妊婦健診の尿検査の目的

妊婦健診の尿検査でわかること~糖や蛋白は異常サイン?

妊婦健診の尿検査の目的は、妊婦や胎児にとって悪影響となる病気や症状の早期発見です!糖・蛋白・ケトン体など尿からわかること、具体的な検査項目や数値の目安を解説。尿が出ないことが多い、検査にひっかかった妊婦さんに向けて、必要な量や尿意を促す方法、食事など検査前の注意点をご紹介します。

妊婦健診の尿検査でわかること~糖や蛋白は異常サイン?

妊婦健診の尿検査の目的とは?

厚生労働省が推奨している標準的な妊婦健診の回数は合計14回。
尿検査は、その14回の健診ではほぼ必ず行われます。一体何の目的で、毎回尿を提出しなければならないのでしょうか?

実は尿からは、見た目ではわからない身体の不調を発見することができるのです。そして、特に妊娠中にかかりやすい病気の早期発見には尿検査が欠かせません!

妊婦健診の尿検査でわかること

健診の説明用紙と紙コップ

妊娠中に病院で提出した尿は、簡易的な方法で調べられます。
それによって以下のようなことがわかります。

1.尿蛋白(尿に含まれている蛋白量)
2.尿糖(尿に含まれているブドウ糖量)
3.潜血(尿内のヘモグロビンの有無)
4.尿比重(尿に含まれている成分の比率)
5.尿ph(尿のph)
6.白血球(尿に含まれている白血球量)
7.ケトン体(尿に含まれているケトン体量)
8.亜硝酸塩(尿内の亜硝酸塩の有無)
9.ビリルビン・ウロビリノーゲン(尿に含まれているビリルビン・ウロビリノーゲン量)

尿として排出されるのは必要のない成分のはず

異常がない尿には、不要物のみが混ざっています。

人間の身体に必要な成分は、血液中に吸収されて身体中に運ばれます。その段階で不要だとみなされた成分は腎臓に運ばれます。腎臓に運ばれてきた老廃物はろ過されて、尿として体外に排出されるというメカニズムだからです。

しかし、本来は排出されるべきではない成分が尿に混ざっている場合は、腎臓や身体の機能に異常が発生している可能性が考えられます。

妊娠中のポイントは「糖」と「タンパク質」

尿検査からは様々なことがわかりますが、その中でも妊婦にとって1番気を付けたいポイントになるのが「尿糖」と「尿蛋白」です。

「尿糖」の数値からは、妊娠糖尿病

尿の検査

妊娠糖尿病とは、妊娠後に起こる糖代謝異常です。
本来、人間の身体は食事などから栄養を摂取し、血糖値(ブドウ糖濃度)が上がると、すい臓からインスリンを分泌します。インスリンの働きにより、体内の血糖値は一定にコントロールされているはずです。

しかし、妊娠中特有のホルモンがインスリンの働きを阻害することで、体内の血糖値が急激にあがってしまうのが妊娠超尿病です。血液中の「糖」の量が多いため、尿に混ざって体外に排出されます。

妊娠糖尿病のリスク

妊娠糖尿病は、妊婦さんだけではなく、胎児にも影響する可能性があります。血糖値が高く過ぎると腎臓に負担がかかり、さらに血管が固くなるために、血流が悪くなります。

血液は胎盤を通って胎児にも流れるので、糖を多く含んだ血液は赤ちゃんにも流れます。特に妊娠初期の場合は胎児の細胞分裂に影響を与えることもあります。
中期以降は、早産や巨大児のリスクがあります。初期よりも血糖値が上がりやすくなるので注意が必要です(注1)。

妊娠糖尿病による血糖値の上昇は、一般的には産後には治まります。しかし、将来的な糖尿病のリスクとは無関係ではありません。

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妊娠糖尿病は自覚症状がない

妊娠糖尿病は、喉の渇きや頻尿などの症状があるケースも見られますが、これらは妊娠中に特に珍しいことではなく、妊婦さん自身が罹患を自覚できることはあまりありません。

そのため、妊娠糖尿病の兆候があるかどうかは、妊婦健診の尿検査が非常に重要な意味を持ちます。尿検査で尿糖が出るようなら、採血を行い、血液検査をするのが一般的です。

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「尿蛋白」の数値からは、妊娠高血圧症候群

「尿蛋白(にょうたんぱく)」の「蛋白」とは、「タンパク質」の意味です。タンパク質は健康な身体作りに欠かせない成分なので、本来であれば尿から排出されるべきではありません。

しかし、排出されているということは体内のろ過が上手くいかず、腎臓機能が低下しているサインであり、「妊娠高血圧症候群」の疑いもあります。

妊娠高血圧症候群とは、かつて2005年までは「妊娠中毒症」と呼ばれていた病気で、高血圧やむくみなどの症状を伴います。

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妊娠高血圧症候群のリスク

血圧測定する妊婦

妊娠高血圧症候群の原因はまだ解明されていませんが、胎盤形成がうまくいかなかったのが原因という説があります。そのため、妊娠高血圧症候群が進行すると、胎児に十分な栄養や酸素を送ることができず、血管に傷みが生じて、妊婦と胎児の両方に悪影響を与えてしまいます。

早期に発症するほど重症化しやすく、常位胎盤早期剝離、発育不全や低出生体重児のリスクが伴い、時には母子ともに危険な状態になるケースもあります(注2)。

妊娠高血症候群も自覚症状がない

妊娠糖尿病と同様に、妊娠高血圧症候群も自覚症状がほとんど見られない病気です。そのため、妊婦健診での尿検査と、血圧測定が診断の基準となります。

尿蛋白の数値

尿蛋白の結果は「+」「-」で表されます。特に問題がない場合は「-」(陰性)という結果になります。しかし数値が高い場合は、適切な対処が必要になります。表示方法は以下の通りです。

  • ±15~29
  • +30~99  
  • ++100~299 
  • ++300~999
  • ++++1000以上

尿蛋白が14以下であると「-」という表示になり、正常と判定されます。
「+」の数が増える程、尿中のタンパク質の量が多いという意味で、「++」以上の数値が出た場合は担当医から指導があるか、再検査となります。

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「尿糖」や「尿蛋白」陽性なら病気確定?

眠る妊婦

尿検査で、糖やタンパク質が出たからといって、即病気だと確定するわけではありません。体調や食事の内容によっても、陽性反応が出やすくなることはあるので、担当医のアドバイスをよく聞くようにしましょう。

特に尿蛋白の場合は、1回陽性だっただけで問題があるとは限りません。妊娠中は腎臓に流れ込む血液量が通常よりも増えたり、尿管が広がって腎臓に負担がかかるため、妊娠前に比べて尿蛋白はでやすい状態にあります。

急激に体重が増えたり、塩分を摂り過ぎたり、疲労や睡眠不足などの不調から尿蛋白が出る場合もあります。次回の尿検査では陰性となるように、生活習慣に気を遣い、再検査を待ちましょう。

尿からわかることはたくさんある!

尿糖や尿蛋白以外にも、尿検査からは様々なことがわかります。知っていると安心なのでぜひ覚えておいてください。

重症妊娠悪阻

妊婦特有の症状であるつわりは寝ても覚めても船酔いをしているような状態で、非常に辛いものです。重症になると寝返りをうつだけで気分が悪く、寝たきり状態になる妊婦さんもいます。

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つわりが重く、治療が必要となる状態を「重症妊娠悪阻(じゅうしょうにんしんおそ)」と言います。重症妊娠悪阻になると、食事を摂ることができないうえに、嘔吐を繰り返して体内の栄養素が無くなってしまうので、一時的に身体が飢餓状態に陥ります。

人間の身体は飢餓状態に陥ると、体内にある脂肪をエネルギー源に分解するための「ケトン体」を生成します。ケトン体には独特の匂いがあり、それは尿や口臭、体臭としても認識できることもあります。

通常でも1日に40~50mgは体外に排出されるのですが、尿検査でケトン体の陽性反応が出る場合は、それ以上の量が排出されている場合です。プラス1、プラス2、プラス3と数値が高いほど栄養障害が深刻で、重症妊娠悪阻として点滴や入院治療の対象となります(注3)。

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膀胱炎

膀胱炎は細菌によって膀胱の壁に炎症が起こる病気です。
尿中に、血液や白血球が混ざっている場合は、膀胱炎の疑いがあります。膀胱炎は下腹部や排尿時(特に最後の方)に痛みを感じるので、自覚症状がある方はすぐに担当医に相談しましょう。

妊婦は、免疫力低下などが原因となり、膀胱炎になりやすい状態にあります。妊娠中は頻尿になりやすくおりものも増えるので、トイレには小まめに行き、おりもとシートなどで外陰部を清潔に保ちましょう。

胎児や胎盤の状態

胎児

女性ホルモン「エストロゲン」の一種である「エストリオール」の数値によって、胎児や胎盤の状態がわかります。

尿に含まれている「エストリオール」は妊娠週が進むにつれて、増えていくのが正常です
しかし、数値に変化がない、減ってしまう場合は胎児の状態が良くない、胎盤の機能が正常に働いていないサインなので、担当医による別の検査が行われる可能性があります。

異常妊娠

妊娠検査薬では、hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)というホルモンの分泌があるかどうかを調べることで、陰性・陽性を判断しています。

通常、hCGの濃度は妊娠10週頃からは下降していきますが、hCGの数値が高い場合は、胞状奇胎など母体や胎児にトラブルが起こる異常妊娠の恐れがあります。精密検査を行う場合が多いでしょう。

理想的な尿検査の受け方

妊婦健診のたびに尿検査があると、ついうっかり自宅でトイレを済ませてしまう方もいるでしょう。
また、採尿が苦手で、出そうと思うと緊張して上手くできないという妊婦さんもいます。

尿が出ない時の対処法

尿検査は病院について、受付後にすぐに行う場合が多いです。しかし出ない場合は、看護婦さんに頼んで自分のタイミングで検尿させてもらえるはずです。

待ち時間がある場合は待合室に座ってリラックスしましょう。すぐに診察の順番が回ってきた場合は、診察後に尿検査を行います。ただし、結果を聞くために少し待ち時間が発生する場合もあるので、何か予定が入っているときは気を付けてください。

量はほんの少しでも大丈夫!

妊婦健診の尿検査は、試験紙を使っての簡易検査です。試験紙を浸せれば問題ないので、尿の量は大さじ1程度でも検査は可能です。

検尿用のコップにラインが書いてあるので心配になりがちですが、あくまで目安に過ぎないので、少しでも採取できたらそのまま提出して構いません。不安なときは、看護婦さんに尋ねてみてください。

水の流れを聞こう

「出ない」と思っても、トイレに行けば意外と出るケースもあります。人間は水の流れる音を聞くと尿意を催すという説もあるので、洗面所で手を洗ったり、一度トイレを流したりしてみましょう。う。

理想的な尿は中間尿

尿検査の採取容器

尿検査の前に看護婦さんから「中間尿でお願いします」と言われる場合があります。中間尿というのは尿が出始めてから少し経った時に採取する尿で、最後の方に出た尿は入りません。

なぜ中間尿が良いかというと、出始めの尿には尿道内にある雑菌やたんぱく質が混ざる可能性があり、最後の方の尿は成分が薄い可能性があるからです。

尿が出ないときは、出た分だけで限りませんが、しっかりと採取できるときは中間尿を提出するようにしましょう。

尿検査の前に気を付けること

尿検査は、普段通りの尿を検査することで正確な結果がでます。尿が出ないからと言って、お水やお茶をガブガブ飲んで薄い尿を出すことは推奨できません。

また、妊婦健診前に甘い物を食べ過ぎると糖が出ることもあります。数値が高ければ再検査になる可能性もあるので、面倒な結果にならないように気を付けましょう。

また、一度「尿糖」や「尿蛋白」の検査で陽性になった場合、次の検査でも陽性になると精密検査の可能性は高いはずです。寝ている間に作られた尿からは正確な数値が出やすいので、このようなときは健診の予約を朝一番にするのがおすすめです。

健康な尿のためにおすすめの食べ物

尿は血液から作られますが、その血液内に含まれている栄養の元となるのは毎日の食事です。つまり食べ物によって尿検査の結果も変わってくるので、妊婦だからこそ食事には気を使う必要があります。

理想の食事

魚と野菜のバランスのとれた食事

妊婦の食事に一番必要なのは「栄養のバランス」です。炭水化物、たんぱく質、ビタミンといった基本的な栄養素にプラスして、妊婦が不足しがちな鉄分や食物繊維を摂ることを意識した献立を心がけましょう。

妊娠中に毎日自炊をするのは大変ですが、特に手の込んだ食事ではなくご飯、お味噌汁、焼き魚、納豆という簡単メニューで十分です。

摂らない方が良い食べ物は?

妊娠中は、濃い味付けの物が食べたくなる傾向が高いですが、味付けが濃くなれば塩分も高くなり、高血圧を招く原因となります。出来れば薄味にして、香辛料で調節するようにしましょう。

また市販されている飲み物には糖分が多く含まれているものが多いです。ジュースはもちろんスポーツ飲料や野菜ジュースなど、身体に良さそうな飲み物でも糖分が多く含まれています。成分表を見てから飲むようにしてください。

尿検査の目的は自分と赤ちゃんの健康のため

妊婦健診の尿検査は、妊娠経過の異常や病気の症状を早期発見するために行います。健康な赤ちゃんを産むためにも、尿検査の意味や注意点を知って健康管理に役立ててください。

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