産後の肥立ちが悪いとは?

産後の肥立ちとは?産後の無理が心と体に及ぼす悪影響

産後の肥立ちの意味、産褥期・床上げとの違いを解説。産後の肥立ちが悪いときに引き起こりやすい症状を知り、早期受診や改善に役立ててください。「産後に無理をすると、更年期に影響する」ともいわれますが、産後の肥立ちを良くするためにはどのような生活が望ましいのでしょうか。

産後の肥立ちとは?産後の無理が心と体に及ぼす悪影響

産後の肥立ちとは?

『産後の肥立ち』とは、出産を終えた産婦が日増しに健康を回復することを意味します。そのため、日本でかつてよく使われた『産後の肥立ちが悪い』とは、産後になかなか体調が回復しない状態を指します。

医療が発達する以前の日本では、栄養状態・衛生状態もよくないため、子供を産んだ女性が「産後の肥立ちが悪くて亡くなる」ということは珍しくない話でした。現代では、そうしたケースは稀になりましたが、妊娠・出産が命がけの行為であり、体に負担がかかることには変わりありません。

産後の身体が完全に妊娠前の状態に戻るまでは、6~8週間必要だと言われています(注1)。この時期は無理をせず、のんびり過ごすことで、産後の肥立ちが悪くならないようにすることが大切です。

産褥期とは?

『産後の肥立ち』と近い意味の言葉に、『産褥期(さんじょくき』というものがあり、出産を終えたばかりの女性が体を休める時間のことです。

床上げとは?

同じような意味を持つ言葉に『床上げ』があります。自宅で出産をすることが多かった時代は、産後21日間は布団を敷いたままにして、休める時間はすぐ横になることができるような生活をしていました。徐々に休息時間を少なくして普通の生活に戻る目安が産後21日目とされていたのです。

産後は無理をしないことが大切

コーヒーカップを持つ女性

『産後の肥立ち』『産褥期』『床上げ』といった言葉から、

  • 出産後は、体力が落ちたり、調子が悪くなるのは珍しくない
  • 産後は安静にし、体の回復に努めた方が良い

といった日本の出産への意識が見えてきます。

実際にどの程度の期間、どのぐらい休むべきかは個人の体調によりますが、1ヶ月健診では赤ちゃんだけでなくお母さんの健康状態もチェックします。

悪露が長引いたり、下腹部痛があるようなときは、その後通院となる可能性もありますので、できるだけ体を休めておくに越したことはないでしょう。

産後の肥立ちが悪いときに見られる症状

下腹部を手で押さえる女性

産後の肥立ちが悪いときには、体に様々な症状が現われてしまいます。
以下のような症状がある場合、産後の体の回復がやや気がかりです。安静にし、必要に応じて病院を受診しましょう。

後陣痛による下腹部の痛み

妊娠中にも子宮の収縮による下腹部の痛みを感じることはありますが、産後も大きくなった子宮が元に戻ろうとする時に同じような痛みを感じることがあります。

この痛みを「後陣痛(こうじんつう)」と呼び、元に戻ろうとする動きは医学的に「子宮復古(しきゅうふっこ)」と言います。

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悪露の量が多い

産後は子宮内に残った子宮内膜や胎児の卵膜、血液などが徐々に体外に排出されます。これを「悪露(おろ)」と言い、産後3,4日間は排出される量が多いので出産用の産褥パットが必要です。

1ヶ月健診時にも悪露の量が多かったり、悪露が長引いている場合、子宮が元の大きさに戻らない「子宮復古不全」の疑いがあります(注2)。

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腰痛・尿漏れ

出産時には骨盤が広がりますが、産後は広がった骨盤が元の状態に戻ろうとします。その時に上手く戻ることができず歪みが生じると腰痛の原因になります。

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また骨盤が広がったことによって、骨盤周辺の筋肉が緩んだり尿道のしまりが悪くなったりすることで、尿漏れすることもあります。

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会陰切開の痛み

出産時には、会陰切開を行うケースが多いですが、患部の痛みは産後2、3日は続きます。傷自体に痛みを感じる場合もあれば、縫合してある糸による引きつりを感じる場合もあります。

産後に「ドーナツ枕」が役立つと言われるのは、患部の傷に触れないように座れるからです。いわゆる切り傷と同じで、徐々に痛みが引いてくるのが普通ですが、あまりにも長く続くようなら担当医に相談してみましょう。

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発熱

分娩後24時間以降、産後10日以内に38~39度くらいの熱が2日以上続くことがありますが、これは「産褥熱」と呼ばれます(注3)。

分娩時に生じた子宮や産道の傷が細菌感染することで起こることがよく知られていますが、子宮内に胎盤が残ってしまう胎盤遺残によって発熱する可能性もあります。

抗生物質が処方されなかった時代には、産褥熱が悪化して重症になる女性もいました。今は病院できちんと対処してもらえるので、熱が出たら早めに受診しましょう。

乳腺炎

母乳が詰まったり、乳管に最近が侵入することで引き起こるのが乳腺炎です。おっぱいの激しい痛み、しこり、発熱などの症状が見られます。

産後の肥立ち時期でなくても症状が出ることがありますが、身体が弱っているとなりやすく、睡眠不足や栄養状態によって症状が重くなりやすいので注意しましょう。

産後の肥立ちを悪くするNG行動

産後の肥立ちを悪くせず、順調に回復するためにはどのような点が大切なのでしょうか。おすすめできないNG行動は以下の通りです。

激しい運動

ジョギングする女性

『産後の肥立ち』『床上げ』という言葉があるように、やはり産後1ヶ月くらいは身体を休めることが最重要です。

妊娠、出産によって太ってしまった身体を早く引き締めたいという方もいますが、これは回復を遅らせるNG行動です。産後の育児は激しい動きはなくても体力を消耗しています。

ダイエットに励むのは早くても産後2,3ヵ月経ってからにしましょう。その際にも、まずはストレッチやヨガなど軽いトレーニングから始めるようにしてください。

目の使い過ぎ

特に最近では、気分転換のためにスマホやタブレットを見る機会も多いと思いますが、目を休めるためにも長時間の使用は避けた方が良く、ブルーライトを浴びすぎると睡眠の質が下がる懸念もあります。

東洋医学においては、目を酷使すると、多量の血液を使用すると考えられています。そのため、出産後に目を使い過ぎると、血液が不足し、めまいや貧血の原因になるといわれています。

冷える服装や食べ物

妊娠中はもちろん、産後も引き続き冷えには気を付けましょう。血行不良で子宮の回復が遅れたり、後陣痛や悪露が長引いたり、母乳の分泌量が減ってしまう可能性もあります。

本来なら入浴によって体の芯から温まりたいところですが、悪露が続いている期間は細菌感染のリスクを避けるため、湯船には浸かれません。その代わり、温かいシャワーをしっかり浴びるようにしましょう。

授乳中は喉が渇きやすくなりますが、あまり冷たい飲み物ばかり飲んでいると内臓が冷えてしまいます。衣類で調整し、エアコンで部屋の温度を下げ過ぎないようにしましょう。

産後1ヶ月以前の外出

産後1ヶ月後には1ヶ月健診やお宮参りで外出する機会がありますが、それまではお母さんも赤ちゃんもできるだけ外出を控えましょう。

生まれたばかりの赤ちゃんはもちろん、産後はお母さん自身も疲労が溜まり、免疫力が落ちています。スーパーなど人が集まる場所でウィルスに感染するリスクもあります。

産後の肥立ちを良くするための対処法

育児で忙しい中でも、できる限り対処法を実践することで、産後の肥立ちが悪くならないようにしていきましょう。

規則正しい生活をする

朝気持ちよく目覚める女性

規則正しい生活は妊娠中にも推奨されていますが、産後も引き続き意識する必要があります。特に気を付けたいのが食生活と質の良い睡眠です。

赤ちゃんの大切な栄養源である母乳の質を上げるためにも、栄養のバランスを考慮した食事を1日3食規則的に摂るのが基本です。産後の肥立ちを良くするには、身体を温める食材や免疫力向上、疲労回復に効果的な食材がおすすめです。

睡眠の質を良くするに、就寝前にアロマ効果でリラックスするのも良いでしょう。睡眠を妨げるスマホやパソコンはおすすめできません。

身体を休める

元気なお母さんは産後でもついつい活動的になりますが、自覚は無くても身体は疲れています。産後1ヶ月くらいは赤ちゃんが寝ている時に自分も一緒に休むことを心がけましょう。

里帰りせず、自宅で赤ちゃんと過ごす場合、宅配のお弁当を頼んだり、産後ヘルパーをお願いするなどの検討もしてみましょう。

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ストレスを溜めない

出産後は、昼夜を問わない授乳などで疲れているのは無理のないことです。眠れない、外出できないとなるとストレスが溜まりますが、自分の気持ちを聞いてもらえるだけで楽になることもあります。
里帰り中でも、時にはパートナーに電話をして、自分の気持ちを聞いてもらうのも良いでしょう。

産後の肥立ちが悪いときのその後の影響

産後の肥立ちが悪いと様々な症状が現れますが、実は産後だけではなく、その後の体調にも影響を及ぼす可能性があります。

骨盤が歪む

骨を手で押さえる女性

出産時には骨盤が開きますが、元に戻るまでは3~4ヶ月かかると言われています。妊娠前の状態まで戻る前に無理をすると、骨盤が元に戻ることなく、ズレたり歪んだりする可能性があります。

産後グッズとして「骨盤ベルト」がありますが、これは開いた骨盤を元に戻すためです。そのまま放置しておくと腰痛などの原因になりますので、しっかりとケアしておきましょう。

更年期障害に影響する

産後、充分に体を休めることができず、育児や家事を頑張り過ぎて産後の肥立ちが悪くなる場合もあります。その結果、ホルモンバランスが崩れると、40代~50代にで更年期障害の症状が出やすくなる可能性もあります。

産後うつ・育児ノイローゼ

出産後は、ホルモンの急激な変化もあり、精神的に不安定になりやすい傾向にあります。そうした時期に、充分な休息をとれないと、精神面への影響が大きくなってしまう可能性があります。

厚生労働省によると、女性の5人に1人は一生の間にうつ病になり、特に妊娠・出産後はうつ病が起こりやすいと指摘しています(注4)。

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また、出産後にスムーズな育児のスタートを切れず、疲労感を引きずった状態で赤ちゃんのお世話を続けていると、育児ノイローゼに陥ってしまうリスクもあります。

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「産後の肥立ち」の医学的根拠は?

子宮復古や体力回復のため、産後は体を休めるに越したことはありません。しかし、「産後に無理をすると、その後の健康にも悪影響がある」というのは、医学的には証明されていない部分です。安静にできなかったからといって、必ずしも更年期障害の症状が重くなる訳ではありません。

現代は衛生状態が良いため細菌感染による産褥熱などのトラブルも少なくなっています。栄養状態も良いため、産婦さんの体力の回復もしやすいはずです。洗濯などの水仕事は洗濯機を使うのが一般的ですから、昔の人に比べれば、体にかかる負担は減っていると言えます。

子宮復古不全、後陣痛、悪露など産後に見られる症状は個人差がとても大きいものです。安静にしていたけれど産後の肥立ちが悪い人、産後から動き回ったけれど特に問題なく体調が回復する人がいます。産婦さんの過ごし方だけに原因を求めることはできません。

欧米では「産後は安静に」とは言われない?

産後復帰する欧米の女性

日本では「産後は安静に」と1ヶ月くらい身体を休めるのが一般的ですが、現代のアメリカやイギリスなどのヨーロッパでは、こうした風習はあまり意識されていません。

日本では経膣分娩の場合でも、産後3日~1週間ほど入院しますが、アメリカやイギリスでは分娩後24時間以内に退院するのが当たり前です。仕事復帰も早い傾向にあります。

ただし、背景として「無痛分娩」が一般的なこと、パートナーの育児休暇取得、ベビーシッターの利用が当たり前になっている点は無視できないでしょう。母親となった女性へのケアがしっかり行われている環境なら、あえて「産後は安静にしないといけない」と釘を刺す必要もないのです。

「産後の肥立ち」「床上げ」は女性を守るため?

昔に比べて、医学が発達し、栄養状態・衛生状態も改善されている日本ですが、育児休暇をとる男性の割合はまだまだ少なく、家事ができない・しない男性も少なくなりません。

そのため、「産後の肥立ち」「床上げ」「里帰り」というワードが現代でも出産とセットになっています。

「産後に無理をすると、女性は更年期にも影響する」「水仕事はダメ」「床上げまでは外出してはいけない」といった言葉は、産後の女性に少しでもゆっくり過ごしてもらうために、あえて廃れずに残っている言説と考えることもできます。

産後の肥立ちを良くするために休もう!

出産は女性にとって貴重な経験であると共に、肉体的・精神的な負担も大きいものです。
これから育児がスタートし、ハードな日々が待っています。まずは、自分の体調を整えることがなにより大切です。自分自身の体をしっかり労わってあげてください。

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