胎盤とは何か

胎盤とは何だろう?完成時期や役割・関連する病気

胎盤とはそもそも何を指しているのでしょうか。形成される過程や胎盤ならではの役割、胎盤や胎盤関連の病気についても探っていきましょう。また、健康な胎盤を形成するためにできることについても説明します。

胎盤とは何だろう?完成時期や役割・関連する病気

胎盤とは胎児の健康を守る大事な器官!働きを知っておこう

妊娠週数が進むと胎内に形作られていく『胎盤』。名前は聞いたことがあっても、具体的にはどのような器官なのか良く分からないというお母さんやお父さんも多いのではないでしょうか。胎盤の機能や働き、また、胎盤がどのように作られていくかについて見ていきましょう。

胎盤が作られるまで

胎盤は、妊娠5~7週ごろから作られ、妊娠12~16ごろに完成します。子宮の一部が変形して形成されるように見えますが、実際のところ、卵から派生した胎児側の組織と子宮から派生した母体側の組織の両方によってつくられています。

胎児と母体が作る胎盤!ただし血液は混ざりあわない

胎盤は赤ちゃん側の組織とお母さん側の組織によってつくられていると言うと、血液が混じり合わないのかと疑問を持つかもしれません。お母さんの血液と赤ちゃんの血液が異なることは頻繁にあることですし、もし血液が混じり合ってしまうなら、赤ちゃんは異型輸血反応(異なる血液型の血液は赤ちゃんにとって異物であるため)を起こしてしまうでしょう。

胎盤と臍帯で繋がってる赤ちゃんのイラスト

ですが、実際のところは、胎児の血管の延長上にある絨毛と、母体の血管の延長上にある絨毛が区画分けされながら胎盤中隔(たいばんちゅうかく)に連結しています。そのため、母体の血液と赤ちゃんの血液は混じり合うことなく、血液中の酸素や栄養分、老廃物などの物質だけが血漿を仲立ちとして交換されているのです。

羊膜の外側かつ子宮の内側に位置する

胎盤は、子宮の内側かつ羊膜の外側に位置します。赤ちゃんを守る羊膜の外側にありますので、一見したところ、母体側の組織のように見えてしまうのかもしれません。

重さは平均500~600グラムほど

胎盤というと、薄い板状のものを思い浮かべるかもしれませんが、実際には2~3センチメートルほどの厚みがあり、直径は20センチメートルほどもあります。重さも500~600グラムと重く、赤ちゃんが生まれてから10~30分後に自然にはがれ落ちて、産道を通って外に排出されます。

後産

赤ちゃんが無事に生まれても、出産の行程すべてが終わったわけではありません。まだ、『後産』が残っています。

後産とは出産後に胎盤が出てくること

医師と家族が見守る出産

出産後に胎盤が出てくることを『後産(あとざん)』と言います。これは、赤ちゃんが生まれた後に再び陣痛が起こりますので、「通常のお産と比べて後に来るもの」という意味で後産と呼ばれているのです。

もちろん、後産のためには陣痛が起こりますから痛みはあります。ですが、出産時の痛みと比べるとごく弱く、また、出産で身体が疲労していることもあって、ほとんど痛みを感じない人も少なくありません。

後産が終わり、胎盤や臍帯などの不要となった組織がすべて外に出ると、ようやく出産は終わります。医師が会陰裂傷や会陰切開の縫合を行い、すべての処置を終えます。

胎盤が外に出てこないときは

通常は、出産後10分~30分ほどしてから陣痛と共に胎盤が外に出ますので、後産がスムーズに行われます。赤ちゃんが生まれると子宮は収縮しますが、胎盤は収縮できませんので、子宮に押し出されるようにして外に出されるのです。

ですが、お母さんによっては子宮があまり収縮せず、後産がスムーズに行われないときがあります。このような場合は、陣痛促進剤(子宮収縮促進剤)を投与したり、子宮口から見えている臍帯を引っ張ったりして、人為的に胎盤を外に出します。

胎盤の役割

胎盤にはいくつもの役割があります。胎盤から赤ちゃんや母体に直接働きかけることもありますし、胎盤が赤ちゃんと母体をつなぐ中継点になることもあります。

胎児と臍の尾

ホルモン産生

胎盤では、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)やヒト胎盤性ラクトゲン(hPL)、プロゲステロン、エストロゲンなどのホルモンが産生されています。黄体維持に欠かせないヒト絨毛性ゴナドトロピンやヒト胎盤性ラクトゲンは赤ちゃんに、妊娠の維持や乳腺を刺激するために必要なプロゲステロンやエストロゲンはお母さんに、それぞれ送られます。

赤ちゃんへの栄養補給

母体の血液を通して糖やアミノ酸、ビタミン、ミネラルなどを胎盤に送り、赤ちゃんの生体維持や成長に必要な栄養分だけが、胎盤中隔から臍帯経由で赤ちゃんに送り込まれます。胎盤を通すことでお母さんの血液が混じらず、必要な栄養分だけを取り込むことができるのです。

赤ちゃんの呼吸活動

赤ちゃんは、お母さんのお腹にいるときは、口や鼻を使って酸素を取り入れていません。お母さんの血液を通して酸素が胎盤に送られ、臍帯経由で赤ちゃんの胎内に直接取り込まれるのです。酸素を使ってエネルギーを生み出すと二酸化炭素が発生しますが、二酸化炭素は臍帯経由で胎盤に送られ、お母さんの血液に送り込まれます。このように胎盤を介して赤ちゃんは呼吸活動を行いますので、通常、赤ちゃんが酸素欠乏になることや二酸化炭素が充満してしまうことはありません。

赤ちゃんの排泄活動

お母さんの血液から送られる栄養素に頼って生きている赤ちゃん。身体に栄養分を取り入れると言うことは、老廃物が出るということでもあります。赤ちゃんの老廃物も臍帯経由で胎盤からお母さんの血液に送られます。

ただ、赤ちゃんは老廃物を血液経由で排泄しますが、羊水の中で尿も出しています。そのような話をすると、「え、赤ちゃんは尿にまみれているの?」と不安になってしまうかもしれません。でも、安心して下さい。赤ちゃんが胎内にいる間の尿の中には老廃物は含まれていません。羊水はきれいなままで赤ちゃんを包み込んでいるのです。

胎盤に見られる異常や疾病

赤ちゃんとお母さんが共同で作り上げた胎盤。赤ちゃんが健康に育つためのさまざまな役割を、一手に引き受けている大切な器官でもあります。そんな大切な胎盤に異常が起こることがあります。こまめに妊婦健診を受けることで早めに処置や対策を行うことが可能ですので、「安定期だから妊婦健診に行かなくても良い」と自己判断せずに、しっかりとかかりつけの病院に通って下さい。

前置胎盤

3タイプの前置胎盤

胎盤は通常、子宮の上部もしくは上部から側部にかけて形成されます。ですが、35歳を超える妊婦の約2%、45歳を超える妊婦の約4%に、胎盤が子宮口近くに形成される『前置胎盤』が起こります。子宮が大きくなるとともに胎盤の位置が上がり、前置胎盤でなくなる人もいますが、妊娠週数30週を超えて前置胎盤と診断されると、帝王切開での出産がほぼ確定します(注1)。

前置胎盤を完全に予防することはできませんが、先程も述べましたように出産時の母親の年齢と前置胎盤の発生率はほぼ比例していますので、高齢出産が前置胎盤のリスクを高めると言えます。また、その他にも、喫煙の習慣や前置胎盤の経験、子宮関連の手術も前置胎盤の発症率を高めると言われています。経産婦や多胎児の場合も、胎盤が下方に形成されやすいため、前置胎盤の発症率を高めると言われています。

前置胎盤が確定した場合

妊娠20週ごろに「前置胎盤の可能性があります」と医師に伝えられても、まだ子宮は成長途中ですので、臨月までには前置胎盤ではなくなる可能性も少なくありません。ですが、妊娠30週ごろに「前置胎盤です」と医師に伝えられた場合は、ほとんどのケースにおいて帝王切開を行うことを前提として出産まで進んでいきますので、お母さんも帝王切開の心づもりをしておきましょう。

もちろん、帝王切開は外科的手術ですが、特別に危険な手術ではありません。前置胎盤ではなくても母体と胎児の安全のために正常出産ではなく帝王切開を選択することも多くありますし、陣痛や破水を待つ正常出産と比べて計画的に出産できるというメリットもあります。

とはいえ、前置胎盤のために帝王切開を実施するときは、通常よりもリスクが高いとされる『ハイリスク妊産婦』に指定され、病院側でも特に注意して管理を実施します。妊娠中に絶対安静が必要になり、妊娠20~30週ごろから出産まで入院生活を送ることもあるかもしれません。

絶対安静の妊婦がベッドで横になる

帝王切開のリスクとは?術中・術後の母体と赤ちゃんへの影響
帝王切開のリスクとは?術中・術後の母体と赤ちゃんへの影響

突然、絶対安静のための入院を告げられても慌てることなく対応できるように、前置胎盤であることが分かったら次の準備を始めるようにしてください。

前置胎盤であることが確定したときにしておくこと

  • 入院準備を始める。入院中に必要と思われるものや母子手帳、保険証などをバッグにまとめ、いつでも持って行けるように玄関付近に置く。
  • 赤ちゃんを迎える準備を始める。一旦入院すると、出産するまで家に帰れないかもしれないので、赤ちゃんが家に帰ってきたときに必要な下着やリネン類、哺乳瓶などをすぐに出せるようにまとめておく。
  • 職場の上司に伝える。臨月になるまでに入院する可能性もあるため、上司にその旨を伝えておく。
  • 仕事の引き継ぎを行う。「体調が良いから出産間際まで働ける」と思っている人でも、状態が急変して、いつ何時長期入院するか分からない。なるべく早めに引き継げるものや急ぎのプロジェクトなどは同僚やチームと共有し、仕事に支障がでないようにする。
  • 家族内の連絡・連携を決めておく。突然入院してもすぐに家族と連絡を取り合えるように、家庭内や実家との連絡網を決めておく。また、赤ちゃんや幼児などの世話が必要な兄弟がいる場合は、誰が入院中に世話をするのか、幼稚園や小学校にはどのように通うのか等をしっかりと話し合って決めておこう。

胞状奇胎(ほうじょうきたい)

胎盤の臍帯がつながっている側(赤ちゃん側)とは反対の方には絨毛が密生し、子宮の内壁と絡み合うように接しています。通常、妊娠すると子宮内には胎児が育っていくのですが、『胞状奇胎』と呼ばれる疾病に罹患すると、子宮内に赤ちゃんではなく絨毛が変化した小さなのう胞状のものが密生してしまいます。

妊娠初期には正常妊娠との違いがほとんどなく、絨毛が変化した袋状組織が育っていることには気付きません。不正出血が起こったときや出産後に子宮が大きくなったとき、また、胎児の動きを感じないときなどに「もしかしたら胞状奇胎では?」と予測されますので、少しでも異常を感じたときはすぐにかかりつけの病院で検査を受けるようにしてください。

絨毛がん

胞状奇胎や分娩後に残った絨毛から『絨毛がん』になることがあります。胞状奇胎は子宮内にしか起こりませんが、絨毛がんは子宮から他の器官に移転することもありますので注意が必要です。特に、胞状奇胎から絨毛がんに発展する確率が高く、正常妊娠において絨毛がんが発生するリスクと比べると胞状奇胎において絨毛がんが発生するリスクは1000倍以上と言われています(注2)。

胞状奇胎罹患後のケアで絨毛がんの発症率を抑える

胞状奇胎から発展することが多い絨毛がん。予防するには、胞状奇胎に罹患したことが分かったら、すぐに尿検査や血液検査等を実施して、こまめに経過を確認することが必要です。経過によっては治療を実施することで、胞状奇胎から絨毛がんに発展することをある程度防ぐことが可能になるのです。

実際に、日本では1974年には人口10万人当たり4.96人もが胞状奇胎に罹患していましたが、1997年には人口10万人当たり0.68人と明らかに減少しています。また、胞状奇胎と同じく絨毛性疾患(じゅうもうせいしっかん)である絨毛がんも、1974年には人口10万人当たり0.158人の罹患率でしたが、1997年には人口10万人当たり0.038人にまで減少しています。いずれもこまめな尿検査や血液検査などの観察と経過確認によって罹患率が下がってきたと見ることができますので、定期的に妊婦健診を受けるようにしてください。

妊娠を意識したら胎活も始めよう

妊娠中は、赤ちゃんの健康やお母さん自身の健康に気を配ります。規則正しい生活をし、絶対安静を医師から言い渡されていない限りは適度な運動をすることもできるでしょう。また、栄養バランスの取れた食事を適量食べることも大切です。

もちろん、お母さんと赤ちゃんをつなぐ胎盤の健康も考えなくてはいけません。妊娠を意識した瞬間から健康な胎盤を作る『胎活』を始めてみるのはいかがでしょうか。胎盤は健康な身体と血液から作られます。血流を阻害したり赤ちゃんの正常な発育を阻害するタバコや習慣的な飲酒、カフェインの過剰摂取などは止め、健康な血液と血流を作っていくようにしたいものです。

おすすめコンテンツ