未熟児養育医療制度とは?
未熟児養育医療制度とは?対象となるのはどんな赤ちゃん?
未熟児養育医療制度とはどんな制度なのか、対象となる赤ちゃんの状態や期間、申請から利用までの流れを解説。未熟児養育医療制度と乳幼児医療費助成制度の併用によって、自己負担がゼロになる可能性もあります。出産後は速やかに申請手続きに取りかかるようにしましょう。
未熟児養育医療制度とは?
未熟児養育医療制度とは、病院や診療所での治療・療育が必要な未熟児に対して、その治療・養育にかかる医療費の一部を助成するという制度です。未熟児養育医療制度を利用するためには、申請が必要となります。
未熟児で産まれてきた赤ちゃんは、高度かつ長期にわたる治療が必要になる場合も少なくありません。親の所得にかかわらず全ての未熟児が平等な治療を受けることができるようになるため、未熟児養育医療制度は重要な役割を果たしています。
未熟児養育医療制度の対象となる期間
未熟児養育医療制度において医療費の助成が受けられる期間は、対処となる未熟児の満1歳の誕生日の前々日までとなります。
満1歳の誕生日の前々日までであれば、入退院の回数にかかわらず、入院治療に関わる全期間が対象となります。
未熟児の定義
未熟児=低出生体重児と認識している方も多いかもしれませんが、未熟児というのは、単に体重の軽い赤ちゃんというだけではありません。
母子保健法第6条第6項では、未熟児について「身体の発育が未熟のまま出生した乳児であって、正常児が出生時に有する諸機能を得るに至っていない乳児のことである」と定められています。
正常児が有する機能を得るに至っていない場合とは、次のようなケースが考えられます。
未熟児の症状
- 出生体重が2,000g以下
- 運動不安・けいれんの症状がみられる
- 運動が異常に少ない
- 体温が、34℃以下
- 強度のチアノーゼが持続する、チアノーゼ発作を繰り返す
- 呼吸数が毎分50を超えて増加傾向にある、毎分30以下
- 強い出血の傾向がみられる
- 生後24時間以上排便がない
- 生後48時間以上嘔吐が続く
- 血性吐物・血性便がみられる
- 生後数時間以内に黄疸があらわれる、黄疸が異常に強い
これらの症状以外にも未熟児養育医療制度の対象となるケースも考えられます。
未熟児養育医療制度の権限は市町村
以前は、未熟児養育医療制度の実施権限は、各都道府県の保健所設置市となっていましたが、制度改正により平成25年4月1日より、各市町村へ権限が移行されました。
今までは、各地町村で未熟児養育医療制度の申請受付のみを行い、支給の決定は保健所設置市となっていましたが、各市町村の自立性・自主性を高めるために、権限の譲渡が行われました。
各市町村への権限移譲により、申請から決定までの流れが迅速になっていることが期待されます。
未熟児養育医療制度の対象となる赤ちゃん
未熟児養育医療制度の対象となるのは、以下の2つの条件にあてはまる赤ちゃんになります。
- 母子保健法第6条第6項で定められた「未熟児」
- 医師が入院養育を必要と認めている赤ちゃん
ご自分のお子さんが未熟児養育医療制度の対象になるか不明な場合には、担当の医師やお住まいの自治体の担当窓口に相談してみましょう。
未熟児養育医療制度の対象となる費用
未熟児養育医療制度で助成の対象となるのは、以下の費用になります。未熟児の医療費にかかった費用で助成の対象となるか判らない場合には、自治体の担当窓口に問い合わせをしてください。
未熟児養育医療制度の対象費用
- 診療にかかる費用
- 薬剤費・治療に必要な材料
- 手術など治療にかかる費用
- 入院にかかる費用
- ミルク代・食事療養費
未熟児養育医療制度の対象となるのは、指定された医療機関での入院療養となります。お住まいの県内の指定医療機関については、自治体のホームページで確認できることが多いです。お住まいの自治体のホームページに記載されてない場合は、自治体の担当窓口で聞いてみるとよいでしょう。
未熟児に対して十分な治療ができる病院は、限られています。場合によっては、近隣の県や市の病院での療育となることも考えられます。
保険外治療は対象外
未熟児養育医療制度で助成の対象となるのは、保険が適用される費用となります。保険適用外の診療費用については、助成の対象となりませんので、注意してください。
未熟児養育医療制度の公費負担額
未熟児養育医療制度の申請が認められると、医療費の助成がされますが、助成額については、一律ではありません。
公費負担額は収入により異なる
未熟児養育医療制度において治療にかかった費用の一部または全額が助成されます。公費負担額は、扶養者(親など)の収入により差があります。
未熟児養育医療制度の申請にあたっては、扶養者の収入を明らかにする必要があるなど、手続きに少々時間を要します。
各自治体の「乳幼児医療費助成制度」との併用
各地方自治体では、独自に子どもに対する医療費の助成制度を設けています。自治体により、制度の名称や制度の内容は異なります。所得制限なしに子どもが一定の年齢に達するまで医療費が無料になるケースもあれば、所得制限を設けているケースもあります。
未熟児養育医療制度による自己負担額が発生した場合でも、自治体独自の乳幼児医療費助成制度を併用することで、自己負担額がゼロとなるケースもあります。
それぞれの自治体により制度の内容が異なりますので、個別に相談してみましょう。
未熟児養育医療制度利用までの流れ
未熟児養育医療制度を利用するためには、書類を準備して制度利用の申請をする必要があります。子どもが誕生したばかりで大変な時ですが、準備を進めて行ってください。
未熟児養育医療制度を利用できるまでの流れを説明します。
1.出生届の提出
赤ちゃんが誕生すると、まずお住まいの自治体の窓口に「出生届」を提出する必要があります。
出生届は、戸籍法第49条により赤ちゃんの誕生から14日以内に届け出をしなければならないと定められています。里帰り出産の場合には、旦那さんにきちんと届け出をするようにお願いしておきましょう。
殆どの場合は、出生届の用紙は出産した病院で必要事項を記入して、準備しておいてくれます。病院で準備してもらえない場合は、役所で出生届を貰い、病院に必要事項を記入してもらいましょう。
出生届が受理される際に、役所で母子手帳の出生届出済証明に記入して貰いますので、届け出に行く際には母子手帳を忘れずに持って行きましょう。
2.療育医療意見書を医師に書いてもらう
未熟児養育医療制度を申請するには、医師に「療育医療意見書」を書いてもらう必要があります。迅速な申請のためにも、できるだけ早く医師に依頼をするようにしましょう。
3.赤ちゃんの健康保険証を申請・受領
赤ちゃんが誕生すると、新たに赤ちゃんを健康保険に加入させて、保険証を発行してもらう必要があります。勤務先や自治体の担当窓口で申請を行ってください。
健康保険の加入は、出生届が受理され、母子手帳の出生届出済証明をもらってからになります。保険証の申請から受理までは、数日かかることがありますので、出生届が受理されたら、できるだけ早く、保険証の申請を行いましょう。
両親ともに一定以上の収入があり、別の健康保険に加入している場合、子どもは収入が多い方の健康保険に加入することになっています。
4.未熟児養育医療制度利用の申請
出生届を役所に受理して貰い、医師の記入した「療育医療意見書」と赤ちゃん本人の健康保険証が届いたら、未熟児養育医療制度の申請にとりかかりましょう。
未熟児養育医療制度の申請は早めに!
未熟児養育医療制度の申請から結果が判明するまでには、時間を要する場合もあります。必要な書類が揃ったら、できるだけ早めに未熟児養育医療制度の申請をしてください。
未熟児養育医療制度の申請は、赤ちゃんの誕生からいつまでと提出期限が設けられています。提出期限は、各自治体により異なりますので、お住まいの自治体の提出期限を確認した上で、余裕を持って申請するようにしてください。
自治体が定める未熟児養育医療制度の提出期限を過ぎてしまった場合は、提出前に受けた治療費についての助成を受けることができなくなる場合もあります。
赤ちゃんが退院してからの申請を受け付けていない自治体が多くなっていますので、必ず赤ちゃんの入院中に未熟児養育医療制度の申請を行うようにしてください。
未熟児養育医療制度利用申請に必要な書類
未熟児養育医療制度の申請に当たっては多くの書類が必要になりますので、漏れのないように気をつけましょう。必要になる書類は自治体により異なる場合がありますので、自治体の担当窓口に確認してください。
- 養育医療給付申請書
- 養育医療意見書(医師が記入)
- 世帯調査書
- 源泉徴収票のコピー
- 住民税の課税証明書(もしくは非課税証明書)
- 生活保護受給証明書(対象者のみ)
- 乳児本人の健康保険証
5.書類審査
未熟児養育医療制度の申請を行うと、自治体で審査が行われます。審査にかかる日数は、自治体やその時の状況により異なることが予想されます。
6.結果の連絡
自治体による書類審査が終わると、保護者のもとへ結果の連絡があります。審査の結果について、何か不明な点がある場合には、自治体の担当窓口に問い合わせてみましょう。
7.医療券を受領
未熟児養育医療制度の申請が受理され、未熟児養育医療制度が利用可能となった場合は、自治体より医療券が発行されます。お子さんが医療機関を受診したり、入院手続きをしたりする場合は、医療券を必ず持参してください。
未熟児養育医療制度の医療券は、対象となる期間中は、きちんと管理するようにしましょう。万が一、医療券を紛失してしまった場合には、お住まいの自治体の担当窓口に相談してください。
8.自己負担額の支払い
所得制限により未熟児養育医療制度を利用しても自己負担が発生する場合は、その金額の支払いを行う必要があります。支払い方法は、各自治体により異なりますので、定められた方法に従ってください。
自己負担分は、乳幼児医療費助成制度を利用することで、後日払い戻しを受けられます。負担した医療費の領収書や納入通知書などは、必ず保管しておくようにしましょう。
未熟児養育医療制度は県外でも使用可能
未熟児養育医療制度を申請するには、書類の準備など色々と大変です。地方自治体で実施している乳幼児医療費助成制度を利用して、赤ちゃんの医療費が全額助成される場合は、「未熟児養育医療制度の申請をざわざわ行わなくても良いのでは?」と考える方もいるかもしれません。
ただ、未熟児養育医療制度と乳幼児医療費助成制度には、大きな違いがあります。それは、乳幼児医療費助成制度は県内の医療機関でしか適用されないのに対して、未熟児養育医療制度は県外の医療機関でも適用されます。
赤ちゃんの症状やお住まいの地域によっては、県外の医療機関に転院しての療育が必要になることも考えられます。乳幼児医療費助成制度では、県外の医療機関を受診した場合、後日手続きをすることで自己負担分の返還を受けることができる自治体もありますが、未熟児の治療費となると高額となる可能性が高くなりますので、後日返還されるとしても、自己負担するのは大変です。
未熟児養育医療制度の不明点は自治体に相談しよう!
未熟児養育医療制度は、お子さんが誕生してからできるだけ早急に申請しなければならないため、書類の準備や届け出など、かなりバタバタしてしまう可能性があります。また、自治体独自の乳幼児医療費助成制度との関係性もわかりにくくなっています。
未熟児養育医療制度の申請に関して、不明な点がある場合は、お住まいの自治体の担当窓口に相談するようにしましょう。