妊婦は蟹を食べていいのか

妊婦が蟹を食べるときの4原則|蟹味噌は控えるべき?

妊婦は蟹を食べてもいいのか解説。生の蟹には、食中毒の原因菌が潜んでいる可能性もありますので、加熱調理は必須です。蟹に含まれる水銀は微量なのであまり気にする必要はありませんが、蟹味噌に含まれるカドミウムには要注意。妊娠中に突然、蟹アレルギーが発症する可能性も無視できません!

妊婦が蟹を食べるときの4原則|蟹味噌は控えるべき?

妊婦でも蟹は食べて大丈夫!ただし4つの条件付き

妊娠中は、食あたりや水銀摂取のリスクを考え、お刺身やお寿司などの魚介類を避けているという方もいるでしょう。

妊婦が刺身や寿司を食べるとき注意したい魚の摂取量目安
妊婦が刺身や寿司を食べるとき注意したい魚の摂取量目安

では、蟹はいかがでしょうか。「何となく不安だから避けている」という妊婦さんもいるかもしれませんが、蟹は、妊娠中だからといって食べてはいけない食品ではありません。

ただし、守った方が安全な点もあります。蟹を食べるときの4原則を紹介します。

1.しっかり加熱した蟹のみ食べる

カニしゃぶ

妊娠中など普段以上に身体を労わらなくてはならない時期は、蟹を食べるときは、十分に加熱するようにしてください。

蟹には、食中毒の原因となる細菌やウイルスが含まれている可能性があります。しかし、それらの細菌やウイルスのほとんどは、過熱することで、死滅あるいは不活性化(毒性を示さなくなること)します。

フライやオーブン料理、鍋などで蟹を食べる場合には、蟹の中心部分まで高温になっていると考えられますので、安心してカニ料理を楽しめます。

しかし、蟹しゃぶなどの調理方法では、生煮え・半生の状態では食中毒のリスクを減少できていません。蟹しゃぶ=NGではありませんが、妊婦さんは中心部までしっかり火を通すことを心がけましょう。

生の蟹に潜んでいることが多い食中毒の原因菌や原因成分には、次の3つがあります。

アニキサス

寄生虫の一種、アニキサス。アニキサスの幼虫はサバやイワシ、アジなどの青魚以外にも、蟹やカツオ、イカなどの魚介類全般に寄生します。最初は、アニキサスは魚介類の内臓に寄生しますが、鮮度が落ちると可食部である筋肉に移行します。

アニキサスが人間の体内に入り込むと、激しい腹痛や嘔吐などの症状を引き起こします。ほとんどのアニキサス食中毒は食後数時間~十数時間後に症状が見られますが、稀に食後十数時間~数日経ってから症状が出ることもありますので、長期にわたって注意が必要です。

アニキサス食中毒を避けるために必要なこと

  • 鮮度の良い魚介類を食べる
  • 内臓を食べない
  • 冷凍保存をしたもの(マイナス20℃で24時間以上)を食べる
  • 加熱調理(70℃以上)をしたものを食べる

どのような保存状態の蟹か分からないときは、とりあえず蟹味噌などの内臓は避け、加熱調理するようにしましょう(注1)。

ヒスタミン

ヒスタミンが高濃度に含まれる食品を食べると、皮膚にじんましんや赤みなどの「ヒスタミン食中毒」による諸症状が出ることがあります。

ヒスタミンは、マグロやサバ、アジ、イワシ、蟹、エビなどの魚介類に多く生成されます。しかも一度生成されると、加熱しても活性を失いません。

ヒスタミン食中毒を避けるために必要なこと

  • 鮮度に不安があるものは食べない
  • 水揚げ後すぐに冷凍されていないものを食べない
  • 蟹味噌などの内臓やヒスタミンが発生しやすい魚のエラ部分は食べない

また、同じ時期に処理されたものにはヒスタミンが同程度含まれていることが予想されますので、「蟹づくし」などの特定の素材を大量に食べるメニューはリスクが高いと心得ましょう(注2)。

ノロウイルス

ノロウイルスに汚染された食べ物を食べると、人間の体内にノロウイルスが入り込みます。体内のノロウイルスは腸管で増殖し、激しい腹痛や嘔吐、下痢などの胃腸症状を引き起こします。

通常は症状が著しく重篤になることはないのですが、子どもやお年寄りなどの体力のない人や妊娠中など疲れやすく体力が落ちている人は、症状も重くなりやすい傾向があります。

ノロウイルスは、牡蠣や蟹などの魚介類、井戸水、衛生に問題がある水道管から出る水に含まれていることがあり、ノロウイルスに感染した人の吐瀉物や排泄物からも感染します(注3)。

ノロウイルス感染を防ぐために必要なこと

  • しっかりとした手洗いを行う
  • 魚介類を食べるときは中心部まで過熱してから食べる

2.塩分が強いものを避ける

カニ鍋

蟹そのものは塩分が濃い食品ではないのですが、濃い塩水につけてから冷凍処理をすることも多いので、そのまま解凍して調理すると、高塩分の食品になってしまうことがあります。一度、茹でて塩抜きをするか、他の食品と一緒に調理するときは、味付けに気を付けましょう。

妊娠中は、普段以上に塩分を控えた食生活を心がけなくてはなりません。塩分を摂取し過ぎると「妊娠高血圧症候群」に罹患する可能性が高くなり、胎児の発育不全を引き起こすリスクもあります(注4)。

例えば、蟹なべにして食べるときは、一度にたくさんの蟹を入れると鍋全体の塩味が濃くなりすぎることがあります。少量ずつ蟹を入れ、スープの塩分が濃くなってきたときは、水を入れ替えるようにしてください。

妊婦の塩分摂取は何グラムまで?塩分控えめな食事のコツ
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3.1度に大量には食べない

「蟹食べ放題」のように、1食に大量の蟹を食べるのは、控えた方が良いでしょう。

多くの食中毒菌は、加熱により死滅しますが、ヒスタミンのような成分は加熱しても不活性化しません。摂取量が多くなるほどに、なんらかの原因菌や成分が体内に入ってしまうリスクは高くなります。

また、日常的に蟹を食べる方は少数派ですから、体調面で思わぬ変調をきたす可能性もあります。

蟹の水銀リスクは?

妊婦さんの体内に水銀が大量に入ると、赤ちゃんの発育に影響を及ぼす可能性があります。クロマグロやキンメダイ、メバチマグロのような食物連鎖の上位にある魚は、身に水銀が含まれていますので、妊娠中の食べ過ぎは控えるようにと厚生労働省では注意喚起を行っています。

蟹にも水銀は含まれていますが、マグロやマカジキのように大量に水銀が含まれているわけではありませんので、厚生労働省でも特に量を控えるようにと指示はしていません(注5)。

水銀量は1週間で計算します。毎日蟹ばかり食べる方は稀でしょうから、水銀に関してはあまり心配する必要はありません。

4.鮮度の悪いものや保管状態に問題があるものを避ける

鮮度が低い蟹や保管状態に問題がある蟹は、アニキサスやヒスタミン、ノロウイルスなどの食中毒の原因物質が増殖している可能性があります。スーパーなどで購入するときは冷凍コーナーに置かれているものや、水揚げ後すぐに冷凍したことが分かるものを選ぶようにして下さい。

妊婦さんは蟹味噌に注意!

カニ味噌

蟹は、むき身よりも蟹味噌に、アニキサスやヒスタミン等の食中毒の原因物質が含まれている可能性が高いです。食中毒を予防するために、妊娠期間中は蟹味噌を食べない方が良いでしょう。

また、次の2つの理由からも、蟹味噌を妊娠中に食べることは望ましくありません。

カドミウムが多すぎる

重金属の1種カドミウムは、土壌に含まれているため、米や野菜などの農産物や草を食べて育つ畜産物にも含まれている物質です。少量が体内に入るだけなら特に問題はないのですが、高濃度のカドミウムが体内に入ると、腎臓に蓄積され、腎機能障害を引き起こしてしまう可能性があります。

カドミウムは、1週間当たり体重1kgに対して7μg以上(体重50kgなら1週間で350μgまで)を摂取しないように推奨されています(注6)。蟹味噌はわずか1グラム食べるだけでも8μgものカドミウムを摂取してしまいますので、大さじ1(約15グラム)ほどの蟹味噌を食べるだけで、1週間分のカドミウムの3分の1もの量を食べてしまうことになるのです。

蟹味噌を習慣的に食べる人は稀ではありますが、念のため、妊娠中は蟹味噌は避けておいた方が良いでしょう。

コレステロールも多い

妊娠中は血中のコレステロール値が高くなりやすい時期ですが、基本的に血中のコレステロールを下げる医薬品は、妊娠中や授乳中には服用できません。そのため、妊娠中は普段以上にコレステロール値が上がらないように注意をしなければいけないのです。

蟹味噌100グラム当たりのコレステロールは460mg程度です。日本動脈硬化学会では、動脈硬化を防ぐために1日当たりのコレステロール摂取量を200mg以下に抑えるようにと提言していますので、蟹味噌を大さじ3ほど食べるだけで1日の許容量を超えてしまいます(注7)。

妊婦と蟹アレルギーについて知っておくべきポイント

茹で毛ガニ

たくさん食べ過ぎることがなければ、妊娠中も蟹の身を食べることは可能です。ですが、妊婦さん自身が蟹アレルギーのときは、蟹とどう向き合うことができるでしょうか。知っておきたい4つのポイントを解説します。

妊娠中に蟹を食べることと子供の蟹アレルギーは無関係

妊婦さん自身が蟹アレルギーでないのなら、加熱して量さえ注意すれば蟹を食べて構いません。妊娠中に何度か蟹を食べたからと言って、赤ちゃんが蟹アレルギーになるということはありません。

お母さんの蟹アレルギーは子供には遺伝しない

蟹アレルギーなどの食品アレルギーは、子供に遺伝することはありません。妊婦さんが蟹アレルギーであっても、生まれてきた子供は蟹に対してアレルギー症状を発症しないことも多いのです。

妊娠してお母さんの食品アレルギーが増えることもある

今まで蟹アレルギーではなかった人も、妊娠してから体質が変わり、蟹などの特定の食品に対して、皮膚の痒みや吐き気などのアレルギー症状を発症することがあります。

実は蟹を含む甲殻類は、20代以降のアレルギー発症率が最も高い食品なのです。そのため、妊娠中に突然、蟹アレルギーを発症する可能性は誰にでもあります。

蟹を食べるときは体調が良いときを選び、少しでも「気分が悪いな」「何か変だな」と感じたら、すぐに食べるのを止めるようにして下さい。

「隠れ蟹アレルギー」の人もいる

以前蟹を食べたあとに、皮膚が痒くなった、お腹が緩くなったなどの症状がある人は、今は念のため蟹を控えておいた方が良いでしょう。

蟹は、日常的な食生活で頻繁に食べるものではありませんから、初期症状が軽いと、アレルギー発症のタイミングを見逃すこともあります。その時は、「蟹の鮮度が悪かったのかな?」「ちょっと食べ過ぎたかな」と片付けてしまったかもしれませんが、次はもっと重く症状が出る可能性もあります。

蟹は妊娠中に必要な栄養素が豊富な食材

カニ鍋の材料

蟹自体は、妊娠中に必要な栄養素が豊富に含まれた優秀な食材です。蟹の栄養素を紹介します。

タンパク質

赤ちゃんの筋肉や皮膚などを構成するタンパク質は、妊娠中は積極的に摂取したい栄養素の1つです。肉類もタンパク質は豊富ですが、脂質も豊富ですので妊娠中には注意が必要。一方、蟹はタンパク質が豊富であるにも関わらず、脂肪分は少ないので、理想的なタンパク源となるでしょう。

成人女性は1日当たり銅を0.7mg摂取することが望ましいとされていますが、厚生労働省では、妊娠中は普段よりも0.1mg、授乳中は普段よりも0.6mg多く摂取するように推奨しています。蟹には銅も豊富に含まれていますので、銅が不足しがちな妊娠期には適した食材です(注8)。

亜鉛

妊娠中は亜鉛も普段以上に摂取することが推奨されています。成人女性の1日当たりの食事摂取基準は9mgですが、妊娠中は1日当たり11mg、授乳中は1日当たり12mg摂取することが望ましいとされています。

蟹のむき身には微小元素である亜鉛も豊富に含まれていますので、亜鉛が不足しがちな妊娠中に適した食品です(注9)。

妊婦さんも蟹は楽しめる!

生きてる蟹

妊娠中に不足しがちな栄養素を豊富に含んでいる蟹。心配な要素もありますが、蟹を食べる機会は、お祝い事や奮発したいときなど妊娠中に数回程度でしょうから、普段からしっかりとした食生活を送れているのなら、過度に恐れる必要はないでしょう。

しっかりと過熱すること、そして蟹味噌を避けること、量を食べ過ぎないことに注意して、蟹アレルギーのない妊婦さんは妊娠中も蟹を楽しんでいきましょう。

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