赤ちゃんの輸送反応ってどういうこと?
泣き始めた赤ちゃんを抱き上げて、お家の中をウロウロしたら泣き止んでくれたという経験を多くのママやパパがされていることでしょう。
単に抱っこしても泣き止んでくれないので、歩きはじめるとご機嫌になるのは、よく考えれば不思議ではありませんか?
中には「そろそろ座ろうかな」とママやパパが腰を下ろそうとした途端に、再び泣くこともあります。実はこれには本能的な理由があるのです。
輸送反応は赤ちゃんに備わっているもの
理化学研究所は、泣いている赤ちゃんが抱っこされて歩いてもらうと泣き止むという現象について、科学的に研究し、そのメカニズムである「輸送反応」について解説・発表しています(注1)。
輸送反応とは科学的根拠のある泣きやませ術のこと
輸送反応とは、赤ちゃんがママやパパに抱っこして歩いてもらうと、リラックスして泣き止むというというメカニズムです。
理化学研究所の脳科学研究センターは、2013年に赤ちゃんの輸送反応に関する研究結果を発表しました。研究に際しては、生後6ヶ月以内の赤ちゃんと母親12組が協力をしてもらい、母親に赤ちゃんを抱いて約30秒ごとに「座る・立って歩く」という行動を繰り返してもらい、赤ちゃんの様子に変化を調べました。
すると、赤ちゃんを抱っこして歩く行為は、赤ちゃんの心拍数の減少(リラックス状態)に繋がり、科学的に有効な泣き止ませ方法であるということが実証されたのです。
輸送反応に関する研究結果
- ママやパパが抱っこして歩くと赤ちゃんの泣く量が約1/10に減る
- 歩き始めると赤ちゃんの運動量が約1/5に減る
- 歩き始めてから3秒程度で心拍数が著しく低下
- 赤ちゃんの輸送反応には、触覚・固有感覚・小脳皮脂が必要となる
- 赤ちゃんは輸送反応によりママやパパの育児に協力している
赤ちゃんに「輸送反応」が備わっている理由
輸送反応は、ヒトの赤ちゃんだけでなく、ネコ、ライオン、リスなど他のほ乳類の赤ちゃんにも見られます。母親が口に子供をくわえて運ぼうとすると、子供は丸くなって運ばれやすい体勢をとるのです。マウスを使った実験では、人間と同様に子ネズミには心拍数の低下も見られています。
大人しくしていない動物の赤ちゃんを母親が運ぶ際には、大人しくされている場合に比べて時間がかかってしまいます。自然界では、移動に時間がかかるほどに、外的に狙われる可能性も高まりますし、声を出すのも危険です。
そのため、人間を含めたほ乳類に輸送反応が備わっているのは、「子供が親に協力することで、自身の生存を守ろうとするため」と考えられています。
輸送反応は赤ちゃんと親の協力によって成り立っている
輸送反応は、なにも知らず、すべてを親に任せているだけに見える赤ちゃんも「親に協力する」という本能が備わっていることを示しています。
親が一方的に赤ちゃんの世話をしているように見えますが、実際は赤ちゃんも親に対して協力する姿勢をみせており、親子関係とは相互の協力によって成り立つものなのです。
パパやママが赤ちゃんを抱っこして歩くと赤ちゃんが泣き止むのが輸送反応の効果
輸送反応は、赤ちゃんに備わっている本能ですが、この本能は、ママやパパをおおいに助けています。ママやパパは、赤ちゃんがいつまでも泣き止まないとイライラしてしまうものです。
赤ちゃんが抱っこされて歩いてもらうと泣き止むことは、ママやパパの育児ストレスを減らしてくれるという大きな効果があります。
輸送反応は、ママやパパだけでなく、赤ちゃんの身近にいてお世話をしてくれるおじいちゃん・おばあちゃんやお世話をしてくれるその他の人に対しても見られます。
ただ、人見知りが始まった赤ちゃんの場合、親以外の人に抱っこされると逆に激しく泣き始めてしまう可能性があります。
赤ちゃんが泣き止むように上手に抱っこして歩く方法
赤ちゃんは、日に日に重くなっていきます。3kgで産まれた赤ちゃんも生後3ヶ月には倍の約6kgに成長しています。1歳のお誕生日を迎える頃には、約10kgになっています。
赤ちゃんが重くなっていくにつれて、抱っこをするママやパパの体への負担もどんどん大きくなっていきます。抱っこのしすぎによる腱鞘炎や腰痛・肩こりなどを防ぐために、少しでも体の負担のない抱っこを心がけましょう。
上半身全体で赤ちゃんを抱っこする
腕だけで赤ちゃんを抱っこしていると腱鞘炎になってしまう可能性が高くなります。赤ちゃんをママやパパの体に密着させるようにして、上半身全体で赤ちゃんを抱っこすることで、腕への負荷を少なくできます。
ママやパパと触れる面積が大きい方が赤ちゃんも安心しますので、ぜひこの点は習慣化しましょう。
抱っこグッズは正しく装着する
赤ちゃんを抱っこして外出する時に、スリングや抱っこひもなどのグッズを使用している方も多いでしょう。ベビーカーで外出中に赤ちゃんが泣き始めたら、スリングの中に入れて泣き止ませるという方法もあります。
スリングや抱っこひもを使用することで、体重が重くなった赤ちゃんでも、随分楽に抱っこすることができます。ただ、正しく装着していないため、腰痛や肩こりになってしまう方もいます。取扱説明書をよく読んで、正しく装着することで、ご自分の体を守ってあげましょう。
抱っこして歩いて寝た赤ちゃんを布団に寝かせる方法
抱っこされて歩いてもらうと安心して寝てしまう赤ちゃんは多いです。しかし、赤ちゃんを布団に降ろすときに作動するのが『背中スイッチ』!布団に置くと、赤ちゃんが泣き出す困った現象です。
せっかく寝てくれた赤ちゃんをそのままお布団で寝かすためには、どうしたらいいのでしょうか?
ママの体と触れた状態のまま布団に寝かせる
抱っこしている赤ちゃんを急にママの体から離して布団においてしまうと、赤ちゃんはママの体温が遠のいたことに気付いてしまいます。ママも赤ちゃんの体に密着したまま布団に体を近づけていってください。
頭からゆっくりと寝かせる
赤ちゃんを布団に寝かせる時には、頭付近から布団につけます。その後、体の面積の広い背中、お尻の順に降ろします。体の面積が広い部分から置くと、ママの体と布団との温度差に気づきやすいので、注意しましょう。
事前におくるみやバスタオルに包んだ状態で、抱っこして寝かしつけるのもおすすめです。布団と温度差を感じにくくなり、背中スイッチが作動しにくくなります。
すぐに赤ちゃんから体を離さない
赤ちゃんを布団に寝かせ終えても、すぐに赤ちゃんから体を離すのではなく、しばらく様子を見てから徐々に体を離していきましょう。そして、布団をそっと掛けてあげてください。
あらかじめ部屋を暗くしておく
赤ちゃんを抱っこする前に、赤ちゃんを寝かせる予定の部屋を暗くして、準備をしておきましょう。
お部屋が明るいと、せっかく寝てくれた赤ちゃんが、パッと目を覚ましてしまいます。
赤ちゃんを抱っこして歩くのが難しいときの対応
「抱っこして、歩いてあげれば泣き止む」とはいっても、疲れていたり、手が離せなかったりして、歩いてあげられない時がどうしてもあります。家で赤ちゃんと2人で過ごす時間が長いママは、何度もそういう経験をしているのではないでしょうか。
赤ちゃんを抱っこしてあげられない時のために、抱っこ以外で赤ちゃんを泣き止ませる方法を見つけておきましょう。
バウンザーを利用する
バウンザーとは、座面を揺れ動かせるベビーチェアのことです。ゆりかごのようにママやパパが揺らすだけでなく、赤ちゃん自身が動く振動で、バウンドする商品もあります。
バウンサーにのせると、赤ちゃんは抱っこして歩いてもらっているときのように、自然な揺れを体に感じられます。そのため、安心して眠くなったり、ご機嫌になることが多いです。
どうしても赤ちゃんを抱っこして歩いてあげられない時には、ママやパパのことが見える場所にバウンザーをおいて、赤ちゃんを座らせてあげましょう。バウンザーは、軽いので持ち運びやすいので、家の中の好きな場所に置いて使用することができます。
ハイローチェアを利用する
ハイローチェアは、椅子の高さやリクライニングを調節できるので、簡易ベッドとして赤ちゃんを寝かせておいたり、食事用の椅子にしたりなど、様々な用途があります。
ハイローチェアは、手動でのゆりかご機能(スウィング機能)が付いているのが一般的で、中には電動で、「ママの抱っこの揺れを再現」することに注力している商品もあります。
そのままベッド代わりになるので、揺れが気持ちよくなって眠ってしまっても、移動させる必要はありません。
ハイローチェアの価格はバウンザーより高くなりますが、新生児から長く活用できます。
赤ちゃんを抱っこして歩くとママに体力がつく!
赤ちゃんを抱っこして歩くのは、意外と疲れます。特に、赤ちゃんの体重が重くなってくると、ママにはとてもハードです。
そんな時は、「赤ちゃんを抱っこして歩くことは、ダイエットにもなる!」と考えてみてはいかがでしょうか。
抱っこウォーキングの方法
産後に体型を戻すためにダイエットをしたいと思っても、赤ちゃんのお世話に追われてママはなかなか自分の時間を取ることができません。赤ちゃんを抱っこして歩くことは、産後ダイエット効果も期待できます。
1人で歩くよりも赤ちゃんを抱いている分だけ負荷がかかり、消費カロリーが多くなりますので、短い時間でも効果的なウォーキングとなります。
効果的な歩き方
- 背筋をスッと伸ばす
- 肩に無駄な力を入れない
- お腹をへこませる
- お尻や太ももの内側に力を入れて締めることを意識する
- 腕を軽く曲げて大きく振る
赤ちゃんに輸送反応があるのはやっぱり抱っこが大好きだから
赤ちゃんは、ママやパパに抱っこされるのが大好きです。赤ちゃんが頻繁に泣くと、毎回、抱っこするのも大変かもしれませんが、抱っこしてあげることができるのも、子どもが小さいうちだけです。
子育てしていると月日はあっという間に過ぎて行きます。気付いたら抱き上げられないほど我が子が大きくなっていますので、抱っこしてあげることができる今のうちに、たくさん抱っこしてあげましょう。