妊娠して仕事を辞める女性の割合はどのぐらい?
厚生労働省の資料によると、女性が第一子の妊娠・出産をきっかけに退職する割合は、2010年~2014年にかけて46.9%、仕事を継続する割合は53,1%です。仕事をしていた女性のおよそ2人に1人は妊娠をきっかけに仕事を辞めるという選択をしています。
退職理由に関しては、「家事・育児に専念するため、自発的に退職した」というものがもっとも多く、次に「仕事と育児の両立が難しい(就業を継続できる制度がない場合を含む)」と続いています。
仕事と育児の両立が難しいと回答した人に詳しい理由を聞いた結果、正社員では「勤務時間があわない」「自分の体力がもたない」「子供の病気等で休まざるをない」、非正社員では、「勤務時間あわない」の次に「つわりや産後の体調不良のため」という回答が続きます。
妊娠して仕事は辞める?続ける?ママ達の結論
現代の日本では、妊娠・出産後も仕事を続けたくても、職場環境的に辞めざるを得ない人は少なくありません。不本意な退職、女性にばかり負担のかかるような子育ての状況に関しては改善されるべきです。
一方で、会社の制度や環境面での問題は大きくなくても、「子供が小さいうちは、育児に専念したい」と自発的に退職を選ぶ方もいます。
妊娠をきっかけに、仕事を辞めたママ、続けることを選んだママに、その決断の理由と現在の心境を伺いました。
妊娠して仕事を辞める決断をした体験談
仕事を辞めると、やはり世帯収入の減少は避けられません。しかし、時間的には余裕ができるので、自分で望んだ通りに、子供と多くの時間を過ごせて満足という意見が多く見受けられました。
何を一番に優先するのか悩んだ
ゆーとまま(31歳)
私は妊娠が分かってから仕事を辞める事にしました。決めるまではすごく悩みました。仕事を辞めてしまうと家計に負担があるけれど、子供が小さいうちは出来る限り一緒に過ごしたいという気持ちも強く、迷いました。
決めるまでに時間がかかりました。結局は旦那が「子供が小さいうちは成長もあっという間だから一緒にいれば」と言ってくれたのが決め手になり、決断しました。職場には辞める3ヶ月前くらいに、やはり「子育てのため」と素直に伝えて退職を申し出ました。
現在、子供は1歳半ですが、本当に日々成長していて、それを常に見ていてあげられるので、良かったと思います。
ただし、もちろん私の収入はないので、節約の日々です。また、再就職できるかどうかはやはり常に気がかりです。
長年勤めていた会社を退職
siste(40代前半)
私はずっと子供が欲しかったので、せっかく授かった可愛い赤ちゃんの1番そばにいてあげたいという気持ちが特に強かったんだと思います。ですが、当時会社には15年以上勤めていて、それなりの地位にいました。ここまで頑張ったのなら20年まで頑張りたいという気持ちもあり、仕事を続けるか辞めるか非常に迷いました。
結局、残業などもあり、自分はもう若くなく、妊娠中の体への負担も考えて、退職を決断をしました。職場に退職の意向を伝えたのは、つわりが始まる前です。始まってしまうと職場に迷惑がかかると思ったので、直属の上司にはいち早く伝えました。
ですが、いざ辞めてみると、後悔などはほとんど感じませんでした。強いて言えば社会人でなくなったんだなぁと、働いてる女性を見てしみじみ思うくらいです。メリットの方が断然大きく、子供の成長を一番近くで見ていられる、自分が納得いくようにお世話できる、家のことも働いていた時よりずっとしっかりできています。
四人目妊娠で退職
橋本由紀(31歳)
四人目を妊娠発覚後、上の子たちの生活を支えるためにしばらくは会社の人には妊娠の報告を黙っていました。しかし、お腹も目立ち、隠しきれないと思った頃に、会社の上司に伝えました。伝えたその日から周りの皆が私とお腹の赤ちゃんに気を使ってくれるようになりました。
妊娠を祝ってくれたり、産まれてくる赤ちゃんの話をしたりと職場の皆さんと共有できてとても楽しかったです。それから、報告をしたすぐに仕事内容は座って出来るような仕事に変わりました。楽にはなりましたが、私自身はまだ、身体も動けるしなんだか申し訳ない気持ちの方が勝ってしまい、退職を願い出ることにしました。
退職をして、生活は苦しくなりましたが、辞めたことで、自由な時間が増えました。上の子たちの勉強を見てあげたり、遊んであげたりする時間が持てたのが退職をして一番良かった理由です。
仕事がハードだった
jajaja(32歳)
産休を取る事も出来たのですが、ケーキ屋で働いていたため、忙しい時期などを考えると、復帰しても子供との時間を取る事が難しいのではないかと思って悩みました。妊娠中でも結構ハードだったし、重い物は持たなくても力を使うので体にも負担でした。子供との時間を優先したいなと考えて辞めました。
辞める事を伝えたのは、体力的にずっと動きっぱなしが辛かったので、時間を短くしてもらうようにお願いするタイミングで伝えました。お店側も納得して下さりましたし、結局辞めて直ぐに切迫早産の疑いで自宅安静だったのでタイミング的には良かったと思います。
ですが、切迫早産で入院もしたので、もう少しだけ働いていたら会社側からの保険など色々適用されていたみたいで、ちょっと失敗したかなとも思います。旦那側の扶養に入ったので、結果的には良かったのかもしれません。
好きな職場だったから迷っていました。
なみ(30代後半)
私は妊娠前からずっとサービス業のお仕事をしていました。サービス業のため、立ち仕事はもちろん、シフトで一人で働いている時間帯もあるので、妊婦一人で出来るのかと迷っていました。悩んだ結果、仕事は辞めることにしました。
やっぱりお腹が大きくなった妊婦が一人でお客様の対応をするのもあまり見たことないし、それにお客様に気を遣わせてしまいそうで辞める決断をしました。サービス業なので土日など関係なく働く職場なので、辞めた今では子どもが大きくなってママが土日いないのも可哀想なので辞めて正解だったかなと思います。
その反面、好きな職種で資格もとったのでもったいないという気持ちもありました。職場には辞める2か月前に上司の人に相談して、妊娠7ヶ月の時期に辞めますと伝えました。
転勤の可能性があったので
田中麻帆(20代後半)
夫の職場は転勤がないのですが、私が働いていたところは転勤のある職場でした。一応夫婦は離れ離れにならないよう配慮はするとのことだったのですが、片道車で2時間のところくらいまでなら行ってもらう、とも・・・。
夫婦二人の生活ならともかく、子供が産まれたら通勤にそんなに時間はかけていられないと思い、妊娠中の退職を決意しました。「育児に専念したい」と正直に伝えたところ、多少引き止められはしましたが、その後の生活を応援してくれました。
専業主婦になったことで、子育てや家事に専念できたことは心理的にも教育的にもよかったと思います。しかし、デメリットはやはり収入面。夫の収入だけではやって行けず、貯金頼みです。
会社の対応に見切りをつけた
Lino(40代前半)
私は妊娠しても、もともと仕事を続けようと思っていましたし、妊娠前にそうした話をしたこともあります。
しかし、育児休暇をもらう話をすると、上司からはっきりとではありませんが、「辞めた方がいいのでは」とほのめかされました。仕事を続けるつもりでいたことを知っていた上司とは、いい関係を保っていると思っていただけにショックでした。
主人に相談すると、「無理に働き続けても、辛い思いをする。だったら1度辞めて、育児がひと段落してから転職しては?」と言ってくれました。それで退職することに決めました。
まだ転職は叶っておらず、その後に2人目を妊娠・出産しました。妊娠前にマンションを購入し、共働きで返済していく予定だったので、金銭的に余裕があまりないのは事実です。
でも、きっと無理に職場復帰しても仕事は続かなかったと思います。小さい会社だったので、私のいない間をみんなでフォローするよりは、もっと仕事をしてくれる人をいれて仕事の分担を見直したかったんだと思います。
あこがれの仕事を辞めたくない気持ち
クララ(34歳)
子供の頃から目標としていた国際協力に関われる仕事に就いていました。非正規雇用ではあるものの、仕事内容に満足していて、達成感のある毎日を過ごしているなか、妊娠が発覚しました。
産前産後休暇、育児休暇後に仕事復帰するつもりだった矢先、契約条件から育児休暇が取得できないことがわかり、選択肢としては①産前産後休暇後に復帰、②退職という二つに一つとなりました。
当初は①を希望していましたが、保育園探しをする中で状況がかなり厳しいことがわかってきました。また既に出産育児を経験した友人からも、初産で産後復帰は精神的にも肉体的にも大変という話を聞き、絶望的な気持ちになりました。
そんな中、夫から「仕事はいくらでも次があるが、赤ちゃんにとってママは君だけ」と言われ、ハッとしました。それがきっかけで退職することし、会社にもその旨伝えました。
今となっては、仕事を続けることに固執していた自分が信じられないくらい、子育てを楽しんでいます。もちろん経済面で不安定な部分もありますが、子育てが少し落ち着いてからまたキャリアアップはできますし、退職して良かったと思います。
妊娠・出産後も仕事を続けることにした体験談
妊娠して「仕事を辞める」という選択肢が頭を過ぎったものの、退職せずに復職した女性の体験談です。
仕事と育児の両立はたいへんなものの、家庭と職場という2つの居場所があることが精神的に良い作用を及ぼすケースはよく見受けられます。特に仕事にやりがいを感じていたり、好きな仕事に就いている方は、そうした傾向が顕著です。
また、金銭的メリットは無視できません。
長期的にみると、精神的にも良かった
あおい(30代前半)
私は妊娠中期から後期にかけて体調がすぐれない日が増えました。あまり休んでも会社に迷惑がかかるので辞めようかと悩みました。しかし、辞めてしまうと収入が無くなくなります。「旦那さんの稼ぎだけではやっていけないな」という気持ちで、退職を思いとどまりました。
また、「子供が小さいうちはいいかもしれないけれど、少し大きくなると子供が家にいる時間も減るので、いずれは働くことになるだろうな」と考えました。再就職の苦労を考えると、続けた方が良いと決断しました。
仕事と家庭の両立はうまくいかないことも多くて、ストレスもたまりますが、家庭のストレスは会社では忘れていられるし、会社のストレスは家庭には持ち込まないので、ある意味バランスが取れています。私にとっては今の状態がよかったかなと思いました。
子供のために貯蓄をする
あやえ(20代前半)
妊娠中、つわりに悩まされたり、貧血でふらついたりと、体調が優れませんでした。会社に迷惑をかけてしまうので、やめようと思っていました。ですが、会社からは「戻ってきてね」と言ってもらえました。
子供のためにもっとお金を貯めたいという気持ちもあったので、仕事は続けることにしました。「ゆっくりやっていこう」「無理しないで大丈夫」と言ってくれる会社で本当に有難かったです。
働くことでストレスの発散にもなっていますし、外に出ることで育児ノイローゼのような状態にもならずに、楽しく生活しています。ただ、保育園のお迎えに遅れてしまったときなどは、子供には寂しい思いをさせてしまっているかなぁと心が痛みます。
「妻」「母」以外の自分も持っていたかった
さらさ(47歳)
自宅から勤務先が遠かったので、妊娠中は子育てと両立出来るか心配で、辞めようかと思ったことがあります。でも、一度辞めてしまったら仕事をするのは難しくなるし、最終的に妻、母以外の自分も持っていたくて続けることにしました。
小さな子どもを育てながらの仕事は大変です。熱を出して会社を休まないと行けなくなると、自分の仕事が溜まっていくし、期日も過ぎてしまいます。周りに迷惑をかけることもあり、自信をなくしてしまうこともありました。
でも、周りに何かあったときは自分も引き受けるようにして、お互いさまと言い合えるようにしました。子どもはすぐに大きくなります。可愛い時期を一緒に過ごしたかったと思うこともありますが、夫と子どもは、仕事をしている私が好きだと言ってくれます。
仕事を続けることによって、少し成長出来た自分や家族を見ることが出来て、よかったなど思っています。
職場のみんなが待ってると言ってくれたから
平美咲(34歳)
次男の妊娠が判明した時、喜びと同時に、「仕事どうしよう…」という悩みが浮かびました。長男の時につわりがひどかったので、また具合が悪くなるかもしれないし、復帰しても小さい子供がいると休みがちになるかもしれない。保育園にすぐに入らないかもしれない…上司に報告した時にあからさまに迷惑みたいな顔をされたらどうしよう、など不安ですべて悪い方向に考えてしまいました。
しかし、早い段階で思い切って上司に相談してみたんです。そしたらあっさり「おめでとう!保育園決まらなかったら連れてきたらいいよ」「体調が悪い時は無理しないで」と言ってくださいました。同僚も、私の分の仕事負担が増えるにもかかわらず、祝福してくれました。
出産までに一度入院したこともあり、同僚には迷惑をかけてしまいましたが、無事に産まれ、仕事に復帰できました。やっぱり体力が落ちてしまうのか、最初はぐったり疲れてしまいましたが、仕事をしてると毎日メリハリがついて、忙しい中で子供との時間をより大切に感じるし、休みの日が晴れだと幸せを感じるし、何より今の会社が好きなので、これからも頑張って行こうと思います。
安定した収入は大事です
まい(30代後半)
妊娠したら仕事は辞めると心に決めていました。そして専業主婦をしてから、子供が3歳くらいになったらパートタイマーで働こうかな、と気楽に考えていました。それを主人には言っていて、了承してくれていたんですが、会社に退職を願い出ようと思った段階に、主人に「やっぱり働いて欲しい」と言われました。
というのも私の年収は夫の年収と同じくらいあって、私が辞めてしまうと世帯収入が半分に。もともと家計は2人のお給料を足して、余ったぶんを貯金に回しています。主人のお給料は毎月の変動が激しく、安定していないので、確かに子供が産まれると不安です。
赤ちゃんを産んだ後、パートをしようと思っても子供が小さいとなかなか雇ってもらえないとよく聞きます。なので私も産後復帰する事に決めました。
人間関係が辛かったけれど、耐えました
しいな(30代前半)
妊娠中は体調も悪く、何度か会社を休みました。働いている人数が少ないので休むと誰かに必ず負担が行く会社だったので、悪口を言われた時がもっともつらく、本当に辞めようかと思いました。しかし、「みんな子供が出来れば通る道なんだから」と同僚になだめられて持ちこたえました。
その後は、「会社から辞めてくれと言われるまでは大丈夫だ」と思うようにして、仕事に行っていました。なるべく休まないように、体調管理には特に気を遣いました。
産後仕事復帰してからは、同僚に辛く当たられることはなくなりました。今も頑張って働いています。
退職しても、続けても、後悔する人は少数派?
妊娠をきっかけに仕事を辞めたママ、仕事と育児の両立を目指したママ、どちらの体験談を読んでも共通しているのは、自分の決断を後悔している人はほとんどいないということです。
一時的に、「あのとき、ああしていれば」という感情が巻き起こることはありますが、人間は基本的に自分の選択を肯定的に捉えようとしますので、よっぽど状況が悪化しない限り、強い後悔には繋がらないはずです。
ただし、やはりやり直しがきくこと、きかないことは存在します。
体力・精神面を考慮し、産休・育休後に「仕事を辞める」という決断をすることはできますが、「やっぱり産後も働きたい!」となると再就職は難しく、自分の気持ちだけではどうにもならないこともあります。よく考えて、夫婦で今後のライフプランを話し合い、決断しましょう。
参考文献