緊急帝王切開になる状況とリスク

緊急帝王切開が決定する状況とは?麻酔や切開方法の特徴

緊急帝王切開とは、どのような手術なのでしょうか?急に帝王切開が決定する状況と、数時間後に手術になった時の心の準備方法を解説。緊急帝王切開に多い縦切りや全身麻酔のリスク、術後の痛みの経過、手術や入院にかかる費用目安と負担を軽減する方法をご紹介します。

緊急帝王切開が決定する状況とは?麻酔や切開方法の特徴

緊急帝王切開とは?どのようなときに手術が決定するか

「緊急帝王切開」とは、医師が今すぐ母体から胎児を取り出さなくてはいけないと判断したときに実施される帝王切開手術のことです。反対に、前もって予定して帝王切開手術をすることを「予定帝王切開」や「選択帝王切開」と呼びます。

日本では2016年の1年間に、緊急帝王切開は6,111件実施されました。一方、予定帝王切開は緊急帝王切開よりはやや多く、8,828件実施されました。

緊急帝王切開が実施される状況やタイミング、もし緊急帝王切開手術が決まった時はどのように心の準備をすればいいのか考えておきましょう。

母子の健康を第一に考えてタイミングを決定

出産を控えて入院してる奥さんの手をにぎる旦那さん

緊急帝王切開は「緊急時」に適応される帝王切開ですので、いつ決まるかは分かりません。医師が母子の健康を第一に考えてタイミングを決定しますが、大抵は次の状況にあることが多いです。

胎児の機能不全

赤ちゃんに臍帯が巻きついていたり、胎盤の機能が低下していたりするとき、赤ちゃんは充分な酸素や栄養を摂り入れることができません。そのようなときは緊急帝王切開を実施して、赤ちゃんの身体を安全な状態に保ちます。

また、その他の理由で胎児に異常事態が見られるときは、緊急帝王切開を実施して、赤ちゃんの健康を守ります。

常位胎盤早期剥離

通常は出産時に胎盤が子宮からはがれますが、まだ赤ちゃんが胎内にいるときに胎盤が子宮からはがれ始めることがあります。これを「常位胎盤早期剥離」(じょういたいばんそうきはくり)と言いますが、胎盤がはがれてしまうと赤ちゃんに酸素や栄養を送ることができなくなってしまいます。

また、子宮内での大量出血により、母体も危険な状態に陥る可能性がありますので、緊急帝王切開を実施して母子の健康を守ります。

微弱陣痛

陣痛は始まっているものの、あまりにも陣痛の間隔が空いていたり、陣痛が持続する時間が短かったりすると、出産は長引いてしまいますので、お母さんの体力を激しく消耗します。そのような状態を「微弱陣痛」と言いますが、通常は陣痛促進剤を投与して、人工的に陣痛が強く起こるように計らいます。

微弱陣痛の定義と原因、症状と対処法および予防法
微弱陣痛の定義と原因、症状と対処法および予防法

しかしながら、陣痛促進剤は常に有効というわけではありません。陣痛促進剤を投与したものの微弱陣痛が続くこともあります。微弱陣痛が続くときは、赤ちゃんがどの程度まで産道を進んでいるかによって、吸引分娩や鉗子分娩、緊急帝王切開などの措置を使い分けます。

遷延分娩

微弱陣痛が続いていたり、子宮口がなかなか開かないために、分娩開始から初産婦で30時間以上、経産婦で15時間以上お産が長引いた状態を「遷延分娩」(せんえんぶんべん)と呼びます(注3)。
お母さんと赤ちゃんの体力消耗を防ぐために緊急帝王切開を実施することがあります。

回旋異常

赤ちゃんは産道をまっすぐに下りてくるのではなく、頭を先頭として回転しながら下りてきます。しかしながら、赤ちゃんが上手に回転できないときは出産が長引き母子の健康を損ないます。
胎児の状態を観察し、状態が改善される見込みがない場合は、緊急帝王切開を実施することがあります(注4)。

予定帝王切開の人が緊急帝王切開になることもある

病院で出産を待ってる妊婦さん

予定帝王切開と決まっていた人が、緊急帝王切開に切り替わることもあります。
予定帝王切開の手術予定日(出産予定日)までに、胎児の機能不全や陣痛が始まってしまったとき、その他、母体や胎児に問題が起こって早めに帝王切開をするべきだと医師が判断したときに、その場で緊急帝王切開を実施することになります。

妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病などで予定帝王切開の日取りが決められていた場合も、母子の状態が悪化するようなら緊急帝王切開が実施されます。

予定帝王切開と医師が判断したときは、通常の普通分娩よりもリスクが高いと考えられるケースが多いですので、「場合によっては緊急帝王切開になる可能性がある」ということを心に留めておく方が良いでしょう。

もし緊急帝王切開が決定したら?

なんらかの異変を感じて病院に行ったり、時には通常の妊婦健診を受診するだけだったにも関わらず、医師から「今から帝王切開をしますので、ご家族の方に連絡を取って下さい」と言われてしまうことがあります。

驚くのも無理はありませんが、実はこうした状況は妊婦さんなら誰しも起こりうることなのです。いずれにしても緊急帝王切開は「緊急措置」ですので、基本的には突然決定します。
もしこのような事態になったときは、次のように心の準備をしてみてはいかがでしょうか。

緊急帝王切開は誰にでも起こり得る

「緊急」というと、何か特別なことのように思われますが、実際のところ、そこまで珍しいことではありません。厚生労働省による社会医療診療行為別統計でも示されていますように、約4割の帝王切開は「緊急」に実施されているのです。特別な状況が自分に降りかかったのではなく、よくあることが起こっただけだと考えてください。

手術が終われば赤ちゃんに会える

一般的な外科手術は何かの病気を治療するために行われますので、終わったからといってすぐに健康を実感できるわけでもなく、格別に嬉しいことが待っているわけではありません。

ですが、緊急帝王切開は赤ちゃんに会うための手術ですので、お母さんの身体は順調に回復して行きますし、手術が終わったら赤ちゃんというこの上ない存在が待っているのです。

手術自体は痛みを感じない

緊急帝王切開は、麻酔を実施してから行います。そのため、手術自体において痛みを感じることはほとんどありません。また、全身麻酔となるケースも多いので、眠っている間にすべての作業が終わります。

「麻酔が怖い」と思うのではなく、「麻酔があるから痛みを感じずに出産できる」とポジティブに考えるようにしましょう。

緊急帝王切開のリスク

緊急帝王切開に特別な恐怖心を持つ必要はありませんが、少なからずリスクはあることは知っておいた方が良いでしょう。帝王切開の主な3つのリスクを紹介します。

傷跡が残ることがある

お母さんの体質にもよりますが、切開痕がなかなか薄くならずに濃く残ってしまうことがあります。
今までに手術を受け跡がなかなか治りにくい人は、帝王切開の手術痕も薄くなるまでに時間がかかると予想されます。

緊急帝王切開に多い縦切り

緊急帝王切開では、おへその真下から縦に10センチほど切開する「縦切り」の可能性もあります。縦に切りますので、産後数年はおへそを覆い隠すような深めの下着や水着を着ないと跡が見えてしまうことがあります。

予定帝王切開の場合は、お腹の皮膚を10センチほど横に切開して、その部分から赤ちゃんを取り出すことが多いです。皮膚を横に切開しますので、面積が大きくない下着や水着でも傷跡が充分に隠れるため、美容的メリットがあります(注5)。

しかし、横切りは手順がやや複雑で時間がかるというデメリットがあります。そのため、「今すぐ赤ちゃんを取り出さなくてはいけない」などの緊迫した状況で行われる緊急帝王切開では、縦に切開されるケースがどうしても多くなってしまうのです。

美容形成外科での治療という選択肢も!

現在では、帝王切開の傷跡は美容形成外科などでキレイに消すことも可能です。美容形成外科の治療する場合は、数年たったにも関わらずなくならない傷跡、ケロイド化してしまった傷跡も目立たなくできますから、傷跡のことは赤ちゃんが産まれてから少しずつ考えましょう。

帝王切開の傷跡は消える?傷跡を残さないためのケア方法
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全身麻酔を使うことがある

帝王切開では局所麻酔が一般的ですが、一刻を争うような緊急帝王切開では全身麻酔が使われることもあります。

予定帝王切開に多い局所麻酔

腰椎麻酔を受けてる妊婦さん

予定帝王切開を実施するときは、一般的に硬膜外麻酔や腰椎麻酔などの局所麻酔が選択されます。局所麻酔だと、手術中も意識はあり、生まれたばかりの赤ちゃんの顔を見ることも可能です。また、赤ちゃんに麻酔の影響がほとんど及ばないというメリットがあります。

しかしながら、麻酔が効くまでに30分ほど時間がかかりますので、すぐには帝王切開手術を始めることができないというデメリットがあるのです。

緊急帝王切開に多い全身麻酔

全身麻酔は、すぐに効果が表れるというメリットがあります。一刻を争う緊急時には全身麻酔が選択されることが多く、緊急度の高い緊急帝王切開においても全身麻酔が選択されるケースがあります。

もちろん、赤ちゃんの健康に悪影響を与えることはありませんが、赤ちゃんが眠ってしまう程度の影響を与えることはあります(注6)。

帝王切開の麻酔とは?全身麻酔・局所麻酔の種類と副作用
帝王切開の麻酔とは?全身麻酔・局所麻酔の種類と副作用

頭痛や嘔吐などの副作用が表れることもある

局所麻酔に比べると、全身麻酔は頭痛や嘔吐などの副作用が表れるケースが多いです。手術が終わってから数時間~数日、お母さんはだるさを覚えたり痛みや吐き気などの不快症状に悩まされたりすることもあるでしょう。

帝王切開以降の出産は、再度帝王切開に

1度帝王切開で出産した場合、それ以降の出産も帝王切開となるのが通常です。
最近では、VBAC出産(ブイバック)といって、帝王切開後の経膣分娩が注目されていますが、子宮破裂などのリスクを伴うため、実施できるのは一部の病院に限られています。

VBAC出産(ブイバック)とは?帝王切開後の経腟分娩のリスク
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緊急帝王切開の手術後の痛みは深刻?

緊急帝王切開後の痛みはいつからいつまで続くのでしょうか。陣痛がない代わりに、切開後の傷跡の痛みや抜糸の痛みがありますし、経膣分娩同様、子宮が元に戻ろうと収縮する後陣痛が存在します。

麻酔が切れてから術後1~2日が痛みのピーク

産後身体を休めるために入院してる妊婦さんの様子を見る女性医師

もちろん麻酔が効いているときは痛みを感じませんが、麻酔が切れた後は痛みを感じることになります。特に全身麻酔を実施していた場合は、麻酔によって全身の痛みを押さえていた分、強い痛みを感じることがあります。

術後1~2日が痛みのピークのため、この期間は赤ちゃんは新生児室などに預かってもらい、お母さんは身体を休めるのが基本です。

痛み止めをもらおう

麻酔の副作用によって頭痛がする場合や全身の痛みを感じる場合は、無理に我慢するのではなく、看護師に相談して痛み止めを処方してもらうようにしましょう。授乳をしながら服用できる痛み止めもありますので、母乳育児にこだわる人も安心して飲むことができます。

術後2週間ほどで痛みは和らいでいく

術後1~2日に痛みのピークを迎えたあとは、少しずつ痛みが和らいでいくのが一般的です。帝王切開の入院期間は、1週間~10日が通常なので、本調子とはいえないものの、この頃には退院して日常生活が送れるようになります。退院数日前には、病院で沐浴指導などが行われることもあるでしょう。

その後、1ヶ月健診の時には、再度傷の状態を確認されます。術後1ヶ月が経つと、ほどんど痛みを感じなくなる人が多いのです。まだ強い痛みがある場合は、医師に相談するようにしましょう。

帝王切開の痛みはいつからいつまで?術後の痛みの期間
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緊急帝王切開の費用

通常の分娩とは異なり、帝王切開手術は医療行為ですので、予定して実施される場合も緊急で行われる場合もいずれも手術に関しては健康保険が適用されます。

帝王切開にかかる費用と自己負担を減らす5つの制度
帝王切開にかかる費用と自己負担を減らす5つの制度

手術に関する部分は、健康保険の適応範囲

帝王切開の費用は、40万円~100万円が一般的です。

緊急帝王切開の場合、診療報酬点数は22,200点と定められています(注8)。つまり、22万2000円が手術費用ですが、3割負担だと66,600円が支払金額という計算です。

手術そのものは健康保険が適応され3割負担ですが、分娩費用(分娩介助料)、新生児管理料などは通常分娩と同様に自費診療として加算されます。

また、特別室や個室などを希望したときの差額ベッド代と食事代は健康保険の対象外ですので、注意してください。

出産育児一時金の申請も忘れずに

双子の新生児

自然分娩でも、帝王切開でも、出産時には加入している健康保険から「出産育児一時金」を受け取ることもできます。子ども1人当たり42万円(特定の医療機関では40.4万円)が支給されますので、42万円を超えた部分が持ち出しということになるでしょう。ちなみに、多胎児の場合は人数倍の給付金を受け取ることが可能です。

出産育児一時金も家族などの代理人が申請することも認められていますので、入院中に手続きを済ませることもできます。

出産育児一時金で損をしない!制度や申請方法/支給額と時期
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費用が高額になった時は高額療養費制度を活用しよう

入院が長引き、医療費の請求が高くなった場合は、健康保険の「高額療養費制度」を活用することができます。高額療養費制度を活用すると、収入によって決められた一定額以上の医療費が発生した場合は、差額が後日返還されます。

ただし、一時的にでも高額な医療費を立て替えることが出来ない人は、事前に「限度額適用認定書」を作成しておくことがおすすめです。限度額適用認定書を病院等の窓口で提示すると、収入で定められた一定額以上の医療費を支払う必要がなくなる、つまり一時的にでも立て替える必要がなくなるのです。

限度額適用認定書は家族などに作成を委任することができますので、入院中に発行してもらうことも可能です(注7)。

民間の医療保険が適用されることも!

民間の医療保険に加入している場合は、帝王切開手術が保険金の対象となっていることがあります。加入している保険のカスタマーセンターに問い合わせて確認してみてください。

母子の健康を守るための緊急帝王切開

緊急帝王切開は、お母さんと赤ちゃんの健康を守るために実施される手術です。急に帝王切開手術の実施が決定しますので、不安な気持ちになるのは無理もありません。

しかし、手術が終われば可愛い赤ちゃんが待っていますし、お母さん自身の身体も一日ずつ確実に回復して行きます。手術後の嬉しいことに思いを馳せ、主治医を信じて、出産の時を待ちましょう。

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