自宅出産の方法とリスク

自宅出産で産む人はわずか500人に1人!具体的な方法は?

自宅出産は現代の日本ではかなり珍しい出産方法ですが、不可能ではありません。自宅出産をするための準備とメリット、かかる費用を紹介。一方で、自宅出産のリスクや自宅出産ができない赤ちゃんや母体の状況も理解し、「安全なお産」「自分らしいお産」とはなにか考えていきましょう。

自宅出産で産む人はわずか500人に1人!具体的な方法は?

自宅出産で産む人はわずか500人に1人!具体的な方法は?

平成10年版厚生白書によりますと、出産場所として自宅を選ぶ割合は年々減少しており、1996年には日本国内のすべてのお産のわずか0.2%、500人に1人だけが自宅で出産していることが報告されています。1947年以前は自宅出産が全体の9割を超えていたことからすると、驚くべきスピードで病院等の施設での出産が一般的になってきたということが言えるでしょう。

このように自宅出産自体が珍しい形の出産ですから、「自宅出産した人を一人も知らない」人や「本当に自宅で出産する人なんているの?」と懐疑的に思う人もいるでしょう。

ネットや雑誌、母親たちの口コミで話題になることも少なくない「自宅出産」。具体的には、どのような方法で実施するのか見ていきましょう。

産婆さん(出張可能な助産師)を呼ぶことが基本

妊婦の世話をする産婆さん

自宅出産のもっともスタンダードな方法が、自宅に産婆さん(家まで出張してもらえる助産師)を呼び、出産の介助をしてもらうものです。陣痛が来てから助産師さんを呼ぶことになりますので、すぐに来てもらえる助産師さんを早めに見つけておかなくてはいけません。

ただし、自分が開院している助産院でしか出産介助を行わない助産師さんも多くいますので、出張可能な助産師さんを見つけること自体が困難になることもあります。また、出張可能な助産師さんが見つかっても、家が遠く、助産師さんの手が必要なときにすぐには家に来てもらえない可能性もあります。

その他にも、出産のときに助産師さんが担当する他のお産と重なってしまい、助産師さんがすぐにかけつけられないというケースもあります。自宅出産を計画する場合は、早めに助産師さん(できれば2人)を確保するようにしてください。

万が一のケースを想定して準備しておくこと

妊娠期間中、特に何のトラブルもなく過ごしている場合でも、いざ出産というタイミングになって、産婦さんの体調が急変したり、産婦さんや赤ちゃんの身体に異常があることが分かったりすることもあります。助産師さんとじっくりと相談して、万が一のケースにはどこの病院へ向かうのか、どのような状況になったら病院へ搬送するのかを決めておきましょう。

出産時のトラブルは、一刻一秒が命につながります。迅速な処置ができるのか、そして、少しでも異変があるときは救急病院に連絡してくれるのかについて、助産師さんにはよく確認しておくようにしてください。

助産師なしの出産!?プライベート出産とは?

自宅出産を選ぶ人の中には、『プライベート出産』と『無介助出産』呼ばれる方法で、助産師さんを自宅に呼ばないで、自分一人もしくは家族の介助を受けて出産しようと決めている人もいます。

ただし、当然大きなリスクを伴う方法で、推奨されません。大量出血を起こすこともありますし、へその緒の切り口から雑菌が入ってしまう可能性もあります。
無事に出産となるケースもありますが、それは結果論に過ぎません。母親と赤ちゃんの両方にとって命の危険を伴う方法です。

自宅出産のメリット

病院や助産院で出産することが当然だと考えている妊産婦さんにとっては、助産師さんにつきそってもらう場合であっても、自宅で出産するのは大変そうだというイメージを持つでしょう。ですが、自宅出産を選択する人は、自宅出産に何らかのメリットを見出していると言えます。一体、自宅出産にはどのようなメリットがあるのでしょうか。

入院しなくても良い

子供の世話をする妊婦

病院で出産する場合は、自然分娩であっても3日~1週間ほど入院することになります。また、助産院で出産する場合も、陣痛促進剤や吸引分娩などの医学的処置を行わない分、病院における出産時間より長引く可能性も高く、母体が回復するまでは入院することになります。

入院するためにはそれ相応の準備が必要になりますし、小さな子どもがいる場合は、子供たちの世話や家事などが不安になるものです。

ですが、自宅で出産するなら、出産後に必要なものはすべてそろっていますから、洋服やタオル類、ベビーウェア等をまとめて持ち出す必要もありません。また、出産が終わって体調が回復すればすぐにいつもの生活に戻れますから、自宅に帰る準備をする必要もありません。

小さな子どもがいる場合も、いつでもそばにいられますので、お母さんも子どもたちも不安を感じずに出産を迎えられるのはメリットと言えるでしょう。

産婦が落ち着くことができる

快適に整えられている産院でも、やはり自宅ほどには落ち着けないのではないでしょうか。また、分娩台に上がって分娩室の天井や室内装備を見ると、医療機器や器具がたくさん目に入りますので、不安感が強くなってくるという妊産婦さんもいます。

慣れた自宅での出産は、陣痛や分娩への恐怖を和らげ、出産後もそのまま自然な形で赤ちゃんの生活に慣れていけます。

家族全員が出産に立ち会える

自宅出産は、助産師さんだけでなく、赤ちゃんの父親などの家族が介助を行うのが一般的です。陣痛に苦しむ産婦さんの体をマッサージしたり、生まれてきた赤ん坊をタオルで拭いたりなどを手伝うことで、出産の喜びを共有できます。上の子も、慣れた自宅で産まれたばかりの赤ちゃんを抱っこしたり、お世話をすることが可能です。

すぐに日常の生活に戻れる

キッチンで料理を作る主婦

自宅で出産すると言うことは、身体の痛みさえ引けば、いつでも日常の生活に戻れるということでもあります。お母さんも赤ちゃんも移動せずに日常生活に入れますので、産後の体力回復や体調回復が早くなることもあります。

費用が安くなることもある

特に問題が起こらず緊急医療を必要とせずに出産が終わった場合、金銭的な負担は助産師さんの出張費と処置代だけとなります。お産にかかった時間にもよりますが、5~30万円程度で出産できることも少なくありません。

自宅出産でも出産育児一時金は受給できる

自宅出産を選ぶ場合であっても、加入している健康保険から出産育児一時金が支給されますので、支給される42万円(赤ちゃんに医療的処置が必要になるときは40.4万円になることもあります)のうち、助産師さんに支払った金額の差額は育児に役立てることができます。

自宅出産のリスク

自宅出産にはリスクが伴います。
母親の希望や意思だけで決定するのではなく、自宅出産で予想されるリスクをしっかりと把握した上で、家族や医師、助産師と話し合ってから自宅出産をするのかどうか選ぶようにしましょう。

医療的トラブルに対応できない

助産師さんはあくまでも出産介助の仕事を行いますので、医療的トラブルには対応することができません。出血量が多くなった場合や予想外のトラブルで赤ちゃんがスムーズに産道を下りてくることができなくなった場合も、助産師さんに応急処置をしてもらうことは可能ですが、医薬品や医療器具を用いた根本的な処置は実施できません。

緊急時の対応が遅れる

病院で出産する場合は、母体にモニターを取り付け、赤ちゃんの様子を観察しながら出産に臨むことも少なくありません。観察しながら出産することで、赤ちゃんにへその緒が巻きついたりしていないか、逆子になっていないかを早急に知ることができます。また、このままでは出産が難しいと判断される場合には、速やかに帝王切開等の手術による出産に切り替えることも可能です。母子ともに緊急の状態に陥る可能性は助産院や自宅出産よりも少なくなります。

一方、自宅出産の場合、赤ちゃんの様子を把握するのは助産師さんの目と経験だけです。助産師さんがいくら経験豊富な人だとしても、予想外の症状が起こることはありますので、緊急かどうかを察知するまでに時間がかかってしまいます。

また、早めに緊急状態であることを察知したとしても、荷物をまとめて産婦さんを病院に送り届けなくてはなりませんので、最初から病院に入院している産婦さんと比べると処置はどうしても遅れてしまいます。

その他のリスクとして、出生後の赤ちゃんの健康状態も挙げられます。赤ちゃんは出産によって胎内とはまったく異なる環境に送り込まれることになりますが、胎外の環境にうまく適応できない場合は速やかにNICU等で適切な処置を行わなくてはなりません。

ですが、自宅で出産することで赤ちゃんの健康リスクに気づくことが遅れたり、何の手も打たなかったりするならば、赤ちゃんの命を左右してしまうことにもなりかねないのです。

自宅出産が認められないケース

自宅出産を選ぶ場合でも、母子の健康を守るために、母子手帳を交付してもらい、定期的に妊婦健診を受けなくてはなりません。
妊婦健診で次のいずれかに当てはまることが判明した場合は、自宅出産はもちろん、医療的処置を実施できない助産院での出産も認められません。

子宮や胎盤の位置に問題がある

前置胎盤と赤ちゃんのイラスト

子宮に何らかの問題がある場合は、出産時もしくは出産前に医療的処置が必要になることがあります。緊急医療を受けることができない助産院や自宅での出産は勧められないでしょう。

また、胎盤が正常よりも低い位置に形成される「前置胎盤」の場合、赤ちゃんはスムーズに子宮口から産道へ移動することができなくなりますので、基本的には帝王切開による出産となります。助産院や自宅では帝王切開は実施できませんので、前置胎盤やその他の胎盤異常が見つかったときは病院での出産となります。

前置胎盤とは?診断を受けた時に注意すべきこと
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逆子、多胎児である

正産期に入っても赤ちゃんの頭部が子宮口を向かないと、出産が難しくなりますので、帝王切開を選択することになります。帝王切開は病院で実施しますので、自宅出産を計画していた場合でも病院での出産に切り替えなくてはなりません。

また、双子や三つ子などの多胎児も、出産時にトラブルが起こりやすいハイリスク出産に分類されます。医学的処置が必要になる可能性が高いと判断されますので、いつでも緊急対応ができる病院で出産することになります。

逆子の原因とは?逆子になりやすい赤ちゃんと母体の特徴
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産婦に喘息等の合併症や感染症が見られる

病院で妊婦検診を受ける妊婦

産婦に喘息などの症状や感染症が見られる場合も、出産前や出産時にトラブルが起こりやすいと予測されますので、すぐに医療的処置を実施できる病院で産むように勧められます。

妊娠期間中、早めに合併症や感染症に気づくことができるなら出産する病院を探すことも容易ですが、妊娠後期に入ってから出産する病院を探すとなると、なかなか病室に空きがなく、自宅から近い場所や設備・サービス等が気に入る場所で産めなくなる可能性があります。

自宅出産を計画している場合も、こまめに妊婦健診を受け、もしものときのために病院を1つ押さえておく方が良いでしょう。

妊娠経過や胎児に異常がある

妊娠中に高血圧や高血糖などの異常が見つかる場合やエコー検査等で胎児に異常が見つかるときもあります。このような場合も、産前産後に医療的処置が必要になる可能性が大きいですので、すぐに治療を受けられる病院で出産するように勧められます。

帝王切開をしたことがある

今まで帝王切開をしたことがある人も、自宅や助産院ではなく病院で出産するように勧められます。その他にも、4人以上の出産をしたことがある人や羊水に異常がある人、血液型がRH-の人なども、病院で出産することが勧められます。

もちろん自宅で出産するかどうかを最終的に決定するのは妊産婦さん自身ですが、その決定によって自分だけでなく赤ちゃんの命も危険にさらすかもしれないということは覚えておきましょう。

安全を優先した上で自分らしいお産をしよう

妊産婦さんが自分らしい出産にこだわり、自分らしい出産を実現しようと思うこと自体は間違ってはいません。ですが、自分らしさにこだわるあまり、赤ちゃんの命を危険にさらしてしまうことは、赤ちゃんを守るべき母親として正しい選択だとは言い難いでしょう。赤ちゃんの健康を守るためにも、こまめに妊婦健診を受け、医師の説明や勧めにも耳を傾けるようにしてください。

また、病院や診療所などの施設における出産が増加するに従い、赤ちゃんが無事に生まれる確率も高まってきたことも忘れてはいけません。徒に「昔は良かった」「何でも自然が一番」と唱える人もいますが、医学の進歩によって赤ちゃんやお母さんの命が助かってきたことは疑いようのない事実です。赤ちゃんと自分の健康と安全を最優先させて、自分らしいお産を実現して下さい。

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