

疳の虫の症状として代表的な例は以下の4つです。

その他にも、不機嫌、食が細くなる、下痢や便秘なども疳の虫の影響と言われることもあります。

最新科学による『手足の痛みとの関係』説

最新の科学では、疳の虫の正体の一部は寒さや疲労によって起こる手足の痛みや発作だったという発表がされました。これは、疳が強い乳幼児への調査をした結果、一部の乳幼児は寒さ、悪天候、疲労、体調不良などをきっかけにして、手足の痛みを訴えていることを発見したというもの。

この手足の痛みは思春期以降に軽減されると言われており、親や兄弟も同じように手足の痛みを経験しているケースも多いことから、遺伝にも関係していると言われています。
これらの症状に「小児四肢疼痛発作症」と名付け、病気の概念を確立しました。今後は遺伝子検査による診断できるようになる可能性もありますが、残念ながらまだ特効薬はありません。

疳の虫が騒ぐ「癇の強い子」とは?「HSC」という敏感な子供

疳の虫がよく騒ぐ夜泣きが激しい赤ちゃん、癇癪やイヤイヤが激しい赤ちゃんを「癇が強い子」または「疳が強い子」と昔の人は呼びました。癇(疳)が強い赤ちゃんは神経が興奮してしまいやすい性格傾向を持ち、ちょっとした刺激で怖がったり驚いたりして激しく泣いてしまいます。

親御さんが悪い訳でもなく、赤ちゃんにはもともと育てやすい子、育てにくい子が実際にいて、それは生まれつきの個性です。日本でいう「癇が強い子」に該当すると思われるものに、アメリカの心理学者エレイン・N・アーロンが提唱したHSP・HSCという概念があります。

HSCとは人一倍敏感な子供たち

HSPとは、「Highly sensitive person」の略称で、人一倍敏感で多くの人がなんとも思わないような光や音などの刺激に強く反応したり、動揺してしまう人を指します。HSPは生まれながらの気質なので、こうした気質を持つ子供をHSC=「Highly sensitive child」と呼びます。

エレイン・N・アーロンは、こうした敏感な気質を持つ人は、程度の差はあれ5人に1人の割合でいるにも関わらず、「打たれ弱い人間」「臆病」などとマイナスのレッテルを貼られがちだと指摘しています。

HSCの赤ちゃんは光や音、衣類の刺激ですら不快に感じて夜泣きの原因になる

HSCの赤ちゃんは昔でいう「癇が強い子」で、ちょっとした音や光、時には衣類の肌触りなど大人には気にならない、気づきすらしない部分に反応すると言います。

HSCの子育てに関しては、『HSCの子育てハッピーアドバイス HSC=ひといちばい敏感な子』(1万年堂出)が詳しいです。夜泣きが激しい以外にも、普段から些細なことで泣き続けたり、よく癇癪を起こす赤ちゃんに育てにくさを感じている方は、一読してみることをオススメします。

親が気をつけてあげられる『疳の虫』の予防対策

赤ちゃんは脳の発達が不十分な中で次々に新しい刺激を受けるので、それに上手く対応できず情緒不安定になってしまうことがあります。これが疳の虫の原因になることも。パパやママが日常の中で幾つかのポイントに気をつけてあげることで、赤ちゃんの激しい夜泣きの予防対策につながります。不規則なリズムや寝る前の興奮など、日常の中の刺激を取り除いて赤ちゃんを安心させ、疳の虫を沈めてあげましょう。

睡眠のリズムを作り、しっかりと脳を休ませる

赤ちゃんは1日の生活リズムが定まっていないと夜泣きにつながってしまいますし、睡眠によって脳は記憶を整理したり、興奮を鎮めて精神を安定させていますから、寝不足だと脳が休まらず興奮状態が続いてしまいます。

朝は6時〜8時に起き、夜は9時頃までには寝るようにしましょう。
お昼寝が長すぎるのも禁物です。赤ちゃんが気持ちよさそうにぐっすりと寝ていても、午後5時頃までにはお昼寝を切り上げましょう

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夜熟睡できるように「いつもの場所」へ行き、昼間にしっかり疲れさせる

日中に公園や子育て支援センターなどに行って体を使ってしっかり遊ぶと、赤ちゃんは体力を使い切って熟睡してくれます。ポイントはいつもお散歩に言っている見慣れた場所へ行くこと。癇の強い子にとっては、初めての場所では刺激が強すぎて夜泣きしてしまうことがあります。

寝る前に赤ちゃんを興奮させない

寝る前にお風呂に入ったり、体を使う遊びをしたり、テレビを見たりすると赤ちゃんは興奮状態になります。寝る前に興奮してしまうと寝つきが悪くなり、夜泣きにつながってしまいます

毎日同じ時間に、同じ入眠儀式を行う

眠る前にテレビと電気を消し、部屋を間接照明や豆電球の優しい光だけにします。オルゴール調の優しい音楽をかけたり、眠りを誘う内容の絵本を読むなど、毎日同じ行為を行うことで赤ちゃんに眠りのスイッチが入りやすくなります

抱っこやおんぶをして歩く

抱っこやおんぶをして歩くと、赤ちゃんは最も心が落ち着き眠りにつきやすくなるとわかっています。抱っこ紐やおんぶ紐をうまく活用してお散歩の気分で歩くと、赤ちゃんはいつの間にか眠りについてくれるでしょう。

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疳の虫(小児神経症)をなんとかしたい!治療

疳の虫は成長の過程で見られるもので、小学生低学年になるまでには疳の虫も自然におさまります。そのため治療を受けなくても子どもが大きくなるまでおおらかに見守ることもひとつの手段です。
しかし夜泣きがあまりにひどく続くときは、体の不調が原因である可能性も考えられるため、かかりつけの病院を受診して専門的な検査を受けるのもいいでしょう。

疳の虫は治療できる?

疳の虫は精神的な原因が強いとされているため、直接的な治療の必要性はありません。西洋医学において小児神経症はまだまだ解明されていないことが多く特効薬も確立していないため、治療内容は両親へのカウンセリングを行い、子どものストレスを溜めないようなアドバイスが行われることが一般的です。

お薬(市販・処方)

あまりに疳の虫がひどいときや、興奮して眠りにくそうなときは薬で抑える方法もあります。病院では鎮静作用のある薬を処方してくれるでしょう。
ドラッグストアでも購入できる市販薬として漢方薬などがあります。高ぶった神経を落ちつかせて体全体の調子を整えるお薬で、生薬だけで作られているため赤ちゃんに飲ませても安心です。漢方薬は体質や症状が合わないと効果が発揮できないため、漢方薬を購入するときは専門家がいる薬局で相談しましょう。

漢方薬を飲ませるときは、赤ちゃんだけではなくママも一緒に薬を飲むことが推奨されています。親の精神を安定させるのと、母乳を通して赤ちゃんに成分を与えることで高い効果が期待されます

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疳の虫とチック症

体の一部の筋肉を意味もなく繰り返し動かしたり、声を発したりする「チック症」も小児神経症の症状です。これらの現象が毎日のように起こり、長期間継続するときがチック症にかかっていると考えられます。ですが、子どもがチック症にかかる年齢も3歳頃が多く、1歳未満の赤ちゃんは発症しないとされています。

チック症とは

チック症は特定の筋肉が突発的に勝手に動いたり、意味もなく声を立てたりする現象です。
チック症を引き起こす原因は、ストレスや緊張、不安感などの精神的な負荷などが挙げられます。

疳の虫の由来…疳の虫ってどんな虫?

冒頭でも触れたように、日本では「疳の虫が強い」という言い方が昔から使われています。

疳とは東洋医学で「脾疳(ひかん)」を指します。これは甘いものを食べることで消化器を傷める、消化器の不調を意味していますが、「かんしゃく」の「癇(かん)」の字とも通じることから、「疳」は神経が高ぶってイライラする症状を意味するときにも使われるようになりました。

疳の虫は神経が過敏になることや、弱りやすい体質によって体の不調が起こり、理由もなく突然泣き叫ぶのが特徴とし、眉間や両目の間などに青筋が浮いて見える、眉間に縦皺がある、顔が青白い、表情が険しいなど、外見や仕草に特徴のある赤ちゃんは癇が強い子と言われてきました。

信じる?信じない?疳の虫を出す方法/虫封じ

昔の日本では回虫という白い紐状の寄生虫の保有率が高かったこともあってか、疳の虫も『白くて細い繊維のような姿をしている虫』という言い伝えがあります。この虫を体の外に出すことによって、赤ちゃんの激しい夜泣きやかんしゃくを落ち着かせられると信じられ、(それほどどうしようもなかったのでしょう)日本では昔から疳の虫を出す方法として『虫封じ』が行われてきました。

生後100日以上の赤ちゃんを対象に、虫封じのお札を赤ちゃんと見立てて釘を打ち込んで虫を退散したり、赤ちゃんの手のひらに呪文を書いて虫を退散させたりする方法など、ご祈祷の方法は地域によってさまざま。自宅でできる虫封じとして伝わっているのは、塩や墨汁を使って疳の虫を出す方法です。現代でも、祈願で赤ちゃんやパパママに安心感を得られる効果から、毎年虫封じを欠かさず行っているというご家庭もあるんですよ!

おウチでできる!疳の虫の出し方

昔から伝わっている疳の虫を出す方法として、晴れた日に塩と墨汁、お茶がらを使う虫封じの方法がコチラ↓

1.晴れた日に決行します。
2.洗面器程度の大きめの容器にお茶がら100g、塩10g、墨汁を100ml入れてよくかき混ぜます。
3.容器の中に赤ちゃんの手を入れて、3分ほど手にこすりつけます。
4.茶葉などを軽く落としてから直射日光で手のひらを乾かします。

手が乾燥してくると、指先から疳の虫の正体だと言い伝えがあり、白い糸が出てくるので引っ張り出せば、疳の虫が体から出て行くとされています!

そのときに本当に白い糸状の疳の虫が出てくるのか、出てきたらそれは一体何なのか、は永遠の謎ですが、昔はよく、この方法でおばあちゃんが子どもたちの虫を出してくれていたのだそう。やってみましょう!

赤ちゃんに寄り添った方法で疳の虫を撃退しよう!

夜泣きはパパやママを精神的にも体力的にも追い詰めてしまいますし、病気の心配をしてしまうかもしれません。しかし、疳が強いかどうかは赤ちゃんの個性や環境などによって様々変わってきますし、疳の虫は成長過程で起きる症状で、成長とともにおさまります。

『子育て』というロールプレイングゲームがあったら、夜泣きやかんしゃくはいわゆる第3ステージくらいに現れるボスキャラです。赤ちゃんの成長とともに親レベルも上がっていきますし、どんなに疳の虫(ボス)が強くても、いつしかその子が大きくなったときには、『ああ、あんなボスキャラもいたわね…、大変だったなぁ』と懐かしく振り返られる日はやってきます。今はつらくとも、きっと乗り越えられるもの!「親として強くしてもらったいい経験」と、親レベルを上げていきましょう。

ですが、もし夜泣きが激しすぎて精神的に追い詰められてしまうようなことがあったら、パパママふたりだけでなくおじいちゃんおばあちゃんやお医者さん、保健師さんの知恵や手も借りてみてはいかが?赤ちゃん、パパやママにあった方法を探しながら疳の虫を撃退しましょう!