赤ちゃんへのキスはなぜダメ?

虫歯だけじゃない!赤ちゃんへのキスが及ぼす感染症リスク

赤ちゃんにキス!そのキスが赤ちゃんの感染症リスクを上げていることをご存知ですか?虫歯だけでなく、ヘルペスウイルスの危険もあります。胃がんの原因となるピロリ菌はキスによって感染するのでしょうか?口移しや離乳食期のかみ砕きも要注意!赤ちゃんへのキスがもたらす感染症のリスクとは?

虫歯だけじゃない!赤ちゃんへのキスが及ぼす感染症リスク

赤ちゃんにキス!虫歯菌だけじゃない!?キスがもたらす感染症

赤ちゃんは見ているだけでも可愛いですよね。可愛くてついチューっとキスしたくなります。
でも、そのキスが赤ちゃんの病気を招いている可能性があるのです。

「赤ちゃんにキスすると虫歯がうつる」とよく耳にしますが、うつるのは虫歯だけじゃありません。
一般的に、赤ちゃんへのキスは、ヘルペスウイルスやピロリ菌感染のリスクを高めるといわれています。

赤ちゃんを無菌状態のまま育てることはできませんが、大人が注意すれば防げる感染症もあります。
どうすればこれらの感染症から赤ちゃんを守れるのか、赤ちゃんへキスをしていけない理由や注意点を説明します。

赤ちゃんへのキスは虫歯の原因になる!

赤ちゃんの頬にキスしている母親

「赤ちゃんへキスをしてはいけない」というと、まずは虫歯になるリスクを思い浮かべるでしょう。

なぜキスが原因で虫歯になるのでしょうか?虫歯の原因となる細菌やもう既にキスや口移しをしてしまった方に向けて、虫歯菌の除去方法はないのか解説します。

虫歯の原因となる細菌とは?

虫歯は細菌の感染によって引き起こされる、一種の感染症ということをご存知でしょうか。
虫歯のおもな原因は、ミュータンス菌という虫歯菌によるもので、このミュースタン菌に感染することで、人は虫歯になるのです。

ミュースタン菌は歯を溶かす酸を作り出します。ミュータンス菌によって溶けた歯を進行させるのはラクトバチラス菌という細菌で、炭水化物や砂糖にも多く含まれています。

赤ちゃんの虫歯菌の感染経路はママやパパ!?

ラクトバチラス菌は普段口にするものに含まれていますが、ミュータンス菌は、生まれたばかりの赤ちゃんの口の中には存在していません。では、なぜ虫歯になるのかいうと、認めたくありませんが、犯人は赤ちゃんのママやパパ、まわりの大人たちです。

ミュータンス菌は唾液によって人から人へも感染します。「赤ちゃんにキスをすると虫歯がうつる」というのは、赤ちゃんの口にキスすることにより、赤ちゃんがミュータンス菌に感染するという意味です。

キス以上に注意が必要な生活習慣

赤ちゃんに離乳食を食べさせているママ

親をはじめ周りの大人たちが、自分が使ったスプーンやお箸で赤ちゃんに食べ物を与えたり、かみ砕いたものを食べさせることは、赤ちゃんがミュースタン菌に感染する原因となります。

現在虫歯の人はもちろん、過去に虫歯になったことのある人は必ずミュータンス菌を持っていて、その割合は日本人の9割にも達します。

乳歯は虫歯になっても平気?

乳歯はどうせ永久歯に生えかわるから、虫歯になっても大丈夫なのでは?と思っている人もいますが、乳歯はエナメル質が薄くて柔らかく、赤ちゃんの口腔内に虫歯菌が入り、十分なケアができないと、あっという間に虫歯になってしまいます。放っておけば5~6ヵ月で神経まで達する可能性もあります。

神経まで達する虫歯ができると、永久歯のエナメル質や象牙質の発達が不完全になるリスクを高めます。乳歯だから大丈夫というのは間違いです。。

虫歯菌は除去できる?

一旦感染すると、口の中からミュータンス菌を除去することはできません
ただし、完全除去は不可能でも、減らすことは可能です。ミュータンス菌の量が減れば、虫歯になる確率は低くなります。

歯が生え始めたら歯磨きの習慣をつける、定期的に歯科医でフッ素を塗布する、食後や歯磨きの後にキシリトール配合の乳児用タブレットを与えるなど、ミュースタン菌を増やさないようにしましょう。

赤ちゃんの虫歯予防・我が子を虫歯っ子にしない乳歯ケア
赤ちゃんの虫歯予防・我が子を虫歯っ子にしない乳歯ケア

キスで感染するヘルペスウイルスとは?

口を触っている赤ちゃん

赤ちゃんへのキスがもたらす虫歯以外のリスクに、ヘルペスウイルスによる感染症が挙げられます。

ヘルペスウイルスには、複数の種類がありますが、特に注意が必要なのは、口唇ヘルペス等の原因となる単純ヘルペスウイルスです。このウイルスは強い感染力を持っているため、キスや頬ずりなどを通して大人から赤ちゃんへうつる可能性があります。

口唇ヘルペスとは?

口唇ヘルペスは、唇や口のまわりに水ぶくれができる病気です。口唇ヘルペスの原因となる単純ヘルペスウイルスは、一度感染すると体内から消えることはありません。ストレスや過労、加齢などで免疫力が低下すると再発して症状が出ます。

単純ヘルペスウイルスは、感染力が強く、発症すると接触感染によって人から人へ感染します。口唇ヘルペスが発症する際には、通常は唇のまわりにヒリヒリとした痛みを伴いますが、初期症状に気づかずに赤ちゃんへキスなどの行動をしていると、知らず知らずのうちに赤ちゃんもウイルスに感染させる危険があります。

赤ちゃんがヘルペスウイルスに感染するリスク

キスなどを通して、単純ヘルペスウイルスが赤ちゃんへ感染したとしても、多くの場合は目立った症状もなく、軽い風邪のような症状がある程度です。赤ちゃんがヘルペスウイルスに感染したことに気づかないケースもあり得ます。

ただし、まれにですが、症状が重く出るケースもありえるため油断は禁物です。

ヘルペス性歯肉口内炎

赤ちゃんがヘルペスに感染し、重症化したケースとして「ヘルペス性歯肉口内炎」があります。大人の口唇ヘルペスと同じように口のまわりに水疱ができ、ひどいと口の中にも症状が及びます。歯茎が赤く腫れ、時には出血を伴い、なにも飲めない、食べられない状態になる可能性があります。

脱水症状のリスクもありますので、入院や点滴治療が行われるケースも珍しくありません。

新生児ヘルペス

新生児がヘルペスウイルスに感染して発症する新生児ヘルペスは、生後2~7日に症状が現れ、赤ちゃんの呼吸障害や哺乳力の低下を招き、時には脳炎を引き起こし後遺症のリスクも伴う病気です。

多くは出産時の産道感染によって起こりますが、イギリスでは生後まもない赤ちゃんに見舞い客がキスをしたことが原因で発症したケースもあります。新生児と接触する際は、まわりの大人は健康状態に十分注意し、手を洗ってから触り、キスや頬ずりはしなように注意しましょう。

新生児ヘルペスは、抗ウイルス剤によって治療を行います。

赤ちゃんをヘルペスウイルスを感染させないためには

赤ちゃんに頬ずりしている母親

ママやパパなど赤ちゃんにとって身近な人が口唇ヘルペスを発症・再発した際には、以下の点に気を付けてください。

  • キスはしない
  • マスクを着用し、赤ちゃんが触れないようにする
  • 食べ物をかみ砕いて与えない
  • 食べかけ、のみかけのものを与えない
  • 頬ずりはしない
  • 患部を触った手で赤ちゃんに触れない
  • 発症している人が使ったタオルや食器の共有をしない

赤ちゃんにアトピー性皮膚炎があったり、皮膚に傷がある場合は、ウイルスに感染しやすいので特に注意が必要です。

キスでピロリ菌は感染する?

ピロリ菌は、正式名称「ヘリコバクター・ピロリ菌」といい、胃潰瘍や胃がんの原因になります。

ピロリ菌は、ピロリ菌に汚染された食べ物や水を口にすることで感染します。ピロリ菌は、免疫が不完全な0歳~5歳までの乳幼児に感染しやすく、成人になってからは感染することはほぼありません。

ピロリ菌の感染経路とは?

ピロリ菌の感染経路は、以前は井戸水などによる生活用水が原因として挙げられていました。現在はこうした公衆衛生が改善されたため、ピロリ菌の保菌者は減少傾向にあります。

しかし、現在でもピロリ菌に感染する乳幼児は存在します。現在のピロリ菌感染の多くは、ピロリ菌感染者の唾液を介した感染という説が有力です(注1)。

唾液を介する感染として代表的なのが、ピロリ菌保菌者による赤ちゃんへの口移しやかみ砕いたものを与えるという離乳食期の行為です。現代では保菌者の数は少なくなったとはいえ、60代では約60~70%の人がピロリ菌を保菌しています(注2)。

ピロリ菌はキスでもうつる?意外な事実が判明!

ピロリ菌は唾液によって感染すると聞くと、キスでもピロリ菌が感染するのではと思うかもしれませんが、実はキスによって感染する可能性はほとんどありません(注3)。

キスの習慣がある欧米でのピロリ菌の感染率も低かったことから、赤ちゃんへのキスがピロリ菌感染を招くというのは誤解といえます。

ピロリ菌に感染したらすぐに病気なる?

大半の感染が乳幼児期に起こるピロリ菌ですが、感染したからといってすぐに胃潰瘍や胃がんなどの病気になる訳ではありません。子どもの頃にピロリ菌に感染し、長い期間胃の中に潜伏し、保菌者の一部が胃がんなどの病気を発症します。

保菌者かどうかは検査可能/除菌も可能

病院でピロリ菌について医者に聞いている母親

赤ちゃんに口移しをした、離乳食をかみ砕いていたなどの経験がある方は、不安に感じるでしょう。しかし、自分や祖父母などが保菌者かどうかは検査が可能です。検査には、胃内視鏡をしようする方法と、尿や便、血中のピロリ菌を測定する方法、呼気による測定があります。

検査で陽性だった場合は、抗生物質や抗菌薬で90%以上の確率で除菌が可能です(注4)。
ピロリ菌は、放っておくと胃がんの原因にもなりますので、こうした機会に検査・除菌するのは悪い選択肢ではありません。

赤ちゃんもピロリ菌を除菌できる?

内視鏡か尿素呼気試験法での検査方法になるので、中学生くらいになれば検査が可能になりますが、幼い子供の場合は検査自体難しく、結果が不確定になりやすいです。また、ピロリ菌は、幼稚園や保育園、学校などの集団生活での感染の可能性もあるため、検査後に感染する可能性もあります。

幼少期の検査はお勧めできませんので、なにも症状がないなら今は過度な心配はやめましょう。子供がある程度大きくなってから、ピロリ菌保菌者かどうか調べてあげた方が得策です。

ピロリ菌を感染させないために

キスでピロリ菌が感染する可能性はほとんどないとはいえ、唾液などから感染する可能性はあるので、口にキスをするのは避けたほうがいいでしょう。キス以外に、赤ちゃんにピロリ菌を感染させないようにするには、口移しはしない、大人がかみ砕いたものを与えない、スプーンや箸、食器などを共有しないことです。

ピロリ菌は、公衆衛生が整っていなかった高齢世代ほど保菌率が高いという特徴があります。ママやパパはもちろん、祖父母世代の理解も必要です。

また、生活環境が改善されているとはいえ、ゴキブリやネズミがピロリ菌を運んでいる可能性も指摘されています。衛生的な生活環境を維持することは、感染症予防の観点からも重要です。

赤ちゃんを感染症から守るためにはキス以外のスキンシップを!

キスだけが感染経路ではありませんが、抵抗力が弱い赤ちゃんの口にキスをすることで、虫歯やヘルペスウイルスなどをうつしてしまう恐れがあります。

両親がどんなに気を付けていても、おじいちゃんやおばあちゃん、友達などがついつい「チュー」としてしまうこともあります。「自分たちが我慢しているのに!」とヤキモキしないように、周りの大人にも感染症について理解してもらう必要があります。

赤ちゃんにとってスキンシップはとても大切です。キス以外にもスキンシップの方法はたくさんありますので、ほかの方法でたくさん赤ちゃんとスキンシップしてください。

どうしてもキスしたくなったら、赤ちゃんが大きくなったときのことも考え、くちびる意外にキスをするようにしましょう。

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