育児短時間勤務制度とは?
育児短時間勤務制度を利用すると給与は減るの?
育児短時間勤務制度を利用したいと考えている方へ。給与や賞与、残業や社会保険料など、気になる育児短時間勤務制度の概要とメリット・デメリットをご説明していきます。育児短時間勤務制度は法律で定められています。会社に利用を拒否された場合には、専門家に相談しましょう。
育児短時間勤務制度はいつまで?給与や社会保険料への影響
小さい子供を育てながら仕事をする人が活用できる制度が、「育児短時間勤務制度」です。小さい子供を育てながら、他の人と同じように残業や長時間労働を行うのは非常に大変です。小さな子供がいる方は、是非利用したいですね。
今回は、育児短時間勤務制度を利用したいと考えている方のために、育児短時間勤務制度の概要・給与への影響・メリット&デメリットなど、育児短時間勤務制度について詳しくご説明します。会社に育児短時間勤務制度の利用を拒否された時の対応の仕方もご紹介しますので、いざという時には参考にしてください。
育児短時間勤務制度とは?
法律で決められている育児短時間勤務制度についてご説明します。育児短時間勤務制度は、よく「時短勤務」と省略されて会話の中に出てきます。ただ、育児中の従業員への制度は、会社によっては育児短時間勤務制度にプラスして独自の制度を設けている場合がありますので、一度会社の人事担当者に確認した方が良いでしょう。
育児短時間勤務制度
育児短時間勤務制度は、育児・介護休業法により定められた制度です。平成24年7月1日に育児・介護休業法が改定され、今まで適応外であった100人以下の従業員の事業主も制度の適用対象となりました(注1)。
育児短時間勤務制度の概要
- 事業主は3歳未満の子供を養育する従業員が利用できる短時間勤務制度を設けなければならない
- 事業主は設けた育児短時間制度を運用するだけでなく、制度として就業規則に規定する
- 1日の労働時間は6時間(5時間45分~6時間まで)とする
育児短時間勤務制度の対象者
育児短時間勤務制度の対象者は、3歳未満の子供を養育する従業員です。男女ともに対象となりますので、両親ともに育児短時間勤務制度を利用することが可能です。最近は男性の短時間勤務制度利用者も増えてきてはいますが、まだまだ女性の利用者の方が圧倒的に多くなっています。
育児短時間勤務制度の対象者の細かい規定は以下の通りです。労働形態によっては、育児短時間制度の適用除外となることもありますので、よく確認しておきましょう。
育児短時間勤務制度の対象者
- 短時間勤務制度を利用する期間に育児休業をしていない
- 日々雇用される形態ではない
- 1日の所定労働時間が6時間以下ではない
- 労使協定により育児短時間勤務制度の適用除外者とされていない
育児短時間勤務制度の適用除外者
- 継続した雇用期間が1年未満
- 1週間の所定労働時間が2日以下
- 業務の性質・実施体制から短時間勤務無制度を利用することが困難とされる業務に従事している
法律で定める育児短時間勤務制度の対象者は3歳未満の子供の養育者ですが、小学校入学前までに拡大することが望ましいとされています。対象者を就学前の子供の養育者と拡大してる企業も多くありますので、勤め先の対象年齢を確認しておきましょう。
育児短時間勤務制度利用の手続き
育児短時間勤務制度は、利用者が会社に制度の利用を申請することにより利用することができます。育児短時間勤務制度の申請など手続き方法については、就業規則などに定められていますので、確認してください。
働く人を守る所定外労働の制限
育児短時間勤務制度を利用している従業員を守る制度として、「所定外労働の制限」という制度があります。通常は6時間労働で退社することができても、急に残業をお願いされたら困ってしまいますよね。幼児を養育中の従業員を残業から守ってくれるのが所定外労働の制限です。
所定外労働の制限の概要
- 概要:3歳未満の子供を養育する従業員からの申し出があった場合、所定労働時間を超えて労働させることができない
- 対象者:3歳未満の子供の養育者(男女ともに可能)
- 対象除外者:勤続年数が1年未満、1週間の労働日数が2日未満
制度の詳細については、会社により違いがありますので就業規則を確認してください。所定外労働の制限を利用する場合には、利用開始日の1ヶ月前までに事業者に申し出を行ってください。1回の申し出につき、1ヶ月以上~1年以内の期間の申請が可能です。対象期間内であれば、何度も申し出をすることができます。
育児短時間勤務制度利用時の給与への影響
育児短時間勤務制度を利用すると、労働時間が短くなるのですから毎月のお給料の金額が下がってしまうことは覚悟しておきましょう。育児短時間勤務制度を利用した従業員の給与レベルについては、法律による規定はありません。育児短時間勤務制度を利用した時の給与への影響については、個々の給与算定方式や出産前の就業状況により異なります。
成果報酬制の場合
給与形態が成果報酬制の場合、毎日の労働時間で給与が決定する訳ではありませんので、一概に育児短時間勤務制度を利用したからと言ってお給料が下がる訳ではありません。
労働時間が短くなっても出産前と同じようにまたそれ以上に成果を上げていれば、給与レベルを維持または上げることが可能です。ボーナスも成果により決定することが多いので、仕事の成果次第で大きく給与が変動することになるでしょう。
年俸制の場合
給与形態が年俸制の場合も、成果報酬と同じく毎日の労働時間はあまり問題にならない場合が多いです。年俸制の場合、1年の仕事の成果で翌年の給与が決まります。育児中とはいえ、仕事の成果を求められる状況にはかわりないでしょう。
時給制の場合
パートなど時給制の給与形態の場合は、短時間勤務制度で労働時間が短くなった分だけ、お給料の金額も少なくなります。家庭の状況から、出産前の給与レベルに早く戻したい場合は、3歳を前に短時間勤務制度の利用を止めることも選択の一つになるでしょう。
出産前に残業が多かった場合
出産前に残業時間が多く残業代を沢山もらっていた場合には、短時間勤務制度利用で時間外労働を行わなくなりますので、毎月のお給料は確実に減ります。出産前に残業代も計算に入れて家計を運営していた場合、短時間勤務制度利用中は家計が苦しくなってしまうかもしれませんね。
出産後職種を変えた場合
短時間勤務制度を利用しているだけでなく、出産を期に職種を総合職から一般職などに変更した場合、給与が減ることが多いです。ただ、どのようなスタイルで働くかは個人個人の考え方により異なります。家族とよく相談して、ご自身・お子さん・家族にとって一番良いと思われる働き方を選択してください。
育児短時間勤務制度を利用した時の社会保険料はどうなる?
育児短時間勤務制度を利用して給与の金額が減少した場合、社会保険料にも影響を与えます。私たちが支払う社会保険の月額は、給与により決定されます。育児短時間勤務制度を利用したために、将来もらう厚生年金の額が減ってしまうのではと心配になる方もいるのではないでしょうか。ここでは、育児短時間勤務制度の利用による社会保険料・年金への影響をご説明します。
給与が減少すると社会保険料の月額も減少
育児短時間勤務制度を利用してお給料の金額が減った場合、支払う毎月の社会保険料の月額もそれに比例して減額されます。念のため、給与明細を確認して、社会保険料の月額が出産前より減っているかチェックしておきましょう。
将来の厚生年金額には影響はなし
育児短時間勤務制度を利用してお給料が減り、社会保険料の月額が減額されても、将来の厚生年金額には影響ありません。将来の年金を計算する時には、育児短時間勤務制度利用中も出産前のお給料に比例した社会保険料を支払っていたと見なされます。育児短時間勤務制度を利用しても将来の厚生年金額が減ることはありませんので、安心してください。
育児短時間勤務制度を利用するメリット
育児短時間勤務制度を利用することでお給料が減ることもありますが、3歳未満の子供を養育する人にとってメリットも多くあります。育児短時間勤務制度の利用を決める前には、メリット・デメリットを十分に考えた上で結論を出したいですね。
子供と過ごす時間が増える
育児短時間勤務制度を利用する最大のメリットは、子供とより長い時間を過ごすことができることでしょう。会社を4時に退社した場合、通勤時間にもよりますが5時頃には保育園にお迎えにいくことができます。それから夕食の支度をしても7時頃までには夕食を食べることができますね。
時間に余裕があると夕食後に子供と一緒に遊ぶ時間を作ることができますし、お風呂でゆっくり保育園のお話を聞くことができます。通常通りに勤務していれば、保育園のお迎え時間も遅くなりますし、帰宅後も非常にバタバタするでしょう。
子供の睡眠時間を確保できる
育児短時間勤務制度を利用して、親が早く帰宅し子供を保育園に早くお迎えに行くことができると、湯食・入浴・就寝の時間も早くすることができます。近年、幼児の就寝時間が遅くなってきていると言われています。子供が夜遅くまで起きていることは、子供の成長にはよくありませんので、親としては出来るだけ早く寝かしてあげたいですね。
キャリアを継続することができる
育児短時間勤務制度を利用することで、フルタイムでは勤務できないという方も出産により退職せずに仕事を継続することができます。1度会社を退職してしまうと、いざ再就職しようとしても以前の給与や仕事のレベルを維持することは非常に難しいです。育児短時間勤務制度を利用することでキャリアを継続できることは、非常に魅力的です。
育児短時間勤務制度のデメリット
育児短時間勤務制度は、子供と過ごす時間が増えるという点ではうれしいですが、やはりデメリットもあります。育児短時間勤務制度は、まだまだ新しい法律です。今後、デメリットがなくなり幼児を養育する人が利用しやすい制度になると良いですね。
責任のある仕事を任されにくくなる
育児短時間勤務制度を利用していると、退社時間が決まっているので、急な仕事が入った時に対応することができません。そのため、仕事内容を制限されることがあるでしょう。また、子供が急に体調を崩して急に早退やお休みをせざるを得ないこともあるので、会社も子供のことを考慮に入れて仕事内容を決めることになるでしょう。
給与が減少する
会社の給与制度や雇用形態にもよりますが、育児短時間勤務制度を利用することにより、給与が減少する方は多いです。出産前に、職場復帰後どれくらい給与が減るのか判っていると、出産後の生活設計が立てやすいですね。
スキルアップの機会の減少
育児短時間勤務制度を利用することでキャリアを継続することはできますが、制度利用中は勤務時間が限られていますので、研修を受けるなどスキルアップの機会は減少してしまうことが多いです。
職場の理解が得られないこともある
育児短時間勤務制度を利用すると、職場の方々にサポートしてもらう機会が多くなります。場合によっては、周りの方々への負担が大きくなり、不満に感じる人が出てくる可能性もあります。育児短時間勤務制度は法律で決められた制度ではありますが、周りの人すべてが賛成している訳ではないことを頭の片隅に入れておきましょう。
育児短時間勤務制度の利用を拒否された時の対応
育児短時間勤務制度は、法律で定められた制度なので、会社側が従業員から利用の申し出があった場合、認めなければなりません。ただ、中には、会社から制度の利用を認めてもらえないこともあります。
本来はあってはならないことですが、育児短時間勤務制度の利用拒否だけでなく、「フルタイムで働くか?退職するか?」という選択を迫られるという事例もあります。会社と当事者間で話し合っても解決しない場合は、専門家に相談してみましょう。
育児短時間勤務制度の利用を拒否された時の相談先
- 所管の都道府県労働局
- 社会保険労務士
- 会社の労働組合
育児短時間勤務制度と育児時間は併用できる!
育児短時間勤務制度利用中でも育児時間を請求し、搾乳などに利用することはできます。育児時間とは、労働基準法で定められており「1歳に満たない子を育てる女性労働者は、1日2回それぞれ少なくとも30分の育児時間を請求することができる」というものです。育児短時間勤務制度と育児時間は、異なる法律により定められているので、併用することは問題ありません。遠慮せず、心置きなく授乳をしてください。
育児短時間制度は子育てママの強い味方
育児短時間勤務制度は、デメリットももちろんありますが、乳幼児を養育中の方にとっては仕事を継続していく上で強い味方になります。もちろん、育児短時間勤務制度を利用したとしても子育てと仕事の両立は大変で、慌ただしい毎日になるでしょうが、子供の成長はなによりの励みになります。忙しいでしょうが、充実した毎日を過ごせるとよいですね。
参考文献