早期幼児教育の紹介
早期幼児教育の弊害と効果・国内外の0歳からの知育メソッド
早期幼児教育…0歳からの赤ちゃんも対象とする知育カリキュラムや英才教育を行う教室に10代で世界的に活躍するアスリートなども通ったと話題ですが、まことしやかにささやかれる早期幼児教育の弊害とは?小さな子の健全な発育を踏まえた早期幼児教育の捉え方や「賢い子」を育てるポイントを解説。
早期幼児教育は必要?弊害と子供の将来の可能性を育てる方法
幼児教育よりもさらに早く開始する『早期幼児教育』。
若くして世界的に活躍しているアスリートたちも名だたる早期幼児教育を受けてきたとか来ないとか、我が子の将来の可能性を広げたいと、早期幼児教育に着目するママも少なくありません。
しかし、早期幼児教育に期待される子供の成長への効果の裏で「弊害」もあるとされています。
早期幼児教育とはどのようなものなのか、対象となる子どもの年齢など総体的な特徴と早期幼児教育に取り組む際の親が気を付けるべき注意点について見ていきましょう。
早期幼児教育の特徴・早すぎる知育に求めるものとは…
早期幼児教育とは、子どもの覚える力や適応力が高い幼少期(主に3歳児まで)に、学習や音楽、運動などの活動をさせることを言います。
自分の適性を知るために、浅く広く様々な経験をさせることもありますし、親が選んだ1つのテーマ(ピアノや体操など)だけを高密度で行うこともあります。
学習面を中心にピックアップして『早期幼児教育』と呼ぶ場合もあり、直観力を育てることを目的とするレッスンや、記憶力の強化を目指すレッスンを積むといった活動が特徴です。
早期幼児教育の対象となるのは未就園児
児童福祉法では、生まれてから1歳未満、つまり0歳児を『乳児』、1歳以上小学校入学前の子どもを『幼児』と呼んでいます。
ですから、『幼児教育』は、1歳以上かつ就学前までの子どもが受ける教育全般を指しますが、一般的には単に『幼児教育』というと主に3歳~6歳の子どもに向けた教育を指すことが多く、3年制の幼稚園の入園資格に該当する年齢の子どもが対象となることが多いようです。
なお、幼児教育を受けられる『幼児教室』では、入会資格が3歳以上となっていることも少なくありません。
一方、『早期幼児教育』は、幼児教育の中でも早期に行われる教育ですので、幼児期の前半、つまり3年制の幼稚園に入園する前の年齢(1歳以上3歳ころまで)の子どもが対象となります。
早すぎる知育の弊害
ピアニストなど一流の音楽家も小さなころからの音楽のレッスンに触れてきた…という話は聞いたことがあるでしょう。
現在では若くして世界的に活躍するようなアスリートたちが実は0歳からの早期幼児教育を行う教室に通っていた…と、早期幼児教育の可能性が話題となっていたことも。
しかし、そのような「我が子の将来への可能性」といった期待を胸に、早すぎる知育を通して親と物心つくかつかないかの子が接することが子供には大きな弊害となると指摘されています。
早期幼児教育と親の期待がデメリットとなる要因はおもに2つ。
1.親の期待が劣等感を生みストレスとなる
子供への教育を通して、親は子供へ過度な期待を抱きがちです。
早期幼児教育の弊害とは、子供に教育環境を与えることによるものではなく、正確には親の有り方、子供への接し方が問われているといえます。
親が子供に与えた教育環境とは、いうなれば親の価値観によるもの。一概には言えませんが我が子のために「期待」を込め子供の道を親が選び与えているのだとすると、親は無意識のうちに子供に成績や結果を求め、親の表情を敏感に読み取る子供は自分ではなく親のために教育環境を受け入れているといえます。
そうして、思うような結果にならなかったとき、子供は「ママがガッカリしている」=「自分のせい」と捉えてしまいかねません。
小さな子供に大切なのは、理由なんか関係なく存在自体が愛されていると分かる愛情です。自己肯定感が育まれず劣等感に染まった子供は、残酷なほどのとても大きなストレスを抱えてしまうことに…。そのストレスは心の発育に大きな影をもたらす可能性は大きいのです。
2.環境を与えられることに慣れた故の「受け身」
親が子供の為に与えるものは生活環境や食事、そして愛情。
早期幼児教育のような教育環境もそのひとつです。子供の好奇心を育てたい…その思いで惜しみなく様々なものを与えることで、子供を「受け身」にしてしまうと指摘されています。
与えられた環境の中で、物事への興味があってもどうするかはママが決める…そんなことを繰り返しているうちに物事への興味が薄れていくのだそうです。また、全ての基準が「ママ」になってしまうことで物事の善し悪しの判断も身に付きにくく、行動的になるすべを失ってしまうのです。
早い時期の教育の必要性
では、早期幼児教育は全くの無駄かというと、そんなことはないでしょう。
早期幼児教育により文字や数の概念、外国語など基礎学力がつくので、幼稚園小学校からある程度の進学を考えている家庭には有利となります。
その他にもピアノなどの専門性の高い分野、スポーツなどの運動機能も早い段階での英才教育が、専門的技術の体得を早めるとされます。
このように早期幼児教育には子供の発育を促す要素は確かにあります。しかし、「勉強ができる子」というよりは「頭の良い子」を育てたいという考え方であれば、早期幼児教育を見直すべきかもしれません。早期幼児教育を受けさせないと運動の出来る子にならない、賢い子にならない、というわけではないのです。
シナプスと「お勉強」
「賢い子に育てたい」…つまり、人間の記憶力や理解力など脳の働き、運動能力等の決め手となるのが早期幼児教育とは限らないとはいったいどういうことでしょうか?
一般的に優秀である、賢いとされる条件となり得るこれらの能力の高さは、脳の「シナプス」の数に左右されるとされています。シナプスは人間の脳の神経細胞を繋ぎ合わせネットワーク回路を作り情報伝達を行う部分。
このシナプスは0歳~3歳までに80%が完成し、12歳頃には完成しきってしまうのだそう。12歳と言えば、小学校卒業の頃、進学先を考える子も増える年齢ですね。なにより3歳までに8割が完成してしまうとされると、親としては何かしらの行動に出たくなるわけです。
シナプスはどうやって増える?
子供の脳から可能性を広げる「シナプス」は、残念ながら人よりも早くにお勉強することにより増えるものではありません。シナプスを爆発的に増やすのは質の良い脳への刺激。質の良い刺激ってなんでしょう?様々な考え方があるものの、「嬉しい!」「きれい!」「面白い!」など、子供自身が感じる良い意味での感動がそれに当たります。
つまり、子供の感性に従いながら感受性をはぐくむこと。例えば言葉の理解が進む前からの語りかけはどんなに小さな赤ちゃんにとっても幸せなことで情緒も育まれるでしょうし、例えば虫に触れることは親からすると受け入れがたいことかも知れませんが、こんな生き物がいた!という感動を大好きなママと分かち合えるような経験はどんな教育にも勝ると言えます。
つまり、お勉強を通してシナプスを形成できるかどうかはその子の生まれ持った興味関心によるものなのです。
早すぎる教育を押し付けない!親の有り方
早期幼児教育に取り組むときは、子に負担を与えないようにしたいもの。
発育を促すつもりが子供に無理がかかっていないかなど親が子供の目線でしっかりと注意を払ってあげるべきですし、早期幼児教育を通して子供に過度な期待をしないなど捉え方に細心の注意を払うべきと言えます。特に注意したい点は以下の4つ。
- 子供への過度な期待は愛情とは言い難いことを知る
- 結果を求めずコミュニケーションの一環、遊びの一環と捉える
- 知識のインプットばかりならないよう配慮し自然な脳の発育を意識する
- 自発的な興味をひきだす
早期幼児教育の具体的な例とそれぞれの特徴
では、具体的にはどのような早期幼児教育があるでしょうか?だけでなく、幼児教育の先進国といわれるフランスやドイツなどの海外の取り組みや日本生まれの早期幼児教育の特徴をチェックしていきましょう。
幼児教育先進国!フランスとドイツの早期幼児教育事情
幼児教育の先進国とも言われるフランスとドイツは、どのような制度で幼児に教育が行われているのでしょうか。国家的な取り組みと制度についてご紹介いたします。
フランスの早期幼児教育事情
フランスの学校制度は6歳から始まります。飛び級などもありますが、基本的には小学校で初等教育を5年間受け、中学校で前期中等教育を4年間受け、高校や職業高等学校で後期中等教育を3年間受けるカリキュラムになっていて、おおよそは日本と同じですね。
そして高校の最後の年に中等教育終了を証明するバカロレア試験に合格すると、大学や技術短期大学などの高等教育を受けることが可能となります。
実はフランスこそ幼児教育先進国であり、同国では3~5歳児を対象に幼児教育が行われています。主に幼稚園や小学校付属の幼児教室で行われ、義務教育ではありませんが幼稚園は無償で通うことができます。希望すれば2歳から通うことができるので、2歳児の通園率は約35%、3~5歳児の通園率は約100%となっています。
ドイツの早期幼児教育事情
教育制度も大きく異なる東ドイツと西ドイツが統合してできた現在のドイツ。現在も、国が一元的に制度を定めると言うよりは、州によって独自性を打ち出した制度が見られています。
ドイツでは0歳児~3歳児未満は『保育所』、3歳児~6歳児未満は『幼稚園』に通うことになりますが、日本で言う保育所と幼稚園の概念での分類ではなく、ただ単に年齢によって分類されていることが特徴と言えます。
ですから、保育所と言っても保育だけが提供されるのではなく、年齢に応じた教育も提供されるのです。
また、幼稚園は小学校に慣れるための機関としての意味合いが強く、無償で通園できる州も少なくありません。
特に最後の学年は小学校入学前の重要な学年と言うことで、幼稚園が有料の州においても、最後の学年だけは無償で通園することができるようです。
海外発!個人で受けられる早期幼児教育
制度としての幼児教育ではなく、個人の選択で受けられる早期幼児教育にはどのようなものがあるでしょうか?
日本で受けることができる早期幼児教育や早期幼児教育の鍵となる単語をいくつかご紹介いたします。
チャイルドマインダー
発祥地であるイギリスでは、70年もの歴史を持つのが『チャイルドマインダー』の資格です。家庭保育のスペシャリストを意味し、チャイルドマインダーの資格を取得した1人の保育士に対し幼児1~4人の少人数保育を行うメソッドを身につけたと判断されます。
チャイルドマインダーの資格養成講座を一定期間受講したり、資格養成通信講座を修了したりすることで資格取得ができます。
主に、保育士や幼稚園教諭、小学校教諭や子どもと接する機械のある看護師などがスキルアップのために資格取得を目指します。
シュタイナー教育
ルドルフ・シュタイナー氏が1919年にドイツで始めた教育法を『シュタイナー教育』と呼びます。
子どもの知性だけでなく精神的な発達や身体的な発達に注目し、歌や詩、絵画などの芸術を用いて、その時期に応じた全人的教育を施すことが特徴です。
シュタイナー教育を主軸とした小中高の一貫校や幼稚園だけでなく、シュタイナー教育理論に基づくおもちゃなどが専門の店舗やデパート内の玩具売り場などで取り扱われています。
ECEC
ECECとはEarly Childhood Education and Care、つまり早期幼児の教育とケアを意味する語です。OECD(34の先進国が加盟する経済協力開発機構)が、保育や幼児教育への公的な投資がその国の経済的な成長に大きく影響を及ぼすと早期幼児教育に注目をしたことから、ECECの重要性が各国で叫ばれるようになりました。
幼児に何かを教える『教育』だけでなく『ケア』を同時に与えること。子どもの成長や発達の段階に応じた保育を与えること。いずれも、ECECの観点に基づいた教育法ということができます。
日本ではベネッセ教育総合研究所などにおいて研究され、幼稚園や保育園の先生や幼児を持つ親、幼児教育の専門家などの幼児教育関係者が議論をしたり、世界におけるECECの動向を調べたりしています。
ドーマン法
脳に障害を持つ子どもに対して、体の動きを能に教え込む『パターニング』などで知られるドーマン法は、本来の対象の脳に障害がある子どもに対してだけでなく、知能や運動能力を伸ばしたい赤ちゃんの能力開発のための早期幼児教育も手掛けているのだそう!
ドーマン法についての書籍を購入して個人的に始めることも可能なので、人によっては胎教として始める場合もあるのだとか!
日本の個人で受けられる早期幼児教育
日本でも0歳からの早期幼児教育が注目を集めていますね!日本からも0歳から受講できる教室を2つをご紹介します。
七田チャイルドアカデミー
0歳児からの超早期幼児教育を実施しているのが『七田チャイルドアカデミー』です。新生児から5ヶ月までの赤ちゃんを対象とした『ハッピーベビーコース』や0歳~1歳、2歳~3歳、4歳~5歳、6歳と年齢別に分けた『幼児コース』、そして『胎教コース』や『小学生コース』などもあり、0歳児からというよりは生まれる前から教育を受けられるようになっています。
これらのコースのいずれもが、お母さんが子どもと一緒にレッスンを受けることで、子どもが親との一体感と愛情を感じることが特徴となっています。また、子どもの可能性を育てるために、『認める』ことと『ほめる』ことの重要性も強調しています。
具体的には、イメージを描いたり見たものを記憶したり高速で計算したりする『直観力』を『右脳の能力』とし、この『右脳の能力』を伸ばす教育を行うことに主眼を置いています。独自の教材を使って繰り返し学習し、量や質をイメージとして覚え込んで行くのです。
Baby Kumon
0歳から語りかけを中心に「学ぶ」土台を育てるという方針のBaby Kumon。毎月様々なカリキュラムを盛り込んだ教材を使用し、赤ちゃんの楽しい!を引き出していくのが大きな特徴です。
教材は近くのBaby Kumonの教室まで受け取りに行くと、先生が教材の使用方法等や赤ちゃんの反応の引き出し方などもしっかり教えていただけるそう!実はBaby Kumonの先生は赤ちゃんの発育のプロフェッショナル。ママへのアドバイスは安心できるものと言えるでしょう。
また赤ちゃんの成長記録なども残るので、普段なら気付きにくい赤ちゃんの興味も分かるかも知れません。
愛を持って子供と向き合うために、まずは「期待」を捨てて!
海外でも日本でも様々な早期幼児教育への取り組みがありますね。
親にとって我が子の成長とはその可能性を信じたいものですしできる限り伸ばしてあげたいものです。しかし、親だからこそ「我が子が将来、素敵な人生を歩むそのためなら…」と思ってしまいがちですが、その「素敵」はあなたの価値観で子供にとっては杓子定規でしかありません。
過剰な期待は子供にとって負担にしかならず、それは小さな子供ほど残酷にのしかかります。
早期幼児教育ももちろん結構ですし、全くの無駄にはならないでしょうが、小さな赤ちゃんへの英才教育を考える前に赤ちゃん自身の立場になれる親であるべきです。
もの言わぬ赤ちゃんのときから子供はママのことが大好きで、ママが喜ぶのなら、早期幼児教育も当然受け入れるでしょう(というか、受け入れるしかないのですが)。
しかし、あなたの子供が一番に望んでいるもの、それはママが喜んでいる「成績」ではなく、ママが喜ぶ顔…つまりはママとの間の愛情だということを忘れないようにしましょう。