妊婦が牡蠣を食べる際の注意点

妊婦は牡蠣を食べてもいい?安全性を高める食べ方

妊婦は牡蠣を食べてもいいの?ノロウイルスによる食中毒や胎児への影響、貝毒による下痢・嘔吐などの症状を避けるために、安全性を高める食べ方をご紹介します。牡蠣は栄養豊富で、妊娠中にも嬉しい効能があります。生食用牡蠣と加熱用牡蠣の違いも解説しますので、おいしく牡蠣をいただきましょう。

妊婦は牡蠣を食べてもいい?安全性を高める食べ方

妊婦は牡蠣を食べてもいい?

牡蠣は『あたりやすい食品』として知られています。そのため、妊娠中は「食べない方が良いのでは?」と警戒してしまうのも無理はありません。

牡蠣は、日常的な食生活で必須な食品ではないので、不安が拭えないのなら無理に食べる必要もありません。しかし、確かに食当たりの可能性はある食べ物ですが、注意点を守れば、絶対に食べてはいけないという訳でもないのです。

なぜ牡蠣は食中毒を起こしやすいのか、また、どうすれば牡蠣を安心して食べられるのか解説します。

牡蠣などの二枚貝はノロウイルスが怖い

生牡蠣

牡蠣などの二枚貝は、海水を体内に取り込み、海水からプランクトンなどのエサとなるものだけを吸収して海水自体は出水管と呼ばれる管で排出します。

ノロウイルスが含まれた海水を二枚貝が取り込むと、ノロウイルスを体内に吸収したまま海水を排出します。このような作業を繰り返すことで、二枚貝の体内には高濃度なノロウイルスが残るようになるのです。

体内に凝縮されたノロウイルスを持つ牡蠣を食べるなら、人間の体内にも高濃度のノロウイルスが入り込むことになります。その結果、下痢や嘔吐などの食中毒症状が現われるようになります(注1)。

もしノロウイルスに感染した場合は?

現在のところ、ノロウイルスに対する抗ウイルス剤はありません。そのため、一度ノロウイルスが体内に入り込んでしまったら、高熱が出るときには解熱剤を服用する、下痢がひどいときには整腸薬を服用するなど、対症療法で回復を待つしかありません。

二枚貝は多いのに、なぜノロウイルスと言えば牡蠣?

アサリなどの一般的な二枚貝は、基本的にスープなどの過熱する調理法で食べます。しかし、牡蠣は鍋やフライなどの過熱する調理法だけでなく、生で食べることも一般的ですので、ノロウイルスが含まれているときは食中毒を起こしやすくなってしまうのです。

食品以外のノロウイルス感染経路

ノロウイルスは、牡蠣やアサリなどの二枚貝に入っていることが多いのは事実ですが、それ以外にも感染経路は存在します。

  • ノロウイルスに汚染された手指や物を介しての接触感染
  • ノロウイルス患者の便や吐しゃ物から人の手を介した二次感染

以上の2つにも注意する必要があります。

トイレの後や外出から帰ってきた時にしっかりと手洗いをすること、食べ物や食器に触れる可能性がある調理器具や布巾などのキッチン用品を清潔に保つこともノロウイルス感染の予防のためには大切です。

妊娠中の牡蠣は生NG!加熱すればOK

牡蠣の網焼き

ノロウイルスは、1度体内に入り込んでしますと対症療法しかありませんので、予防が肝心です。

厚生労働省では、ノロウイスルの活性を失わせるには加熱が有効な手段であり、90秒以上、中心部の温度が85~90度になるように加熱することが望ましいと述べています(注2)。

加熱すると硬く縮んでしまう生食用牡蠣

スーパーなどでは「生食用牡蠣」と「加熱用牡蠣」の2種類が売られています。

生食用の牡蠣は、大腸菌などの有害な菌が保健所で定められた基準以下の場所で獲られたもので、2~3日間エサを与えずに滅菌処理などを施した安全性の高い水で過ごしてから出荷されます。そのため、安全面の問題が少なく、生で食べることが可能です。

しかしながら、大腸菌が少ない水域には牡蠣の栄養分となるプランクトンなども少ししかありませんし、2~3日断食していますので、体内に水分が多くなってしまいます。体内に水分が多いと言うことは、加熱すれば水分が外に出て縮んでしまうという意味でもあります。
85~90度で90秒以上も過熱すれば、元々の姿の数分の1になってしまうこともあるでしょう。

加熱しても縮みにくい加熱用牡蠣

ふっくらと大きいままの牡蠣を食べたいと思う人は、スーパーなどで「生食用」と書かれた牡蠣ではなく、「加熱用」と書かれた牡蠣を購入するようにしてください。

加熱用の牡蠣ならプランクトンが豊富な水域で育っていますので、身に栄養が詰まっています。また、出火前に断食をしていません、体内に水分が多すぎることもありません。

味の濃い牡蠣を安全に食べたいのなら、加熱用の牡蠣をしっかりと過熱して食べましょう。

ノロウイルスに感染すると胎児にも影響がある?

お腹を両手で支えてる妊婦さん

妊娠しているときは、どのようなウイルスであっても感染を避けたいものです。では、実際に、ノロウイルスに感染することで、妊婦と胎児にどのような影響を与えるのでしょうか。

ウイルスが胎児に感染するかどうかは未解明

妊婦さんがノロウイルスにかかったとしても、お腹の中の赤ちゃんがノロウイルスにかかるかどうかはまだ解明されていません。現在のところは、妊婦さんがノロウイルスにかかっても、お腹の赤ちゃんにはノロウイルスによる直接の影響はないとされています。

妊婦の嘔吐や下痢は危険

妊婦さんがノロウイルスの危険を避けるべきなのは、自身の体調が悪くなることで、赤ちゃんに悪影響が出てしまう可能性があるからです。

妊娠中は身体が疲れやすく、また、体力も落ちていることが多いので、普段以上にウイルスに感染しやすく、感染した後も強い症状が出やすくなっています。

牡蠣を食べるときはかならず過熱をし、ノロウイルスに感染しないように注意しましょう。

感染性胃腸炎

ノロウイルスのように、外部からのウイルスに感染して胃腸炎が起こることを「感染性胃腸炎」と言います。感染性胃腸炎にかかると激しい胃痛や下痢、嘔吐などの症状が出ることがあります。下痢を繰り返すことで子宮収縮を促すこともあり、場合によっては早産に繋がるリスクも無視できません。

市販の整腸剤などの医薬品には妊娠中には好ましくない成分が含まれていることもありますので、必ず病院で診察を受け、適した医薬品を処方してもらう必要があります。

脱水症状

下痢や嘔吐を繰り返すと、体内の水分量が減って脱水症状が引き起こる可能性もあります。赤ちゃんへの栄養や酸素はすべてお母さんの血液を通して送られますから、脱水症状に陥ると、結果として赤ちゃんにも十分な栄養や酸素が送られなくなってしまいます。

下痢や嘔吐の症状が激しく、水分すら受け付けないときは、病院で詳しく診察を受け、水分補給の点滴を実施してもらいましょう。

妊婦に嬉しい牡蠣の栄養素

牡蠣ご飯

ノロウイルスなどの食中毒への注意は必要ですが、牡蠣は妊婦さんに嬉しい栄養素がたくさん含まれた食品でもあります。

鉄分

牡蠣などの貝類は、鉄分が豊富です。牡蠣100グラム(中程度の牡蠣5~6個)には、鉄分が1.9mg含まれています(注3)。

妊娠中は血液を通して赤ちゃんに栄養を運びますので、平均すると妊娠前の1.5倍の血液が必要になります。ただし、血液量が増えたからといって、血液中に含まれる成分が急に増えるわけではありません。通常と同じような生活をしていると、赤血球を作る成分である鉄が不足してしまいます。

妊娠初期には鉄分は1日に8.5~9.0mg、妊娠中期・後期には21.0~21.5mg摂取するように推奨されていますので、牡蠣を食事に取り入れれば鉄の不足分を効果的に補うことができるのです(注4)。

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カルシウム

カルシウムは、赤ちゃんの骨や歯を構成したり、筋肉や神経が正常に働くためにも、妊娠中に積極的に摂取したい栄養素です。

妊娠中にはカルシウムは1日に670mg摂取するように推奨されていますが、牡蠣は100グラム当たりにカルシウムを88mgほど含んでいますので、不足しがちなカルシウムを効率よく補うことができます(注5)。

なお、授乳中は妊娠中よりも、カルシウムをもっと積極的に摂取しなくてはなりません。
厚生労働省による授乳婦のカルシウム推奨量は1日当たり1,020mgですので、牡蠣だけでなく牛乳や小松菜、小魚などのカルシウムが多く含まれている食品をたくさん食べるようにしましょう(注6)。

亜鉛

新陳代謝を促し、赤血球の形成にも欠かせない亜鉛も、妊娠中に積極的に摂取したい栄養素です。

妊娠中は亜鉛を1日当たり11mg(通常の時期よりも2mg多い)摂取すること、授乳中は1日当たり12mg摂取することが推奨されていますので(注7)、100g当たりに13.2mgも亜鉛が含まれる牡蠣を食べれば不足分は軽く補うことができます(注8)。

妊娠中におすすめの牡蠣の食べ方

妊娠中に不足しがちな栄養素を幅広く含んでいる牡蠣を安全に食べるための方法を3つ紹介します。

市販の牡蠣を購入する

妊娠中は、個人的に販売されている岩ガキなどを購入するのではなく、安全性が高い市販の牡蠣を購入するようにしましょう。

牡蠣が体内で濃縮するものはノロウイルスだけではありません。有毒なプランクトンや海水に含まれる毒性のある成分も体内で濃縮し、強い毒性を示します。

牡蠣などの貝類に含まれる毒を総称して「貝毒」と呼びますが、貝毒も貝の体内で濃縮されてから人間の身体に入りますので、麻痺や下痢などの重篤な症状を引き起こすことがあります。また、貝毒はノロウイルスと異なり、熱に対して強いですので、加熱処理をしても毒性が低下しません。

市販の牡蠣なら、貝毒が消毒されてから店頭に並んでいますので、牡蠣を食べたからと言って貝毒に当たる可能性は低いでしょう。

しっかりと加熱する

鍋に入ってる牡蠣

市販の牡蠣や飲食店で食べる牡蠣も、信頼できる業者から仕入れているのなら、貝毒に当たる可能性は低いはずです。しかしながら、加熱調理が十分でないときは、ノロウイルスにかかってしまう可能性があります。牡蠣の中心部が85~90度の温度に90秒以上なるように、しっかりと過熱してください。

鍋などのお湯に入れてから食べるときは、牡蠣を最低でも2分以上は加熱するようにしてください。90~100度の熱湯に牡蠣を入れても、最初は表面だけしか温まりません。中心部分がお湯と同程度の温度になるまでの時間も、考慮するようにしてください。

牡蠣ばかりを食べ過ぎない

妊婦さんに必要な栄養素を豊富に含んでいる牡蠣ですが、だからといって牡蠣ばかり食べることはおすすめできません。不足する栄養素を補うことも大切ですが、それ以上にバランスよく色々な食材を食べることも大切だからです。野菜や赤身肉、果物なども食べていきましょう。

牡蠣は安全性を高めたうえでいただきましょう

牡蠣には亜鉛や鉄、カルシウムなどの妊娠中に特に不足しがちな栄養素がたくさん含まれています。牡蠣を食べる機会に恵まれたときには、正しく調理をして、安全性を高めたうえでいただきましょう。

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