妊娠中の味覚変化の原因

妊娠中に味覚が変わるのはなぜ?味覚が鈍感・敏感になる原因

妊娠中の味覚変化は、約9割の妊婦さんが実感するという調査結果もあります。味を感じにくくなったり、反対に味覚が敏感になり、苦味を強く感じたりなどの症状が表れます。つわり時期には、酸っぱいものや塩気が強い物が食べたくなるなど、食の好みに影響することも!妊娠中に味覚が変化する原因とは?

妊娠中に味覚が変わるのはなぜ?味覚が鈍感・敏感になる原因

妊娠中によくある味覚の変化

「妊娠中に味覚が変わった」と感じる妊婦さんは少なくありません。
妊娠経過に問題が見られない妊婦さん97人を対象に実施された調査では、97人中90人(92.8%)が妊娠前期・中期・後期を通して何らかの味覚や嗜好の変化が見られたことが報告されています(注1)。

具体的には、次のような味覚の変化を感じる方が見受けられます。

図解:妊娠前期・中期・後期で味覚の変化

味を感じにくくなる

妊娠中は、何を食べても味を薄く感じてしまう方がいます。いつもは濃い味を好まないのに、妊娠してから急に濃い味付けを好むようになったという方は、単に嗜好の変化に留まらず、味覚が鈍化している可能性も無視できません。

味覚が鈍感になっている妊婦さんが料理を作ると、妊婦さん自身が美味しいと感じるでも、他の人にとっては「味が濃い」「辛過ぎる」「甘過ぎる」味付けになってしまう恐れがあります。

味に敏感になる

反対に、何を食べても味を濃く感じる妊婦さんもいます。塩味、苦みや甘みなどの味覚が敏感になり、少しの味の違いや濃さの違いに敏感に反応するようになります。

口の中が苦く感じる

何も食べていない時でも、口の中が苦く感じてしまう妊婦さんもいます。苦い食べ物でないのに「苦い」と感じたり、甘みや酸味などの感覚も「苦い」と錯覚してしまったりすることもあります。

口の中が苦いときは酸味でスッキリ

口の中が苦いときに、甘みの強いキャンディやチョコレートを食べると、かえって苦みを強く感じてしまいます。口の中が苦いときは、甘いものではなく、酸っぱいものがおすすめです。

酸味の強いキャンディを舐めたり、レモンを軽く絞った水を飲み、口の中をすっきりさせましょう。

妊娠中によくある味に対する好みの変化

オレンジを食べている女性

妊娠中に味覚が変化することはよくあることですが、味に対する好みが変わることも珍しいことではありません。妊娠中には、次のような好みの変化がしばしば見られます。

酸っぱいものを食べたくなる

今まであまり酸っぱいものが好きではなかったのに、急に酸っぱい味付けを好むようになる妊婦さんは少なくありません。

先程の調査でも、97人中59人(65.6%)の妊婦さんが、妊娠中は酸っぱいものを食べたくなった、酸っぱいものを美味しいと思えるようになったことが報告されています(注2)。

塩気が強いものを食べたくなる

塩からい味付けを求める妊婦さんもいます。ポテトチップスなどのお菓子、ハンバーガーなどのファストフードなどを食べたいという欲求が増したり、普段の食事にも、ついつい醤油や塩をかけてしまったりします。

妊娠高血圧症候群に注意!

妊娠高血圧症候群とは、妊娠20週~産後12週までに起こる、妊娠・産後特有の高血圧症状で、妊婦さんの20人に1人の割合で起こります(注3)。

妊娠高血圧症候群にかかって症状が重症化すると、妊婦さん自身に腎臓・肝臓の機能障害が起こったり、赤ちゃんの発育が正常に進まなかったりするリスクがあります。

妊娠高血圧症候群の罹患を防ぐ完全な方法はまだ確立されていませんが、塩分摂取量を控えて血圧上昇を予防することも1つのリスク回避法とされています。しょっぱいもの、味が高いものは、塩分も高めですので、摂取のしすぎにはやはり注意しましょう。

甘いものを食べたくなる

ベッドの上で板チョコを食べる妊婦

今まで甘いものを好んではいなかった人も、妊娠を機に甘いものが無性に食べたくなることがあります。妊娠中は、妊娠前より必要カロリーが増えるのは事実ですが、ハイカロリーなお菓子ばかり食べていると急激な体重増加を招いてしまいます。

妊娠中の肥満は、出産のリスクを高める

厚生労働省では、妊娠前の体重と身長のバランスが標準(BMI値が18.5以上25.0未満)の人は、妊娠中の体重増加は7~12kgが適正であると定めています(注4)。

これ以上の体重増加が見られると、妊婦さん自身だけでなくお腹の中の赤ちゃんもリスクが高くなってしまうのです。

妊娠・出産のリスクを少しでも低くするためにも、妊娠中は甘いものや高カロリーなものを食べ過ぎないように注意しましょう。

BMIの求め方

体重(kg)÷身長(m)2

妊娠中に味覚が変わる原因

なぜ妊娠中は味覚が変わりやすくなるのか、正確なところは解明されていませんが、原因として次の事柄が推定されています。

ホルモンバランスの変化

妊娠中はホルモンバランスが変化します。女性ホルモンの1つである「プロゲステロン」の分泌量が増えますが、プロゲステロンには知覚を鈍くする作用があるという説もありますので、妊娠中は味覚が鈍くなる人が多いと推測されています。

身体がカロリーを欲しているため

妊娠中は、胎児の発育のために、妊娠前に比べて50~450キロカロリーを多く摂取する必要があります(注5)。そのため、カロリーの高いものを好みやすくするために、味の濃いものをおいしく感じるように味覚が変わるという説もあります。

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唾液量の変化

妊娠中、特に妊娠初期には、ホルモンバランスの変化や自律神経の乱れによって、唾液量が変化する方がいます。

唾液量が増えると、むかつきやすくなったり、吐き気が強くなったりといった症状を感じる人もいます。このような症状を「よだれつわり」「唾液過多症」と呼びますが、唾液過多症になると味覚にも影響が及びんでしまう可能性があります。

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また、反対に唾液分泌量が減る妊婦さんもいます。唾液の分泌量が減ると、口の中が乾いたり、なんとなく口の中が粘ついたり、口臭が強くなることがあります。

つわりによる胃液や胆汁の逆流

つわりに苦しんでいる妊婦

つわりには吐き気やむかつき、身体全体のだるさなどのさまざまな症状がありますが、妊婦さんによっては嘔吐を繰り返すといった重い症状が表れることがあります。

嘔吐によって胃液や胆汁が逆流し、口の中が常に酸っぱいような苦いような感覚になってしまうこともあります。

そのため、味覚にも影響が及び、何を食べても苦いと感じたり、酸味や辛みが強いと感じたりすることもあるのです。

亜鉛不足で味覚が変化する可能性は低い

舌は味蕾(みらい)という部分で味を感じていますが、味蕾の細胞再生には亜鉛が不可欠ですので、亜鉛摂取量が不足すると味覚が正常に作動しなくなってしまいます。厚生労働省では妊娠中は妊娠していないときよりも亜鉛を1日当たり1~2mg多めに摂取するように推奨しています。必要な亜鉛を摂取できていないために、妊娠中に味覚が変化するのではないかとも考えられてきました(注6)。

しかし、一般的に味覚の変化が起こりやすい妊娠初期の血清中の亜鉛量を調べてみると、正常の範囲内であることが多いことが分かっています。そのため、妊娠中の味覚障害は、亜鉛不足が理由の可能性は低いと結論付けている研究もあります(注7)

味覚の変化はいつ起こりやすい?

図解:味覚の変化はいつ起こりやすいか

妊婦さんの味覚が変化しやすい時期として、次の3つのタイミングを挙げることができます。

妊娠超初期

妊娠しているかどうかも分からない時期に、味覚の変化が起こることもあります。急に酸っぱいものが食べたくなって、「何だか変だな」と思いたら、妊娠していることが分かったというケースもあります。

また、口の中が苦く感じたり、甘いものが無性に食べたくなったりすることで、妊娠に気付く人もいます。

つわりの時期

妊娠初期のつわりの時期に、味覚の変化が見られることは少なくありません。ただでさえ気分が良くない時期に「何を食べても美味しく感じない」「口の中が苦い」などの変化が見られると、食欲が落ちてしまい、体重が減ってしまいます。

本来ならば、妊娠中はしっかりと栄養のあるものを食べなくてはなりませんが、つわりの時期は無理をする必要はありません。妊婦さん自身がストレスなく暮らせるように、食べられるもののみ食べましょう。

つわりを乗り越える食べ物&食べ方|葉酸たっぷりレシピ
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妊娠後期

妊娠後期に入り、より一層食欲が増す時期に、味覚が変わってしまう妊婦さんもたくさんいます。味を薄く感じて、ついしょう油や塩を多めに足してしまったり、脂っこいものや甘いものが無性に甘いものが食べたくなることがあります。

味覚が変化するのは妊娠経過が良好な証拠?

自衛隊中央病院産婦人科の水本賀文氏らの研究によると、「むくみなどの妊娠高血圧症候群の症状がある妊婦さんは、味覚の変化があまり見られない」ということが分かっています。

同研究によると、反対に「妊娠高血圧症候群の症状がない妊婦さんは、妊娠後期に塩分に対しての感覚が鈍くなっている」とも報告されています。

このことから、妊娠中に味覚が変化すること、特に塩味をあまり感じなくなってしまうことは、妊娠高血圧症候群ではない、つまり妊娠経過が良好である可能性が高いことを意味するとも考えられます(注8)。

妊娠中の味覚の変化は、妊婦さんにとってはあまり嬉しくないものです。しかし、味覚の変化は妊娠が順調に進んでいる証拠の1つでもあると考えるなら、少しは嬉しい気持ちで受け入れられるのではないでしょうか。

栄養バランスの良い食事を心がけよう

妊娠中は、普段以上に栄養バランスに気をつけなくてはいけない時期です。妊婦さんが食べるものによって、自身だけでなく、お腹の中の赤ちゃんの成長や健康も左右してしまいます。

しかし、実際には、つわりによる吐き気やむかつきで食欲を失ったり、味覚の変化で食べられないものが増えてしまったりと、バランスよく食事をすることが難しい時期もあります。無理をすると、更に気分が悪くなる恐れもありますので、つわり時期はある程度割り切りましょう。

妊娠期間をトータルで見た場合に、バランスのとれた食生活ができているのなら問題はないはずです!

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