赤ちゃんの発育の様子と成長曲線の見方
母子手帳等にも記載されている赤ちゃんの成長曲線は、乳児の成長具合はもちろん、母乳やミルクはしっかり飲めているか、離乳食はしっかり食べれているかなど、健康や栄養状態をチェックする際にも役立ちます。
また「赤ちゃんの成長には個人差があって当たり前」と分かっていても、周囲から「小さめだね」と心配されたり、「大きいね!」とびっくりされたり、自分の赤ちゃんと同じ月齢の赤ちゃんと比較して不安になったりした際にも成長曲線を見れば赤ちゃんの発育具合を冷静に把握できます。
赤ちゃんの成長の遅い早いか気になって母子手帳に記載されている成長曲線を眺めてしまうママは、ぜひとも赤ちゃんの成長曲線のグラフの意味や読み取り方も知っておきましょう!
成長曲線に記されている情報
成長曲線とは、乳幼児の成長推移を男女別に表したグラフのことです。
計測調査されるのは、身長・体重・頭囲で、10年毎に厚生労働省が、無作為に選んだ全国の乳幼児のデータを集計し、グラフを作成しています。
成長曲線のグラフは、母子手帳にも記載されていて、赤ちゃんの成長の目安を知ることができます。
成長曲線からわかること・読み取り方
成長曲線は、身長・体重、頭囲のグラフがあります。それぞれ、成長に応じた右上がりの線と、その上下の線の間に色付けされた帯が描かれています。
パーセンタイル曲線
成長曲線は、「パーセンタイル」という統計方法によって表されています。
パーセンタイルでは、計測値の分布(ばらつき)を、数値が小さいものから大きいものへと並べ替え、どこに位置する値かを測定します。
例えば、サンプル数を100人としたとき、「30パーセンタイル」の人は、「100人のうち小さい方から数えて30番目にあたる」ということ。
パーセンタイル曲線における発育の評価は、以下のような基準があります。
・10パーセンタイル未満・90パーセンタイル以上:偏りあり。要経過観察。
・3パーセンタイル未満・97パーセンタイル以上:問題あり。場合によって要検査。
実は、成長曲線の帯は、3〜97パーセンタイルの範囲にあたり、3パーセンタイル未満、97パーセンタイル以上の数値は反映していません。
つまり、成長曲線内に数値が当てはまる赤ちゃんは、全体の94%。成長曲線を下回ったり、上回ったりするケースは6%となります。
SDスコア
たくさんの赤ちゃんの身長のデータは、正規分布という表を用いて扱います。正規分布の表にはSDスコアが用いられています。
正規分布では、平均値を中心に計測値が集中し、上下の計測値は平均値から離れるにつれて徐々に少なくなる特徴がみられます。
SDは、正規分布のグラフを見たときの平均値からの「幅」のことで、標準偏差ともいいます。
値が平均値よりどれくらい低い、もしくは高いか、平均値からSDの何倍離れているか…はSDスコアで示されます。
正規分布のグラフはともに-2SD・-1SD・平均値・+1SD・+2SDの5本の線が描かれています。SDスコアの分布の割合は以下のように設定されています。
・-1SD〜+1SD:全体の68%
・-2SD〜+2SD:全体の95.4%
SDスコアは主に身長の成長を評価するときに用いられます。そして、-2SDより低い身長の人は2.3%(1,000人のうち23人)にあたり、「低身長」と定義されています。
赤ちゃんの成長曲線:グラフの数値
現在(平成28年7月)、厚生労働省で発表されている最新の成長曲線は、平成22年9月に1ヶ月間調査されたものです。ここからは男女別に「身長・体重」「頭囲」の成長曲線の数値をみてみましょう。
男の子
身長・体重
0ヶ月:44.0〜52.6cm/2.10〜3.76kg
1ヶ月:48.7〜57.4cm/3.00〜5.17kg
2ヶ月:50.9〜59.6cm/3.53〜5.96kg
3ヶ月:54.5〜63.2cm/4.41〜7.18kg
4ヶ月:57.5〜66.1cm/5.12〜8.07kg
5ヶ月:59.9〜68.5cm/5.67〜8.72kg
6ヶ月:61.9〜70.4cm/6.10〜9.20kg
7ヶ月:63.6〜72.1cm/6.44〜9.57kg
8ヶ月:65.0〜73.6cm/6.73〜9.87kg
9ヶ月:66.3〜75.0cm/6.96〜10.14kg
10ヶ月:67.4〜76.2cm/7.16〜10.37kg
11ヶ月:68.4〜77.4cm/7.34〜10.59kg
12ヶ月:69.4〜78.5cm/7.51〜10.82kg
頭囲
0ヶ月: 30.5〜36.0cm
1ヶ月: 33.8〜39.1cm
2ヶ月: 35.1〜40.4cm
3ヶ月: 37.1〜42.4cm
4ヶ月: 38.6〜43.7cm
5ヶ月: 39.7〜44.7cm
6ヶ月: 40.4〜45.4cm
7ヶ月: 41.0〜45.9cm
8ヶ月: 41.6〜46.5cm
9ヶ月: 42.1〜47.0cm
10ヶ月: 42.5〜47.5cm
11ヶ月: 42.9〜47.9cm
12ヶ月: 43.2〜48.3cm
女の子
身長・体重
0ヶ月:44.0〜52.0cm/2.13〜3.67kg
1ヶ月:48.1〜56.4cm/2.90〜4.84kg
2ヶ月:50.0〜58.4cm/3.39〜5.54kg
3ヶ月:53.3〜61.7cm/4.19〜6.67kg
4ヶ月:56.0〜64.5cm/4.84〜7.53kg
5ヶ月:58.2〜66.8cm/5.35〜8.18kg
6ヶ月:60.1〜68.7cm/5.74〜8.67kg
7ヶ月:61.7〜70.4cm/6.06〜9.05kg
8ヶ月:63.1〜71.9cm/6.32〜9.37kg
9ヶ月:64.4〜73.2cm/6.53〜9.63kg
10ヶ月:65.5〜74.5cm/6.71〜9.85kg
11ヶ月:66.5〜75.6cm/6.86〜10.06kg
12ヶ月:67.4〜76.7cm/7.02〜10.27kg
頭囲
0ヶ月: 30.5〜35.5cm
1ヶ月: 33.1〜38.2cm
2ヶ月: 34.3〜39.4cm
3ヶ月: 36.2〜41.2cm
4ヶ月: 37.5〜42.5cm
5ヶ月: 38.5〜43.4cm
6ヶ月: 39.3〜44.1cm
7ヶ月: 39.9〜44.7cm
8ヶ月: 40.4〜45.2cm
9ヶ月: 40.9〜45.7cm
10ヶ月: 41.4〜46.2cm
11ヶ月: 41.7〜46.6cm
12ヶ月: 42.1〜47.0cm
身体発育の評価方法
特に乳幼児の場合、成長具合を把握したいときには、パーセンタイル値だけでは評価が不十分なため、身長と体重のバランスも考慮して評価していきます。
身体発育の評価方法は、計算式「体重(g)/身長(cm)2×10」で算出されます。乳幼児の評価は以下の通りです。
・10以下:消耗症
・10〜13:栄養失調
・13〜15:やせ
・15〜19:正常
・19〜22:優良または肥満傾向
・22以上:太り過ぎ
成長曲線内にいないとダメ?数値から見る発育の観察ポイント
乳幼児の成長スピードはとても早いゆえ、個人差やちょっとした健康状態の変化もすぐに数値に影響しやすい一面をもちます。1回の測定数値だけで発育状態を評価せずに、経過を追ってみるようにしましょう。数値が、成長曲線内に入っていてもいなくても、発育曲線に沿って身長・体重・頭囲がバランスよく発育しているかが重要なのです。
しかし、測定数値が著しく成長曲線から外れている場合は、成長不良やさまざまな疾患、成長ホルモンの分泌不足などが疑われます。小児科を受診したり、乳児健診のときに相談してみましょう。
成長曲線を下回るときは・・・
新生児のうち、特に母乳中心で育てているときは、体重が順調に増えているかが気になるところです。体重の増え方には個人差がありますが、生まれてから1ヶ月で約1,000g増加するのが標準といわれています。
女の子は男の子に比べ、体重の増え方がゆるやかな傾向がありますが、他にも特に新生児期には一度体重が減少する時もありますし、母乳やミルクをあまり飲まない少食の赤ちゃんもいます。このように赤ちゃんの発育や体重の増え方には様々な要因から個人差が生じやすいため、単純に体重だけで発育を評価するのは難しいとも言えます。
成長曲線を下回る原因
小さく生まれた赤ちゃんなどは、一時的に成長曲線を下回ってしまうこともあります。しかし、やはり下回る期間が長く続くと赤ちゃんの成長や発育が心配ですから、母乳育児や離乳食を食べないことが原因の場合はミルクを足すなど、栄養摂取の方法を見直しましょう。
完全母乳で育児をしている
母乳は粉ミルクに比べ消化が良いため、完全母乳で育児をしていると、体重が成長曲線を下回ってしまうときもよくあります。また、飲んだ母乳量はミルクと違って目に見えないために、赤ちゃんが母乳をしっかりと飲めているのか心配になってしまいますよね。
完全母乳で発育に心配があるときは、授乳前後の体重を量って比べてみましょう。乳児用の体重計をわざわざ購入する必要はありません。保健センターや、百貨店などの授乳室に設置されていることもあるので、気軽に利用しましょう!
離乳食を食べない
生後5ヶ月くらいから離乳食を始めますが、だいたい生後8ヶ月頃までは、これまでと同じ母乳やミルクからの栄養摂取がメインとなるので、離乳食を食べないからと行って大きく体重推移に関わることもないでしょう。
しかし、一回の離乳食量も増えてきたときにあまり食べてくれなってしまうと、赤ちゃんの体重が減ってしまうこともあります。
食べる量は、おしっこの量やうんちが毎日出ているかで判断し、足りないようであれば、フォローアップミルクなどで補うなどしましょう。
運動量が増加した
寝返り、ハイハイ、つかまり立ち、つたい歩きなど、赤ちゃんの成長過程で、運動量が増加する時期があります。この時期にもあまり体重が増えなかったり、一時的な体重減少傾向が見られます。
栄養価の高いものを与えるようにし、もっと欲しがるようであれば、量を増やしてみましょう。
体調の変化
風邪や下痢、夏バテなど、体調の変化によって食欲が落ちてしまうと、やなり体重減少に影響します。原因が分かっていれば、治療を優先し、離乳食を始めている場合は、やわらかくて消化の良いものを食べさせるようにしましょう。
成長曲線を下回る原因で注意したいもの
病気の可能性があるときの成長曲線の推移には、横ばいの状態が数ヶ月続いたり、急に右下がりになるなどの特徴がみられます。
そのような兆候に気付いたら、すぐに病院で診察を受けるようにしてください。特に目立った横ばいや右下がりがなければ、成長曲線を下回っていても、遺伝や体質によるものだと考えてもよいでしょう。
基礎疾患
呼吸器疾患・心臓疾患・腎臓疾患など、長引く病気の場合には、うまく食事を摂取できなかったり、栄養を吸収できないことが多く、低身長や低体重の原因となります。
ホルモン異常
成長ホルモン異常 ・甲状腺機能低下症、副腎機能低下症など、ホルモン分泌臓器の病気がありますが、これらは、大抵は出産時に行われる「マススクリーニング検査」により大抵新生児の時点で発覚します。ホルモン異常にはホルモンの内服などの治療が行われますが、放っておくと、知能の遅れ、低身長などの症状が現れてきます。
SGA性低身長
SGAとは「Small for Gestational Age」の略で、「在胎週数に相当する標準に比べて小さい」という意味です。同じ週数で生まれた赤ちゃんと比べ、身長・体重が10パーセンタイル未満の場合がSGAとなります。
しかし、SGAで生まれた約90%の赤ちゃんは、2歳までに正常範囲の数値までに急成長することも珍しくなく、大抵は心配無用。2歳までに正常値まで成長できなかった子どもは、SGA性低身長症として、成長ホルモン治療が行われることになります。現在では、この治療には保険が適応されるようになりました。
頭蓋骨縫合早期癒合症
頭蓋が大きくならない「狭頭症」、脳の発達が遅れたり停止してしまう「小頭症」、難病指定されている遺伝子異常の「アペール症候群」など、頭の骨のすき間が早く接合してしまう病気があります。これらは多くの場合に、頭囲が異常に小さいという特徴がみられます。
脳の成長の阻害、頭蓋骨の変形、脳圧亢進症状、顔面の変形などの症状が現れます。特に「小頭症」は根本から治療する方法が見つかっていないため、対症療法が行われます。
成長曲線を上回るときは・・・
発育が良いことは嬉しくはあるものの、成長曲線を上回りすぎると、それはそれで何かの病気かと不安に感じてしまいます。しかし、そのほとんどは遺伝や体質によるもの。また、身長が上回っている赤ちゃんの場合は同じように体重も上回っている場合が多く、この場合心配はいりません。
パパやママが高身長であることもありますし、食欲旺盛で母乳やミルクをたくさん飲む赤ちゃんだってもちろんいます。多少成長曲線を上回っていても、あまり気にしないようにしましょう。
成長曲線を上回る原因
成長曲線を上回ってしまう原因には、母乳・ミルクの量と、運動量が大きく影響します。ただし、乳幼児にダイエットは必要ありませんから、助産師や保健師、医師など専門家のアドバイスに耳を傾けましょう。
母乳やミルクの量が多い
母乳やミルクをよく飲む赤ちゃんは、平均よりも体重は多めになります。
母乳に関しては、消化が良いため飲みたがるだけ与えても問題はないといわれていますが、粉ミルクの場合は、もう一度、缶に記載されている月齢と量が合っているかを確認してみましょう。
適正量を超えて飲みたがる場合は、おかわりミルクを薄めたり、月齢によっては粉ミルクではなく白湯や麦茶などを与えてみましょう。
離乳食を始めた
食欲旺盛で離乳食もよく食べる赤ちゃんなら、離乳開始期から体重が増えることも!
しかし、少し体重が多めでも乳児健診で指摘されることはありません。もし指摘されたとしても、乳児期のダイエットは危険も伴うため、自己判断で極端に離乳食の量を減らすなどの無理な肥満対策は絶対に行わないようにしましょう。
離乳食期の赤ちゃんの肥満は、量よりも質を見直してみるといいですよ。動物性の脂質や糖質は避け、野菜や豆腐など、低カロリーでも栄養価の高いものを中心にしたメニューに替えてみましょう。
運動量が少ない
元気よく動き回る赤ちゃんもいれば、のんびり屋さんの赤ちゃんもいる…、ここにも赤ちゃんそれぞれの個性が見えてきます。
赤ちゃんが嫌がっているのを無理に運動させることは困難ですし、その必要はまったくありませんが、できれば家に籠りっぱなしではなく、お散歩に出掛けたり、保育園や幼稚園、保健センターなどが行っている子育て支援サービスを利用するなど、赤ちゃんが動きたくなるように興味心を刺激してみましょう。
成長曲線を上回る原因で注意したいもの
身長・体重に関しては、乳児の場合、そのほとんどは、遺伝や体質によるものなので特に問題はありません。しかし、頭囲が成長曲線を上回っている場合は、心配なこともあります。極端に頭が大きいなど、気になる症状があった場合は、すぐに病院で相談してみてください。
小児肥満
1歳未満の赤ちゃんにみられる肥満は、メタボリックシンドロームなど問題のあるものに繋がることはほとんどありません。赤ちゃんの体重が成長曲線から上回っていたとしても、多くの場合は、1歳過ぎ頃から少しずつ成長曲線内に収まっていきます。
心配される小児肥満とは、2~3歳頃に体重が増え肥満を発症することをいいます。1歳未満の赤ちゃんの体重はあまり気にし過ぎなくても大丈夫ですが、1歳を超えてから少しずつ意識するようにしてみましょう。
水頭症
乳児の水頭症は、脳を保護している脳脊髄液という液体が頭の内側で過剰に留まることで、頭の内圧が上がり、脳を圧迫してしまう病気です。頭のサイズが大きくなる特徴があります。頭痛・吐き気・全身倦怠感・視神経の異常などが症状として現れます。
乳児健診などで必ず頭囲は計測されます。水頭症の疑いがある場合には、CT検査などの精密検査を受けることになるので、大きな病院で診察を受けるようにしましょう。
成長曲線から外れていても元気なら大丈夫!
成長曲線は、赤ちゃんの成長における重要な目安ですが、あくまでも統計上の数値です。成長曲線から下回ったり、上回ったりする多くの場合は、遺伝や体質もあり、それが個性となります。
大切なのは、たった1回の計測で判断するのではなく、数ヶ月〜1年の長い期間の中で、赤ちゃんの成長が、成長曲線に沿った線を描いているかどうかです。
乳児健診や、家で体重を量るたびに、母子手帳の成長曲線に点を書き込むのは、楽しみでもあります。点が増えて線になるときは、成長を感じて嬉しくなるものです。
赤ちゃんの個性を大切に、これからの成長を見守っていってあげたいですね。