鉗子分娩による母子へのリスク

鉗子分娩のリスクとは?後遺症や発達障害への影響は本当?

鉗子分娩とはどのような分娩方法なのか、鉗子分娩ができる条件と、鉗子分娩が行われる母体や赤ちゃんの状態を説明。さらに鉗子分娩の後遺症や障害のリスク、痛みはあるのか、自閉症や発達障害の原因になるのかといった疑問にもお答えし、鉗子分娩の健康保険、医療保険の取り扱いについてお伝えします。

鉗子分娩のリスクとは?後遺症や発達障害への影響は本当?

鉗子分娩とは?

鉗子分娩(かんしぶんべん)は、自然分娩の際、必要に応じて行われる分娩方法のひとつです。鉗子と呼ばれるトングのような形をした金属製の医療器具で、赤ちゃんの頭を挟み、体全体を引っ張り出します。

赤ちゃんの頭を器具で挟んでも大丈夫なの?
自然分娩と比べてお産の痛みが強いのかな?

と、赤ちゃんの頭を引っ張るという点から、不安になってしまう方も多い鉗子分娩。
まずは鉗子分娩は、どのような時に行われるのか、解説します。

鉗子分娩はどんなときに行われるの?

子宮口が全開してから、赤ちゃんが出てくるまでを分娩第2期といいます。
この分娩第2期に、分娩が長引いてしまったり、停止してしまった場合は、赤ちゃんを素早く出してあげる必要があります。

その際に、吸引器具を使った吸引分娩が行われますが、総牽引時間が20分を超えた場合に、鉗子を使った鉗子分娩、または帝王切開に切り替えられます。

吸引分娩・鉗子分娩を行うためには、いくつかの条件があります。

分娩台で胎児の心音を調べる

吸引分娩・鉗子分娩が行える条件

  • 妊娠35週以降
  • 児頭骨盤不均衡が見られない
  • 子宮口が全開になっており、且つ破水している
  • 赤ちゃんの頭が骨盤の中にはまっている

児頭骨盤不均衡とは、ママの骨盤の大きさに比べて赤ちゃんの頭が大きく、スムーズな分娩が不可能な状態です。

上記の条件をクリアした上で、母体または赤ちゃんの状態を見て、医師が鉗子分娩の判断を下します。
鉗子分娩は熟練した技術が必要なため、行わない医師もいます。その場合は、帝王切開への切り替えとなります。

では、具体的に、母体や赤ちゃんがどのような状態になった時に、鉗子分娩が行われるかを見てみましょう。

母体の状態がきっかけの場合

微弱陣痛・母体疲労

微弱陣痛の妊婦

陣痛が弱くなり、子宮の収縮がうまく行われない「微弱陣痛」となり、お産が長引いてしまう場合があります。また、お産が長引くことで、妊婦さんが疲弊してしまい、いきむことが出来なくなってしまう場合があります。

分娩第2期の所要時間として、初産婦は2時間以上、経産婦は1時間以上かかってしまっている場合は、吸引分娩や鉗子分娩に移行します。

母体合併症

母体に心臓病などの心疾患がある場合や、高血圧症を患っている場合は、お産の時間を短縮する必要があります。

心臓に負担がかかった状態で長時間かかったり、いきんだりすることで、母体が危険にさらされることを回避する目的があります。

赤ちゃんの状態がきっかけの場合

回旋異常

赤ちゃんは、狭い産道を通り抜ける際、母体の子宮収縮の力を借りて、回旋しながら降りてきます。しかし、回旋がうまくいかず、降りてくることが出来ない場合もあります。

狭い産道で回旋ができず、降りてこられないままだと、赤ちゃんへ酸素がうまく届かないなどの問題が起こる可能性があるため、吸引分娩や鉗子分娩で手助けをしてあげます。

臍帯下垂・臍帯脱出

胎児と臍帯の位置関係

母体と赤ちゃんを繋ぐへその緒を、「臍帯(さいたい)」と呼びます。
妊娠中だけではなく分娩中も、臍帯を通して絶えず栄養や酸素を赤ちゃんへ送っています。

また、赤ちゃんの頭は子宮口にぴったりはまった状態で降りてきますが、赤ちゃんの体と子宮口の間に隙間がある場合は、赤ちゃんの頭より先に臍帯が出てきてしまいます。
破水前に臍帯が下りてきてしまうことを「臍帯下垂」、破水後に臍帯が下りてきてしまう事を「臍帯脱出」と言います。

臍帯下垂・臍帯脱出は、赤ちゃんが逆子や横位になっている場合や多胎妊娠、臍帯が長すぎる場合にも起こることがありますが、臍帯脱出が起こると、赤ちゃんへ送られる酸素の量が減ってしまうので、吸引分娩や鉗子分娩で、素早く出してあげる必要があります。

鉗子分娩はどのように行われる?

ネーゲレ鉗子

鉗子分娩で使われる鉗子には様々な種類がありますが、一般的には「ネーゲレ鉗子」と呼ばれる、ヘラのような形をした金属が2枚合わさったような形の器具を使用します。それぞれのヘラを左葉・右葉と呼び、左葉から順に赤ちゃんの頭へ合わせていきます。

赤ちゃんの頭を鉗子で引っ張るというと、少し心配になってしまいますが、鉗子の力が加わるのは、上あごの部分です。

さらに、上あごだけに力がかかるのではなく、力が分散されるような設計になっています。
また、無理に引っ張るのではなく、陣痛やお母さんのいきみに併せて引っ張り出します。

鉗子分娩にリスクはある?

鉗子分娩を行った場合、母体や赤ちゃんにリスクはあるのかについて、順番に見ていきましょう。

母体への影響

痛みはある?

鉗子分娩を行う場合、器具を挿入するため、産道を広げなくてはいけません。
産院により異なる場合もありますが、局所麻酔を行ってから会陰切開を行い、器具を挿入するため、鉗子分娩での出産自体は痛みを感じないという場合も多いようです。

また、無痛分娩での分娩中に鉗子分娩へ切り替えとなった場合も、出産に関する痛みは心配しなくてもよいでしょう。

ただし、傷の度合によっては、麻酔が切れた後に痛みが続く場合もあります。出産後は我慢せずに、授乳中でも飲める痛み止めを処方してもらいましょう。

傷や後遺症は残る?

鉗子分娩を行うことで、産道や外陰部などが裂ける「軟産道損傷」や「会陰裂傷」などが起こるリスクがあります。傷の度合によっても処置が異なりますが、出血がひどい場合は、縫合を行います。

また、後遺症としては、尿意の戻りが遅れるといった症状が出る場合もあります。

赤ちゃんにはどのような影響がある?

生まれた直後の新生児

赤ちゃんの頭の形が悪くなる?傷は残る?

鉗子で引っ張ることで、少し頭が伸びたようになってしまったり、顔に鉗子で圧迫した傷ができてしまう可能性はあります。しかし、数日で綺麗な形に戻り、傷も治りますので、心配しすぎないようにしましょう。

赤ちゃんに後遺症は残る?

お産が長引くことで赤ちゃんへの酸素供給が少なくなり、低酸素状態に陥ってしまい、頭蓋内出血が起こる可能性はあります。頭蓋内出血をした場合、障害や後遺症が残る可能性はありますが、これは、鉗子で引っ張ったことが原因というよりも、お産が長引いた結果だと考えられています。

また、顔が圧迫されることで、黄疸が出る場合もありますが、自然分娩で生まれた赤ちゃんでも黄疸が出る子はいます。

発達障害や自閉症になるって本当?

一部のママの間で、「鉗子分娩や吸引分娩が発達障害や自閉症に繋がるのでは?」と心配している方もいるようですが、現時点で鉗子分娩や吸引分娩が発達障害や自閉症を引き起こすといった明確なデータはありません。

発達障害や自閉症は、先天的なものであり、分娩方法に左右されるものではないという説が一般的です。根拠のない情報に振り回されないようにしましょう。

鉗子分娩は保険がきく?

通常、自然分娩(経腟分娩)で出産をした場合は、100%自己負担となります。

しかし、医師が鉗子分娩が必要と判断した場合は、健康保険の対象になるのかでしょうか。また、出産時のトラブルに対応できる医療保険に加入していた場合は、鉗子分娩は保険支払いの対象になるのでしょうか。

鉗子分娩と健康保険・医療保険の関係を確認しておきましょう。

健康保険

カルテを見る医者

出産中、母体や赤ちゃんの安全を考慮し、医師の判断で鉗子分娩を行った場合は、正当な医療行為とみなされ、健康保険の対象となります。また、鉗子分娩を行うために行った会陰切開とその縫合、会陰裂傷などが起こった場合も、健康保険と対象となります。

しかし、母子が危険な状態ではないが、安全のために鉗子分娩を行った場合は、正常分娩の一部とみなされ、自費での負担となる可能性もあります。なにをもって「適応」とするのかは判断の分かれる部分です。

ただし、健康保険が適応されなかったとしても、6000円~2万円程度の追加料金ですので、そこまで高額という訳ではありません。入院中に出産費用の内訳を見せてもらい、保険適応外となっていた場合は、なぜなのか病院側に問い合わせてみましょう。

医療保険

現在は様々な医療保険が出ていますが、加入している医療保険が鉗子分娩の費用が適用対象となっている場合は、医師に診断書を書いてもらい、保険会社へ提出することで、保険給付を受けることが出来ます。

しかし、保険によって給付対象となる範囲が異なりますので、加入している保険の給付対象の範囲やを事前に確認しておいた方がよいでしょう。

また、会社によっては妊娠中では加入できない場合や、特定の週数を過ぎると、加入が出来なくなる場合もありますので、妊娠中の方で、これから加入を検討している場合は、早めに保険会社に確認しましょう。

鉗子分娩は赤ちゃんに会うための1つの方法

鉗子分娩は、ママと赤ちゃんの両方の安全を考えて行われる分娩方法です。
年配の方の中には、「鉗子分娩は頭の形が悪くなる!」と言う方もいますが、あくまでそれは一時的な影響に過ぎません。

後遺症などのリスクがまったくない訳ではありませんが、それは出産全体に言えることです。
分娩の進行が滞っている時に行われるのが鉗子分娩であり、なにもせずにそのままの状態でいることは母子の命の危険を伴います。吸引分娩、鉗子分娩、帝王切開などは、そうした状況を脱するために必要な医療行為と理解しておきましょう。

おすすめコンテンツ