産後うつの症状とは?

産後うつの症状とは?鬱の兆候・危険度をチェックしよう!

産後うつの症状と、自身の危険度を知るためのチェック項目をご紹介。赤ちゃんが可愛いと思えない、自分はは親失格だと思う…こんな症状ありませんか?一度うつ状態に陥ると、脳が機能不全になり、適切な判断ができなくなります。産後うつかも…と思ったら、早めに相談や治療を開始しましょう。

産後うつの症状とは?鬱の兆候・危険度をチェックしよう!

産後うつの8つの特徴的な症状

産後うつは、特別なケースに見られる特別な病気ではありません。厚生労働省の医療系情報サイト「e-ヘルスネット」では、女性の5人に1人は一生の間にうつ病になり、特に妊娠中と産後には多くの方にうつ症状が見られることが報告されています(注1)。

産後うつの特徴的な8つの症状を紹介しますので、産後うつが気になる方はぜひチェックしてみてください。

1.寝付きが悪くなる

赤ちゃんや自分のこと、将来の不安などを考え始めると、身体は疲れているのになかなか眠れなくなってしまうこともあります。「明日も忙しいんだから早く寝なくちゃ」と思えば思うほど、目が冴えてしまい、十分な睡眠がとれません。

2.食欲が落ちる

心配事を考え始めると、食事が喉を通らなくなってしまったり、食欲が出なくなったりします。食事をしないとエネルギーが得られませんから、体力的にも衰えてしまい、疲れやすさを感じることもあります。

3.子育てに自信が持てなくなる

誰でも最初は子育てビギナーです。二人目や三人目のお母さんも、最初は初めての子育てに苦戦したはずです。ですが、産後うつになると、極端に自分の子育てに自信が持てなくなってしまい、1つ1つの行動に過剰な不安がつきまといます。

4.子育てが面倒になる

育児放棄したい女性

子育て自体が面倒になってしまうお母さんもいます。妊娠中は「早く生まれないかな」と赤ちゃんを待ち望んでいたはずなのに、産後の忙しさや体調不良、睡眠不足などから「子育てしたくない」「お世話をしたくない」と赤ちゃんとの関わりを拒否したいと考えるようになったり、実際に拒否したりします。

5.赤ちゃんが可愛く思えない

赤ちゃんが可愛く思えなくなってしまうことがあります。赤ちゃんが泣くと「どうしたの?」という気持ちよりも「うるさい!」という気持ちが先に出てしまったり、赤ちゃんが寝ていると「かわいいなあ」と思うよりも先に「やっと静かになった」と言ってしまったりなどの言動が見られます。

6.自分自身が母親失格だと思える

子育てが面倒になったり、赤ちゃんが可愛く思えなかったりといった状況が続くと、自分自身を振り返って「わたしは母親失格だ」と考えるようになることもあります。他のお母さんが立派に思えたり、自分に育てられる我が子がかわいそうに思えたりします。

7.生きていることが無意味に思える

大切な赤ちゃんを可愛く思えない自分。子育てが上手にできない自分。そんな自分は生きている価値がないのではないかと思い詰めてしまいます。思考が停止して、ぼんやりと過ごす時間が増えることもあるでしょう。

8.誰も頼れないと感じる

誰も頼れないと感じる孤独な女性

辛いときに夫や両親、義父母、兄弟姉妹、友人などを頼ることは普通のことです。ですが、産後うつ状態になっていると、「誰も頼ることはできない」と決め付け、精神的な辛さや身体的な辛さを一人で抱え込んでしまいます。

自治体のサポートセンターや公共・民間の一時預かりサービスを頼ることを思いつかなくなる可能性もあります。

産後うつを早期に発見するための質問紙

イギリスで開発された「エジンバラ産後うつ病質問票」は、質問に答えた1週間で産後うつを示す兆候がなかったかを把握できますので、1ヶ月健診や保健師による新生児訪問のタイミングでも多く実施されています。

質問は全部で10問あり、それぞれに0点、1点、2点、3点の点数がついています。10問の点数の合計が9点以上のときは、産後うつの疑いがあると判断し、詳しい面接を受けるように指導されます。

エジンバラ産後うつ病質問票はあくまでもスクリーニング用の質問紙ですので、この結果だけで産後うつ病だと診断することはできません。
高得点でも面接してみると特に問題がない、気分のムラの問題であるというケースもあります。反対に低得点でも面接してみると問題があるように思われる場合は、正直に答えていない可能性があります(注2)。

エジンバラ産後うつ病質問票

■ご出産おめでとうございます。ご出産からいままでのあいだにどのようにお感じになったかをお知らせください。今日だけでなく、過去7 日間にあなたが感じられたことに最も近い答えにアンダーラインを引いてください。必ず10 項目に答えてください。

【質問】
1. 笑うことができたし、物事のおかしい面もわかった
(0)いつもと同様にできた          (1)あまりできなかった
(2)明らかにできなかった           (3)まったくできなかった

2. 物事を楽しみにして待った
(0)いつもと同様にできた          (1)あまりできなかった
(2)明らかにできなかった          (3)まったくできなかった

3. 物事がうまくいかなかったとき,自分を不必要に責めた.
(3)はい、たいていそうだった       (2)はい、ときどきそうだった
(1)いいえ、あまりたびたびではない      (0)いいえ、そうではなかった

4. はっきりとした理由もないのに不安になったり,心配した.
(0)いいえ、そうではなかった       (1)ほとんどそうではなかった
(2)はい、ときどきあった         (3)はい、しょっちゅうあった

5. はっきりした理由もないのに恐怖に襲われた.
(3)はい,しょっちゅうあった       (2)はい,ときどきあった
(1)いいえ,めったになかった       (0)いいえ,まったくなかった

6. することがたくさんあって大変だった.
(3)はい,たいてい対処できなかった          (2) はい,いつものようにはうまく対処しなかった
(1)いいえ,たいていうまく対処した    (0)いいえ,普段通りに対処した

7. 不幸せなので、眠りにくかった.
(3)はい、ほとんどいつもそうだった    (2)はい、ときどきそうだった
(1)いいえ、あまりたびたびではなかった  (0)いいえ、まったくなかった

8. 悲しくなったり,惨めになった.
(3)はい、たいていそうだった      (2)はい、かなりしばしばそうだった
(1)いいえ、あまりたびたびではなかった (0)いいえ、まったくそうではなかった

9. 不幸せなので、泣けてきた.
(3)はい、たいていそうだった        (2)はい、かなりしばしばそうだった
(1)ほんのときどきあった          (0)いい、まったくそうではなかった

10. 自分自身を傷つけるという考えが浮かんできた.
(3)はい。かなりしばしばそうだった     (2)ときどきそうだった
(1)めったになかった            (0)まったくなかった

産後うつになる原因

産後うつと言っても、一人一人によって産後うつを引き起こした原因や産後うつによって見られる症状は異なります。ですが、おおよその過程は次のようになっていることが多いです。(注1)

多くのストレスを抱える

母親らしくのストレスで耳を塞ぐ女性

妊娠中や出産後は、体調が思わしくなく、毎日優れない気分を抱えて生活する人も多いはずです。また、このような身体的ストレスだけでなく、妊娠や出産のために出かけたい場所に出かけられないことや行動に制約があることも、女性にとっては大きなストレスになります。

その他、「子どもを最優先するべき」「母親らしい服装を着るべき」などの周囲の有言無言の圧力も、女性にとっては大きなストレス因子になるのです。

妊娠中から数えると数ヶ月~1年以上ストレスを抱えて生活していることになりますので、産後の時期はストレスが長期間かつ大量にたまっている時期だと言えるでしょう。

脳が機能不全が起こる=正常な判断ができない

大量のストレスを抱えて長期間生活をしていると、脳が正常に機能しなくなることがあります。いつもは聞き流せることも聞き流せなくなったり、自分や赤ちゃんが置かれている状況を正確に判断できなくなります。

また、妊娠中や産後はホルモンのバランスが変化する時期ですので、一時的に脳がストレスへの耐性を弱めてしまいます。そのため、脳の機能不全がますます進むことにもなります。

否定的に物事を捉えるようになる

脳が機能不全に陥ると、正確な判断ができません。すなわち、物事のネガティブな側面しか目に入らなくなってしまいます。

すべての物事を否定的に捉えるようになり、周囲のアドバイスも耳に入らなくなり、悪循環に陥ります。そして、次の2つのいずれかのルートをたどり、新たなストレスを生み、脳の機能不全が強まり、更に自分を追い詰めてしまうのです。

母としての使命感が強くなって新たなストレスを生む

「母親なんだから何でも一人で解決しなくてはいけない」と思い込み、ますますストレスを強めてしまう方もいます。ストレスが強まると、さらに物事を悪く捉えるといった悪循環に陥ります。

精神的に孤立する

「すべての問題を一人で解決しなくてはいけない」と思い込み、周りに助けを求めることもできなくなります。こうしたプレッシャーはかえって大きなストレスとなり、更に自分自身を追い詰めます。

産後うつの対処法

産後うつを予防する方法や産後うつのセルフケアについて知っておきましょう。

お母さん自身が実施できること

産後うつを回避するために、もしくは産後うつの症状を和らげるために、お母さん自身ができることとして次の事柄を挙げられます。

自分に対して甘くなる

コーヒーを飲みながら欠伸する女性

「出産後だから、体力も回復していないし、できないことが多くても仕方ない」「なんか無性に悲しくなったり腹が立ったりするけれど、ホルモンバランスが乱れているだけだから仕方ない」と、自分ができないことや苛立つことにたいして、「仕方ない」と目をつぶることが大切です。普段は完璧主義者の人でも、産前産後は思いっきり自分に対して甘くなりましょう。

「手伝って」と言う

困ったときや疲れているときは、家族や友人に気軽に「手伝って」と言いましょう。普段は他人に頼ることが嫌いな人も、「周りに頼ることで産後うつになる可能性を下げることができる」と思えば、「手伝って」というセリフが口から出てくるのではないでしょうか。産後の時期に周囲の人々に頼るのは格好悪いことではありません。

もちろん、体調が元通りになったら、「今までありがとう」という感謝をこめて周囲の人に接することは必要です。「助けてくれてありがとうね」「あなたのおかげで産後の時期が乗り切れたわ」と感謝を口にすることで、心も明るくなります。

人と会う・集まりに参加する

同じ月齢の赤ちゃんを抱いた母親が会話する

自治体や産婦人科で、子どもの月齢が近いお母さんが集まるイベントが実施されることもあります。「なんか面倒だな」と思わずに積極的に参加すると、イライラしているのが自分だけじゃないこと、かわいいはずの赤ちゃんに腹が立ってしまうのも自分だけじゃないことに気付くでしょう。

産後、気持ちが不安定になるのは特別なことではありません。思いを共有できるイベントや集会等が利用できない場合は、インターネットのコミュニティを探してみても良いでしょう。

周囲が実施できること

赤ちゃんを産んだばかりのお母さんが産後うつにならないために、周囲の人々ができることもあります。

さりげなく家事や育児を手伝う

「大変だったら、家事を手伝おうか」なんて旦那さんが言うなら、ほとんどのお母さんは「大変に決まっているでしょ!見ていてわからないの?」と反発してしまいます。特に産後のイライラしやすい時期には、そんな善意の声掛けから夫婦喧嘩が勃発する可能性もあるのです。

産後ガルガル期の心理状態ややりがちな言動とは?
産後ガルガル期の心理状態ややりがちな言動とは?

本当に手伝う気持ちがあるなら、何も言わずに自然な流れで食器を洗ったり、洗濯物を取り入れたり、アイロンがけしたりしましょう。

他のお母さんを引き合いに出さない

「○○さんは、もう職場復帰したよ」「赤ちゃん育てながら幼稚園の子どもの世話もしているんだって」などの他のお母さんの情報を持ちだすことは止めましょう。ましてや、義母の例を出して、「昔のお母さんたちは偉かったなあ」なんて旦那さんが言うなら、産婦のストレスは天井知らずに増えてしまいます。

頑張れと言わない

掃除する主婦の手

「今が一番大変な時期だよ。頑張って」などと、無責任に励ますことは止めましょう。どのお母さんも一生懸命赤ちゃんの世話をし、優れない体調とも戦っているのです。「頑張れ」と言いそうになったら、声に出さずに自分を律し、黙って赤ちゃんのお世話や家事を手伝いましょう。

産後うつになったときにすべきこと

うつ病は治療することで改善が可能ですし、時間はかかっても完治できます。反対に適切な治療を受けていないと、うつ病の状態が長期化したり、悪化することもあります。

厚生労働省では、産後うつ対策として、2017年から「産婦健康診査費用助成事業」を開始しました。ぜひ活用して、産後うつを長期化・悪化させないようにしてください(注3)。

産婦健康診査費用助成事業とは

産婦健康診査費用助成事業とは、産後2週間もしくは産後1ヶ月のタイミングで、産婦の健康状態や回復度、精神状態などを検査する「産婦健康診査」にかかる費用を国が50%、市区町村が50%の負担で実施する事業です。

実施内容は市区町村によって若干異なりますが、産婦健康診査2回分の費用を無償で行うこと、支援が必要と判断された産婦に対しては産後ケアを提供することは、守るべき基本指針として定められています。

すべての産婦は最低1回の産婦健康診査が無料で受けられる

女医が紹介する産婦健康診査

産後1ヶ月のタイミングで、すべての産婦(2017年4月1日以降に出産した産婦に限定)は産婦健康診査を無料で受けられます。

出産後に医師が特に必要だと判断した妊婦に対しては、産後2週間目のタイミングと産後1ヶ月のタイミングの計2回の産婦健康診査を無料で受けることができます。ただし、市区町村によっては若干異なる規定が定められています。

診査項目

問診と診察、体重や血圧などの基本的な身体検査、尿検査は、無料の産婦健康診査に含まれています。これ以外の項目、例えば血液検査や他の精密検査などは無料ではありませんので、実費が必要になります。尚、診査項目も市区町村や医療機関によって若干異なります。

産婦健康診査で要支援と言われたときは

産婦健康診査の結果は、すべて診査を受けた人本人に伝えられます。支援が必要であると判断された場合は、次の対応が取られます(注4)。

産婦健康診査で要支援と判断された場合の対応

  • セルフケアに関する指導を行います。
  • 市区町村で利用できる相談窓口(子育て関連、医療関連等)に関する情報提供を行います。
  • 診査を実施した医療機関において、継続的な経過観察を行います。
  • 受診が勧められる精神科等の医療機関に関する情報提供を行います。
  • その他、産婦健康診査受診者にとって有意義と思われる情報を提供します。

産後うつは誰にでも起こり得る症状

産後の時期は、気持ちが不安定な分、子育てや健康、人間関係に不安を抱えてしまいます。ですが、心配しても何も始まりません。体調もいつかは良くなりますし、慣れない育児もいつかは慣れます。過度に不安にならないこと、そしてうつ状態が見られたらすぐに病院に行くことを心がけてください。

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