前置胎盤とは何か

前置胎盤とは?診断を受けた時に注意すべきこと

前置胎盤とはどんな状態なのでしょうか。また、どのような原因で前置胎盤になってしまうのでしょうか。前置胎盤の症状や原因、前置胎盤を防ぐためにできることなどについて説明していきます。安心して出産するためにもあらかじめ前置胎盤について知っておきましょう。

前置胎盤とは?診断を受けた時に注意すべきこと

前置胎盤とはどのような状態か?診断可能な時期はいつ?

子宮の内壁に作られる板状の器官『胎盤』。中央部分のへその緒(臍帯)が赤ちゃんのおへそにつながり、へその緒経由で赤ちゃんに酸素や栄養分を送っています。

本来ならば胎盤は子宮の上部~側部に形成されるのですが、場合によっては子宮口(子宮内部にありますので子宮内口と言う方が正確です)近くに形成されてしまうことがあります。

そのような状態を『前置胎盤』と言います。前置胎盤になってしまうと赤ちゃんは子宮から産道を通って生まれてくることができなくなりますので、帝王切開を実施することになります。

胎児の正常な状態

前置胎盤になる確率

日本産科婦人科学会では、全分娩中、前置胎盤が発生する確率は約0.3~0.6%と述べています。つまり、1000人中3人~6人のお産のときには、前置胎盤になると言えるのです。決して、ごく稀な状態とは言えませんので、妊娠中のお母さんは前置胎盤や前置胎盤のリスクについて知っておく方が良いです(注1)。

前置胎盤はハイリスク分娩の要因の1つ

顔を手で覆う妊婦

妊娠中もしくは出産時や出産後に急変してしまう可能性が高い妊婦あるいは産婦を『ハイリスク妊産婦』と呼んでいます。ハイリスク妊産婦には、ハイリスク分娩管理加点(1日につき2,000点)が行われ、病院側でも特に注意して管理を実施するのです。前置胎盤は、このハイリスク妊産婦に分類されます。このことからも前置胎盤は、通常よりも危険の伴う出産になりやすいと言えるでしょう(注2)。

ハイリスク分娩管理加点が行われるハイリスク妊産婦の条件

  • 妊娠週数22週~32週未満での早産
  • 40歳以上の初産婦
  • BMI(キログラム表示の体重をメートル表示の身長の2乗で割った数値)が35以上の妊産婦
  • 妊娠高血圧症候群が重症だと判断される妊産婦
  • 前置胎盤
  • 心疾患
  • 糖尿病
  • 常位胎盤早期剥離
  • 白血病等

前置胎盤の種類

子宮の上部~側部ではなく、子宮内口つまり底辺部分に胎盤が形成されることを前置胎盤と言いますが、胎盤が子宮内口をどの程度塞いでいるかによって、いくつかの種類に分類されます。

前置胎盤の分類イラスト

全前置胎盤

胎盤が、子宮内口を完全にふさいでいる状態もしくはほぼ完全にふさいでいる状態を、全前置胎盤と言います。

部分前置胎盤

胎盤が、子宮内口の一部分を覆っている状態を部分前置胎盤と言います。

辺縁前置胎盤

胎盤の周辺部分が子宮内口にかかっている状態を辺縁前置胎盤と言います。子宮口の隙間はありますが難産が予想されますので、通常は辺縁前置胎盤であっても帝王切開を選択します。

前置胎盤を診断できる時期

エコー検査を受ける妊婦さん

胎盤が通常より下部に形成されても、子宮が大きくなると共に胎盤の位置も上昇していくことがあります。そのため、妊娠早期に「前置胎盤かも」と診断されても、妊娠中期から後期にかけて胎盤が上がっていき、前置胎盤ではなくなることがあるのです。

前置胎盤は、人為的に早産になりやすいですので、早めに前置胎盤かどうかを判断して帝王切開の手術に備えます。一般的には妊娠週数31週までに判断しますが、実際には、診断後から出産までに前置胎盤ではなくなることもあります。

前置胎盤を引き起こすと考えられる原因

何かしらのことで子宮の内膜が傷ついたり腫れたりすると、前置胎盤を引き起こす可能性が高まると言われていますが、現在のところ、前置胎盤を引き起こす原因はまだ解明されていません。原因が分かればならないように前もって対策をすることができますので、これからの医学の進歩に期待したいところです。

前置胎盤を予防する方法はある?発症しやすいのはどんな人?

前置胎盤になる原因がはっきりと分かっていませんので、予防することは難しいと言えます。ですが、前置胎盤になりやすい状況はあります。前置胎盤を発症しやすい人や考え得るリスクを見ていきましょう。

流産の手術を受けたことがある

妊娠初期に、胎児が命を落としたにも関わらず胎内にとどまっている状態になることがあります。このような状態を『稽留流産(けいりゅうりゅうざん)』と呼び、妊娠初期の流産の中でも頻繁に見られる症状となっています。

稽留流産になると、手術をして子宮内に残っている組織などを体外に取り出します。放置しておくと大量に出血したり強い腹痛を感じたりすることがありますので、診断されてからすぐ~1週間後に手術をすることが一般的です。

手術の際、子宮内膜に傷がついてしまったり傷跡から炎症が起こってしまったりすると、その部分に胎盤が形成されやすくなり、傷や炎症部分が子宮内口付近のときは前置胎盤になる可能性が高まるとされています。

帝王切開や子宮手術を受けたことがある

点滴を受ける女性

帝王切開による分娩を経験した場合や、子宮内に疾患が見つかって外科的手術を受けた場合も、子宮内膜に傷がつきやすくなりますので、前置胎盤の確率が高まると言われています。また、帝王切開を行うと、次回の分娩時に胎盤がうまくはがれず、一部剥離した部分から大量出血が起こる等の産婦の命をおびやかすこともある『癒着胎盤』になることがあります。

尚、以前と比べると帝王切開手術は安全に行われるようになりました。子宮口からの通常の分娩で危険が生じそうなときはすぐに帝王切開の提案をされることも多く、危険が予測される正常分娩よりは、日時を決めて帝王切開で分娩しようと考える医師や妊婦も増えています。そのため、帝王切開経験者が増加しており、結果的に前置胎盤の発症率も上げているとの見方もあります。

高齢妊娠

妊娠年齢が高齢化するにつれ前置胎盤の出現率も増えてきていますので、妊婦の年齢と前置胎盤の発症率に相関があるとされています。実際に、厚生労働省による資料「ハイリスク妊産婦の管理の充実・拡大」では、妊産婦の年齢と前置胎盤の発症率が正比例の関係にあることが示されています。例えば、妊婦の年齢が20歳~27歳の場合の前置胎盤発症率は1%未満ですが、妊婦の年齢が35歳を超えると2%を超え、45歳を超えるとほぼ4%近くに増加します(注3)。

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経産婦もしくは多胎妊娠

出産した経験がある場合は、初産時よりも前置胎盤になる確率が高いことが分かっています。また、多胎(双子以上)妊娠の場合も、胎盤が通常よりも下部に形成されやすくなり、前置胎盤になりやすいことが分かっています。

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タバコ

タバコに含まれるニコチンは血行を悪くする作用がありますので、妊娠中にタバコを吸ったり受動喫煙する環境で生活していたりすると、赤ちゃんにも充分な酸素や栄養がいきわたらない恐れがあります。ですが、タバコの害はそれだけではありません。子宮の血流も悪くなると、胎盤が低い位置で形成される可能性が高まることも推測されているのです。百害あって一利なしのタバコ。健康な赤ちゃんのためにも、健康に出産するためにも、少しでも早くやめるようにしてください。

前置胎盤の経験がある

今までの妊娠において前置胎盤になった経験がある場合も、前置胎盤になりやすい要因であることが分かっています。前回と同じところに胎盤が形成されやすいためだと考えられています。

前置胎盤と診断されたときはどうすればいい?

前置胎盤と診断されると、入院時にはハイリスク妊産婦として特に注意した管理が実施されます。では、実際には、どのようなことに注意して生活する必要があるのでしょうか。

なるべく安静に過ごす

妊婦体操は禁止

前置胎盤と診断されたときは、なるべく安静に過ごすようにしましょう。場合によってはマタニティヨガやマタニティスイミングなどの妊婦に配慮して考案されたエクササイズでも、子宮収縮の引き金となり、出血や腹痛などを起こしてしまうことがあるからです。

適度な運動をすることで、妊娠高血圧症候群を予防したり身体のコリや痛みの解消、ストレスの解消などが期待できたりしますが、前置胎盤と診断されたときは、まずは母体の安静を最優先させて下さい。

旅行などに行く場合は、必ずかかりつけの医師に相談してから決定するようにしましょう。転倒する恐れがある山道や岩場は避け、また、足場が滑りやすい温泉なども避けるようにしてください。出発前には宿泊地の近くに救急受け入れのある産婦人科があるかチェックして、乗り物に乗るときも長時間にならないように配慮するようにしましょう。

職場の上司などに伝える

妊娠30週前後で前置胎盤と診断された場合は、ほぼ前置胎盤が確定されますのでハイリスク妊産婦として扱われます。体調が悪くない限りは出産前まで働くこともできますが、いつ入院するか分からないこと、入院すると長期間になることが多いこと(妊娠30週を超えて急な出血で入院する場合は、出産まで入院したままになることも多いです)などを上司に伝えておきましょう。

また、自分が関わっている仕事内容を整理して、急ぎのものや他の人に引き継げるものなどは同僚やチームに引き継いでおきましょう。赤ちゃんとあなたの健康も大切なことですが、社会の一員であることも大切なことです。出産という一大イベントを控えている場合も、責任はしっかりと果たすようにしてください。

自宅安静と絶対安静

医師から絶対安静を告げられる妊婦

医師から「絶対安静にしてください」と伝えられる場合、ほとんどのケースにおいて入院安静を意味します。トイレなどの必要最低限の動き以外は行わず、ベッドの上で寝たきりの生活を送ります。お風呂やシャワーも危険ですので、基本的には清拭のみで過ごすことになるでしょう。

一方、「自宅安静ですよ」と医師に伝えられる場合は、その言葉の通り、自宅で安静にしています。これは、絶対安静ほど厳密に安静にする必要はないけれども、通常の生活を送れるほどの状態ではないということを意味していますので、トイレや簡単な入浴、身体を無理に動かさない程度の家事だけを行い、すぐにでも横になれる状態で生活します。

もちろん、自宅安静を告げられたら、会社は休まなくてはいけません。産前休業(出産予定日の6週間前以降に取得できる休業、双子以上の多胎児の場合は出産予定日の14週間前から取得可能です)を取得するか、まだ産前休業の時期になっていない場合は、有給休暇などを活用して休みましょう。

有給休暇をすでに消化してしまったときや有給休暇を超える日数が必要なときは、医師の診断書を郵送もしくはファックスで送り、休業しなくてはならない旨を電話などで説明しましょう。

入院準備と出産準備をしておこう

医師から「前置胎盤の可能性がある」と告げられたときは、何をすることができるでしょうか。前置胎盤の告知が妊娠20週くらいで、まだ前置胎盤かどうか確定していない時期であっても、いざというときのために備えて、入院準備と出産準備をして置く方が良いでしょう。

先程も述べましたが、前置胎盤の人が妊娠中に出血すると、状況によってはそのまま出産まで入院してしまうことが多いですので、「後で入院準備をしよう」「もう少ししてから出産準備をしよう」と悠長に構えていられないことが多いからです。

入院に必要な生活用品などをまとめておき、できれば玄関のそばなどの目立つ場所に置いておきましょう。また、いつ出産しても赤ちゃんを迎えられるよう、赤ちゃんの服やおむつ、その他必要と思われるリネン類などをまとめておきましょう。

そして、家族としっかりと話しあい、急に入院が決まったときは各自どのような行動を取るかを決めておきます。特に小さな子どもがいる場合は、入院中はお父さん方もしくはお母さん方の実家に行くのか、それとも親や義両親に来てもらうのかなども決定しておきましょう。

前置胎盤でも過度な心配は不要!

絶対安静や自宅安静が必要というと、前置胎盤はとても恐ろしい症状なのかと思ってしまうかもしれません。もちろん、人によっては絶対安静や自宅安静が必要になることもありますが、通常の帝王切開とほとんど変わらない状態でトラブルもなく出産まで過ごす人もたくさんいます。過度に心配するとストレスを抱えてしまいますので、無理をしないように注意しながら平常心で日常を過ごして下さい。

今は医療も発達しています。きちんと医師の指示に従って過ごし、定期的に妊婦健診を受診していれば、多くのトラブルや疾病を早期発見したり回避したりすることができるのです。過度に心配する必要はありませんが、安易に自己判断しないようには注意してください。

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