赤ちゃんの目やに、病気の可能性はある?
赤ちゃんにしょっちゅう目やにが出ていると、「何か目の病気?」と心配になることもありますよね。一方、「目やにくらいで病院に行くのも…」と悩むことも。
病気の可能性がある目やにと、単なる生理的な目やにの見分け方について知っておきましょう。
目やにが出る原因・仕組み
目やにが出る原因と仕組みは、「生理的な目やに」と「病気のときの目やに」で異なります。
生理的な目やには「身体から出る垢」のようなもの
身体から垢が出るのと同じように、目からも古くなった細胞が排出されます。
目の表面は、黒目の上を透明な「角膜」が、角膜の周りの白目の上を「結膜」が覆っています。角膜や結膜からは、ねばねばした液体が分泌され、この液体とほこりや古い細胞などが混ざることで目やにが作られます。
普通、目やには瞬きをするときに少量の涙で洗い流されますが、寝ているときには瞬きをしないので、起きたときに目やにがたまりやすいのです。また、赤ちゃんは大人と比較して瞬きの回数が少ないので、普段から目やにがたまりやすくなっています。
感染症のときの目やには「風邪のときの鼻水」のようなもの
風邪を引いたときの鼻水は免疫システム。風邪の原因となった細菌やウイルス、それらと闘った白血球などが、鼻腔や副鼻腔から分泌された粘液と一緒に鼻水として排出されます。
目も健康なときはまばたきをサポートするため少量の目やにのもとが分泌されますが、目の病気のときには鼻水と同様に、病気の原因となった細菌・ウイルス、闘いを終えた白血球が目やにに含まれ排出されます。
ウイルスや細菌が含まれている目やにには感染力があるので、お世話をする人は、目やにに直接触れないように、また目やにのついた手はしっかり洗うように注意しましょう。
心配な目やに・そうでない目やにの見分け方
黄色く、カサカサした目やにが少量出る程度なら心配はいりません。よく寝る赤ちゃんは目やにも多めですが、大人が普段出る目やにと同じような状態であれば生理的なものです。
心配な目やには、次の4つのパターンです。
1.目が開かないぐらいたくさん出る
2.ドロドロしていて膿のようになっている
3.白くて糸を引いている
4.片目だけ目やにがひどい
この4つのうち、一つでも当てはまる場合は、目の病気が原因となっている可能性があります。
目やにを放置すると・・・
いつもと違う目やにが出て、その原因が感染症だった場合は、放置すると角膜が炎症・傷つき、視力が低下してしまう恐れもあります。
後の章でも詳しく解説をしますが、目やにがひどく出る感染症の場合は、強い感染力を持つ病気の可能性もあります。早めに治療を行い、日常生活においても対策を行わないと他の人にうつしてしまうことになります。
感染症などの原因を持つ目やには、放っておいても治らないケースがほとんどです。目やにが多い場合は、小児科または眼科を受診しましょう。
目やにが出るときの赤ちゃんのお世話
目やには赤ちゃんにとっても不快なもの。目を傷つけないよう注意して、優しく取り除いてあげましょう。
目やにがたまると、目をこするなどして傷つけてしまう可能性があるので、こまめに取り除いてあげることが大切です。
手で取るのはNG!目やにの取り方
感染症の心配がない、生理的な目やにであれば濡らしたガーゼでさっと取ってあげれば大丈夫です。
つい、手でちょっと取ってしまいがちですが、万が一ママの指先に細菌がついていると結膜から感染し炎症を起こしてしまう可能性がありますし、爪も眼球に接近するので万が一赤ちゃんがじっとしていない場合は危険です。赤ちゃんの目を守るために直接指でとるのは、基本的には避け、やむを得ない場合は入念に手洗いをしてから行いましょう。
注意しなければいけないのが、感染症になってしまったときの目やにの取り方。今度はママにうつらないように手で取るのを避けることはもちろん、片目だけ感染している場合は、もう片目にもうつらないようにしなければいけません。
感染症のときの目やには、清浄綿を片目に1枚使い、すぐに捨てましょう。1枚の清浄綿で両目を拭かないようにしましょう。使用した清浄綿は他のところを拭いたり、ママの手に触れたりすることのないよう気を付けましょう。
赤ちゃんに目薬を差すとき
結膜炎になると抗菌薬が配合された目薬が処方されることもあります。赤ちゃんに目薬を差すのは難しいですが、治りが早くなるので正しい方法でしっかりと点眼してあげましょう。
赤ちゃんに点眼するときのポイント
・頭をしっかり固定して、下まぶたを指で軽く引っ張る。(ママの爪はしっかり切って!)
・目頭に1滴さし、できればそっと目を閉じる。
・点眼する際は、点眼薬の容器の先がまぶたやまつ毛に当たらないように注意する。
母乳点眼の効果は?
母乳は無菌なうえ、免疫成分が含まれているので点眼や点鼻に使用することを助産師さんや小児科医に勧められる場合もあるようです。
ただし、実際に母乳点眼で目やにが改善した!という人もいますが、医学的根拠はありません。あくまで、民間療法として行われているようです。
母乳点眼は目の疾患や感染症にかかってしまった場合には効果がありません。腫れを伴う目やになど、心配な症状が出ている場合は受診しましょう。
部屋の環境も見直して
目やには、目から出る粘液とほこりなどが混ざってできるので、お部屋をきれいにしておくことも重要です。
赤ちゃんの寝具を清潔に保つのはもちろん、目やにがひどいようであれば空気清浄機を回したり、こまめに換気をしたりして部屋の空気をきれいにしてあげましょう。ほこりが舞わないよう、適度に湿度を保つ(50~60%)ことも大切です。
目やにがひどくなるのはこんな病気
たかが目やに…と思いがちですが、実は感染症の一つの症状の可能性があります。目やにがひどくなるのは次に挙げる感染症のときです。
目が開かないほどの目やにが出る「プール熱」
プール熱は、夏風邪の一種で正式には「咽頭結膜熱」と言います。大量の目やにとともに急な発熱・のどの痛みが現れます。目やには、朝起きたとき、目が開けられないほどたくさん出ます。それほどたくさんの目やにが出た場合は、すぐに熱を測り受診しましょう。
プール熱の原因:感染するのはプールだけじゃない!
アデノウイルスに感染することによって起こります。プールの水を介して集団感染することが多いため、プール熱と呼ばれていますが通常の風邪と同様、飛沫感染や接触感染によっても感染します。
目からの感染を防ぐためには、次のことに気を付けましょう。
・プールではゴーグルを使う
・ゴーグルを使えない場合は、プールの後に目を洗う
・タオルをお友達と共有しない
・児童館でおもちゃを触ったときには目をこすらない
プール熱の治療:対症療法が基本
プール熱の原因であるアデノウイルスに対する抗ウイルス薬はありません。いつもの風邪と同様に、症状を和らげながらウイルスが排出されるのを待ちます。
結膜炎の症状がつらい場合には、点眼薬が処方されることもあります。二次感染に注意し、目やにをこまめに取り除いてあげましょう。
プール熱より目の症状が深刻「流行性角結膜炎」
流行性角結膜炎は、「流行り目」とも呼ばれる病気で、赤ちゃんだけでなく幅広い世代に流行します。プール熱とは異なり、発熱やのどの痛みなどの症状は軽いのですが、目の炎症はプール熱よりも重症化する傾向があります。
流行性角結膜炎でも、プール熱と同様たくさんの目やにが出て、朝は目が開かないほどになります。重症化すると角膜まで傷がつき、最悪の場合視力に影響してしまうケースもあります。
流行性角結膜炎の原因:どこにでもいるウイルス
プール熱と同様、アデノウイルスへの感染によって起こります。アデノウイルスにはたくさんの型があり、その型によってプール熱を発症したり流行性角結膜炎を発症したりします。
流行性角結膜炎の原因となるウイルスは公共の場のあらゆるところに付着しており、いつでも感染の可能性があります。例えば、階段の手すりやドアノブなどにもついている可能性があります。
流行性角結膜炎の予防:アルコールは必携!
赤ちゃんがそういった場所を触ったら、アルコール入りのジェルなどで手指を除菌してあげると安心です。ただし、アルコールは赤ちゃんにとって刺激になってしまう可能性もあるので、予めパッチテストなどをしておきましょう。
アルコール入りのジェルは、保湿成分が含まれているものであれば手に優しく殺菌できます。携帯に便利なコンパクトタイプをママのポケットにいつも忍ばせておくのがおすすめ!
流行性角結膜炎の治療:対症療法で回復を待つ
アデノウイルスそのものを退治できる薬がないため、目の炎症に対して抗炎症成分が配合された点眼薬を使用して症状を和らげます。また、別の細菌が感染してしまう可能性もあるので、その予防のために抗菌剤を点眼する場合もあります。
抵抗力が落ちていると感染する「細菌性結膜炎」
細菌性結膜炎では、ドロッとした膿のような目やにがたくさん出ます。また、白目の充血も見られます。
細菌性結膜炎の原因:身近な細菌に感染
細菌性結膜炎の原因となる細菌にはたくさんの種類があります。主に感染の原因となるのは黄色ブドウ球菌といって、人間の皮膚にごく普通に存在している菌です。
普段から皮膚に存在している菌であるため、感染して病気になってしまうことは稀です。抵抗力が落ちているときには感染してしまう可能性があります。赤ちゃんも注意が必要です。
細菌性結膜炎の治療:抗菌剤が効く
細菌性結膜炎は、プール熱や流行性角結膜炎のようなウイルス性の結膜炎とは異なり、抗菌剤が効くので早く治ります。点眼薬を使って治療します。
妊婦さんは感染症に注意「新生児結膜炎」
新生児結膜炎は、ママが感染症にかかっていると赤ちゃんにかかってしまう結膜炎です。赤ちゃんのまぶたが腫れて、膿のような目やにがたくさん出ます。失明の恐れもある危険な病気です。
新生児結膜炎の原因:ママの感染症
妊娠中に感染症に罹患していると、赤ちゃんが産道を通って生まれてくる際に感染してしまいます。生まれたばかりの赤ちゃんは抵抗力が弱いので感染症にかかりやすい状態になっています。
新生児結膜炎の治療:抗菌剤を点眼
新生児結膜炎の原因は細菌なので、抗菌剤の効果があります。点眼薬によって治療します。
ほとんどが自然に治る「睫毛(しょうもう)内反症」
睫毛内反症とは、いわゆる逆さまつ毛のことです。逆さまつ毛というと、上まぶたのまつ毛が目にささる症状が大人でもたまに見られることがありますが、赤ちゃんの逆さまつ毛は下まぶたに多くみられます。
逆さまつ毛は、目の表面を刺激し目やにの原因になります。
睫毛内反症の原因:顔立ち!?
日本人やモンゴル人は特に、下まぶたの皮膚が厚いので、皮膚にまつ毛が押されてしまい睫毛内反症になりやすいと言われています。
顔立ちが症状に影響するため、パパとママのどちらかにこの症状があった場合、赤ちゃんも同じ症状が出る可能性があります。
睫毛内反症の治療:自然に治る場合が多い
ほとんどの場合は、成長とともに治っていきますが稀に大人になっても治らないケースがあります。
赤ちゃんのときは、逆さまつ毛になっていてもまつ毛が細く弱いので、目に傷をつける心配があまりないので、経過観察という対応になることがほとんどです。
成長してまつ毛が太くなってくると角膜に傷をつけてしまう可能性があるので治療の必要が出てきます。
角膜の状態が悪くなってしまった場合、まつ毛の向きを変える手術が行われます。
涙があふれて目やにがたくさん出る「鼻涙管閉塞症」
涙がたまるところと鼻は「鼻涙管」という管で繋がっています。普通は、涙は鼻涙管を通って鼻に流れていきます。鼻涙管が詰まっていると涙の行き場がなく、目から涙があふれて目やにもたくさんたまります。
生まれつきたくさんの目やにが出る場合、鼻涙管閉塞症が疑われます。特に、起きたときに目やにがひどく出ます。目やには、片方の目だけ出る場合もあります。
鼻涙管閉塞症の原因:涙の通り道が詰まる
何らかの原因で生まれつき鼻涙管が塞がっている場合と、感染症などで鼻涙管が詰まってしまう場合があります。
鼻涙管閉塞症の治療:まずはマッサージから
目頭をマッサージすることによって良くなるケースが多いです。目頭をマッサージしながら様子を見ることで、1歳までに9割程度は自然に治るという報告もあります。
マッサージで治らない場合は手術が必要になります。細い針金状の器具を鼻涙管に通すことで鼻涙管の詰まりを治します。一度しっかり治れば、再発することはまずありません。
たくさんの目やには要注意!日頃からよく観察してあげて
目やにがたくさん出る病気は、放っておいても治らないものがほとんど。目やには目立つので、ママも異常を発見しやすいでしょう。ママと比べて、目やにがちょっと多いのでは?と思ったら早めに受診しましょう。
受診する際は、ちょっとかわいそうですが目やにはつけたままが判断材料になります。きれいに目やにをふき取ってしまうと、医師が診断できないこともあります。
きちんと治療すれば目やにはすっきり治ります。赤ちゃんを眼科に連れていくのは勇気がいるかもしれませんが、赤ちゃんのために頑張りましょう!