帝王切開の母体や胎児へのリスク

帝王切開のリスクとは?術中・術後の母体と赤ちゃんへの影響

帝王切開のリスクとは?母体の大量出血、新生児一過性多呼吸などの術中のリスクや麻酔による胎児への影響、術後の癒着や血栓症、次の妊娠・出産の注意点を解説。帝王切開に限らず、出産とはリスクが伴うものです。帝王切開のメリットとリスク、術後の生活の注意点を理解し、手術に挑みましょう。

帝王切開のリスクとは?術中・術後の母体と赤ちゃんへの影響

帝王切開のリスクとは?術中・術後の赤ちゃんとママへの影響

妊娠中期を迎えると産科医から帝王切開について提案される妊婦さんも多くなります。
外科手術である帝王切開ですが、その情報は経膣分娩に比べると乏しく、書籍やインターネット、知人の体験談などもあまり聞くことがありません。

帝王切開の術中のリスク、麻酔が及ぼす影響、術後に起こりやすい傷跡のトラブルや次の妊娠の注意事項を正しく理解しておきましょう。

帝王切開とは?

5人にひとりが帝王切開で出産すると言われています

帝王切開とは、妊婦さんのおなかにメスを入れ、子宮を切開することで、胎児を安全に取り出す手術兼出産方法です。現代では、5人にひとりが帝王切開で出産すると言われており、決して珍しい手術ではありません。

帝王切開にはあらかじめ日程を決めておく予定帝王切開と緊急帝王切開があります。どちらにしても、帝王切開になった場合は、慎重に術後の経過を見守る必要があり、経膣分娩に比べると入院日数が長くなる傾向があります。

手術は約1〜2時間で終わりますが、麻酔薬は母体だけではなく胎盤を通じて胎児に影響を与えるため、帝王切開は時間との戦いです。

予定帝王切開

予定帝王切開では、事前に手術日を決め、陣痛が来る前に胎児を取り出します。おおむね出産予定日から2週間ほど早い時期に手術予定が組まれることが多いです。予定帝王切開は、事前に「手術日=赤ちゃんの誕生日」がわかるため、心の準備ができますし、家族も仕事の都合がつけやすいというメリットがあります。

予定帝王切開による出産は、逆子が治らない場合や多胎妊娠、児頭骨盤不均衡、妊娠高血圧、胎児に何らかの異常や病気がある場合に行われます。出産の進行にリスクを伴う高齢初産婦も、帝王切開を勧められるケースがあります。

緊急帝王切開

経膣分娩を予定していた妊婦も、胎児や母体に生命の危険が及びそうな場合には、帝王切開に切り替わります。

例えば、破水によってへその緒が赤ちゃんに巻き付いている場合、赤ちゃんが産道を通る時に正常な旋回が行なわれない場合、正常な分娩が始まる前に胎盤が剥がれ落ちてしまう常位胎盤早期剥離や正常よりも低い位置に胎盤が付着する前置胎盤などの異常が見られた場合などです。

出産は何が起こるかわかりません。帝王切開は妊婦なら誰にでも行われる可能性があります。

帝王切開は高額療養費の給付対象

帝王切開は自然分娩に比べて費用が高いと思われがちですが、一概にそうは言えません。
帝王切開は危険回避のための医療行為とみなされるため、健康保険の適用対象となり、結果的に分娩費用が安く抑えられるケースもあります。

出産育児一時金や高額療養費制度により、民間の医療保険などによって、出産にかかった費用がプラスになる場合もあります。

帝王切開にかかる費用と自己負担を減らす5つの制度
帝王切開にかかる費用と自己負担を減らす5つの制度

帝王切開のリスクとは?

現代では珍しくない出産方法といっても、やはり腹部にメスを入れる外科手術ですから、心配になる方も多いでしょう。帝王切開に限らず、出産とは多少なりはリスクを伴うものです。帝王切開の手術におけるリスクを解説しますので、正しく理解しておきましょう。

帝王切開の術中のリスク

帝王切開の手術のイラスト

大量出血

通常、帝王切開手術中には羊水量も含めて1~2リットルほどの出血がありますが、時に子宮の戻りが悪く、出血が継続する『弛緩出血』が起こると、出血量はそれ以上となります。

特に、前置胎盤や常位胎盤早期剥離での大量出血のリスクは高く、緊急の場合は輸血や子宮全摘出の可能性もあります。

新生児一過性多呼吸

経膣分娩の場合には、産道を通る際に赤ちゃんの肺が圧迫され、肺液が排出されることで自力呼吸が可能になります。しかし、帝王切開の場合にはそれができませんので、赤ちゃんの肺に水分が残ってしまい、新生児一過性多呼吸と呼ばれる呼吸障害を引き起こす可能性があります。

ただし、新生児一過性過呼吸の多くは一時的な症状であり、適切な処置により後遺症も残らずに回復します。

帝王切開の麻酔によるリスク

全身麻酔のマスクをあてられている妊婦さん

帝王切開は開腹手術なので麻酔が必要となります。赤ちゃんへの麻酔の影響が少なくなるよう麻酔科医がサポートしてくれます。麻酔の方法は脊髄に行なう局所麻酔と呼吸から取り込む全身麻酔があります。

帝王切開の麻酔とは?全身麻酔・局所麻酔の種類と副作用
帝王切開の麻酔とは?全身麻酔・局所麻酔の種類と副作用

局所麻酔

局所麻酔の場合には母体に吸収される麻酔薬の量は極わずかであり、胎児への影響はほとんどありません。呼吸も通常通りにでき、手術中でも産声を聞いたりカンガルーケアも行なえます。

全身麻酔

全身麻酔の場合には母体に意識はなく、生まれたばかりの赤ちゃんが眠くなったり、呼吸が弱くなることがあります。しかしこれは一時的なもので時間が経過すれば元気になります。

母体へのリスクは全身麻酔のほうが高く、赤ちゃんとの対面は麻酔が覚めてからとなります。

術後の看護も万全のサポート体制を敷いてくれるので、痛みを無理に我慢する必要はありません。痛み止めの追加や全身麻酔への変更などの処置が取られます。大量出血や著しい脱水症状が現れた場合にも全身麻酔となります。

帝王切開の術後のリスク

笑顔の赤ちゃんを抱っこしているママ

血栓症

血栓症とは、血液中の血の塊り(血栓)により血流が滞り、最悪の場合、血管が完璧に詰まった状態になる病気です。脳梗塞、心筋梗塞、エコノミー症候群などは、すべてこの血栓により、脳や心臓、肺の血管が詰まることで起こります。

妊娠中は、普段から血管の圧迫が起こりやすく、静脈瘤やむくみに悩む方が多くいます。その上、帝王切開の術中は、赤ちゃんの重みで静脈が圧迫され、最も血栓ができやすい状態です。術後、赤ちゃんが取り出されると、血栓が一度に肺動脈に向かい、肺血栓塞栓症を引き起こす可能性があります。

帝王切開における血栓症リスクは、一説には経膣分娩の7~10倍ともいわれており(注1)、術後はできるだけ早くベッドから起きて、少しでも身体が動かした方が良いでしょう。

術後癒着

開腹手術による合併症として、通常は隣り合うべきでない臓器や組織同士の癒着が起こる可能性があります。癒着が起こった場合、ひどい腹痛や便秘のような腸の張りなどの症状が現れます。

帝王切開を複数回繰り返すと癒着のリスクが高まり、おなかがいつもひきつっているような感覚や排尿・排便時の痛みを覚える人もいます。手術後すぐに起こるというわけではないので長期の観察が必要です。

帝王切開後の妊娠・出産によるリスク

笑顔でお腹を触っている妊婦さん

過去に帝王切開による出産を経験した女性は、それ以降の出産も同様に帝王切開になるのが普通です。

基本的には1人目と同じ場所を切開するため、傷が増えることはありません。ただ、帝王切開は子宮に負担がかかるため、回数が重なるとトラブルのリスクは増加します。妊娠・出産の間を空けるなど、母体への負担を少なくする必要があります。

リスクは増しますが、決して不可能な出産ではなく、帝王切開で2人目、3人目を出産された方も大勢いるので安心してください。

子宮外妊娠

開腹手術によって卵管が癒着し、詰まってしまうリスクもあります。卵管が癒着してしまうと異所性妊娠 (子宮外妊娠) にいたるケースもあります。
妊娠判定薬では異所性妊娠は判別できないので、産科医によるエコー検査での確認が必要となります。

子宮外妊娠の原因と子宮外妊娠のリスクを上げる5つの要因
子宮外妊娠の原因と子宮外妊娠のリスクを上げる5つの要因

子宮破裂

1度帝王切開をすると、子宮壁が薄くなり、陣痛や子宮収縮による腹圧に耐えられず、子宮破裂を起こす可能性が増加します。そのため、1度帝王切開による出産をした場合は、それ以降の出産も帝王切開になるのが一般的です。

帝王切開の後の経膣分娩は可能?

近年では、帝王切開経験者の妊婦が経腟分娩をするVBACと呼ばれる手法が注目されています。ただし、危険性が高いため、実施できる医療機関のみでの対応となり、また実践できる妊婦の条件も限られます。

帝王切開の術後の生活は?

無事、帝王切開により赤ちゃんを出産できたら、次に気になるのは術後の回復です。痛みが長引いたり、傷跡がトラブルを起こすと、育児や生活に支障が出てしまいます。

痛み止めの飲み薬が処方された場合には、医師や薬剤師の指示に従って服用しましょう。特に母乳育児の場合は、薬について正しい知識を持つ必要があります。

産後の体型回復のためのダイエットは、数か月から1年単位での経過観察後に行いましょう。腹帯や骨盤ベルトは傷の様子を見ながら着用してください。。

帝王切開の術後の痛み

手術中は麻酔が効いていますので、痛覚は麻痺していますが、麻酔が切れると傷口が痛むのは間違いありません。その後、「後陣痛」といって子宮が元に戻ろうとする痛みが生じます。後陣痛は、経膣分娩でもよく起こり、だいたい2~3日で治まります。

帝王切開の場合、切開した腹部の痛みにプラスした形で後陣痛が起こるので、「帝王切開の後陣痛は辛い!」と経験者の多くが語ります。

後陣痛は仕方ありませんが、傷の痛みに関しては痛み止めの処方も可能です。無理せず、医師や看護師に相談しましょう。

帝王切開の痛みはいつからいつまで?術後の痛みの期間
帝王切開の痛みはいつからいつまで?術後の痛みの期間

帝王切開の傷跡

帝王切開の傷口は、だいたい術後3日ほどで閉じます。その後、抜糸となりますが、最近では抜糸が必要ない溶ける糸などが使われることもあります。その後、切開痕は赤い状態から白色に徐々に色が薄くなりますが、完全に消えることはありません。

ケロイドといって、傷口がみみず腫れのような状態になると、痛みの原因になり、悪化すると化膿するリスクもあります。傷口は医療用テープで保護を行い、異変を感じたら病院を受診しましょう。

帝王切開の傷跡は消える?傷跡を残さないためのケア方法
帝王切開の傷跡は消える?傷跡を残さないためのケア方法

帝王切開の一番のメリットはママと赤ちゃんの安全を守ること

帝王切開の一番のメリットは、赤ちゃんと母体に対する安全性の向上です。
確かに帝王切開にはリスクがありますが、それは経膣分娩においても同様です。医師が帝王切開を勧めるのは、経膣分娩にはそれ以上のリスクが母体や赤ちゃんにあるからです。

また、帝王切開には経膣分娩にはないメリットもあります。

  • 会陰切開がない。
  • 悪露などの産後の回復が早くなる。
  • ヘルペスやHIVなどの感染症リスクの低下。
  • 赤ちゃんに血腫が起こり難い。
  • 赤ちゃんの頭の陥没がない。
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こうした部分にも目を向け、リラックスして手術の日を迎えましょう。

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