育児・お世話

初乳の特徴・出ないときの対処法

初乳は出産直後の赤ちゃんになぜ必要?出ないときの対処法

初乳とは何か、色や量、特徴や分泌される時期、初乳の成分を成乳と比較して説明します。初乳には赤ちゃんの免疫力高め、胎便を排出しやすくするなど、出生直後の赤ちゃんにとって嬉しい効果が盛り沢山!またその後の育児に与える影響についても解説。初乳が出ないトラブルへの対処法もご紹介します。

初乳ってなに?出産直後の赤ちゃんと初乳の働き

妊娠中のプレママは、出産後に母乳がたくさん出るか、ちゃんと母乳育児が出来るか、心配ですよね。妊娠中から母乳育児について勉強したり、母親学級などで母乳について聞く機会もあるかと思います。

でも、出産後、最初に出る母乳である「初乳」についてきちんと知識を持っている人は少ないのではないでしょうか?初乳とはなにか、初乳の特徴を知っておきましょう。

「初乳」はいつからいつまで出る?初乳の量と色

母乳と一口に言っても、産後すぐの母乳と何ヶ月か経ってからの母乳は同じではなく、その時期によって状態や成分はどんどん変化していきます。中でも、産後すぐにでる初乳と、その後の成乳では、成分が大きく違うことが知られています。

初乳が出るのはいつから

初乳は産後、最初にでる母乳のことですが、具体的にいつからいつまでに出る母乳が初乳である、という学術上の明確な規定はありません。一般的には、産後すぐから1週間くらいまでの母乳を「初乳」と呼び、それ以降の母乳は「成乳」と呼びます。

ただし、初乳が分泌される時期には個人差があり、出産後、数日経ってから初乳が出始める人もいれば、初乳が産後5日で終わったり、10日頃まで続く人もいます。

初乳はいつから出始め、いつまでに赤ちゃんに与えれば良いのか解説します。初乳の出が悪いときの母乳マッサージや母乳にいい食べ物、母乳外来などママが新生児の赤ちゃんに与える初乳についてです。

初乳と成乳、量や色を比べてみよう

初乳は、成乳と比べてその分泌量が格段に少ないのが特徴です。初乳の1日の分泌量は20~50ml程度といわれているので、ほんの微量であることがわかります。
そんな少しで大丈夫なの?と不安になりますが、生まれたての赤ちゃんは胃袋もごく小さく、体重3,000gで生まれた赤ちゃんが出生後すぐの授乳で飲める量はなんと6ml、生後2日目の赤ちゃんでやっと12mlです。お母さんの体は、赤ちゃんが飲める分だけ、初乳を作っているんですね。

また、成乳は薄めの青白い色でさらさらしていますが、初乳は黄色味がかったクリーム色で、ドロッとしているのも特徴。味は、成乳と比べて甘みが少なく、少し塩気もあるのだとか。

初乳が重要な理由を知ってる?初乳の役割、特徴や効果

それでは、初乳にはどんな役割があり、赤ちゃんにどのような影響を与えているのでしょうか?

初乳の役割 – 免疫アップと胎便排出

初乳は、成乳と比べても特殊な栄養価が高く、赤ちゃんの栄養補給や免疫力を高めるのに重要な役割を果たしています。生まれたばかりの赤ちゃんが外の世界で生きていくために必要なものがたくさん含まれているのです。また、赤ちゃんの腸の働きを促進する働きもあります。

免疫機能の向上

生まれたばかりの赤ちゃんは免疫機能が十分に発達していないので、病原菌に弱いといえます。初乳にはその免疫機能を高める役割をする抗体成分が多く含まれており、赤ちゃんの免疫力アップを助け、病気にかかりにくい体を作ります。

初乳に含まれる抗体成分は、予防接種と同様の抗感染作用があるといわれ、約6か月間は効果を発揮します。

胎便の排出

初乳にはまた、赤ちゃんの腸の動きを促進する働きもあり胎便の排出を促します。胎便とは、生後まもなく赤ちゃんが最初にするうんちで、子宮内で飲み込んだ羊水や腸液が貯まったものです。胎便を速やかに排出できないと、胎便中に多く含まれる成分であるビリルビンが体外に排出されず、新生児黄疸の原因となります。

胎便を排出することにより、赤ちゃんの腸をきれいに掃除して、その後の授乳がスムーズに行うことができるようになるというわけです。

初乳の主な成分

初乳の成分には、成乳と比較して主に以下のような違いがあります。

β-カロチン・亜鉛などの含有量が多い

β-カロチンは、赤ちゃんの粘膜や皮膚、免疫機能を正常に保つために必要な栄養素。初乳は成乳よりもこのβ-カロチンを多く含んでいるため、黄色味が強い色となっています。

亜鉛は、新しい細胞が作られるときに必要とされる栄養素なので、一生で一番成長が早い時期である新生児期には不可欠な栄養素です。初乳には、生後3か月を過ぎた頃の母乳に比べ、約8倍もの亜鉛が含まれるといわれています。

乳清タンパク質(ラクトフェリン、α-ラクトアルブミン)の含有量が多い

乳清タンパク質は消化がいいため新生児の栄養として適しています。
ラクトフェリンはヨーグルトにも含まれ、最近はサプリメントなどにも配合されていることが多い栄養素で、体をウィルスから守る働きがあります。
特に、大腸菌、ブドウ球菌、ヘルペスウイルス、C型肝炎ウィルスなど多くの細菌やウィルスに対して免疫を向上させるといわれています。初乳には成乳の約3倍のラクトフェリンが含まれています。

α-ラクトアルブミンも殺菌・抗炎症効果に優れた乳清タンパク質の成分で、特に初乳に多く含まれています。

免疫物質(IgA抗体)が多い

分泌型免疫グロブリンA(IgA抗体)は、母乳に多く含まれる免疫物質。
喉や胃、腸などの消化器官や呼吸器官の粘膜を保護し、細菌やウィルスの侵入を防いでくれます。また、喉に入ったウィルスを無害化する効果も。体を風邪やアレルギーの発症から守る、大切な物質です。

IgA抗体は成乳にも含まれますが、その含有量は初乳のほうが多くなっているのが特徴です。

乳糖が少ない=熱量は低め

初乳では、生後間もない赤ちゃんが胎便を排出し免疫機能を獲得することを目的としているので、赤ちゃんの急激な成長に必要なエネルギーを供給するための成乳に比べると乳糖は少なく、熱量も低くなっています。

低脂肪・高コレステロール

初乳は成乳と比べ、脂肪分は少なくなっています。新生児の未熟な消化器官に最初から多量の脂肪を摂取すると負担がかかってしまうためです。
ところがコレステロールは初乳に高濃度で含まれており、その後だんだんと減少していきます。

コレステロール値が高いというとよくないイメージがありますが、コレステロールは細胞膜を作る働きがあり、また神経系の発達には必要不可欠な栄養素。母乳で育った赤ちゃんは大人になってからコレステロール値が低く、動脈硬化になりにくいともいわれています。

ビタミンKが少ない

初乳を含め、母乳にはビタミンKはほとんど含まれていません(粉ミルクなどの人工乳には配合されている)。そのため産院では、一定期間K2シロップというビタミンK製剤を新生児に飲ませることによりビタミンK不足を補っています。

「働き」から見る初乳と成乳の違い

成乳を飲むころになると、赤ちゃんはどんどん成長する体のためにエネルギーを多く必要とします。そのため、成乳はエネルギー源となる乳糖が多く含まれ、熱量が高くなっています。ママが自分で調整しなくても体が勝手にしてくれるなんて、人体のしくみはすごいですよね。

初乳サプリメント?世界的に注目されている初乳の効果

日本では、分娩後5日までの初乳を食品として流通させることは、いかなる種類の動物のお乳でも法律で禁止されています。海外では、初乳の豊富な栄養素や免疫機能向上の効果が注目され、牛や馬、ヤギなどの動物の初乳をサプリメントとして商品化しているところもあります。
特にニュージーランドのコロストラム・サプリメント(免疫ミルク)が有名。スーパー健康食品として、日本でも年々注目度が上がってきています。

初乳がその後の育児に与える効果

赤ちゃんに初乳を与えるのには、必要な栄養素の補給や免疫力アップ以外にも、さまざまな効果があることが分かっています。
実際に、赤ちゃんに初乳を飲ませたママの感想として、

「母親になったんだと実感した」
「必死に吸い付く赤ちゃんを見てとても愛おしいと思い、何があってもこの子を守ろうと思った」

などの声を多く聞きます。初乳を飲ませて赤ちゃんと最初のスキンシップをとることで、ママと赤ちゃんの絆を強め、その後の育児をスムーズにスタートさせる役割も果たしているんですね。
また、母乳は赤ちゃんに吸われることにより刺激されて分泌されるようになるので、初乳を飲んでもらうことにより、その後の母乳の分泌もアップします。

【出ない!】初乳分泌のトラブル対処法

そんないいことだらけの初乳ですが、誰でも、初めから、簡単に出るわけではありません。

筆者が最初の子供を出産したときは、妊娠中は出産への恐怖が強く、母乳育児については何も知らないままでした。ところが無事に出産が終わりホッとしたのもつかの間、母乳育児はすぐにスタートします。

産めば母乳は出るものだと思っていたので、いきなり赤ちゃんを渡されて母乳をあげて、と言われても、何をどうしていいのかわからず、どう見ても出ていなさそうなお乳に吸いつく我が子を腕に、呆然としたものでした。

初乳が出ないときはどうする?

産んだら母乳は出るものだと思っていたのに、母乳が出ない。初産では珍しいことではありません。早く初乳をあげたい!と焦る気持ちは抑えて、できることをしてみましょう。

水分を多くとる

母乳は血液から作られ、もちろんそのほとんどは水分でできています。水分が不足していれば当然母乳の分泌も悪くなります。通常、成人女性は1日に2~2.5リットルの水分摂取が必要で、授乳中は冬3リットル、夏4~5リットルが理想です。「そんなに無理!」と思ったかもしれませんが、この水分量は飲み物だけでなく、食事として摂取する水分量も含んでいます。

冷たい飲み物は体を冷やして逆効果なので、常温か暖かい飲み物、もちろんカフェインの入っていない、水や麦茶、ハーブティー(種類に注意)などをチョイスしましょう。食事にも野菜をたっぷり入れた温かい汁物や季節の果物を取りいれると栄養摂取&水分補給の両方の面でおすすめです。

赤ちゃんにおっぱいを吸わせる

母乳の分泌を促すためには、とにかく赤ちゃんに吸ってもらって刺激を与えることが一番。出産直後は母体の体力も回復していないので大変ですが、2~3時間おき、授乳のたびに吸わせましょう。
生まれたばかりの赤ちゃんはまだ体力がついていないので、授乳の途中で寝てしまうことも。そんなときには、搾乳器を使うのがおすすめです。

乳房&乳首マッサージ

母乳の分泌には、おっぱいマッサージも効果的です。おっぱいマッサージには、血行をよくして母乳の出をよくする乳房マッサージと、赤ちゃんが吸い付きやすい乳首にする乳頭マッサージがあります。

乳房マッサージは、乳房の基底部をしっかりとほぐすことにより乳房の血行をよくすることが目的です。毎日、コツコツと続けてみましょう。自分ではやり方がよくわからないという人は、母親学級で指導してもらったり、助産師さんがマッサージをしてくれる産院もありますので、相談してみましょう。

妊娠中はマッサージを行うとおなかが張ってしまった、早産だった、などさまざまな理由で妊娠中にマッサージができなかった人もいると思いますが、出産後にマッサージを開始しても間に合います。むしろ「妊娠中のおっぱいマッサージにはさほど効果がない」とする説もありますので、出産後から焦らずに試してみてください。

ママにとって初乳分泌はつらい?

乳房マッサージは、とても痛いというイメージがあって躊躇している方も多いかと思います。乳房マッサージは産院や方式、マッサージを行う助産婦さんによりさまざまです。乳房が母乳で張っていて、デリケートになっているのをグリグリと力任せに押せば、痛いのは当たり前。だからといって、痛いからいいマッサージ、というわけではありません。


マッサージの方法によっては痛みをあまり感じず、乳房の奥、基底部と呼ばれる部分をほぐすことによって、乳房全体が柔らかくなり、母乳もよく出るようになります。
近所の先輩ママに聞いてみるなど、自分にあったマッサージをしてくれる助産婦さんが見つかるといいですね。

ストレスをためない

ストレスは、母乳の分泌の大きな妨げとなります。最初から出ないからと落ち込まずに、気長に取り組みましょう。またママの体調がすぐれないと母乳の出も悪くなるので、まずは出産でヘトヘトになった体を回復させましょう。

赤ちゃんに初乳を与えるのが難しいときの解決アイデア

赤ちゃんの状態や個性によっては、初乳を飲むのが難しい場合もあります。

低体重の赤ちゃん・体力がない赤ちゃん

赤ちゃんが早産等で低出生体重の場合、体の機能が未熟なため、母乳を吸う力が弱くて一度にたくさん飲めなかったり、体力がないために途中で疲れて寝てしまったり、ということがあります。でも体重の少ない、小さく生まれた赤ちゃんほど、たくさん飲んで早く大きくなってほしいですよね。

場合によってはチューブを通してミルクを与えたり、哺乳瓶で飲ませる必要がありますが、搾乳を続けることで母乳の分泌量を維持できます。初乳が出たら、それを搾乳して哺乳瓶で飲ませられるので、ぜひ与えてあげてください。

吸い方が下手で飲めない赤ちゃん

陥没乳頭、扁平乳頭など、赤ちゃんが吸いつきにくい乳首の形というものがあります。また、赤ちゃんによっては、生まれつきおっぱいを飲むのが下手な子というのが存在します。
とりあえず初乳を飲ませるためには乳頭保護器をつけるのが手軽でおすすめです。ソフトタイプ・ハードタイプがありますが、ドラッグストアなどで1,000円程度で販売しています。

その後は乳首のマッサージをしたり、赤ちゃんにはおっぱいを飲む練習を続けてもらいましょう。身体が大きくなると、上手に飲めるようになる子もいます。

吸啜反射とは赤ちゃんが生きていくために必要な原始反射の1つです。この吸啜反射はいつから始まりいつまでに消失するのか具体的な時期を解説します。またおしゃぶりのメリットとデメリットも解説します。

妊娠中に母乳が分泌された!赤ちゃんは初乳を飲めない?

妊娠後期になると、乳首から母乳のようなものが出る人もいます。特に妊娠中に乳房マッサージをしていると出ることが多いようですが、これは母乳というよりは分泌物で、量もごく少量です。出産に備え、母乳を出す準備をしていると考えられています。妊娠中は胎盤で分泌されているエストロゲンが母乳の分泌を抑えているので、本格的に母乳が作られことはありません。

出産で胎盤が娩出されるとエストロゲンが急激に減少し、エストロゲンによって抑えられていたプロラクチンというホルモンが活発化して、本格的な母乳が作られます。プロラクチンの濃度は分娩時が最大となるので、たとえ妊娠中に母乳(分泌物)が出ていた人でも、出産後にはちゃんと初乳が作られるので大丈夫。

妊娠中はまったく母乳が出なくても、出産後に問題なく母乳育児ができている人もたくさんいますので、気にする必要はありませんよ。

赤ちゃんにいいことたくさん!ぜひ初乳を飲ませて!

初乳はただの最初の母乳ではありません。赤ちゃんが最初の数日に必要なものがこんなにたくさん含まれているなんてよくできていると思いませんか?

WHO(世界保健機構)では、初乳は「完璧な栄養素」として新生児に与えることが推奨されています。胎便の排出や免疫アップなど、さまざまな効果がある初乳。ミルク育児を希望している人も、たとえ少量でも、ぜひ飲ませてあげてください。